漢方で考える体質別の冷え対策!|漢方薬剤師・国際中医専門員 住吉忍
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妊活お役立ち情報
2023.11.21
東洋医学
漢方で考える体質別の冷え対策!|漢方薬剤師・国際中医専門員 住吉忍

今回は、株式会社ウィメンズ漢方代表、住吉忍さんから、「冷えを根本から改善する」というテーマでお話しをいただきました。漢方で考える体質別の冷え対策についてもお話いただきます。
冷えない体作りが必要な理由とは?
はじめにまず冷えない体作りが必要な理由についてお話をいたします。まず、「冷えていたら妊娠しない」というわけではないと思っています。
なぜなら、冷え性でいらっしゃる方でも、ご妊娠をされているケースを何度も経験をしていますし、「冬は手足がすごく冷たくて」と、ご相談をされている方であっても、しっかりと妊娠されていることがあります。つまり、冷えていたら絶対に妊娠しないということではないと思います。
どうすると、冷えない身体になるか、ということは勿論ですが、冷えてしまうということがどういった影響があるのか、それが何か妊娠に関わってくることがあるのであれば、そこは適切に対処していただいた方が良いと思いますので、その点についてお話をいたします。
冷えていると良くない理由1:血流悪くなり臓器に栄養が届かない
冷えているという状態は、血流が悪いということが併発して起こっている事がよくあります。血流が悪いというような状態になると、臓腑(ぞうふ)、これも漢方的な体の機能の話になりますが、臓器のことです。臓器に栄養や酸素が巡らないということが考えられます。基本的に栄養は血液に乗って巡り、酸素も同様に血液に乗って全身を巡っています。
血流が悪い、血が足りないという状態もそうですが、そういった状態になると栄養や酸素が巡りにくいということが起きてきます。
冷えていると良くない理由2:代謝が落ち、老廃物が溜まりがちになる
2つ目は、代謝が落ちてしまって老廃物が溜まりがちになるということが考えられます。
臓腑が冷えてしまっていると、本来の適切な働きができないので、例えば肝臓はデトックスをしてくれるような臓腑ですし、腎臓は尿を排出させたりしています。老廃物を出していく臓腑の代謝が落ちてしまうと冷えて、機能がしっかりと働かないという状態になり、老廃物が溜まってしまうことも出てきます。
冷えていると良くない理由3:痛みや下痢などの不調に直結してしまうことがある
例えば生理痛だったり頭痛と関節痛などの痛みに関しては、冷えているという状態で悪化しやすいという事ことも分かっています。どうしても冷えてしまうと下痢をする方もいらっしゃいますし、生理痛の時も温めると緩和するという方も多くいらっしゃいます。
また、ウイルス性の下痢であれば、冷えの状態がそこまで関係しないということもあるので、すべての痛み、下痢が該当するというわけではないですが、様々な不調が冷えによって症状が強く出てしまうことも考えられます。
また、冷えを改善することは、妊活に対してもプラスに影響していくということも十分考えられますので、冷えない身体作りを目指していただければいいかなと思います。
冷えを改善するには?温める。代謝を上げる
本日のキーワードをまずは2つご紹介します。
1つ目に「冷えは温めれば必ず改善ができます」。冷えているという状態というのはもちろんありますが、体が冷えてしまっている時にはお風呂でもストーブでも、こたつに入って温めていただくということでも良いので、まずは温めることをすれば、冷えの辛い症状は改善が出来ます。
しかし、冷えを根本から改善していくには代謝を上げていくことが必要になります。
冷えない身体を作っていくということです。
気力が充実していて血液、水分の巡りが良い身体の状態だと、代謝が良好になり、臓腑の働きが正常になって、ホルモンバランスを保ちやすい状態になります。
またしっかり筋肉をつけることで、代謝が上がっていくってこともあります。
冷えの原因を理解して必要な改善策をとろう
まずは冷えの原因を理解することが大切になります。
「冷える」と一言で言っても、実は冷えてしまう原因というのが人それぞれ異なっています。その個々の原因に応じた対応をしないと、冷えというのは改善できないので、ご自身の体が何が原因で冷えてしまっているのか、という点ををしっかりと掴んでいただく必要があります。
そこで漢方薬剤師から冷えを体質別でご紹介させていただきます。
①陽虚体質(ようきょたいしつ)
熱を生むエネルギーがないという方の体質になります。特にこのタイプの場合は下半身の冷えが強く、筋肉が少ないという方もいらっしゃいますが、この陽虚(ようきょ)というのはエネルギー不足です。
