凍結融解胚移植は自然周期とHRTどっち?最新研究で比較【後編】
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妊活お役立ち情報
目次
前編では、凍結した胚を子宮に戻す凍結融解胚移植における2種類の子宮内膜の調整方法、自然周期とホルモン補充周期(HRT)について、それぞれの仕組みや違い、メリット・デメリットを解説しました。
後編では、実際の研究報告をもとに、自然周期とホルモン補充周期の妊娠率や生児出生率、周産期の予後などにどのような違いがあるのかを詳しく見ていきます。
結論からいうと、現時点では自然周期の方が必ず妊娠しやすいとまでは言えません。
これまでの研究では、自然周期とHRT周期で妊娠率や生児出生率に大きな差はないとする報告がある一方で、近年は自然周期の方が生児出生率が高く、流産率が低い可能性を示す研究も出てきました。
さらに、妊娠高血圧症候群や産後出血、前置胎盤など、妊娠後の周産期予後についても自然周期の方が良い可能性が報告されています。ただし、これらの結果だけで「自然周期を選ぶべき」と決めることはできません。
後編では、最近の研究結果をもとに、
- ・妊娠率や生児出生率に違いはあるのか
- ・周産期の予後はどう違うのか
- ・なぜ自然周期の方が良い可能性があるのか
- ・実際にはどちらを選べばよいのか
について、できるだけ分かりやすく解説します。

妊娠率や生児出生率に違いはある?
まず、多くの患者さんが気になるのは、「自然周期とホルモン補充周期では、どちらの方が妊娠しやすいの?」という点ではないでしょうか。
これまでの研究では、自然周期とホルモン補充周期で妊娠率や生児出生率に明確な差はないとする報告が多くあります。
信頼性の高いCochrane Reviewでも、自然周期とホルモン補充周期のどちらが生児出生率において優れているのかを示す十分な証拠はないとされています。
一方で、近年は異なる結果を示す研究も報告されています。Xitong Liuらの報告では、自然周期の方がホルモン補充周期より生児出生率が高く(54.0% vs 43.0%)、流産率も低かったと報告されています。
また、Konishiらの報告では、hCGを使用した自然周期とホルモン補充周期を比較した結果、流産率は自然周期の方で低かった(19.4% vs 25.6%)と報告されています。
このように、近年は自然周期の方が生児出生率や流産率などの面で良好な結果を示す研究もあるんです。
ただし、自然周期とホルモン補充周期で成績に差がないとする研究もでていますから。現時点では「自然周期の方が生児出生率を改善する」と断定することはできないと言えるでしょう。
周産期の予後は違うの?
自然周期とホルモン補充周期を比較する際に、特に注目されているのが妊娠後の周産期予後です。
これまでの研究では、ホルモン補充周期で、
- ・妊娠高血圧症候群
- ・産後出血
- ・帝王切開
- ・前置胎盤
などの周産期合併症のリスクが高くなる可能性が報告されています。
ただし、研究によって患者背景や治療方法、評価方法などが異なるため、これらの結果だけでホルモン補充周期が周産期予後を悪化させると断定することはできません。
現時点では、ホルモン補充周期で一部の周産期合併症のリスクが高くなる可能性は報告されていますが、周産期予後全体としてどちらの方法が優れているのかは、まだ明らかになっていません。
なぜ自然周期の方が良い可能性があるの?
では、なぜ自然周期とHRT周期で違いが生じるのでしょうか?
現時点では明確な理由はまだ分かっていませんが、いくつかの仮説があります。
① 黄体の存在
自然周期では排卵が起こり、その後に黄体が形成されます。
黄体はプロゲステロンを分泌することでよく知られていますが、リラキシンなど、血管や循環に関係するさまざまな物質も産生しています。一方、通常のホルモン補充周期では排卵を起こさないため黄体が形成されません。
ホルモン補充周期では、エストロゲンとプロゲステロンは薬で補充できても、黄体から分泌される物質までは補いきれていない可能性があります。

