妊活中のストレス対策｜心理師　今井さいこ

ストレスに負けない。妊活中、穏やかに過ごす方法

妊活中は様々なストレスが溜まります。どんなことがストレスになるのかを理解して、ストレスがかかったときに、どういった対策をしたら心穏やかに過ごせるのか、公認心理師の今井さいこさんにお話いただきました。

妊活中に感じるストレスってどういうもの?

皆さん、妊活中にどんなストレスを感じていますか。どんな対策をしたら、心穏やかに過ごせますか。できれば穏やかに過ごしたいと思っているのに、なかなかそうはできない時、どのようにしたらいいのかな？ということを、一緒に考えていきましょう。

妊活中に感じる具体的なストレスは？

まずは、「妊活中に抱えるストレスについて知ろう！」ということでお話ししていきます。皆さんは、妊活中どんなストレスがありますか?いろんなことが思い浮かべられると思いますが、よく挙げられるものを並べてみました。うん、うんとうなずくほど共感できるものもあれば、そうなんだと意外に感じるものもあるかもしれないので、一緒に見ていきましょう！

• ●周囲の妊娠・出産報告を素直に喜べない
• ●子どもを見るのが辛い
• ● 「子供はまだ？」という周囲の声に怒りすら覚える
• ●自分の嫌な部分を見るようになり、自己嫌悪に陥る
• ●協力的ではないパートナーにイライラする
• ●年齢面から焦りを感じる
• ●妊娠できない自分には価値がないように感じる
• ●努力しても結果が出ないことに虚無感を覚える　などなど

一人ひとりに聞けば、いくらでも妊活中のストレスになることは出てくると思います。また、ここには書かれてないことをストレスに感じている方もいることでしょう。

自責の念を抱いたり、自分に価値がないと思うことも

妊活中のストレスについては、通常のカウンセリングの中で聞くストレスと少し違う特徴を持っていることを感じます。どういうことかというと、自責、他責という観点で見ると、自責の念を抱かれる方が多いように思うのです。

「こんな私だから赤ちゃんが来ないんだ」とか「妊娠できないんだ」といった言い方をされる方がいるのですが、不妊にはさまざまな原因があります。物理的な原因が自分になくても、自分の性格や行動を責めて、自分のせいだと思っている方が多いなということを感じます。

それから自己嫌悪です。今まで自分のブラックな部分、嫌な部分というのは見たことがなかったけれども、例えば、友達の妊娠を素直に喜べなかったりした時に、「私ってこんな嫌な人だったんだ」と自己嫌悪に陥ったり、自分の見たくなかった部分を如実に見る機会が多いということも特徴的です。

それから、無価値観と挙げていますが、「女性として価値がないように感じる」であったり、仕事では一生懸命努力をして成果を出していたのに、妊活に関しては、どれだけ努力しても自分には成果を出せないという、自分の価値のなさを感じる方が多いという点も挙げられます。

敵対心を持つと、孤独感を深めていくことも

敵対心ということで、普段だったら思わないようなこと、例えば、子どもがいる人に対して、「あの人は子どもがいていいよね」と思ったり、「周囲は自分の気持ちを理解してくれない」というふうに見て、周りの人を敵のようにみなしてしまい、自分自身で悩みを抱えていく、孤立感を深めてしまう、ということもあると思います。

こういう感情や状態が続くとどういうことが起きてくるかというと、自尊感情が傷つきます。「自尊」というのは、自分は特別な何かがなくても、その存在自体が尊いのだと思う感情のことをいうのですが、そこが傷ついてしまい「自分には何もない」と思ったり、「価値がない」と思ったりという気持ちになってしまいます。また、自己肯定感が下がるという点は、努力しても自信に繋がるような結果が得られないことで、自己肯定感が下がるということが、妊活中のストレスが続くことでの特徴と感じます。

ショックを受けたときに辿る心のプロセスって？

では、なぜこんなことが起きるのか。不妊とわかると、人はこのような心のプロセスを辿っていきます。不妊ではなくても、一般的にショックな出来事に遭うと、人はこういうプロセスを辿ると言われています。

１．否認と孤立

否認・否定することです。否認と孤立では、不妊ということに対して「なんで私がそうなるんだろう」と思ったり「本当に私は不妊なんだろうか」ということで不妊ではない理由を探したり、こんな出来事が起きているのは自分だけじゃないかと、孤立感を感じたりということが始めに起きてきます。

２．怒り

その次のプロセスとして、怒り。「なんで私がこんな目に合わなければいけないんだ」とか「あの人は妊娠できているのに、なんで自分は妊娠できないんだ」という怒りを感じたり、他責になったり、周りの責任にしようとして「自分が悪いわけじゃない」と思おうとしたりすることが起きてきます。