気虚(ききょ)という体質がちょっと発展していて、熱も生めないという体になっている場合が多いので、基本的に、ちょっと疲れやすいっていう状態で熱を生めず、元気がないというな状態に陥っていることが多いです。年齢を重ねるにつれて代謝が落ちていくことも、実はこの「陽虚」が進んでいているという捉え方になります。
赤ちゃんや、子供など、若い時は元気が充実していて、年齢を重ねるにつれてどんどんエネルギーが生み出せないというような状態になっている事があります。
②脾気虚(ひききょ)
脾胃(ひい)の働きが弱く陽虚に繋がりやすい状態。この脾胃というのは基本的には胃腸という風に読み替えていただいても大丈夫です。胃腸の働きが弱い方、そこからの栄養吸収がうまくいかないという方も多いですし、また水分代謝が低下してしまい、お腹がチャポチャポしていたり、下痢になりやすい、むくみやすいというの体質の方も多くいらっしゃいます。
水分代謝が低下して体の中に水分が貯留されている、浮腫んでいるような状態になると、基本的に水というのは冷たいものになりますので、それ自体が体を冷やす原因になってしまうこともあります。
また消化不良や、栄養がしっかり吸収できないという状態になると、なかなか熱を生むためのエネルギーを生み出すことができない状態になります。そして熱を生むエネルギーがない状態=陽虚につながりやすい、とも考えられています。
③血虚
血虚は、血液が不足して体を温める栄養素が足りない状態です。この血液、血虚というもの中の「血(けつ)」というのは血液だけではなくて、栄養素全体を指すものとなります。ですので例えば貧血ももちろんありますが、それ以外の栄養素が不足しているという状態も血虚という風に捉えます。
ご相談の中でお話を伺いしていると、例えばカロリーはしっかり取れているんだけれども、タンパク質が足りないっていう状態であったり、どうしても糖質過多な状態ですと小麦など体を冷やすもの多く召し上がっていらっしゃいます。そういったものを体の中に多く取り入れていると、カロリーは取れてるんだけれども、栄養素が足りないという状態になっており、特に脂肪がつきやすいような状態になっていることもあります。
しっかり食べていたら血虚にはならないという風に考えられる方もいらっしゃるんですけれども、内容によってはカロリーが充足していても栄養素が不足してしまって、この血虚という状態になってしまうという方も多くいらっしゃいます。
④瘀血(おけつ)
そして4つ目は瘀血(おけつ)です。こちらも多くの方がお悩みであることが多いのですが、血流が悪くなってしまって特に末端の冷えが出やすい状態を指します。肩こりとか頭痛とかが痛みとして併発しているという場合に多くみられる症状です。血流が悪い理由も人によって異なるのですが、そもそも血の質が悪く、どろっとしたような血になってしまって血流が悪い、という方もいらっしゃいます。
血虚とも被るのですが、血そのものが不足して、足りないから流すものがなくて、血流が悪くなってしまっているって方もいらっしゃいます。そして血を回す元気がない。これは気虚という状態にも関わってきますが、血を巡らせるためのエネルギーが不足してしまって、血流が悪いというふうな状態になっている方もいらっしゃいます。
血が流れない、血流が悪くなってしまう原因というのは、多岐に渡るため血流が悪くなる原因をしっかりと見極めて対応していくと体が冷えない状態を体感して頂きやすいということがあります。
陽虚タイプの症状と食養生
陽虚は、手足とか下半身の冷えが強いタイプの方です。体を冷やす生活が体温を守る陽気というのは傷つけてしまうということが原因としても考えられています。
主な症状としては身体全体的にガクガクするような冷えを感じていたり、手足に強い冷えを感じていることがあります。これは陽虚ではなく、血流が悪い方でも起こる症状となります。特に下半身に症状が起きやすいので、腰痛やむくみや、よくあるのが頻尿です。
夜間の頻尿を訴えられる方もいらっしゃいます。平熱の体温は非常に低く、低体温、36度ない方もいらっしゃいます。そして基礎体温から見ると、低温期が長いということがあったり、陽虚タイプの方は割と卵の成長がゆっくりになってしまうことも多く、月経周期が比較的長めという方が多くなります。
こういった方に是非オススメしたい食養生としましては、まず体を温めて冷えを取り去るような食材を多く入れていただくことです。あとは腎(じん)と言って、これは五臓六腑の考え方で「肝・心・脾・肺・腎(かんしんひはいじん)」というような五臓があるんですけれども、特に腎という所を補っていくと陽虚が改善できる、と中医学では考えられています。
陽虚タイプの食養生って?何を食べれば良い?
