凍結融解胚移植は自然周期とホルモン補充周期のどっちがおすすめ?違い・メリット・向いている人をわかりやすく解説【前編】
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妊活お役立ち情報
目次
体外受精(IVF)で凍結した胚を戻す凍結融解胚移植では、子宮内膜を調整する方法が2つあります。自然周期とホルモン補充周期です。
先に結論から言うと、自然周期とホルモン補充周期のどちらが良いかは患者さんによって異なります。
近年では、自然周期の方が妊娠高血圧症候群などの周産期合併症が少ない可能性を示す研究が増えています。一方で、ホルモン補充周期は排卵障害や月経不順の方でも治療しやすく、移植日を調整しやすいという大きなメリットがあります。
そのため、どちらが優れているかではなく、年齢や排卵の状態、月経周期、ライフスタイルなどを考慮し自分に合った方法を選ぶことが重要です。
今回は前編として、
- ・自然周期とホルモン補充周期(HRT)の違い
- ・それぞれのメリット・デメリット
- ・どのような方に向いているのか
について分かりやすく解説します。

胚移植の方法は?
体外受精では、受精卵(胚)を子宮へ戻す治療を胚移植と呼びます。
胚移植には、大きく分けて次の2種類があります。
- ・採卵した周期にそのまま胚を戻す新鮮胚移植
- ・胚を一度凍結保存し、子宮内膜を整えてから移植する凍結融解胚移植
現在では多くの施設で凍結融解胚移植が主流となっています。
凍結融解胚移植では、胚を戻す前に子宮内膜を着床しやすい状態へ整える必要があります。その方法には、
- ・自然周期(Natural Cycle:NC)
- ・ホルモン補充周期(Hormone Replacement Therapy:HRT)
この2種類があります。
子宮はどうやって着床できるようになる?
自然周期とホルモン補充周期の違いを理解するには、まず自然妊娠で子宮内膜がどのように着床しやすい状態へ変化するのかを知っておくことが大切です。
妊娠が成立するためには質の良い胚があるだけでは十分ではありません。子宮内膜が胚を受け入れられる状態(着床の窓)が合っていることも非常に重要です。
この準備を行っているのが、卵巣から分泌される2つの女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンです。

① 子宮内膜を育てるエストロゲン
月経が始まると、卵巣では卵胞が少しずつ成長します。卵胞が育つにつれてエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が増え、子宮内膜は少しずつ厚くなっていきます。
② 着床しやすい状態へ変えるプロゲステロン
卵胞が十分に成熟すると排卵が起こり、卵胞は黄体へ変化します。黄体から分泌されるのがプロゲステロン(黄体ホルモン)です。
プロゲステロンは厚くなった子宮内膜を、胚が着床しやすい状態へと変化させます。
子宮内膜を「ベッド」にたとえると、エストロゲンはベッドを厚くやわらかく整え、プロゲステロンは赤ちゃんが安心して眠れるようにシーツや寝具を整える役割を担っているイメージです。

自然周期とホルモン補充周期(HRT)の違いは?
凍結融解胚移植では、子宮内膜を胚が着床しやすい状態に整える必要があります。
自然周期とホルモン補充周期(HRT)は、どちらも子宮内膜を整える方法ですが、自然周期はご自身のホルモンを利用し、ホルモン補充周期(HRT)は薬でホルモン環境を整えるという違いがあります。
ホルモン補充周期(HRT)とは?
ホルモン補充周期(HRT)は、エストロゲン製剤とプロゲステロン製剤を使って子宮内膜を整える方法です。
一般的な流れは次のとおりです。
- 1.エストロゲン製剤で子宮内膜を厚くする
- 2.子宮内膜が十分に厚くなったらプロゲステロン製剤を開始する
- 3.胚の発育段階に合わせて胚移植を行う
この方法では、
- ・卵胞が育たない
- ・排卵しない
- ・黄体が形成されない
という特徴があります。

