【対談・前編】東尾理子×ヒロクリニック統括院長・岡博史先生|「35歳から高齢出産」が日本に与えた誤解と、知られていない男性不妊のリアル
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妊活お役立ち情報
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妊活や妊娠期において、多くのご夫婦が直面する出生前検査や遺伝の悩み。「何のために調べるのか」「陽性の結果が出たらどう向き合えばいいのか」――。
今回はヒロクリニック統括院長の岡 博史先生をお迎えし、「妊活の歩み方」主宰・東尾理子との対談(後編)をお届けします。
東尾理子自身が長男妊娠時に経験したクアトロテスト陽性の知らせと当時の葛藤、そして患者さんの「知る権利」や検査費用のリアルについて、じっくりとお話を伺いました。
「知る権利」は患者さんにある――問われる医療者の傾聴姿勢

岡先生:医療において「知る権利」はとても重要です。知るか知らないかでその後の人生の選択肢が大きく広がりますし、憲法でも保障されている権利です。
患者さんが「検査を受けたい」「知りたい」と思ったとき、医師側が「そんな検査は必要ない」と頭ごなしに否定してしまうのは違うのではないかと感じています。なぜその質問をされたのか、なぜ知りたいと思ったのか、まず患者さんの目線に立って耳を傾ける姿勢が欠かせません。
東尾:私自身、大学で心理学を専攻していたこともあって、相手を受け止める姿勢にはとても共感します。話を聞いてもらうなかで、自分自身の考えが整理されていくことってありますよね。
岡先生:そうですね。本来のカウンセリングは、「こうしなさい」と指示を出すコーチングとは違います。対話を通じて本人が納得し、自分で気づいて落ち着くべき場所を見つけていくプロセスを支えるのが本来の姿です。
しかし、世の中の遺伝カウンセリングのなかには、「検査なんて受ける必要ない」「なぜそんなことを言うのか」と、医療者側の価値観で指導するような形になってしまっているケースも見受けられます。患者さんが求めているのは、指示ではなく、自分たちの想いを受け止めてもらう対話なのだと思います。
遺伝カウンセリングは「検査の前」だけでなく、もっと広いもの

東尾:「遺伝カウンセリング」というと、妊娠が分かった後に赤ちゃんの状態を調べるために受けるものというイメージを持つ方も多いと思います。
岡先生:実は、出生前検査の前後に限った話ではありません。家族歴への不安や、「親族に病気が多いから自分もリスクがあるのか知りたい」といった相談も含め、遺伝に関わること全般が対象になります。
遺伝子検査を行うと、想定していなかった将来の疾患リスクが偶然分かってしまうこともあります。何の心の準備もないまま結果を知ってショックを受けないためにも、事前に知識や心構えを整えておくことが大切です。
東尾:検査を受ける前の段階で、予備知識を持っておくことが大切なのですね。
岡先生:はい。例えば欧米などでは、結婚前や妊娠前にご夫婦の遺伝的リスクを調べる「キャリアスクリーニング(保因者検査)」が広がりつつあります。
人は誰しも特定の遺伝子の変化を持っていますが、父親と母親から受け継いだ2本の遺伝子のうち片方が補っていれば発症しません(潜性遺伝/劣性遺伝)。しかし、夫婦双方が同じ遺伝子の変化を持っていた場合、4分の1の確率でお子さんが重い疾患を発症するリスクがあります。
事前に知っていれば、妊娠時の検査や適切な医療ケアなど、様々な備えや選択肢を持つことができます。「知ること」は、未来へ対処するための力になるのです。
東尾理子が語る、第1子妊娠時のクアトロテスト陽性と命への責任

岡先生:東尾さんはご自身の妊娠の際、出生前検査にはどのように向き合われたのでしょうか?
東尾:長男を授かった当時(出産時36歳)は、まだ日本にNIPTが普及していなくて、私が受けたのは「クアトロテスト」でした。
実は妊娠初期、ケトン体が出るほど朝昼晩ずっと吐き続けていて、意識が朦朧とするほどつわりがひどかったんです。
その体調のなかで病院に行き、「年齢的にこういう検査があります」と説明を受けて受けたのですが、妊娠中の様々な検査の流れの一つくらいの感覚で受けてしまい、結果が返ってきて初めてどんな検査だったかを実感したというのが正直なところでした。
岡先生:十分な心構えを持てないまま、検査の結果を受け取られたのですね。
東尾:はい。そして結果は「陽性(確率が80数分の1)」でした。
その先に「確定診断のために羊水検査に進むかどうか」という選択肢を突きつけられたとき、「中絶するか、しないか」という重い現実が頭の上にドカンと落ちてきたんです。
「今こんなに死にそうになりながら私のお腹の中で一生懸命育っている子どもの命を、自分が決める権利があるの?」と。その責任感の重さに圧倒されました。でも同時に、母親として「自分がこの子を守っていくんだ」と一番最初に強く自覚した瞬間でもありました。
靴を履かない夫(石田純一さん)とも話し合いましたが(笑)、最終的には自分の中で「どのような結果であっても受け入れる心と知識の準備をして出産に臨もう」と決め、羊水検査には進みませんでした。
「先生のところ、高くないですか?」――高齢出産・不妊治療と検査費用のリアル

岡先生:東尾さんのように覚悟を決めて産む決断をされるのは本当に尊いことです。一方で、実際の診療で患者さんと向き合っていると、「障害を持った子が生まれたときに、自分たちだけで育てていける自信がない」と切実に悩まれるご夫婦がとても多いのも現実です。
共働きでなんとか生活しているなかで、「育てていけるのか」と考えたときに不安になるのはごく自然なことです。だからこそ「もし何かあるのなら事前に知りたい」と検査を希望されるんですよね。
東尾:でも先生……ホームページ見たら、検査高くないですか? めちゃくちゃ高くないですか(笑)?
岡先生:あ、高いですね(笑)。でも、子ども1人成人するまで育てるのに大体3000万円くらいかかりますからね。遺伝子検査なのでどうしても費用がかかってしまうんです。
東尾:まだ子どもが育っていくときの塾代とかのリアルな金額を知らない段階だと、金銭感覚として「すごく高いな」って思っちゃいますよね。やっぱり受けたいという方は多いんですか?
岡先生:受けたい方はとても多いです。日本って今、どのくらいの妊婦さんがNIPTやってるかご存知ですか?
東尾:全然知らないです。
岡先生:10%くらいですよ。
東尾:あ、でも10%はやってるんですね! それは不妊治療されている方が増えたから、とかっていうこともあるんですか?
岡先生:それもあると思います。やっぱり高齢出産に臨むので、「しっかり調べたい」っていう思いがありますよね。
ただ、ベルギーやオランダなどヨーロッパでは受検率が70〜90%に達しています。ドイツでも公的保険が適用されて無料になりました。海外で受検率が高い最大の理由は「国の補助が効くから」です。
無料になればみんな受けたいんです。日本でももし無料になったら、国民性を考えても90%近くの方が受けると思います。高額な費用がハードルになって知る機会を諦めてしまうことがないよう、選択肢を広げていくことが大切だと考えています。
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本日お話をおうかがいした方
ヒロクリニック
統括院長
医師・医学博士 岡 博史先生
● 略歴
o 1996年 慶應義塾大学医学部 卒業
o 2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得
o 2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手
o 2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業
o 2009年 医療法人社団福美会 理事長
o 2015年 医療法人社団福美会 理事
●資格
o CAPラボディレクター
o 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
o 日本医師会 産業医
o 東京衛生検査所 指導監督医

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