この腎を補う食材として、具体的なものとして、シナモンと生姜を生喬という生薬として取り入れることもあるのですが、生姜、ねぎ、唐辛子、ニラ、エビ、羊のお肉が挙げられます。羊はラムとして召し上がる方もいらっしゃると思うのですが、なかなか普段召し上がらないよという方もいらっしゃるかもしれませんが、非常に温める食材になります。
生姜をすごく取りますという方は多いのですが、生姜は生に近い生姜ほど胃腸に対してのケアが強くなります。
また、生姜(しょうきょう)に関しては発散作用があるので、陽気も発散させてしまうことが特徴としてあります。そのため多少、少量取り入れていただくにはむしろ効果的ですが、沢山取り入れてしまうと、むしろ逆効果になってしまうことがあります。生姜の取り扱いに関して、何にでも生姜をかけて食べる、ということはないようにしていただければと思います。
脾気虚タイプの症状と食養生
続いて食欲不振や疲労感を伴う、脾気虚という状態です。胃腸の状態があまり良くないという方になります。この場合、胃腸からしっかり食べ物を吸収し、体内の「気」や、血を生み出すところをしっかりとサポートしていくと冷えに対しては改善されることが多くなります。
特徴としては、やはり手足の冷えです。あとは全身の疲労感や無力感を感じられる方もいらっしゃいます。特に特徴的なのが胃腸の症状です。食欲がなくなってしまったり、ずっとお腹が張っている感じを訴える方もいらっしゃいます。そしてお腹の調子としては軟便や下痢になってしまう方が多くいらっしゃいます。
脾気虚の食養生って?何を食べれば良い?
このような方の食養生としては、まず胃腸を特に温める食材を選んで、食事や飲み物も温かいものを選んでいただくのが効果的となります。あとはちょっとした香辛料です。ミョウガ、ネギ、山査子、三つ葉、陳皮、しそ、胡椒、生姜といった胃腸の働きを助けながら体を温めるものを取り入れていただくと効果的です。
水滞の方は、水が巡りずらいと言いますか、むくみを感じていらっしゃる方ですね。むくみを感じていらっしゃる方に関しては体力を補う甘みがある食材というのもおすすめです。例えばかぼちゃであったりとか、あとお米です。胃腸に負担がかからないよう、お米もよく噛んで召し上がっていただけると良いと思います。また食欲不振になりがちな場合は、シナモン、ネギ、しそ、みょうが小喬といった形の薬味を効果的に利用していただけると良いと思います。
もたれない程度にタンパク質を入れていただく必要がありますので、大豆、卵、鶏肉、豚肉といったところの食材も入れて欲しいと思います。本当にこのタイプの方よく噛んでくださいということが大切です。胃もたれになってしまうと、マイナスになってしまうことがあります。タンパク質をしっかりとって欲しいのですが、よく噛んでくださいってことしっかりとお伝えしたいと思います。
血虚タイプの症状と食養生
多くの女性の方に注意して欲しいのが血虚です。月経期などには多くの方が血虚になります。自分は血虚タイプではない、という方でも、生理中はこの養生を取り入れていただけると良いと思います。
慢性的に血虚という方は、慢性的に栄養士ないしは血が不足しているというような状態です。そのため、栄養が行き渡らずに、手足の先端が冷たくなってしまうようなことがあります。特に手足、末端の冷えです。顔色がちょっと白かったり、漢方では舌を拝見することよくあるのですが、舌が白くなってしまっている方も多くいらっしゃいます。
あとは息切れがしたり、疲労感、動悸、このような症状は貧血の症状と似通っています。
そして血虚の特徴的な症状とて、眠りが浅くなってしまう。あと、ここには記載がないのですが、ちょっと不安感が強くなってしまう方もいらっしゃいます。また経血の量が減ってしまったり、経血の色がちょっと薄いような色、内膜が厚くならないというような訴えをされる方もいらっしゃいます。
血虚の食養生って?何を食べればいい?
