生殖補助医療の双子が過去最多に|「2個移植」を選ぶ前に考えたい、双子の妊娠・出産・子育て

ARTICLE

2026.10.16

不妊治療

生殖補助医療の双子が過去最多に|「2個移植」を選ぶ前に考えたい、双子の妊娠・出産・子育て

「保険が使える回数のうちに、なんとか妊娠したい」。体外受精を続けるなかで、受精卵(胚)を2個まとめて移植するかどうか、迷う方は少なくありません。

2個移植には、妊娠の可能性を少しでも上げたいという切実な思いがあります。一方で、2個とも同時に着床すれば双子(多胎)の妊娠になります。双子の妊娠・出産は、お母さんと赤ちゃんの体への負担が大きく、生まれた後の子育ても2人同時です。

この記事では、日本産科婦人科学会の最新データ(ARTデータブック)をもとに、いま双子の妊娠がどれくらい増えているのか、2個移植で双子になる確率、双子の妊娠・出産のリスクを解説します。「妊娠」だけをゴールにせず、その先の出産と子育てまで考えるための材料にしてください。

この記事のポイント

  • 体外受精などの生殖補助医療(ART)による多胎妊娠は、保険適用後に2年連続で過去最多。2024年は4,857件、多胎率4.15%でした※1。
  • 出産全体でも、双子以上の割合は、2015年の約100人に1人から2024年は約78人に1人(1.28%)に増え、1995年以降でもっとも高くなっています※5。そのうち約3人に1人がARTによる妊娠です※1,5。
  • 受精卵を2個移植して妊娠した場合、約2割が多胎になります(40〜42歳では約15%)※3。
  • 双子の妊娠は約半数が早産になるなど、1人の妊娠よりリスクが高くなります※9。
  • 2個移植は、双子になる可能性を十分に想定し、双子を産み、育てる準備ができてから選ぶことが大切です。

体外受精による双子(多胎妊娠)が、いま増えている

体外受精や顕微授精、凍結胚移植などの生殖補助医療(ART)では、2022年4月から公的医療保険が使えるようになりました。その後、双子や三つ子などの多胎妊娠が急に増えています。

図:ARTによる多胎妊娠数と多胎率の推移(2000〜2024年)。日本産科婦人科学会 ARTデータブック(2022〜2024年)をもとに作成。多胎妊娠数・率は、妊娠初期に胎嚢(赤ちゃんを包む袋)を確認した時点の数です。

ARTによる多胎妊娠は、2022年は約3,200件でしたが、2023年に4,353件、2024年に4,857件となり、2年続けて過去最多を更新しました※1,2,3。

注目したいのは、2024年はARTの治療件数そのものが前年より約2%減ったのに、多胎妊娠は約12%増えたことです。治療を受ける人が増えたからだけでは説明できません。妊娠した人のうち多胎になった割合(多胎率)も、2022年の3.05%から、2023年3.77%、2024年4.15%へと上がっています※1,2,3。

出産全体でも、双子以上の割合は過去最高

国の人口動態統計で、出産全体に占める双子以上の割合を見ても、同じ傾向があります。

年 分娩件数(全体) 双子以上の分娩 割合
2015年 1,018,022 10,195 1.00%
2021年 818,724 9,023 1.10%
2022年 777,115 8,706 1.12%
2023年 733,993 8,708 1.19%
2024年 692,510 8,873 1.28%

出典:厚生労働省「人口動態統計」(確定数)単産-複産別にみた年次別分娩件数※5。分娩件数は出産した母親の数(死産を含む)で、双子を出産した場合も1件と数えます。

双子以上の出産は、2015年には約100人に1人でした。それが2021年には約91人に1人、2024年には約78人に1人になっています。これまででもっとも多かった2005年(約85人に1人)も上回り、1995年以降でもっとも高い割合です※5。

出産する人の数は2021年から約15%減りましたが、双子以上の出産は年9,000件前後のまま減っていません。そのため、出産全体に占める双子以上の割合が上がっているのです。

このうち、ARTによる双子以上の出産は2024年に3,108件で、全体の約3人に1人にあたります※1,5。ARTで生まれる赤ちゃんは全体の約8人に1人(2024年 86,473人)ですが※1,6、多胎に限ると、その割合はずっと大きくなります。

※ARTデータブックは治療を行った年、人口動態統計は生まれた年で数えているため、「約3人に1人」は目安です。

なぜ増えた?保険の回数制限と「2個移植」

保険で胚移植を受けられる回数には、女性の年齢によって上限があります※7。

初めての胚移植の治療計画を立てた日の女性の年齢 保険で受けられる胚移植の回数
40歳未満 子ども1人につき通算6回まで
40歳以上43歳未満 子ども1人につき通算3回まで
43歳以上 保険の対象外


