【助産師監修】不妊治療で双子が欲しい?双胎妊娠(多胎妊娠)の確率と高齢出産のリスク

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2026.04.17

基礎知識

【助産師監修】不妊治療で双子が欲しい?双胎妊娠(多胎妊娠)の確率と高齢出産のリスク

「長く不妊治療を頑張っているからこそ、一度の妊娠で双子を授かれたら嬉しい」
「年齢的にも、早くきょうだいを作ってあげたい」
体外受精や排卵誘発剤などの不妊治療に取り組む中で、そんな風に双子の妊娠を夢見る方は少なくありません。
確かに、不妊治療では自然妊娠に比べて双子を授かる確率が高くなる理由が存在します。
しかし、高齢での双胎妊娠は「ハイリスク」となる現実も。

 

本記事では、不妊治療で双子ができやすい理由や実際の確率、そして「高齢出産×双子」に潜むリアルなリスクと産後の現実について、最新のデータをもとにわかりやすく解説します。 助産師・吉田敦子先生の監修のもと、専門的な知見も交えてお届けします。 妊娠・出産をより安心して迎えるために、ぜひ最後までご覧ください。

不妊治療で双子(双胎妊娠)ができやすいのはなぜ?

排卵誘発剤による「多排卵」の影響

不妊治療において、排卵障害がある場合や妊娠率を上げるために「排卵誘発剤」を使用することがあります。
通常、女性の体では1回の月経周期につき1つの卵子が排卵されますが、排卵誘発剤で卵巣を刺激すると、複数の卵胞が育って同時に排卵されることがあります。

 

このように複数の卵子が排卵(多排卵)され、それぞれに精子が受精して着床した場合、双子(二卵性双生児)や三つ子などの多胎妊娠となる確率が自然妊娠よりも高くなります。

 

体外受精(IVF)における「胚移植のルール」と双胎妊娠の関係

体外受精とは、卵子を取り出して体外で受精させ、受精卵(胚)を子宮に戻す治療法です。
この時、妊娠率を上げるために複数の胚を子宮に戻すと、双子を授かる確率が高まります。

 

現在、日本産科婦人科学会のルールでは、多胎妊娠を防止するために「子宮に移植する胚は原則1個」と定められています。
しかし、女性が35歳以上の場合や、2回以上続けて妊娠不成立だった場合などに限り、例外として2個の胚移植が許容されています(※1)。
そのため、2個の胚を移植して両方が着床した結果、双胎妊娠となるケースがあります。

 

1個の胚移植でも、双胎になる可能性が

双胎を望んでいない場合でも、体外受精では、1個の胚を移植して一卵性双胎(双子)になることもあります。
その確率は、 自然妊娠と比較して約2〜10倍高いと報告されています(※2)。
一卵性双胎の場合は、2児が胎盤を共有するため、双胎間輸血症候群の危険もあり、胎児の生命に関わるリスクとなります。
そのため、妊娠中の管理が、都道府県に1~2か所しかない総合周産期母子医療センターでなければならない場合もあります。

 

【データで見る】不妊治療による多胎妊娠の確率

日本産科婦人科学会が公表した最新のデータ(2022年版)によると、現在の生殖補助医療(体外受精など)による多胎妊娠の確率は3.09%となっています(※3)。

 

かつては移植する胚の数に厳格な制限がなく、15%〜20%の高い確率で多胎妊娠が発生していましたが、原則1個とするルールが設けられてからは約3%前後で推移するようになりました。

 

一方で、体外受精ではなく、排卵誘発剤を用いた一般不妊治療(タイミング法や人工授精)では、薬の種類によっては多胎妊娠の確率が10%〜20%にのぼることもあり、コントロールが難しい側面があります。

 

「一度に2人産める」という夢と、双胎妊娠の現実

年齢的な焦りから「双子が欲しい」と願う心理

不妊の検査や治療を受ける夫婦は増加傾向にあり、晩婚化などの影響で年齢が高くなっている現状があります。
加齢とともに妊娠する力は低下し、ART(生殖補助医療)においても年齢を重ねるごとに妊娠率は低下していきます。

 

「早くきょうだいを作ってあげたい」「年齢的にもう何度も治療を繰り返すのはつらい」という焦りから、2個の胚移植を希望し、「一度の妊娠で2人産めたら夢のよう」と双子を望む声は少なくありません。

 

日本産科婦人科学会が「多胎妊娠の防止」を推奨する理由

しかし、医療現場では多胎妊娠は「喜ばしいハプニング」ではなく、「厳重に管理すべきハイリスク妊娠」として扱われます。
日本産科婦人科学会が原則として単一の胚移植を推奨しているのは、多胎妊娠が母体と胎児の命に関わる重篤な合併症を引き起こす危険性が非常に高いためです(※1)。

 

高齢出産×双子はどうなる?知っておくべき母子へのリスク

早産・低出生体重児・NICU(新生児集中治療室)入院の確率

双胎妊娠で最も頻度が高いリスクが「早産」です。

日本産科婦人科学会のデータ(2006〜2016年)によると、双胎妊娠における37週未満の早産率は約50%、32週未満は約6%、28週未満は約2%に上ります(※4)。

さらに国立成育医療研究センターの直近のデータ(2018〜2022年)でも、双胎妊娠の37週未満の早産が44%となっており、単胎での早産の頻度よりも非常に高いことが分かっています(※3)。

子宮が限界以上に引き伸ばされるため、正期産(37週)を待たずに陣痛が来たり、破水したりすることが多いのです。早く生まれた赤ちゃんは低出生体重児となりやすく、NICU(新生児集中治療室)への入院が必要となるケースが多くなります。

早産で生まれた子の健康は?

