卵巣PRP療法とは?「AMHが上がる」「採卵数が増える」は本当?

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2026.10.12

不妊治療

卵巣PRP療法とは?「AMHが上がる」「採卵数が増える」は本当?

「AMHが低いと言われた」
「採卵したが卵子が少ない」
「卵巣刺激をしても、思うように卵胞が育たない」

このように、卵巣刺激をしても卵子が育ちにくい場合には、卵巣機能が低下している可能性があります。卵巣機能が低下している症例で、近年注目されている治療の一つに「卵巣PRP療法」があります。卵巣PRP療法は、患者さん自身の血液から作製した多血小板血漿(PRP)を卵巣内に投与し、卵巣内環境や卵巣反応の改善を目指す治療です。

結論からお伝えすると、これまでの研究では、PRP投与後に抗ミュラー管ホルモン(AMH)の上昇、胞状卵胞数(AFC)の増加、採卵卵子数の増加などを報告した研究がある一方で、研究によって結果にはばらつきがあり、妊娠率や生児獲得率まで含めて一貫した効果が確認されているわけではありません。

この記事では、

  • ・卵巣PRP療法とはどのような治療なのか
  • ・なぜ卵巣機能の改善が期待されているのか
  • ・AMHやAFCは本当に改善するのか
  • ・どのような患者さんで検討されているのか

について、現在の研究結果をもとに詳しく解説します。

卵巣PRP療法とは?

PRPは「Platelet-Rich Plasma(多血小板血漿)」の略称です。

患者さん自身の血液を採取し、遠心分離などによって血小板を多く含む血漿を取り出して作製します。

PRPには、PDGF、VEGF、TGF-β、EGF、IGFなど、さまざまな成長因子やサイトカインが含まれています。卵巣PRP療法は、PRPを卵巣に直接投与することで、卵巣予備能の改善を期待して行う治療です。

なぜ卵巣PRPが注目されているの?

これまでの不妊治療では、卵巣予備能が低下している場合、残っている卵胞をできるだけ有効に活用するために、卵巣刺激や培養方法を工夫しながら治療を行ってきました。

一方で、卵巣PRPは卵巣そのものに直接アプローチし、卵巣内の環境改善を目指す点が特徴です。
PRPに含まれる成長因子によって、

  • ・血管新生を促進する
  • ・細胞の増殖や生存をサポートする
  • ・組織の修復を促す
  • ・炎症や免疫反応を調整する

    といった作用が期待されています。


そのため、卵巣PRPは「新しい卵子を作る治療」というよりも、卵巣内に残っている卵胞が育っていく環境を整える治療と考えると理解しやすいでしょう。

ただし、こうした作用がヒトの卵巣で実際にどこまで起こっているのかについては、まだ十分に解明されていません。

卵巣PRPの有効性はどこまで確認されている?

ここが、卵巣PRPを検討するときに最も気になるところだと思います。

これまでの研究では、主に

  • ・卵巣予備能低下(DOR)
  • ・卵巣反応不良(POR)
  • ・早発卵巣不全(POI)
  • ・早発閉経や閉経

    などの症例で研究されています。


Meloらの報告では、卵巣予備能が低下した症例をPRP投与群と対照群に分けて比較したところ、PRP群ではAMHやAFCの増加、FSHの低下など、卵巣機能の改善がみられたのに対し、対照群では明らかな改善はみられませんでした。

また、その後の臨床妊娠率もPRP群で23.9%、対照群で5.4%とPRP群で高かったことが報告されています。


Yigit Cakirogluらの報告では、卵巣反応不良(POR)の症例に卵巣PRPを行ったところ、AMHやAFCの増加、FSHの低下がみられ、さらに採卵数も2.2個から3.4個へ増加しました。PRP投与後に体外受精を行った症例のうち、17.5%で妊娠が成立したと報告されています。


このような研究結果を見ると、「PRPによって卵巣機能が改善し、妊娠しやすくなるのでは?」と期待したくなります。

しかし、注意したいのは、卵巣PRPの効果はまだ研究段階にあるということです。


2025年に複数の研究をまとめたレビューでも、卵巣PRPは卵巣予備能低下(DOR)や早発卵巣不全(POI)に対する有望なアプローチとなる可能性が示されている一方で、研究ごとにPRPの調製方法や血小板の活性化方法、卵巣への投与部位、投与回数、治療後の評価時期などが異なっており、治療方法が十分に標準化されていないことが指摘されています。

卵巣PRPで押さえておきたいポイント

卵巣PRPは、卵巣機能の改善や採卵数の増加などが期待されている一方で、まだ研究段階の部分も多い治療です。

現在わかっていることと、治療を受ける前に知っておきたいポイントについて解説します。

期待できること

現時点で卵巣PRPに期待されている効果としては、主に以下のようなものが挙げられます。

  • ・卵巣機能の改善(AMHの増加、FSHの低下、AFCの増加)
  • ・体外受精の結果の改善(採卵数の増加、胚盤胞数の増加)
  • ・卵巣機能の改善を介した自然妊娠やARTによる妊娠率の改善


卵巣機能が低下し、これまでの治療だけでは十分な卵子を得ることが難しかった患者さん
にとって、今後の治療選択肢の一つとして期待されている治療といえます。

期待しすぎない方がよいこと

卵巣PRPによって、最終的な治療成績まで改善することが明らかになっているわけではありません。特に以下の点については、まだ十分なエビデンスがありません。

  • ・卵子の質が改善するのか
  • ・最終的な生児獲得率が向上するのか
  • ・長期的な安全性や、繰り返し投与した場合の安全性に問題がないのか
  • ・PRPの調製方法や投与量、投与方法など、どのような方法が最も適しているのか


また、卵巣PRPは卵巣に針を刺してPRPを直接注入する処置であるため、出血、疼痛、感染など、処置そのものに伴う一般的なリスクにも注意が必要です。

卵巣PRPを受ける前に考えておきたいこと

卵巣PRPは、誰にでも効果が期待できる治療ではありません。

年齢、月経状況、AMHやAFCなどの卵巣予備能だけでなく、これまでの採卵数、受精状況、胚の発育、妊娠歴など、これまでの治療経過も含めて総合的に判断することが重要です。

「採卵数を少しでも増やしたい」
「刺激への反応が改善するか見たい」
「他に有効な選択肢が少ない中で補助療法として検討したい」


何を目的にPRPを行うのかを明確にしたうえで、担当医と十分に相談して決めることが大切です。

まとめ

卵巣PRPは、低AMHや卵巣予備能低下に対して、卵巣そのものに働きかけるという新しい発想の治療です。

これまでの研究では、卵巣機能の改善だけでなく、採卵数の増加や自然妊娠、ARTによる妊娠につながったという前向きな報告もみられます。

ただし、研究ごとにPRPの調製方法や投与方法、対象となる患者さんなどが異なり、現時点ではエビデンスの質や一貫性に課題が残っています。


そのため、卵巣PRPを「最後の切り札」として過度に期待するのではなく、これまでの治療結果や卵巣の状態を踏まえて、「何を目的にPRPを行うのか」を明確にすることが大切です。


既存の卵巣刺激法や採卵方法、胚培養、移植方法などとあわせて、卵巣PRPを治療の中でどのように位置づけるのが適切なのか、主治医と相談しながら検討していくことが重要です。

参考:

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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