回数は胚移植を行うごとに数えます。出産した場合(妊娠12週以降の死産を含む)は、次の子どものために回数がリセットされます※7。

特に40〜42歳は3回しかチャンスがありません。「限られた回数のうちに妊娠したい」という気持ちから、1回に2個の受精卵を移植する人が増えたと考えられています。東邦大学などの研究チームも、保険適用後の多胎妊娠の増加について、回数制限の中で治療を終えようと複数の受精卵を移植する人が増えた可能性を指摘しています※4,8。

データにも、その変化が表れています。

  • ・40〜42歳で2個以上を移植した回数は、保険適用前の2021年の11,484回から、2022年は12,787回へと約11%増えました※3。
  • ・1個だけ移植する割合(単一胚移植率)は、凍結胚移植で84.7%(2023年)から83.8%(2024年)、新鮮胚移植で80.5%から79.1%に下がっています※1,2。


割合の差は小さく見えますが、凍結胚移植は年間約26万回行われています。2024年は、そのうち約4万2,600回(約6回に1回)が2個以上の移植でした※1。


年齢別に見ると、2024年の多胎率は40歳で5.21%、41歳で4.77%、42歳で4.38%でした。35〜44歳の中では40歳がもっとも高く、全体の4.15%を上回っています※1。保険の回数制限がもっとも厳しい年代で、双子の妊娠が起きやすくなっているのです。

「原則1個移植」になった経緯

体外受精で2個、3個と複数の受精卵を移植することは、かつては珍しくありませんでした。2000年代前半には、ARTで妊娠した人の15〜17%が多胎でした※3。三つ子以上の妊娠も多く、お母さんと赤ちゃんの体への負担が問題になっていました。

そこで日本産科婦人科学会は2008年、「胚移植する受精卵は原則1個」とする見解を出しました。ただし、35歳以上の女性や、2回以上続けて妊娠しなかった女性は、2個まで移植できるとしています※8。

この見解の後、多胎率は急に下がり、2014年ごろからは約3%で落ち着いていました※3。ところが保険適用後に再び増え、2024年の多胎妊娠の件数(4,857件)は、制限前のピークだった2005年(3,784件)を大きく上回っています※1,3。

割合で見れば、まだ当時ほど高くはありません。それでも件数で見ると、多胎妊娠をしている人は当時より多いのです。「双子を減らすために1個移植にした」という流れが、いま逆戻りしつつあります。

2個移植で双子になる確率は?

2個の受精卵を移植して妊娠した場合、どれくらいの確率で双子(以上)になるのでしょうか。日本産科婦人科学会が公表した2022年のデータでは、次のようになっています。

妻の年齢 凍結胚・胚盤胞を2個 凍結胚・初期胚を2個
35歳未満 29.0%(2,259件中654件) 21.4%(383件中82件)
35〜39歳 21.5%(3,574件中768件) 21.4%(809件中173件)
40〜42歳 15.4%(2,135件中328件) 11.7%(690件中81件)
43歳以上 10.0%(620件中62件) 7.5%(335件中25件)
全体 21.1%(8,588件中1,812件) 16.3%(2,217件中361件)


2個以上の胚を移植して妊娠した人のうち、多胎妊娠になった割合(2022年)。出典:日本産科婦人科学会 2022年ARTデータブック※3。胚盤胞は受精後5〜6日、初期胚は2〜3日まで育てた受精卵です。

いま主流の「凍結した胚盤胞」を2個移植して妊娠した場合、全体で約5人に1人、40〜42歳でも約6〜7人に1人が多胎になっています。「40代だから、2個戻しても双子にはならないだろう」とは言えない数字です。

双子と分かっても、2人とも生まれるとは限らない

2個とも着床して双子と分かっても、途中で1人の成長が止まり、1人だけを出産することもあります。2024年のデータでは、妊娠初期に多胎と確認されたのは4,857件でしたが、実際に双子以上で出産したのは3,108件でした※1。

この差には、2人とも流産になった場合や、途中で1人が育たなかった場合などが含まれています。バニシングツイン(消失児症候群)が起こった場合、15週以前の妊娠初期であれば母体や残された胎児への影響は基本的にほとんどありません。ただし、胎盤を共有する一絨毛膜の場合は、妊娠中期以降も慎重な経過観察が必要です。

