自宅でできる!お灸でセルフ妊活

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2023.11.21

東洋医学

自宅でできる!お灸でセルフ妊活

 

今回は、アキュラ鍼灸院の院長の徐大兼先生に、お灸とは何なのか、妊活中に大事なお灸を据えるツボや、お灸がもたらす4つの効果、お灸をする頻度、お灸をするときの注意点などを詳しくお届けします。

お灸ってなに?

自宅でできるお灸についてご紹介させて頂ければと思います。お灸と言ってもピンとこない方もいるんじゃないのかな?と思いますので、お灸とは何か?を説明します。お灸とは、皆さんの周りで、道端にも実際にいっぱい生えていて、東京でも生えている、ヨモギのことなのです。

ヨモギの旬は大体3月から5月ぐらいです。4月ぐらいになると、日本中どこでもヨモギが見られます。葉っぱを手で揉んで潰してみると良い香りがします。葉の後ろが白いものがヨモギになります。後ろが白いのが綿毛と言って、お灸の原材料になります。

日本では、ヨモギ餅にするのは生え替えたばかりの柔らかいヨモギです。ヨモギを採ってきて、それをすり潰して、餅と混ぜたりして食べます。

アジアではお灸は食べ物に使われていた

日本だけではなく、韓国、中国、アジアではお灸(ヨモギ)は食べ物に使われるんですが、昔は皮膚に直接乗せて、民間療法として治療に使われていたという歴史があります。日本では昔から、お灸は一般の庶民に普及していた治療法ということになります。

ヨモギのレシピを調べると、ポタージュにしたり、揚げ物にしてみたり食べ方は色々あります。ヨモギは食物繊維が豊富でカリウム、ビタミンK、カロテン、クロロフィル、食物繊維はホウレン草の3倍含まれてると言われています。

お灸は海外で様々な商品に加工されて使われてる

海外では、お灸はMogwort(マグワート)といいます。ヨーロッパでもこのMogwort(マグワート)は広く普及しており、でヨーロッパでは、昔は魔よけとして使われていたり、今でもオイルとして使ったり、お茶として飲んだりします。

Mogwort(マグワート)ティーや、フェイシャルマスクに使ったり、精油として使ったりなど、日本だけではなく、世界でも使われているものになります。

お灸の効果は4つある

早速、お灸ってどういう効果があるのか、主に4つあります。

1:血行が良くなる

温めることによって血管が収縮拡張して局所の血流良くなります。お灸をしたところが、温かくなり、温かさがずっと続くので、皮膚がピンクっぽい色に変わります。

2:細胞が活性化されて免疫が調整される

2番目が細胞が活性化されて免疫が調整されるということです。最近、僕の知り合いの鍼灸師が立ち上げた「モクサアフリカ」という団体があります。アフリカの結核を患っている方は、お金がないので、お灸を足の三里にすると耐性菌ができている結核が、薬を使わずに良くなるという論文を出しています。ウガンダですが、アフリ力の貧しい地方ではお灸が使われています。

また、中国ではこのお灸をすると免疫調整するという作用をみんな知っているので、コロナが流行り始めてから、買い占めが起きて、一時お灸がなかった、というふうに聞いてます。実際の研究で、足の三里のお灸をすると、体の免疫細胞の量が増えて、免疫が強化されるというか、免疫が調整されて色々な外からのウィルスや細菌と戦う力が出るということがあります。

また、免疫が問題でなかなか妊娠できない患者さんがいらっしゃいます。特にTH1,TH2という細胞と、あとNK細胞が活性しすぎてしまって、着床した赤ちゃんを排除してしまうといったことが起こる人がいます。

この足の三里にお灸をすることによってそういった細胞が過剰に産生されないように調整ができるという論文も出ているので、免疫に対してのお灸というのも、すごくいいです。

3)体のエネルギー(気・血・水)の流れがよくなる

3番目はこれは東洋医学の理論に基づいていますが、体のエネルギーの調整役です。気・血・水というものがありますが、その滞り、淀んでいるものを改善します。

冷え性や、肩こり、腰痛、目の疲れ、むくみ、あとストレス、不眠、色々な症状に使われていますよ、ということです。

最後に僕が一番このお灸に期待したいのは、やはり煙です。お香のような効果も体験してほしいと思っています。なぜかと言うと、お灸の中にシネオールという成分が含まれているのですが、これが沈痛・鎮静、あとリラックス効果があると言われています。

