卵子バンクとは？台湾の卵子提供による不妊治療事情#1｜NUWA生殖医療センター

不妊治療を経験した東尾理子が、妊活に役立つ情報・施設・取り組みなど、関係者にさまざまな角度から質問を投げかけ深掘りしていく連載です。

今回は、台湾で初のグループ生殖医療センターである「NUWA生殖医療センター（以下、NUWA）」台北院の沈孟勳（シェン・モンシュン）副院長と東尾理子の対談を、全6回でお届けします。

第1回は、今、注目される台湾の卵子バンク、卵子提供の最新事情について迫ります。

卵子提供での不妊治療を行う「NUWA生殖医療センター」

東尾：日本には、卵子提供での不妊治療というものがありません。台湾では行われているということで、まず卵子バンクとはどのようなものなのかをお聞かせください。

沈孟勳副院長（以下、沈先生）：卵子バンクというのは、いわゆるドナーさんの卵子を凍結して銀行で貯蓄をするように貯めておくものです。一般的には、卵子を必要とするレシピエントのために使用します。

ドナーの卵子を必要とする女性は、すでに何度も体外受精をした方や卵巣機能が衰え始めている方などです。卵子バンクにある若い第三者の卵子を使って、自分が妊娠するという治療になります。台湾では生殖医療センターによってこのような施設を持っているところがあります。

東尾：沈先生がいらっしゃる NUWAでは、そういった卵子バンクから卵子提供での不妊治療を受けることができるんですね。台湾に施設が3か所あるとお伺いしました。

沈先生：NUWAは、台湾で最大クラスのグループ生殖医療センターです。私たちの特色は、台湾の北部、桃園地区、そして中部にそれぞれクリニックがあるところで、台湾では初となる、異なる地区に分院を持つグループ生殖医療センターです。台北院は最も早く3年前の2021年に開院し、その後、桃園地区や台中地区へと拡大しました。3つの中で規模が最も大きいクリニックは、台中院です。

東尾：日本から治療を受けたい場合、どちらの施設が行きやすいのか迷うところです。交通の便はいかがでしょうか？

沈先生：海外から診療に来られる方にとって、交通アクセスの便利さは重要なポイントになると思います。東京からですと、台北院は台北松山空港まで飛行機の直行便があります。台北松山空港から台北院までの距離は近く、車で10〜20分ほどです。 桃園院は、桃園国際空港をご利用いただけます。台中にも空港はありますが、現在は日本からの乗り入れはありません。

東尾：台中院は一番大きなクリニックでしたね？直行便はなくてもクリニックのYouTubeを拝見したら、交通アクセスがとても丁寧に案内されていますね。

沈先生：そうです。台中院は、3つのうち最大規模のクリニックです。台湾にはハイスピードレールという電車もあるので、東京から直行便がなくとも、台湾内でのアクセスは大変便利です。

現時点で日本や海外から来られる患者さまに対して、私たちは近隣ホテルの紹介もしております。そこからタクシーやMRT（電車）などの交通機関を使用してご来院いただいています。今後、空港からの送迎サービスも計画中です。

卵子バンクとは何？メリットは？

東尾：改めて、台湾での卵子バンクと卵子提供についてのお話を伺いたいと思います。卵子バンクと卵子提供の違いについて教えていただけすでしょうか。

沈先生：一般的に卵子バンクという概念が始まるまでは、ほとんどが新鮮卵子とのマッチングでした。患者さまが来られてから、その方に合うような若い女性のドナーを探し、卵子を提供してもらうという方法です。ただしドナーが条件に適合しているかどうかは調べてみないと分かりません。

東尾：ドナーの適合条件とは、どのようなことを調べるのでしょうか？

沈先生：まずは血液型が一致している必要があり、ドナーとなる若い女性は健康である必要があります。特殊な感染症の疾患や遺伝性疾患がなく、レシピエントの希望する外見、髪の毛、顔の形など、それから学歴に関する希望条件があることもあります。

東尾：条件にマッチするドナーを見つけてからの採卵となると時間がかかりそうですね。

沈先生：そうです。しかも、条件を満たす方を探すだけではなく、政府機関への書類審査にも時間がかかります。卵子バンクのメリットは、既に選ぶ候補がいるという点、そして卵子の数がいくつあるのかを知ることができるという点です。レシピエントの方に、既に採卵が終わった条件の良いほうをご紹介することができます。そうすることでマッチングにかかる時間をかなり節約できます。

新鮮胚でも凍結胚でもドナー希望は可能

東尾：なるほど。卵子バンクであれば、レシピエントのタイミングで卵子提供ができるという利点があるんですね。患者さんによっては凍結していない新鮮胚の提供を希望する方もいらっしゃると思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか？

沈先生：患者さまによっては、凍結卵子が良くないんじゃないかなど疑問を持っている方もいらっしゃると思います。しかし、私たちが観察した結果、凍結卵子を融解した後の成功率は、新鮮胚を用いた場合とそこまで差がないことが分かっています。

もちろん患者さまが新鮮胚の提供ができるドナーを希望される場合、待機期間として3か月〜半年待つことに問題がなければ、新鮮胚での治療も可能です。ただし、海外からの患者さまや年齢が高めの患者さまなど、なるべく早く治療を進めていきたい方にとっては、卵子バンクをお選びいただくのがより良い選択肢かと思います。