食養生としては不足しがちな血を補いながら、しっかり暖めるものを取り入れるのが効果的です。漢方の食材になりますが、クコの実、もち米、お豆腐、黒色のものです。黒砂糖、黒豆、黒米、タンパク質としては鮭、鶏肉、大豆製品そういったものもオススメとなります。
基本的に栄養価が高いものに関しては血を生み出しやすいという風に考えれば良いと思いますので、かつそれで温めるものを一緒に取り入れていただけると、食養生としては血虚の方には適していると思います。
瘀血タイプの症状と食養生
しびれや痛みを血瘀を伴う方です。瘀血の方は血行不良が起きてしまっている状態になりますので、基本的には暖かな血がスムーズに全身を巡っていくようなケアが大切となります。
やはり末端の冷えの症状がすごく起きやすくなりますので、寒い時にマッサージをされる方もいらっしゃると思いますが、それは外からのアプローチですね。内側からしっかり巡らせていくということも必要ですが、ストレッチをしたり、体を動かすことでも改善しやすいタイプだと思います。血行不良タイプの方の主な症状としましては、全身また末端の冷え、あとは、しびれてしまう方が多くいらっしゃいます。
血流が一点、ここが流れていないよ、といったところに関しては、そこに痛みが起こりやすくなります。頭痛の場合でも、全体の頭が痛いというよりは、頭痛がするっていうのは血流が悪いということが多くなります。血流が悪くなってしまっている所の関節痛であったり、あとは月経期も含めて、生理痛と腹痛です。腸の状態から痛みが生じます。瘀血という血流が悪いという状態で、腹痛が起きてしまうという方も多くいらっしゃいます。
血流が悪くなってしまう原因、先ほどもいろいろお伝えしましたが、実はストレスによっても血流が悪くなってしまうことがあります。そういった時にはまずは、ストレスを発散することが大切になります。血流や血だけを見るのではなく、エネルギー(気)の流れを良くして、ストレスを改善し、ストレスの影響が体に出ないように、その結果として血流を良くしていくというアプローチを取らせていただくこともあります。
瘀血の食養生って?何を食べればいい?
食養生としては辛みのある食材で血行不良を改善しましょう、という風に挙げさせていただいたのですが、これも取りすぎないように気をつけながら、唐辛子であったりとかスパイスをうまく使って、その刺激で血を流していくというアプローチを取ることもあります。
あとは血、そのものの状態を良くしていくためには青魚です。イワシ、サバ、タチウオとかといったところを使います。また、食材の中ではお蕎麦です。お蕎麦も非常に有効になります。あとは納豆や少量のお酒です。紹興酒やワインっていうのも血流を良くします。
取りすぎると完全にマイナスになってしまうので、本当に量に注意していただく必要がりますが、そういったもので流れを良くしていこうというアプローチを取ることもあります。
まとめ:冷えを改善するためのポイント3点
寒い時期に冷えたらまず物理的に温める
まず寒い時期ですね、寒い季節にまず冷えてしまった時はまずは温めていただくことが非常に大切です。一旦冷えてしまった体は、まずは温めることで症状が緩和するため、お風呂であったりストーブであったりとかカイロといったものを使って冷えないように、冷えたらすぐに温めるというアプローチをとりましょう。
ただし、冷えの根本的な解決には、お風呂やカイロなどで一時的に温めても根本改善してくことはないので、まずは冷えない環境や身体作りに取り組んでいただく必要があります。
人によって冷えタイプは様々。取り組む内容が違う
そして冷えの根本的な解決は、人によって取り組んで頂くの内容が異なります。ポイントは代謝の改善です。代謝をしっかりと改善させていき、冷えにくく、冷えない体というのを目指していただければと思います。また筋肉をしっかりつけていくことも大切です。
早く冷えを取除きたい、改善したい方は漢方を使う
そして、一刻も早く冷えを取り除きたいという方は、漢方薬を服用して、内側からしっかり熱を生むもの、血流を改善するもの、血液量を増やすものなどを利用することが大切です。これまでのデータから、陽虚や気虚といった状態を改善した方々の統計データを追跡しています。その結果、採卵の数が増加したという統計データも示すことができています。漢方の専門家による診断も必要かもしれませんので、ご検討ください。
動画講座はこちらからご覧いただけます
プロフィール
住吉 忍
薬剤師/国際中医専門員
相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。
◾️東尾理子主催「妊活研究会」
編集:TGP編集部
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