妊娠しやすいタイプ?基礎体温から体質を見分けてみよう!|漢方薬剤師員 住吉忍

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2023.12.15

基礎知識

東洋医学

妊娠しやすいタイプ?基礎体温から体質を見分けてみよう!|漢方薬剤師員 住吉忍

 
妊活がスタートすると同時に、基礎体温を付ける方も多いと思います。そもそも妊娠しやすい基礎体温のタイプはあるのでしょうか。また、自分はどのようなタイプの基礎体温なのでしょうか。基礎体温からわかる自分の体質などについて、今回は株式会社ウィメンズ漢方 代表取締役(漢方薬剤師・国際中医専門員)の住吉忍先生をお迎えし、お話をお伺いしました。

妊娠しやすいタイプの基礎体温って?

まずは、基礎体温の基本的な見方をご紹介します。まず、この図をご覧いただければと思います。この方の月経の周期としては大体28日周期になります。これは、理想的ではありますが、この通りでないと、妊娠しない、ということではありません。

2層に分かれる基礎体温は珍しい?!

私は、実際のご相談の中で、私は基礎体温を非常に多く拝見させていただいているのですが、このように、2層にしっかりと分かれているという方は、むしろ珍しいかな、という印象があります。大まかには低温期が14日間、高温期が14日間。そして高温相と低温相の差が0.3度から0.5度、しっかりと差があるというような状態です。

高温相への移行の期間、だいたい低温期から高温相に切り替わるまでの期間というのが、1日から2日でしっかりと体温が上昇するというのが理想的、とされているのですが、例えば高温相にかかるまでに時間が3日から4日かかる、という方も多くいらっしゃいます。

そのため、繰り返しになりますが、この通りでなければ妊娠しない、ということではありません。

基礎体温、理想の高温相は、36.7度から36.8度

高温期に関してはだいたい36.7度から36.8度ぐらいが理想的な体温です。また低温期に関しては36.3度から36.4度これぐらいの体温ですと、非常にバランスが取れているといえます。

もちろん全体的に低い方もいらっしゃいます。低温期には36度を切ってしまう、また高温期には36.7度を超えない、という方もいらっしゃいます。その場合には全体的な体温が低いので、「陽虚体質」というような方に多い体温のパターンになります。

そのような時にも基礎体温が全てというわけではないのですが、どういった取り組みをしていけば体温の状態や体の状態が整っていくかというお話ができればと思います。

そして、排卵期は、ちょうど陰陽の切り替えの時期なのですが、この時期にちょうど「妊娠」が成立しやすい時期となります。この排卵期に、ご自身でタイミングをとっていただく、もしくは人工授精などの治療をする際に、しっかりと成熟した卵胞が排卵される体作りをご紹介できればと思います。

*陽虚・・・温める力が不足している状態

高温相にならず、2層にならない基礎体温

様々な基礎体温のパターンをこれからご紹介していきます。まずこのようなギザギザとした基礎体温になってしまうことがあります。まず高温期にならず体温が2層に分かれないというパターンですね。この場合は排卵をしていない可能性が出てきます。

月経自体が止まってしまっている、もしくは月経があっても排卵が起きない、こちらが無排卵という状態です。

このような状態が毎月続いてしまうと妊娠というものが成立しない、ということになります。排卵が起きていないので妊娠が成立しないのですが、漢方の考え方では、これは「腎精不足」ということが1つ原因として考えられます。もしくは、卵巣機能が低下して排卵が起きないということもあります。

その他にも、多嚢胞性卵巣症候群という状態になっていて卵胞がたくさんできている、という状態になることがありますが、様々な原因で排卵が起きないということがあります。漢方での無排卵の対応は、何が原因かについても、しっかり見極めて対応していく必要があります。

そのため、できるだけ早く病院で検査をして、体の中で何が起きているのか、ということを探っていくことが、大切になります。

そして基礎体温の中では、こちらもよくある状態になりますが、高温期が短い、また高温期の途中で体温が下がってしまうことがあります。

高温期は基本的には10日以上キープされるということが望ましく、それよりも短い場合というのは黄体機能不全であったり、低温期に卵胞が十分発育することができないということが原因となって、黄体ホルモンがしっかり分泌されていない、ということが考えられます。