３．取引

その後に「もしかしたらこんなことをすれば、この状況から抜け出せるんじゃないか」、例えば妊活で言えば、神頼みなども、取引になると思いますし、一生懸命、健康になるようにということで温活をしたり、体にいい食事を摂ったり、なんとかこの状況を脱しようとします。

４．抑うつ

そこでもなかなか結果が出ないと、抑うつ状態になります。「やっぱり私は何をやってもダメなんだ」など、ネガティブな感情に支配されていく、エネルギーが枯渇していく、ということが起きてきます。

５．受容

不妊の事実を受け入れて、「何とかしていこう」と思ったり「別に子供ができないというだけで、私の価値が下がるわけではない」ということに気づいて、その出来事を受容できたるようになる、ということが起きてきます。

自分の心がどこにいるのかを知ることが大事

こういったプロセスを辿っていきますが、このプロセスを順番通りに辿るとか、一定期間、例えば1週間経ったら次の「怒り」のプロセスにいって、また1週間経ったら「取引」のプロセスに移るというふうに、規則的に辿っていくと決まっているわけではありません。

各プロセスに留まる期間は人によって違いますし、例えば「取引」までいったけれども、また「否認と孤立」に戻ってしまう、というふうに、行ったり来たり、順番が入れ替わったりする人もいます。

ただ知っておくと良いと思うのは、自分が今どの段階にいるかということ。そして、抱えているネガティブな感情は、人として自然な感情なんだということを理解して、自分を受容していけるようにしていただきたいと思います。

ネガティブな感情を持つことは人として自然なこと

「私が悩んでいることなんて自分だけなんだ」とか、「こんな悩みを持つなんて自分だけなんだ」、「こんな風に思うなんて私ってひどい人なんだ」とか、そんなふうに思う必要はなくて、人としてそういう感情、一連の感情を持つのは、自然なことなんだ、ということはぜひ覚えておいてください。

大事なことは、今自分がどこのプロセスにいるかを把握して、「この段階にいるならこういうメンタルケアをすればいいんだな」ということに繋げていっていただきたいです。

妊活中は、特徴的なストレスを抱えることが多いのですが、心のプロセスとしては、一般的にショックなことを受けた時に感じるものと同じようなプロセスを辿っている。今どれだけネガティブな感情を抱えていたとしても、それは人として自然なことで、それに対して大事なことは、どうケアをしたらいいのかを考えること。その視点に立ってもらえるといいかなと思います。

どんな対策をしたら心穏やかに過ごせるの？

実際にどんな対策をしたら心穏やかに過ごせるかということを考えていきます。

１．心の状態を知る

まずは自分の心の健康状態を知るということが大事です。メンタルケアの手順というものがあるのですが、まずは心の状態を知る。今どんな心の状態なのか？すぐにでも専門家の助けが必要なのか、それとも自分自身でケアできる状態なのか？そのあたりをきちんと知っていただくと良いと思います。

2．ストレスの原因を特定する

その後にストレスの原因を特定していく。妊活の中でも何にストレスを感じているのかということをしっかりと考えていきます。

３．原因にアプローチし、心のケアをする

原因が分かったら、その後でその原因に対してアプローチする。原因を解決するために、

例えば不妊専門のクリニックに行くのか、まずは婦人科で検査をするのか、そういった対策を考えます。あともう一つは心理的なものであれば、心のケアも施していく。

自分の心の状態、実際にチェックしてみましょう

実際に、今皆さんはどんな状態なのかなということをチェックをしていただこうと思います。これは、うつ状態とか不安障害などをスクリーニングするための検査になります。

これでもし中程度とか、重度ということであっても、実際に不安障害やうつを診断するものではないので、目安として使ってください。

次の質問について、あなたの過去1ヶ月、ここ30日間ぐらいの間はどうであったかについて、各項目それぞれ当てはまるものをお選びください。

以下の質問１～６に対して、「全くない」「少しだけある」「時々ある」「たいていある」「いつもある」のいずれかに〇をして、点数をつけるものです。全くないが1点、少しだけが2点、時々が3点、たいていが4点、いつもの場合は5点ということで、いつもそうだというものほど得点が高いです。

1.神経過敏に感じた

2.絶望的だと感じた

3.そわそわ落ち着かなく感じた

4.気分が沈み込んで何が起こっても気が晴れないように感じた

5.何をするのも骨折りだと感じた

では取り組んでみてください。

点数を合計してその結果で判断していきます。合計点数が0から4点の場合は、大丈夫でしょうということですね。5点から8点の場合は、少しケアをしていった方がいいですねということ。9から12点だと中度。13点以上だと重度と言われています。