煙なのですが、この煙は吸っても体に害がなく、リラックスできるので、煙と心地よい温かさを同時に活用してもらえればと思っています。

妊活でお灸を習慣化すると他の習慣も良い方向に変わる

私たちの鍼灸院では治療を受ける患者さんに、ほぼ全員お灸をしてもらっています。お灸をしてもらう理由は、1つは体に対して色々な改善効果があるということと、2つ目はお灸をすることが生活の一部になる、ということです。

生活習慣の中に何か妊活に良いことを1つ取り入れることで習慣化してもらう。これが実は習慣化できるようになってくると、お灸でリラックスして体調が良くなって、他の妊活にも良いこともやってみようかな、早く寝よう、など好循環となっていきます。


患者さんからの質問で「お灸っていつやったらいいですか」「朝やったらいいんですか」、「夜やったらいいですか?」と聞かれます。「眠りが浅いですとか、なかなかよく寝付けない」っていう人だったり、「どうしても夜更かししちゃう」っていう人っていう場合は、「じゃあもう夜11時にお灸するって決めたらどうですか」と。お灸したらもう寝る。そして、夜更かしをしないための儀式としてお灸をして、自己暗示をかけてしまいましょう。

お灸をすることによって生活習慣の改善の1つに繋がるということもあるのです。患者さんに「治療した日はお灸しなくていいですか」って聞かれるんですけど、治療した日も、毎日やる。一日忘れただけでも、遠のいてしまうので、できる限り毎日やっていただくのが良いと思います。

排卵前と着床サポートに良いツボとは?

今ここに出てるツボが、排卵の前と、排卵した後の着床サポートで陰のフェーズと陽のフェーズと、お灸のフェーズを2つに分けています。

三里のツボは排卵前も後も基本のツボ

足の三里というのは、排卵前と着床サポートと、基本中の基本のツボなので、これは両方に入ってます。三里は免疫にも関わります。

松尾芭蕉という昔の詩人は、足の三里をしながら奥の細道を書いたという風に言われています。足の三里っていうのは基本ですね。排卵前には足の三里以外に、三陰交(さんいんこう)と陰陵泉(いんりょうせん)というこの2つのツボがあります。

卵巣・子宮を通過する重要なツボ「三陰交」

三陰交はどういうツボかというと、3つの陰が交わるっていう風に言われています。ちょうど、卵巣、子宮っていうのは肝経(かんけい)肝臓の経絡、脾経(ひけい)脾臓の経絡そして腎経(じんけい)腎臓の経絡、この3つが卵巣と子宮のところを通っていくんですね。

この3つの陰が重なるツボっていうのは、実はすごく大切で婦人科系は色々なものに対してこの三陰交というツボを扱います。

消化不良や足のむくみに。リンパの流れを良くする「陰陵泉」

陰陵泉っていうのはこの消化不良や足のむくみですとか、リンパ液の流れを良くするとか、足の三里と合わせて、血と消化作用を良くして食事から食べたものを栄養に変えて吸収しやすくするっていう作用があるのと、この脾経というのがこの陰陵泉というツボがあるラインがちょうど卵巣の上を通りますので、しっかり排卵するように、そしてしっかり卵が育つように、生理が始まってから排卵するまで陰のフェーズをサポートするこの3つのツボに(お灸を)していただいています。

着床サポートのツボは外関・照海・大衡

次は着床ですね。排卵し終わりました、高温期になりました、となると、次のようなツボになります。足の三里は一緒です。外関(がいかん)っていうものは、自律神経を整える。

照海(しょうかい)というのはこの腎経(じんけい)というところで子宮の着床する力を高めるツボ。そして大衝(たいしょう)というのは肝経、血液に関連するので子宮にしっかりと血液が行って着床をサポートする。こういった2つのフェーズで患者さんには利用していただいています。

ツボの取り方が分からない方は、こちらのウェブサイトで、お灸のツボの取り方について説明しています。

是非、こちらもご覧ください。

https://www.acuraclinic.com/moxibustion-points/

お灸にはどんな種類があるの?