「体温を上げるためにはどうしたらいいか」、「高温期を持続させるためにはどうしたらいいか」というご相談は多く、高温期のケアとして温活に取り組む方も多いのですが、実は成長した卵胞が黄体ホルモンに変わるということから、適切にケアをしないといけない時期は低温期という方もいらっしゃいます。

低温期に十分に卵胞が発育して、その排卵が起こった後の卵胞が黄体に変わるので、黄体をしっかりさせるためにはまず低温期のケアをしっかりしていくということも大切です。

ただ低温期の状態が安定していて、悪くないという状態で、かつ、高温期だけが調子が悪い、という場合には、やはり体の熱をしっかり保つということができない、という方もいます。

高温期の不調だけを見て対応をする、ということではありませんが、低温期、高温期の全体の基礎体温を見て、高温期が持続できない原因や、高温期にガクンと体温が落ちてしまう原因を探りながら、対応させていただいています。

また高温期の前後の体温が低いという場合には、高プロラクチン血症や、黄体機能不全だけではなく、卵胞の未成熟というような可能性もあります。

この場合も、ホルモン値を確認しながら、基礎体温から体質を見抜いていく、ということをやっていきます。

月経周期が短い基礎体温

続いて、月経周期の周期自体が短いという方がいます。こちらは元々は周期もしっかり28日とか30日あった方が、だんだん短くなってきたという場合と、元々頻回に月経が3週間ぐらいのペースで繰り返す、という方もいます。

よくあるご相談としては、もともとは28日とか30日といった周期だったところが、少しずつ短くなってきてしまうということがあります。こちらに関しては、年齢に伴って変化する卵巣機能の状態と関わってくるのですが、卵巣機能が少し落ちてきてしまい、卵胞が成長するスピードがどんどん速くなって、サイクルが速くなっていく、ということが考えられます。

このような状態は、漢方では腎虚※(じんきょ)という状態と捉えますので、補腎剤(じんざい)というものを使って、低温期をしっかり充実させていくということも必要です。

また、月経の始まった段階からすでに卵胞が大きくなってしまっている、ということも考えられますが、こちらは脳から卵巣へ送られる卵を成長させるためのホルモンのバランスが崩れてしまっているという状態も検討します。

こちらも総合的な判断はなりますが、バランスの崩れが原因になっているのか、卵巣機能の低下が原因になっているのか、そもそも月経が始まった時から、すごく周期が早いという方に関してはそれぞれの対応があるので、こちらも体質をお伺いしながら対応を決定していきます。

お悩みとして、一番多いのはやはり卵巣機能が低下してくるケースです。周期がどんどん速くなっているということであれば、腎虚に対して、補腎という点をしっかり取り組んでいただくことが大切だと思います。

※腎虚・・・東洋医学では成長、発育、生殖などに関わる生殖器・腎臓などの機能を「腎」と呼び、腎虚とは 「腎」の機能が低下したり、不足している状態のことを指します。

ジグザグになる基礎体温

続いて、こちらも非常に多い体温の例なのですが、体温がジグザグになっていて、体温が安定しないというパターンです。日によって高い日もあれば低い日もある。尖ったような体温になってしまうということがあるのですが、こちらは全ての方に当てはまるわけではないですが、自立神経の不調、ストレスが溜まっている、睡眠不足の状態が続いてしまっている方、その他、プロラクチンというホルモンが多く分泌されている、という可能性があります。

中医学では肝気鬱結(かんきうっけつ)※と言います。「肝」は、自立神経系をコントロールしている臓腑で、その状態が不安定な場合に、こういった基礎体温になることがあります。この場合、中医学では「肝」の不調があると捉えることが多いのですが、この肝の不調というのは、月経前に情緒が不安定になってしまったり、イライラするといった症状が出るという状態です。