双子と分かってから、1人を失うかもしれない不安と向き合うことになる。これも、2個移植を選ぶときに知っておきたいことのひとつです。

三つ子以上になることもある

2個移植でも、1つの受精卵が2つに分かれる(一卵性の双子になる)と、三つ子になる可能性があります。2024年のARTによる妊娠では、三つ子が83件、四つ子が8件ありました※1。数は多くありませんが、ゼロではありません。

双子の妊娠・出産のリスク

双子の妊娠は、1人の妊娠と比べて、お母さんにも赤ちゃんにも負担が大きくなります。国立成育医療研究センターによると、双子の妊娠では次のような合併症が起こりやすいとされています※9。

起こりうること 双子の妊娠での頻度の目安
早産(妊娠37週未満) 約50%
早産(妊娠32週未満) 約6%
早産(妊娠28週未満) 約2%
妊娠高血圧症候群 約10%弱
妊娠糖尿病 約8%

出典:国立成育医療研究センター「多胎妊娠外来」(日本産科婦人科学会の周産期登録データ 2006〜2016年)※9

双子の妊娠では、約半数が早産になります。早く生まれた赤ちゃんは、NICU(新生児集中治療室)での治療が必要になることがあります。

そのほかにも、次のようなことが考えられます。

  • ・管理入院:お腹の張りや血圧の上昇などで、出産前に長く入院することがあります。
  • ・帝王切開:赤ちゃんの向きや状態によって、帝王切開での出産になることが多くなります。
  • ・出産できる病院が限られる:NICUのある病院など、双子の出産に対応できる施設で産む必要があり、転院が必要になることもあります。
  • ・胎盤の数(膜性)によるリスク:1つの胎盤を2人で共有する双子(一絨毛膜双胎)では、2人の血液の流れがかたよる「双胎間輸血症候群」などのリスクがあり、よりこまめな検査が必要です。

こうしたリスクは、お母さんの年齢が高いほど重なりやすくなります。

妊娠はゴールじゃない:双子を産み育てる生活を想像する

不妊治療を続けていると、どうしても「妊娠すること」がゴールになりがちです。でも、妊娠は子育てのスタートです。2個移植を選ぶ前に、双子を妊娠し、産み、育てる生活を具体的に想像してみてください。

妊娠中

  • ・産前休業は、1人の妊娠では出産予定日の6週間前からですが、双子以上では14週間前から取ることができます※10。管理入院を含めて、仕事を早めに休むことを想定しておく必要があります。

  • ・お腹が大きくなるのが早く、体の負担も大きくなります。上の子がいる場合は、入院中のお世話をだれに頼むかも考えておきましょう。

出産後

  • ・授乳、おむつ替え、寝かしつけ、夜泣きがすべて2人分です。1人が寝たら、もう1人が起きる、ということも珍しくありません。

  • ・外出や通院も2人を連れて行くことになります。予防接種や健診の回数も2倍です。

  • ・ベビーカーやチャイルドシート、衣類などのベビー用品、将来の保育料や教育費も同時にかかります。

頼れる人と支援

  • ・40代での出産の場合、産後の体の回復や、夜間の育児を続ける体力も考えておきたいところです。パートナーや家族が、どれくらい育児に関われるかを話し合っておきましょう。

  • ・多くの自治体で、双子などの多胎家庭向けに、家事・育児サポーターの派遣や、先輩の多胎家庭との交流会(ピアサポート)などの支援を行っています※11。内容は自治体によって違うので、お住まいの市区町村に確認しておくと安心です。

「双子はかわいい」「一度に2人授かれたらうれしい」という気持ちは、自然なものです。ただ、その気持ちだけで決めるのではなく、双子の妊娠・出産・子育てを現実のこととして考えられるかどうかが大切です。

2個移植を決める前のチェックリスト

2個移植を考えているときは、次のことを確認してから決めましょう。

パートナーと話しておきたいこと

  1. 双子を妊娠したら、仕事や家事をどう分担するか
  2. 管理入院や早産になったときに、どう対応するか
  3. 途中で1人が育たなかったときに、どう受け止めるか
  4. 双子の育児を、だれの手を借りて乗り切るか

主治医に聞いておきたいこと

  • ・自分の年齢と受精卵の状態で、2個移植した場合に双子になる確率はどれくらいか
  • ・1個移植と2個移植で、妊娠する確率はどれくらい違うのか
  • ・双子を妊娠した場合、どの病院で出産することになるか
  • ・保険の残り回数と、その後の治療の選択肢

