妊活成功の鍵は「睡眠」にあり!ご夫婦で取り組む睡眠の質と時間の最適化ガイド

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2025.11.05

心理師

妊活成功の鍵は「睡眠」にあり!ご夫婦で取り組む睡眠の質と時間の最適化ガイド

「赤ちゃんが欲しい」と願う夫婦にとって、バランスの取れた食事や適度な運動が大切なことはよく知られています。同時に、それ以上に重要かもしれないのが「睡眠」です。

一見、関係ないように思えるかもしれませんが、睡眠の質と時間は、女性の排卵や卵子の質、男性の精子の状態、そして妊娠を維持するためのホルモンバランスに深く関わっています。

ここでは、妊活と睡眠の科学的な関係性を解き明かし、夫婦で今日から実践できる睡眠改善の具体的な方法をご紹介します。

なぜ妊活に質の良い睡眠が必要不可欠なのか?


睡眠は、単なる休息ではありません。私たちの体が妊娠に向けて最適な状態を整えるための、とても重要な時間です。

ホルモンバランスを整える「睡眠」の力

妊娠は、様々なホルモンが絶妙なバランスで連携し合って成立します。妊娠に必要なホルモンは、主に睡眠中に分泌され、そのバランスが整えられます。

  • メラトニン: 「睡眠ホルモン」として知られるメラトニンは、強力な抗酸化作用を持ち、卵子を活性酸素のダメージから守る働きがあります。質の良い睡眠によって十分に分泌されるメラトニンは、卵子の質の向上に直接的に貢献すると考えられています(※1)。


  • 成長ホルモン: 深い睡眠中に分泌され、細胞の修復や再生を促します。質の良い卵子や精子を育み、子宮内膜を良好な状態に保つためにも不可欠です。


  • レプチンとグレリン: 食欲をコントロールするホルモンです。睡眠不足になると、食欲を高める「グレリン」が増え、食欲を抑える「レプチン」が減ってしまいます。これにより、肥満やインスリン抵抗性を引き起こし、排卵障害のリスクを高める可能性があります。

睡眠は卵子と精子の質を高める

質の高い睡眠は、女性の卵子だけでなく、男性の精子の質にも影響を与えます。

睡眠不足は体内の酸化ストレスを増加させますが、これは卵子の老化を促進する大きな原因です。十分な睡眠は、この酸化ストレスを軽減し、若々しく質の高い卵子が育つ環境を整えます。

男性においても、睡眠時間と精子の質には密接な関係があります。後の章で詳しく解説しますが、短すぎる睡眠も長すぎる睡眠も、精子の数や運動能力に悪影響を及ぼすことが分かっています(※2)。ご夫婦そろって睡眠時間を見直すことが、妊活成功への近道と言えるでしょう。

妊娠の土台となる「体内時計」の重要性

私たちの体には、約24時間周期でリズムを刻む「体内時計(サーカディアンリズム)」が備わっています。この体内時計は、睡眠と覚醒のサイクルだけでなく、血圧、体温、そしてホルモンの分泌までコントロールしています

夜更かしや不規則な生活によって体内時計が乱れると、生殖機能にも乱れが生じます。月経不順や排卵障害は、体内時計の乱れが原因の一つであることも少なくありません。

妊娠しやすい体づくりのためには、この体内時計を正常に保つことが基本となります。

妊活に最適な睡眠時間とは?


では、具体的にどのくらいの睡眠時間を確保すれば良いのでしょうか。

理想の睡眠時間は夫婦で「7〜8時間」!?

複数の研究により、妊活中の女性にとって理想的な睡眠時間は「7〜8時間」であることが示唆されています(※3)ある研究では、睡眠時間が7〜8時間の女性が最も妊娠率が高く、それより短い場合や、長すぎる(9時間以上)場合では、妊娠率が低下する傾向が見られました。

そして、この「7〜8時間」という睡眠時間は、男性にとっても同様に重要な時間です。研究によると、男性の睡眠時間と精子の質には「U字型」の関係があり、短すぎても長すぎても質が低下する傾向が示されています

特に、7時間から7.5時間が精子の状態が最も良好になるスイートスポットであるという報告もあります(※2, ※4)

9時間以上の長すぎる睡眠は、かえって精子の数や運動率を低下させる可能性が指摘されているため、ご夫婦そろって「7〜8時間」を目安にすることが理想的と言えるでしょう。

「睡眠のゴールデンタイム」の真実

「夜22時から深夜2時はゴールデンタイム」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、近年の研究では、特定の時間帯に眠ることよりも「眠り始めの最初の深い睡眠」が最も重要であるとされています。

大切なのは、何時に寝るかよりも、毎日なるべく同じ時間に就寝・起床し、規則正しい睡眠リズムを保つことです。これにより体内時計が整い、ホルモン分泌も安定します。

今日から実践!睡眠の質を劇的に高める4つの習慣


最適な睡眠時間を確保すると同時に、「睡眠の質」を高める工夫を取り入れましょう。ここでは、生活サイクルに合わせた具体的な方法をご紹介します。

朝の習慣:体内時計をリセットする

  • 朝日を浴びる: 起床後、15分ほど太陽の光を浴びましょう。光の刺激が体内時計をリセットし、夜の自然な眠気を誘うメラトニンの分泌準備を始めてくれます。

  • 朝食をしっかり摂る: 朝食は、体に一日の始まりを告げるスイッチです。特に、メラトニンの材料となるトリプトファンを多く含む、バナナ、乳製品、大豆製品などを摂るのがおすすめです。