この肝の不調がある方の場合、排卵がスムーズに起きないということも起きやすいですし、睡眠の状態があまり良くない、という方が多いので、不眠に伴って頭痛が出てしまったり、様々なマイナートラブルや不調を抱えていらっしゃるというお話を伺います。

上述のように「肝」は自律神経をコントロールする臓腑となりますので、漢方では肝を整えることで、自立神経を調整する処方を使い、安定させていくということもあります。

※肝気鬱結とは・・・気が滞る上に、精神的なストレスがかかり、イライラや緊張、怒り、抑鬱などの症状が生じること。

生理になってもなかなか下がらない基礎体温

続いて、月経が始まってもなかなか体温が下がらないという方もいます。基本的には月経が始まったら、体温がガグンと落ちるのですが、この時期も高温が持続する場合、血流が悪くなってしまっているということも可能性としては考えられます。

内膜症など痛みが強い場合は体温が下がらないことも

特に内膜症をお持ちの方や、痛みが強いという方に関しては、炎症が起きているような状態ですので、なかなか体温が下がらないということもあります。血流が悪いと、それだけでも痛みが発生する原因にもなるのですが、卵胞の発育や、黄体機能、その後の内膜の成長などに影響し始めることもありますので、月経の状態が良くないという場合には病院にかかっていただけたらと思います。

病院で、卵巣の状態、ホルモン値、そして子宮内膜の状態がどうなっているのかというのを確認いただいて、その上で漢方では血流をしっかり改善していくことになると思います。

また、出血がちょろちょろ出ていて、なかなかしっかりとした出血の月経が始まらないという場合にも、血流が悪いのか、ホルモンのバランスが崩れているのかのタイプを見極めて、月経開始と同時にしっかりとした排出が起きるようにサポートをさせていただくことがあります。

月経期に炎症、痛みが強いというご相談は多くいただきますが、ご自身でできることとしては、体を冷やすことがないように、特に足元が冷えることがないように、しっかりケアをしていただければと思います。

高温期への移行がゆっくりな基礎体温

こちらは、高温相の移行がゆっくりというパターンの方です。排卵が起こった後に高温層に移行するまでにだいたい4日以上時間がかかってしまう方も多くいらっしゃいます。

高温期になればしっかりと体温を保てる、という方もいるのですが、無排卵や、排卵がなかなかスムーズに進まない、という方もいますし、排卵はするものの黄体ホルモンの数値が上がらないという方もいらっしゃいます。

また、そもそも熱を生むエネルギーがない、というような体質の方の場合、体温を上げるのに時間がかかってしまうということもあります。中医学の考え方では「陽虚(ようきょ)」や「気血両虚(きけつりょうきょ)」、つまりエネルギーや、血が不足してしまっているという体質の方に多いパターンとなりますので、このあたりはしっかりと体質改善にも取り組んでいただけると効果が出やすいです。

ご自身の体が冷えていることや、エネルギーが不足している、または、血が不足している、という状態を自覚をするというのは難しいかもしれませんが、ご自身の日々のちょっとした不調に気付き、ケアしていただくことで、高温にしっかりと上がるという体質に変えていくということも可能です。

高温期の体温が安定しない原因を探るに、検査数値を確認しないとわからないこともありまが、疲れがある場合には、しっかり癒していただく、ということは、効果的な取り組みです。

続いて、周期に応じた体作りもご紹介できればと思います。

月経周期に応じた身体づくり

まずは月経期です。生理1日目から大体1週間ぐらい、もう少し短くても問題ありません。月経が7日続かなければいけない、ということはなく、しっかりとした経血の排出が起こっていれば、4、5日の間に終了しても、日数としては充分です。

月経期はしっかり経血を排出する

受精卵が着床しない場合には、内膜が剥がれ落ちるという状況になりますが、この時期に取り組んでいただく内容としては、経血をしっかりと排出させて、新しい子宮内膜の修復と再生を促していく時期になります。そのため、特に初日からしっかりと出血量があるという状態が望ましい、と中医学では考えられています。