2個移植で妊娠の可能性がどれくらい上がるかは、年齢や受精卵の状態によって大きく変わります。「回数が少ないから2個」と決める前に、自分の場合の数字を主治医に確認しましょう。

よくある質問

Q. 2個移植で双子になる確率はどれくらいですか?

日本産科婦人科学会の2022年のデータでは、凍結した胚盤胞を2個移植して妊娠した場合、全体で約21%(約5人に1人)が多胎でした。35歳未満では約29%と、若いほど高くなります※3。

Q. 40代でも2個移植で双子になりますか?

なります。同じデータで、40〜42歳が凍結した胚盤胞を2個移植して妊娠した場合、約15%(約6〜7人に1人)が多胎でした※3。2024年の年齢別の多胎率も、40歳が5.21%と全体(4.15%)より高くなっています※1。

Q. 双子を避けたい場合はどうすればいいですか?

受精卵を1個だけ移植する(単一胚移植)ことで、双子になる可能性を大きく減らせます。ただし、1つの受精卵が2つに分かれて一卵性の双子になることもあるため、ゼロにはなりません。

Q. 保険で胚移植できる回数は?

初めての胚移植の治療計画を立てた日の女性の年齢が40歳未満なら子ども1人につき通算6回まで、40歳以上43歳未満なら通算3回までです。回数は胚移植ごとに数え、出産するとリセットされます※7。

Q. 2個移植して、1人だけ育つこともありますか?

あります。2024年のデータでは、妊娠初期に多胎と確認された4,857件のうち、双子以上で出産したのは3,108件でした※1。途中で1人の成長が止まり、1人だけを出産するケースも含まれています。

まとめ:双子を産み育てる準備ができてから、2個移植を

保険適用で体外受精を受けやすくなった一方、回数制限のなかで2個移植を選ぶ人が増え、ARTによる多胎妊娠は2年連続で過去最多となりました※1,2。出産全体でも、双子以上の割合は過去最高です※5。

2個移植は、妊娠の可能性を上げるための選択肢のひとつです。でも、2個移植で妊娠した人の約2割は多胎になり※3、双子の妊娠は約半数が早産になります※9。

双子になる可能性を「十分すぎるくらい」想定して、双子を産み、育てられるかを考えられてから、2個移植を選びましょう。迷ったときは、主治医やパートナーとよく話し合い、妊娠のその先まで見すえて決めることが大切です。

参考文献

本文中の※番号は、下の参考文献の番号に対応しています。

※1 日本産科婦人科学会「2024年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績(ARTデータブック)」
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2024_JSOG-ART.pdf

※2 日本産科婦人科学会「2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績(ARTデータブック)」
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2023_JSOG-ART.pdf

※3 日本産科婦人科学会「2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績(ARTデータブック)」(「多胎妊娠数・率の推移について」「複数胚移植における多胎率」ほか)
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pptx

※4 Ito A, Jwa SC, Kuwahara A, et al. Impact of health insurance coverage for assisted reproductive technology on multiple embryo transfers and multiple pregnancies in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2025;51(5):e16304.
https://doi.org/10.1111/jog.16304

※5 厚生労働省「人口動態統計」(確定数)出生 表4-36 単産-複産(複産の種類・出生-死産の組合せ)別にみた年次別分娩件数
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411624

※6 厚生労働省「令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai24/dl/gaikyouR6.pdf

※7 こども家庭庁「不妊症・不育症へ向き合いやすく 保険診療の基礎知識」
https://funin-fuiku.cfa.go.jp/expert/17.html

※8 共同通信「生殖医療の多胎妊娠最多に 23年4千例、保険適用後増」(東奥日報 2026年5月25日)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/2280880

※9 国立成育医療研究センター「多胎妊娠外来」
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/senmon/tatai.html

※10 厚生労働省「労働基準法における母性保護規定」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku05/pdf/01d01.pdf

※11 (自治体の多胎家庭支援の例)大田区「多胎児家庭への支援」
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/kodomo/shien/kodomo_katei_shien_c/tataijisien.html

記事監修

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?
●不妊症看護認定看護師 小松原千暁さんのLINE相談(有料):https://line.me/R/ti/p/@185qqkaq?oat_content=url&amp;ts=01251711<br /> ●HP:https://108toya.com/works-1-1

RELATED ARTICLEおすすめ関連記事

RANKING⼈気記事

KEYWORDキーワード検索

ALL TAGSタグ一覧人気のタグ

CATEGORY

会員限定記事

会員限定の記事です。
ログインしてからご覧ください。会員登録は無料です。