黄体分泌物質「リラキシン」とは?
黄体から分泌される物質の中でも特に注目されているのがリラキシンです。妊娠すると、胎盤へ十分な血液を送るために母体の循環系は大きく変化します。
リラキシンは、妊娠初期の母体循環の変化に関わるホルモン作用をもち、
- ・血管を拡張する
- ・血管の柔軟性を変化させる
- ・胎盤への血流を増やす
などの働きがあると考えられています。
自然周期では黄体が存在するためリラキシンが分泌されますが、HRT周期では黄体がないため、十分に分泌されないのでは?と考えられています。
実際にvon Versen-Höynckらは妊娠初期のリラキシン濃度がホルモン補充周期:13.0 pg/mL、自然周期:489.7 pg/mLと大きく異なることを報告しています。
この違いが、妊娠高血圧症候群などのリスクに関係している可能性が考えられています。

② ホルモン環境が違う
もう一つ考えられているのが、自然周期とホルモン補充周期ではホルモン環境そのものが異なることです。
Ninaらは、自然周期とホルモン補充周期で胚移植当日のホルモン値の比較をしています。
エストラジオールの数値はホルモン補充周期:234 pg/mL、自然周期:147 pg/mL
プロゲステロンの数値はホルモン補充周期:21.5 ng/mL、自然周期:12.7 ng/mL
と、ホルモン補充周期で高い傾向が示されました。
このような自然周期とは異なるホルモン環境が胎盤形成に影響を与え、胎盤や胎児の周産期予後に変化をもたらす可能性も指摘されています。
③ 患者さんの背景の違い
患者さん自身の背景の違いも十分関係してくるでしょう。
ホルモン補充周期は、
- ・排卵障害
- ・月経不順
- ・黄体機能不全
などの症例で使用される内膜調整法です。不妊の原因となる疾患の中には、妊娠後の周産期リスクの上昇と関連するものがあります。
たとえば、PCOSでは妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、帝王切開などのリスク上昇が報告されています。
また、肥満も妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、帝王切開率の上昇などと関連することが知られています。
そのため、ホルモン補充周期で周産期予後が悪く見えたとしても、もともと周産期リスクの高いから、結果が良くなかったのでは?とも考えられます。
自然周期とHRT周期はどちらを選べばいい?

ここまで読むと、「自然周期の方がHRT周期より良い方法なのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、現時点では自然周期が最適と結論づけることはできません。自然周期にはメリットがありますが、すべての方が自然周期に適しているわけではないからです。
例えば、
- ・月経周期が比較的安定している
- ・排卵が定期的にある
- ・排卵のタイミングに合わせた通院ができる
という方では、自然周期を選択肢として検討しやすいですが、
- ・排卵障害がある
- ・月経不順がある
- ・通院スケジュールを調整したい
といった場合には、ホルモン補充周期が重要な選択肢になります。
また、ホルモン補充周期はこれまで多く行われてきた方法であり、十分なデータが蓄積されているというメリットもあります。
そのため、排卵があるなら自然周期を積極的に検討できる一方で、ホルモン補充周期にもメリットがあり、患者さんの身体の状態や通院のしやすさなどを踏まえて、医師と相談しながら決めていくことが重要です。
まとめ
自然周期とホルモン補充周期を比較すると、これまで妊娠率や生児出生率に大きな差はないとされてきました。
一方、最近の研究では、排卵のある女性では、
- ・自然周期で生児出生率が高い
- ・流産率が低い
- ・妊娠高血圧症候群など、一部の周産期合併症のリスクが低い
といった可能性が報告されています。
ただし、現時点では「自然周期の方が成績が優れている」と結論づけることはできません。
排卵があり月経周期が安定している方では自然周期を検討しやすい一方、排卵障害や月経不順がある方では、ホルモン補充周期が重要な選択肢になります。
大切なのは、どちらが優れているかだけで判断するのではなく、自分の身体の状態や生活スタイルに合った方法を選ぶことです。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、主治医と相談しながら、自分に合った胚移植方法を選択していくことが大切です。
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本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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