実際にどんな種類があるのかというと、一番普及していて、皆さんが使いやすいものには「台座灸(だいざきゅう)」というものがあります。

また、鍼頭鍼灸(きゅうとうしんきゅう)といって針を刺して、その上にモグサを乗せて温める方法や、棒灸(ぼうきゅう)といって棒のように葉巻のようになっているものに火をつけて、上から温めるものや、隔物灸(かくぶつきゅう)というニンニクや生姜などを皮膚の上に置き、その上にお灸を置いて燃やすなどといった方法があります。

江戸時代の人がやったのは直接灸と言って熱いお灸を直接皮膚の上に乗せてお灸をするので熱くやけどになる。

僕が、鍼灸始めたばっかりの時は、まだ明治時代の人が治療をしに来ていて、背中にすごいやけどの痕が残っている人をよく見かけましたね。

今ではそういった治療はほとんどないですが、細々と続けられています。

実際に、台座灸がどういうものかと言うとこのような種類があります。

こちらはカマヤという会社が出してるものです。大半はこういった、丸いものの上にお灸が乗っているという形になります。一番ポピュラーなのがせんねん灸ですね。

これは僕たちが自分達で原材料から選び、企画販売しているお灸になります(下)。

なぜお灸を、わざわざ自分たちで作る必要があったかというと、今はもうお灸の種類が沢山ありますが、僕が開業した20年ぐらい前は、患者さんに台座灸を薦めると熱いものしかなかった。

そうすると皆さん、足に水ぶくれができちゃって、やけどになったり、中国製の質が悪いものですと、パチパチって燃えている途中で、灰が落ちてシーツが焦げてしまうなどということがあったので、もう少し良いものを、自分達で作っちゃおう、ということで、作ることにしました。

妊活にはできるだけ農薬不使用で安心できるお灸を

私たちのお灸は、ヨモギの芯のところを少なくして、ふわふわのところを増やすと煙が少なくで煙も黒くなく、白い煙で香りも良いですね。

 中国産のヨモギから農薬が検出された件がありましたので、品質の良いものにこだわって使うということが大切です。やっぱり妊娠中や、妊娠したい人が使うので農薬吸い込んだりして、赤ちゃんに影響があったら怖いじゃないですか。

できるだけそういったものが排除できるように、天然の無農薬のものを使う。あと大切なのがさっき言ったやけどにならないっていうことと、熱すぎないこと。

当院のお灸は大体41度ぐらいで、熱いという方がいるんですよ。だからそういう方はちょっとずらして使ってくださいと言っています。大切なのはその香りが、お灸をして心地リラックスできる一日の終わりにお灸をしようかな、と、いった気持ちで使っていただけるのが一番良いと思っているため、そういったことを意識して作っております。

妊活でお灸って本当に効果があるの?

では、お灸をすると本当に効果があるのかということですが、どういう風に判断するのかというと、さきほど言った排卵前のポイントです。排卵前で足の3つのツボにお灸をする前にまずはバックベンドしてもらいます。(下・左写真)前屈でも柔軟性が増す人もいます。

そして、足に6箇所お灸をした後に、もう一回バックベントするこれぐらい曲がります(下・右写真)。お灸の効果があんまり感じられないという方はこういった形で、自分で、お灸前・後の写真を撮れば、お灸がちゃんと効いてるのかどうかが分かります。

体外受精などをしていると、すごく最先端のことをやっているので、お灸のような、アナログなことって、効くのかな?なんて皆さん思ってしまうと思うのですが、すごく熱く感じないとか、なんか効いてる感じがしなくても、ちゃんとこのような比較をすると、体が柔らかくなって血流が良くなって、温まっているいうのが分かると思います。

体を暖めたりリラックスするというのがすごく大切です。

お灸を始める前に医療機関の不妊検査を終えておくのが大切

僕たちの鍼灸では「心と体を温める」ということをミッションにしています。

なぜかというと、病院の数が増え、医療が進展・進歩しても、やっぱり健康に不安を抱えている人が、凄く沢山います。リラックスする時間だったり、自分で体を温めるっていうことが、すごく大切なので、それも含めてをお灸を患者の皆さまに使って欲しいということで普及活動しています。

ただこれは動画を見ている皆さんにもお伝えしたいのですが、お灸を始める前ですとか妊活を始める場合は、やはりまず医療機関に、できれば、カップルで妊娠できない原因がないかどうか、お灸を始める前に、是非一通りの検査を終わらせるということがすごく大切だと思います。

男性が検査をしないと、女性が無意味な検査を繰り返すことも

検査をしていないと、時間だけが過ぎていく、ということもあるので、まず検査を是非してください。あとは男性の検査が実は一番簡単なので、男性の検査を先にできれば男の人はお願いします。かっこいい男は自分が先にするということです。女性の場合は調べるものが血液検査で色々なことを調べなければいけないのです。男性は精液検査で精子がいるかいないか。元気か元気じゃないか。まずはそれだけやっていただくと、女性が無意味な検査をする必要がなくなるのでやってください。

やはり病院に行くというのは、男性も女性も、勇気がいることだと思うんですね。でも、できるだけ早く受診するようにしてください。

お灸をする上での注意事項って?

