【専門家解説】子宮内膜症の治療法|妊娠希望者のための不妊治療との進め方
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女性の婦人科疾患の一つである「子宮内膜症」。子宮内膜症は不妊原因の1つにもなりうるため、放置せず、早期に病院に相談することが大切です。そこで、今回は不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんに、妊娠を希望する方が知っておきたい「子宮内膜症の治療」について詳しく説明していただきます。
子宮内膜症でも妊娠はできますか?
「私は妊娠できますか?」
「治療すれば大丈夫ですよね?」
医師から子宮内膜症の診断を受け、このように不安を訴えられる患者様は少なくありません。子宮内膜症が不妊の原因になる可能性があると知り、ご不安になるお気持ちはよく分かります。
しかし、適切な治療方針を決定し、一歩ずつ進んでいけば妊娠は可能です。大切なのは、まずご自身の体の状態を正しく知り、どのような治療の選択肢があるのかを理解することです。ここでは、子宮内膜症の治療について詳しくお話しします。

子宮内膜症が妊娠に与える影響
まず、子宮内膜症がなぜ妊娠に影響するのか、その理由からご説明します。
一つ目は、子宮内膜に似た組織が子宮の内側以外の場所で増え、癒着(ゆちゃく)を起こしてしまうことです。これによって、卵巣からうまく卵子が飛び出さない「排卵障害」や、卵管の中が狭くなったり詰まったりする「卵管通過障害」、排卵した卵子を卵管がうまくキャッチできない「ピックアップ障害」などが起こる可能性があります。
二つ目は、子宮内膜症がある場所で「炎症」が起きてしまうことです。その影響で免疫のリズムが崩れ、受精卵が子宮内膜に着床しづらくなったり、卵子そのものの質が低下したりすることがあります。
だからこそ、これらを早期に診断し、速やかに治療方針を決定することがとても大切になります。
「チョコレート嚢胞」の治療方針
子宮内膜症の中でも代表的な「チョコレート嚢胞」の治療は、嚢胞の大きさや性質によって方針が分かれます。
嚢胞が4~5cm未満の場合
大きさが4~5cm未満で、かつ「充実部分」と呼ばれるような硬いかたまりがない場合、チョコレート嚢胞の治療に「猶予がある」と判断します。この場合は、嚢胞の治療を優先せず、まず不妊治療をスタートすることになります。
嚢胞が4~5cm以上の場合
大きさが4~5cm以上、もしくは充実部分がある場合は、嚢胞の治療に「猶予がない」と判断します。ここからさらに、「不妊治療に猶予があるかどうか」を判断していきます。
- 不妊治療に「猶予がある」と判断された場合(AMH値が2.0ng/ml以上、かつ35~40歳未満など)
チョコレート嚢胞の治療を優先します。まず嚢胞を取り出す手術をして、それから不妊治療を開始するという流れになります。 - 不妊治療に「猶予がない」と判断された場合(AMH値が2.0ng/ml未満、もしくは35~40歳以上など)
両方の治療を優先するというやり方になります。これは、まず体外受精(ART)で採卵を行い、できた受精卵(胚)を凍結しておきます。
その後にチョコレート嚢胞の手術、もしくは薬で嚢胞を小さくする偽閉経(ぎへいけい)療法などを行い、子宮の状態が整ってから凍結しておいた胚を移植する方法です。
「子宮腺筋症」の治療方針
次に「子宮腺筋症」の治療法です。こちらは、月経困難症や過多月経といった月経随伴症状がどの程度あるかによって治療法が変わってきます。

- 症状がない、または軽い場合
不妊治療を優先していきます。特に35歳以上の方では、早期の体外受精(ART)を検討して妊娠を目指していきます。 - 症状が重度の場合
まず子宮腺筋症の治療を優先します。治療法は病巣のタイプによって変わります。
- 限局性(げんきょくせい):病巣がかたまりになっているタイプです。このかたまりの部分を取り除く手術を検討します。35歳以上の方の場合は、手術の前に体外受精で採卵・胚凍結をしておき、手術後に移植をして妊娠を目指します。
- びまん性:病巣が子宮全体に広がっているタイプです。まずはお薬の治療で大きくなった子宮を小さくしてから、不妊治療を開始するというやり方になります。
- 限局性(げんきょくせい):病巣がかたまりになっているタイプです。このかたまりの部分を取り除く手術を検討します。35歳以上の方の場合は、手術の前に体外受精で採卵・胚凍結をしておき、手術後に移植をして妊娠を目指します。
子宮内膜症の具体的な治療法①:薬物療法
薬物療法には、症状を和らげる「対症療法」と、病気自体を治療する「内分泌療法」があります。

- 対症療法:痛みに対して鎮痛薬や漢方薬を使ったり、出血が多くて貧血になる場合に鉄剤を飲んでいただいたりします。これらは症状を和らげる治療で、妊活中も実施することができます。
- 内分泌療法(ホルモン療法):低用量ピルや黄体ホルモン療法、偽閉経療法などがあります。これらはホルモン剤を使い、排卵を止めたり月経を止めたりすることで症状を軽減させます。
排卵をさせないようにする治療ですので、妊活と並行することはできません。もしこれらの治療を行う場合は、3ヶ月から1年ほど妊活をお休みして、まず子宮内膜症の治療に専念することになります。
子宮内膜症の具体的な治療法②:手術療法
手術療法は、お腹に小さな穴を開けて行う「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」が中心となります。

- チョコレート嚢胞の手術:卵巣の中にある嚢胞の部分だけを、卵子が多く含まれている正常な部分をできるだけ残しながら切除していく手術です。
- 子宮腺筋症の手術:子宮の筋肉の層にできた病巣の部分を取り除く手術です。子宮は妊娠したときに赤ちゃんを育てる大切な場所なので、その機能に対応できるように手術を行います。
どちらの手術も、入院期間は3日から5日間ぐらい、費用は3割負担で20万円から30万円ほどが目安です。手術後の妊活の再開は、体の回復を見ながら、3ヶ月から6ヶ月以降になるかと思います。
まとめ
まず、前回の子宮内膜症シリーズ①子宮内膜症のことを知ろう!でもお話ししたように「子宮内膜症かも?」と思ったら、ためらわずに検査を受けましょう。そして、ご自身の状態を正確に把握したうえで、子宮内膜症の治療と不妊治療のどちらを優先するか、その順番を決定しましょう。治療方針の大きな分かれ道として、以下のようにお勧めします。
- 子宮内膜症の治療を(急いで)しないと判断された場合
早期の妊娠を目指し、積極的にART(体外受精)へチャレンジすることをお勧めします。 - 子宮内膜症の治療をすると判断された場合
治療を始める前にART(体外受精)で「胚盤胞(はいばんほう)」を凍結しておくこと。そして、子宮内膜症の治療が終わってから、凍結しておいた胚盤胞を融解して移植し、妊娠を目指すことをお勧めします。
もちろん、これは一例です。患者様の背景によっては、子宮内膜症の治療後にタイミング療法や人工授精などで妊娠される方もいらっしゃいます。

大切なのは、子宮内膜症があっても、定期的な検査と適切な治療を行うことで妊娠は可能だということです。ご自身に合った最善の方法を、主治医の先生とよく相談しながら見つけていきましょう。
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本日お話をおうかがいした方
不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター
小松原 千暁
不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

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