そのため、妊娠が成立した後も、胎盤が十分に機能するまでエストロゲンとプロゲステロンを補充し続ける必要があります。
ホルモン補充周期の特徴
ホルモン補充周期には、次のようなメリットがあります。
- ・移植日を計画的に決めやすい
- ・排卵障害や月経不順でも治療しやすい
- ・周期キャンセルが少ない
一方でデメリットもあります。
- ・毎日薬を使用する必要がある
- ・妊娠後もしばらくホルモン補充が必要
- ・黄体が形成されない
近年では、この黄体が形成されないことが妊娠高血圧症候群などの周産期合併症との関連で注目されています。
※この点については、後編で最新の研究をもとに詳しく解説します。
自然周期とは?
自然周期とは、自分自身のホルモン分泌を利用して子宮内膜を整える方法です。
自然妊娠と同じように卵胞の発育 → 排卵 → 黄体形成という流れを利用するため、自然妊娠に近いホルモン環境で胚移植を行えることが特徴です。

自然周期でも薬を使うことがある?
「自然周期だから薬は使わないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、実際には必要に応じて薬を併用することがあります。
① hCG注射
卵胞が十分育ったタイミングでhCGを投与し人工的なLHサージを引き起こします。その結果、移植日の調整がしやすくなり、排卵済みによる移植キャンセルを避けることができます。
② 黄体ホルモン補充
排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)を補充する方法です。自然周期では自分の黄体からプロゲステロンが分泌されますが、追加でプロゲステロン製剤を使うことで黄体機能を補助し、子宮内膜が着床しやすい状態に保たれることを期待します。
自然周期の特徴は?
自然周期は、すべての患者さんに適しているわけではありません。
例えば、
- ・子宮内膜が厚くなりにくい
- ・排卵障害や月経不順がある
- ・黄体機能が十分ではない
このような場合には、自然周期だけでは十分な子宮内膜が整いにくいことがあります。
どのような方に向いている?
自然周期が向いているのは、月経周期が比較的安定していて排卵がある方、できるだけ自然に近いホルモン環境で移植したい方、お薬の使用をできるだけ少なくしたい方です。また、受診日が多少前後しても対応しやすい方にも向いています。
一方で、ホルモン補充周期(HRT)が向いているのは、月経不順や排卵障害がある方、移植日を計画的に決めたい方、自然排卵のタイミングが読みづらい方です。お仕事や通院の予定を立てやすくしたい場合にも選択しやすい方法です。
どちらが合っているかは、妊娠率だけでなく、排卵の有無、子宮内膜の育ち方、通院しやすさ、これまでの治療経過などを総合的にみて判断します。
まとめ
自然周期とホルモン補充周期のどちらが優れているかは、一概には決められません。
自然周期は、妊娠高血圧症候群などの周産期予後の改善が期待される一方で、ホルモン補充周期は移植日を調整しやすく、排卵障害や月経不順の方でも治療を進めやすいというメリットがあります。
また、ホルモン補充周期は長年にわたって広く行われてきた方法であり、多くの治療実績と豊富なデータが蓄積されています。
自然周期とホルモン補充周期には、それぞれにメリット・デメリットがあります。
年齢や排卵の状態、卵巣機能、ライフスタイルなども考慮しながら、自分に合った移植方法を選ぶことが大切です。
担当の医師と十分に相談し、それぞれの特徴を理解したうえで納得できる治療方法を選びましょう。
後編では、妊娠率や妊娠高血圧症候群などの周産期予後について、自然周期とホルモン補充周期を詳しく比較して解説します。
参考資料
- Murat Erden, et al. Revisiting natural cycle frozen embryo transfer: a systematic review and meta-analysis. Human Reproduction Update. 2026.
- Zhang Y, et al. Preparation of the endometrium for frozen embryo transfer: an update on clinical practices. Reprod Biol Endocrinol. 2023;21(1):52.
- 久光製薬株式会社. ARTにおける凍結融解胚移植とホルモン補充療法. https://www.hisamitsu-pharm.jp/category/obstetrics/est/&medical=1
本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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