日中の習慣:夜の快眠を準備する

  • 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を日中に行うと、寝つきが良くなり、深い睡眠が得られやすくなります。ただし、就寝直前の激しい運動は体を興奮させてしまうため避けましょう。

  • ストレスマネジメント: 妊活中は不安やストレスを感じやすいものです。日中に趣味の時間を作ったり、軽いストレッチや瞑想を取り入れたりして、心身をリラックスさせる時間を作りましょう。

夜の習慣:心と体をリラックスさせる

  • 就寝3時間前までに夕食を済ませる: 胃の中に食べ物が残っていると、消化活動のために体が休まらず、睡眠の質が低下します。

  • ぬるめのお湯で入浴する: 就寝の90分前くらいに、38〜40℃のぬるめのお湯に15分ほど浸かると、体の深部体温が一旦上がり、その後に下がっていく過程で自然な眠気が訪れます。

  • リラックスできる環境作り: 心地よい音楽を聴いたり、アロマを焚いたりするのも効果的です。ラベンダーやカモミールなどの香りは、心身をリラックスさせるのに役立ちます。

寝室の環境:最高の睡眠空間を作る

  • 光を遮断する: 寝室はできるだけ真っ暗にしましょう。遮光カーテンを利用したり、電子機器の光が目に入らないようにしたりする工夫が大切です。

  • 温度と湿度を最適化する: 快適な睡眠のためには、室温は25〜26℃、湿度は50〜60%が理想とされています。

  • 自分に合った寝具を選ぶ: 体に合ったマットレスや枕を選ぶことも、睡眠の質を左右する重要な要素です。

これはNG!睡眠の質を下げてしまう避けたい行動


良質な睡眠を得るためには、就寝前に避けるべき行動があります。

  • 寝る前のスマートフォン、PC操作: スマホやPCが発するブルーライトは、脳を覚醒させ、メラトニンの分泌を抑制してしまいます。就寝1〜2時間前には使用を控えるのが理想です。

  • カフェイン、アルコールの摂取: コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには覚醒作用があります。また、アルコールは寝つきを良くするように感じますが、実際には深い睡眠を妨げ、夜中に目が覚める原因となります。

  • 就寝直前の食事: 前述の通り、消化活動が睡眠を妨げます。

  • 熱すぎるお風呂: 42℃以上の熱いお湯は交感神経を刺激し、体を興奮状態にしてしまうため逆効果です。

まとめ

妊活における睡眠の重要性について、ご理解いただけたでしょうか。最後に、大切なポイントをまとめます。

  • ●睡眠はホルモンバランス、卵子・精子の質、体内時計に深く関わる。
  • ●理想の睡眠時間は夫婦そろって「7〜8時間」。時間だけでなく「質」も重要。
  • ●朝・昼・夜の習慣を見直し、最高の睡眠環境を整えることが大切。
  • ●寝る前のスマホやカフェインなど、睡眠の質を下げる行動は避ける。

妊活は、時に先が見えず不安になることもあるかもしれません。しかし、睡眠の改善は、今日からすぐに取り組める、最も身近で効果的な体質改善の一つです。

完璧を目指す必要はありません。まずはご夫婦で話し合い、できそうなことから一つずつ試してみてください。規則正しく、質の良い睡眠を心がけることが、未来の赤ちゃんへとつながる確かな一歩となるはずです。

※参考文献

1. Fernando, S., & Rombauts, L. (2014). Melatonin: shedding light on infertility? A review of the recent literature. Journal of ovarian research, 7(1), 98.
2. Liu, M. M., Liu, L., Bu, L. L., Pan, Y. N., & Yang, Y. (2017). Sleep Deprivation and Late Bedtime Impair Sperm Health Through Increasing Antisperm Antibody Production: A Prospective Study of 981 Healthy Men. Medical science monitor : international medical journal of experimental and clinical research, 23, 1842–1848.
3. Park, I., Sun, H. G., Lee, J., Kim, Y. J., Lee, J. E., & Jeong, K. (2018). The success of IVF treatment in patients with sleep disturbances. Frontiers in Endocrinology, 9, 303.
4. Chen, H. G., et al. (2016). The association between sleep duration and semen quality in a Chinese population. Sleep and Breathing, 20(3), 1017-1023.

記事監修

LIB Laboratory 代表

今井さいこ

1979年6月14日生まれ 公認心理師睡眠指導者 自らの手で人生の選択をしていく女性のメンタルサポートをしています。 心理学×睡眠マネジメントの知識とスキルを使って、お悩みの解決を一緒にしていきます。 ◆オンラインカウンセリングラボ LIB Laboratory代表 https://www.liblaboratory.com/ <保有資格> 公認心理師(国家資格) 日本心理学会認定心理士 ベスリクリニック認定睡眠指導者 サンカラ認定

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