お灸をする上で気を付けなきゃいけないことがいくつかあります。やっぱり火を使うのでやけどになる恐れがあるのでそこは注意をして行ってください。妊娠中の場合は鍼灸師や医師に、ちゃんと相談をして行なうことが大切です。まずそこが一番大切だと思っております。

お灸は、プレコンセプションケアということで考えると、どこに当たるのか考えてみます。鍼灸やサプリメントは統合医療にあるんですけど、先ほど述べたように、お灸は江戸時代から日常生活の中に組み込まれていた民間医療なので、もし皆さんが始められるようでしたら、毎日やる一つの習慣として、取り入れていただけると非常によろしいのかなと思います。

 お灸は日々の習慣化で取り入れて

お灸をするだけで妊活に対して非常にいい効果が見込めるんじゃないのかなという風に思います。さっき言った血流が良くなったり免疫が調整されたり、リラックス効果があるのでそれが結果的にはホルモンのバランスが良くなることに繋がります。血流が良くなる、子宮の血流が良くなったりすることもあるでしょう。

免疫の問題や本当に、様々な良いことがありますので、ぜひ毎日、自分の生活の中に組み込んでほしいですね。お灸もそうですが、基本中の基本はやはり、健康的な生活を送るということになります。

睡眠が不調を取り除く鍵。夜のスマホは要注意

一番大切なのは、睡眠ですね。睡眠不足の人が非常に多い。5時間、6時間しか睡眠をとっていない人がいるので、睡眠を十分取るだけで疲れは取れますし、首が痛い、肩が痛い、こりなど、よく眠るだけで良くなりますので、ぜひ寝る前にお灸をして、ぐっすり寝て、次の日、元気に起きて仕事に行く、もしくは運動する、そういった形で使っていただければいいのかなというふうに思います。

また、生活習慣を見直しましょう、ということでこれ毎回皆さんにお伝えしてるんですけども、ウォーキングですね。できれば毎日30分で日光にできるだけ当たるようにする。また、スマホは寝る直前まで見ていると、頭が覚醒したままになってしまうので、できるだけ睡眠の1時間前は控えるということですね。

お灸の素朴な疑問について、いつやる?何回までOK?

お灸をする上でよく患者さんからいただく質問をいくつか答えたいと思います。

「お灸はいつを行うのがいいでしょうか」

1番しやすいリラックスできるような時間にしてください。いつでもいいですよっていうふうにお答えしています。朝でもいいです夜でもいいですし、一番お灸がしやすい時間にしてくださいということです。

「お灸は一日何回までやっていいですかとか」

何個まで置いていいですかってよく言われるんですけども、最初に始める時はね1個2個とか初めて沢山すると疲れちゃうと思うので6個〜8個を1つ目安にして1日何回やってもいいですが、3回ぐらいが限度なのかなという風に思っています。

「熱さは我慢した方がいいですか」

熱さは我慢しないでください。我慢し過ぎるとやけどになります。やけどをすると治るのも大変ですし、皮膚に後が残ってしまいますので、我慢はしないということです。

要するに我慢すればするほど効くんですか、っていうことはないです。心地よいリラックスできる熱さでしていただくのが一番いいですね。

「煙は体に悪くありませんか」

お灸には精油に入ってるリラックス成分が燃えるので、リラックスできるはずなんですけどやはりそうは言ってもね、匂いが苦手っていう人は、煙の出ないタイプもありますので、そういったものを使ってください。

「不妊治療と同時にお灸をしても大丈夫ですか」

不妊治療を行っていても毎日お灸をしても大丈夫です。
お灸の基本をお話しさせていただきました。無理なく生活にお灸を取り入れて、医療とセルフケアの両輪で体のケアをしていっていただければと思います。

プロフィール

徐大兼(じょ・たいけん)
鍼灸師/日本不妊カウンセリング学会 認定 不妊カウンセラー/アキュラ鍼灸院 院長 https://ninkatsu-ayumi.com/facility/629/
「こころもからだも温める」
開院から20年、鍼灸と独自のアキュラメソッドでこころとからだを整え、お一人おひとりが持つ妊娠するチカラを最大限に引き出す鍼灸治療を目指しています。一人で悩まれている方、一緒にお悩みの解決をしていきましょう!
◾️東尾理子主催「妊活研究会」

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