早産児は「体外で生きる準備」が整う前に生まれたため、本来お腹の中にいるはずだった期間を医療的なサポートを受けながら、過ごす必要があります。
「体外で生きる準備」とは、臓器の働きの成熟です。


呼吸、体温調節、哺乳と消化吸収、免疫系、脳神経の働きが未熟なため、体外生活への適応力が、満期産児に比べて弱い状態です。


生まれた週数にもよりますが、人工呼吸器が必要になったり、哺乳ができないためチューブでミルクを胃まで届ける必要があったり、感染症にかかりやすい、腸管や脳に出血が起こりやすいなどの、健康上のリスクがあります。

 

母体への負担(妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスク)

不妊治療の背景には、女性の年齢が高いケースも多く見られますが、高齢での妊娠自体が一定のリスクを伴います。
そこに双子の妊娠が重なると、母体への負担はさらに大きくなります。

 

実際に、双胎妊娠では妊娠高血圧腎症の発症率は約3%程度と報告されています(※3)。
また、妊娠糖尿病についても、単胎妊娠に比べてリスクがやや高くなるとされています(※3)。

 

これらが重症化すると、母体の安全を優先するために、予定より早く分娩(緊急帝王切開など)が必要になることもあります。
その結果、突然の入院や安静管理が必要となり、これまで通りに仕事や日常生活を続けることが難しくなるケースも少なくありません。

 

双胎妊娠におけるお産(帝王切開になる可能性と分娩時の出血)

双胎妊娠のお産は、赤ちゃんの位置や母体の状態を考慮し、約7〜8割が帝王切開となります。
また、子宮が極度に引き伸ばされているため、出産後に子宮がうまく収縮せず、大量出血(弛緩出血)を引き起こすリスクが高く、場合によっては輸血が必要になるなど、文字通り命がけのお産となります。

お産と産後の育児を見据えて

妊娠期からの徹底したハイリスク管理の必要性

不妊治療は、肉体的・精神的負担が大きく、通院によるストレスも伴います。
ようやく妊娠に至った後も、双胎妊娠であればより一層のハイリスク管理が求められます。


万が一の早産や合併症に備えて、NICUが完備された周産期母子医療センターなどの高次医療機関での健診・出産が必須となります。

双子育児の過酷さと、周囲のサポート体制の重要性

退院後の双子の育児は、想像以上に大変に感じる場面も少なくありません。
授乳、おむつ替え、寝かしつけがすべて2倍になります。

実際に、約10〜15%の方が産後にメンタル不調(マタニティーブルーや産後うつ)を起こすと言われています(※3)。


抑うつ気分、不安、焦燥感、不眠などの症状がみられ、ときには自責や育児への不安・恐怖を訴える方もいます(※3)。


無事に出産して終わりではなく、夫婦はもちろん、両親などの家族や、地域のファミリーサポート、ベビーシッター、家事援助のヘルパーなど、周囲のサポート体制を妊娠中から構築しておくことが非常に重要です。

安全な妊娠・出産(母子ともに健康であること)を第一に


不妊治療のゴールは、妊娠することだけではなく、無事に赤ちゃんを迎え、安心して育児をスタートできることにあります。

医療技術の進歩によって選択肢は広がっていますが、双胎妊娠には一定のリスクが伴うことも、あらかじめ知っておきたい大切なポイントです。 とはいえ、実際の治療では一人ひとり状況が異なり、理想通りに進まないこともあります。

だからこそ、医師としっかり相談しながら、その時々で納得できる選択を重ねていくことが何より大切です。 ご自身のペースで、無理のないかたちで進んでいきましょう。 不妊治療の最終的な目的は、単に妊娠することではなく、安全に元気な赤ちゃんを抱いて、幸せな育児の生活を送ることです。

【参照データ】
※1:公益社団法人 日本産科婦人科学会「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」
※2:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24722789/
※3:公益社団法人 日本産科婦人科学会「ARTデータブック」
※4:国立成育医療研究センター「多胎妊娠について」周産期登録データ(2006~2016年、2018~2022年)

 

監修

助産師

吉田敦子

赤ちゃんをお迎えする身体は、妊娠を継続していくカラダであり、出産し、育児をしていくカラダです。安心して赤ちゃんをお迎えできる身体は、楽な妊娠生活や安産、楽しい育児の生活につながります。助産師や医師をはじめとする妊娠出産育児の専門家たちへ、母子のフィジカルケアを20年にわたり伝えてきました。私と一緒に、ご自身のからだの変化を楽しみながら妊活ボディーメイクをしていきましょう!助産師・看護師(NPO)母子フィジカルサポート研究会代表理事 / 認定講師トコカイロプラクティック学院 准講師 (整体師・RDM®プラクティショナー)
伝統医学応用研究所認定 フェミニンケアセラピスト母と子の整体院 Mommy&Baby 妊活ボディーメイクセラピスト助産師あつこのHP https://www.mommybaby-atsuko.com/

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