出血が2日目であっても、もちろん良いのですが、1日目、2日目など前半にしっかりとした出血がたっぷりの量であり、血塊や痛みがない、という状態が望ましい、とされています。

1日目、2日目たっぷり出血が出ない場合は、漢方が助けになることも

もちろん、子宮内膜が剥がれる時にどうしても痛みが起きてしまう、ということは珍しいことではないですし、痛みがあると妊娠しない、というわけではないですが、痛みはできるだけしっかり養生と漢方を取り組んでいただくなど、中医学の考えからケアをしていただけると、基本的には痛みがないという状態にもっていけることが多々あります。

もちろん、子宮腺筋症であったり、色々な疾患が隠れている場合には、鎮痛剤を使いながらうまくコントロールしていく、ということも大切になります。

できるだけ体作りの点から、体質に合わせて、痛みが起きないようなケアも取り組んでいただけると良いと思います。

卵胞期は調子が良い!だから運動・食事・休息を

続いて卵胞期です。この時期は卵をしっかり育てていく、成熟させていくという時期になります。もちろん卵子というのは、時間をかけて成長し続けていきますが、最後の成長から排卵前のところまで、しっかりと成熟をさせていく時期になります。

月経開始の時期には、初期に大体5個から6個の小さい卵が見えているという状態になるのですが、基本的に薬(排卵誘発剤など)を使ったりということがなければ、その中の1つが成熟していきます。

その選ばれた卵胞を、主席卵胞といいますが、それを成長させていき、良いサイズまで成長した段階で、LHサージという排卵させるための刺激が出ることで排卵が起こる、という流れになります。

卵胞ホルモンが充実し、それに伴って子宮内膜も育っていく時期です。

卵胞期は、特に妊娠を希望される方には非常に大切な時期になりますが、実は不調も起きづらく比較的に元気に過ごしていただける、という時期でもあります。

しっかり体を動かしたり、栄養豊富な食事をとり、その上で充分な休みを取る、という取り組みをしていただけると、元気な卵胞が育ちやすいと考えられています。

高温期は身体を温めるべし!火照りがある人は要注意

排卵は基本的には1日で終了しますので、排卵期に関しては、しっかり血流を良くしてスムーズに排卵が起きるように、後押しさせていただくことが多くなります。

そして排卵後の高温期は、月経周期15日から次の月経までの28日位を指します。排卵が起こると卵巣に黄体が作られ、黄体ホルモンが分泌して受精卵が着床しやすいように子宮内膜が厚くなっていくという期間になります。

もともと身体が熱い、火照る、という方は温めない方が良い

この時期は冷えを感じていらっしゃる方の場合、できるだけ体を温めて受精卵が着床を促せるように、という環境づくりが大切になります。

ただし、すべての方が体を温めるべき、というわけではなく、体がもともと熱い方、火照っている方に関しては、むしろ高温期になると眠れない症状がでたり、イライラして情緒が不安定になってしまい、イライラが止まらないという方もいらっしゃいますので、そのような方は体を温めるというよりは、冷ますまではいかないにせよ、無理にカイロを張ったり、腹巻きをするというような温活に取り組まない方が良いでしょう。

むしろ、そのような方が温活に取り組んでしまうことで、体の不調が出てしまう場合もありますので、そのあたりは注意してご自身の状態を観察していただきたいと思います。

このような形でご自身の基礎体温を見ながら、「自分はどういった体質なのか、実際には冷えているか、熱がこもっていないか、疲れていないか、自律神経の不調はないか」などを意識して、体質にあった体づくりに取り組めると、体の機能は整っていきます。

ご自身の基礎体温がどのパターンに当てはまるのか迷われる場合には、一度は、専門家に相談いただくこともお勧めです。ご参考にしていただけることがあれば幸いです。

動画講座はこちらからご覧いただけます

プロフィール

住吉 忍
薬剤師/国際中医専門員
相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。
◾️東尾理子主催「妊活研究会」
編集:TGP編集部

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