5点以上の人は気分・不安障害の可能性が示唆されるとありますが、あくまで可能性の話です。4点以下だったら、今まで通り特に何もしなくていいと思います。軽度の方の場合は何かしらケアをしていく必要があるということです。

では、「そのケアってどうするの？」ということですが、私たちのようなカウンセラーに相談するということも大事ですし、「心の専門家に相談するのはハードルが高い」という場合で、今、不妊治療のクリニックに通っている方などは、通院中のクリニックで相談するということから始めてみるとハードルも低く、すぐに出来て良いと思います。

ストレスの原因を探るために原因を書き出す！

実際、今の自分の状態を知った上で、ストレスの原因を探るというところです。

どうやって探っていくかというと、ストレスと感じることを紙に書き出してみてください。紙に書き出すのが難しいようなら、スマホやパソコンのメモ機能を使って書き出すという方法でもいいと思います。

詳しく詳細に書き出すと原因が探りやすくなる

とにかく自分の外に出す、客観的に文字で見れる状態にしてみる、ということが大事です。「もう書くことがない！」と感じるまで書き出してみましょう。書き方のポイントは、「妊娠しないことがストレス」というふうにざっくり書くのではなく、「妊娠しないことで毎月タイミングを合わせなければいけないことがストレス」などのように、妊娠しないということの何がストレスなのか、ということを詳しく書き出してください。

詳しければ詳しいほど、原因が探りやすくなるので、是非やっていただきたいと思います。

自分のストレスの原因を分類してみよう

書き出したものを眺めて、以下の①、②、③の3パターンに分類してみましょう。

①自分でコントロールできるもの

②他者が動かないと解決できないもの

③時間が解決してくれるもの

皆さんが書き出したものは、ほぼこの3つに分けられるようになっています。

自分でコントロールできることをやることで自尊心・自己肯定感も回復する

自分でコントロールできるものから手を付けて、今の状況、状態を改善していくようにしてください。自分の力で解決していくことで、小さくても自信をつけることができます。自尊心、自尊感情や自己肯定感の回復につながっていきますので、ぜひ積極的に動けるものから動いていきましょう。

こうして書き出すことのメリットは、自分を客観的に見つめることで、感情に飲み込まれるような状況から脱出できることです。客観的に見つめることはすごく大事なので、ぜひ取り組んでみてください。

親友や周囲の誰かなど、他者には意外といいアドバイスができるものですが、自分がその状況、渦中にいると自分に対してのいい案や解決策はなかなか思い浮かばないものです。

書き出した自分の状況を眺めることで自分を第三者に見立てる、客観視できるようになります。だから、自分が思っていることを書き出して、客観的に見てみることが大事なのです。書き出して、①～③のパターンに分類して、自分で解決できるものからやっていく、この手順で取り組んでくださいね。

例えば、不妊の原因が自分にあって、それを解決しないと妊娠できないという場合、それ（不妊の原因）は自分でコントロールできません。治療は医師にしてもらう必要があることです。ただ、細かく分解していくと、例えば不妊治療のクリニックは自分で選ぶことができるし、もしかしたら、そのクリニックの中でも、この医師と相性が良さそうだとか、この医師に見てほしい、とかいうことがあれば、そういう要望を言うこともできます。自分でコントロールできるものは細分化して探せば必ず見つけていけると思います。

一人でなかなかできないということであれば、私も一緒に考えますので、ご相談ください。

今回は、妊活中・不妊治療中の心のお話と、その対策をお伝えしました。

妊活中のストレスを少しでも軽減できる糸口にしてみてください。

ありがとうございました。

動画講座はこちらからご覧いただけます

プロフィール

今井さいこ

1979年6月14日生まれ

公認心理師睡眠指導者

カウンセリングラボ　LIB Laboratory代表

自らの手で人生の選択をしていく女性の

メンタルサポートをしています。

心理学×睡眠マネジメントの知識とスキルを使って、お悩みの解決を一緒にしていきます。

◆オンラインカウンセリングラボ　LIB Laboratory代表
https://www.liblaboratory.com/

＜保有資格＞
公認心理師（国家資格）
日本心理学会認定心理士
ベスリクリニック認定睡眠指導者
サンカラ認定マインドフルネス講師
AEAJアロマテラピーアドバイザー

◾️東尾理子主催「妊活研究会」 https://lounge.dmm.com/detail/3862/