台湾の卵子バンクに提供するドナーの条件。日本人はいる？

東尾：先ほどドナーのお話が出ましたが、卵子バンクに卵子を提供するドナーについて少しお聞かせください。まずドナーになるには、年齢的な制限はあるのでしょうか？

沈先生：台湾の人工生殖法には、ドナーになるには一定の年齢制限があり、20～40歳までの間と決まっています。法的な年齢制限の範囲は広いのですが、NUWAでは年齢に関してより厳しい制限を設けています。これは台湾のほとんどの生殖医療センターでそのようになっています。年齢が若いほど卵子の質が良く数も多くなるからです。

東尾：クリニックごとに、法律よりも厳しい独自の年齢制限があるということですね。年齢以外にドナーになる条件はありますか？

沈先生：基本的には年齢制限の条件をクリアして身体の状況が良好ということであれば、ドナーになっていただけます。ただし私たちは治療に進む前に、厳しい選定を行っています。そのために採血検査やエコー検査、細菌培養の検査などを実施し、これらの検査で問題がないことがわかり、その他の条件も踏まえてクリアになった上で、やっとドナーとして登録ができます。

東尾：NUWAの卵子バンクには日本人のドナーはいらっしゃいますか？

沈先生：います。そして、日本人のドナーを希望される患者さまも多くいらっしゃいます。実際に、私も私以外の医師も、日本からの患者さまを担当しています。今、日本から台湾に来て卵子バンクでの卵子提供の不妊治療を希望される方がどんどん増えています。

東尾：卵子提供での不妊治療件数は1年でどのくらいあるのでしょうか？もし教えていただけるのでしたら具体的な数字をお願いします。

沈先生：NUWAでは、台湾人の患者さまだけでも、1年で少なくとも40～50例以上あります。コロナが終息した頃から少しずつ台湾に来やすい状況となり、日本を含めて海外からの患者さまも毎年10〜15％のスピードで増えています。去年から、担当する海外からの患者さまが少しずつ増えてきたんですが、すでに無事に妊娠した患者さまは少なくとも10人近くはいらっしゃいます。

■卵子提供を受けるレシピエントになるための条件とは

東尾：卵子バンクには日本人のドナーもいて、実際に卵子提供での不妊治療では日本人の成功例も出ているのですね。では自分が台湾で卵子提供を受けたいと思った時、レシピエントにはドナーのように年齢制限はあるのでしょうか？

卵子提供を受ける際に年齢制限はない！

沈先生：レシピエント側は、45歳以上の方は別途健康チェックが必要になりますが、特に明記された年齢制限はありません。ほとんどの方が最後の砦となる卵子提供を決断されるまで大変な苦労をされています。

妊活を続ける中で何度も体外受精などの治療をされていて、採卵で卵子が採れなかったり、移植しても何度も失敗したり、何度も流産したり……。

もうこれ以上、自分の身体では不妊治療を続けるのが難しいとい状況になった時、私たち医師は、第三者からの卵子を使って自分で妊娠することができますよという選択肢を示すこともあります。ですので、レシピエント側には年齢で差はありません。

東尾：何年か前に台湾で卵子提供を受けた62歳の方が双子を出産したというニュースを見たことがあります。レシピエントは年齢が高い方が多いのでしょうか？

沈先生：あれは大変な勇気だと思います。私も同じく女性ですから、同じ女性として多少なりとも気持ちが理解できます。妊活中に感じる、どうしても欲しいというあの気持ちを。

もちろん出産はおめでたいことなのですが、高齢妊娠がもたらすリスクがとても高い点も考えていかなければなりません。レシピエントは、年齢が若い方でもなることがあります。実は年齢的に若い人でも卵巣機能が良くない方が結構いらっしゃいます。ただし子宮の状況が健康であれば、卵子提供治療の妊娠率は一般的にはとても良い成績が出ています。

■台湾ではレシピエントとドナーの間に法律の保護がある

東尾：台湾で卵子提供での不妊治療を始めるにあたり、ドナーについてどんな情報を知ることができるのでしょうか？

沈先生：台湾では、レシピエントとドナーの間には法律の保護があります。匿名でのマッチングになるので、相手が誰か個人情報を知ることはできません。ただしレシピエントは条件を生殖医療センターに対して提示できます。

最も重要なのは血液型、特殊な遺伝性疾患がないかなどです。またドナーの外見、例えば自分に見た目が似ている方が良いとか、色黒の方が良いとか、目が二重だったりえくぼがあったりする方が良いといった条件もあります。 大学生や大学院の学歴なども、私たちもできる限り希望に沿うようにいたします。

東尾：将来、ドナーの方と会いたいと思ったら会うことは可能なのでしょうか？

沈先生：現状、台湾では難しいと思います。ドナーの写真が見られる欧米諸国とは違って、台湾では匿名でのマッチングとなるためです。以前担当した台湾人の患者さまで、どうしてもドナーの見た目を知りたいとおっしゃった方がいらっしゃいました。

私たちはドナーの方々が卵子を提供してくださったことに感謝していますし、ドナーを守る立場から、彼女たちが特定されないようにする必要があります。倫理的に見ても、そのほうが良いやり方だと思います。

東尾：卵子提供での不妊治療のために台湾のNUWAに行ってみようと思った場合、まず何をしたら良いのでしょうか？

沈先生：NUWAの初診の予約の方法はさまざまな方法があります。定期的に東京で説明会を開催しています。インターネットの予約も可能ですし、電話も大丈夫です。オフィシャルLINEもありますし、メールでも、いろんな方法で予約できます。

ご予約はこちら

●台中院：台中市西屯区惠中路一段88号9階

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電話番号:+886 4 2255-7688

Eメール（３院共通）:ivfconsult@nuwacare.com

●桃園院：桃園市桃園区経国路839号6階

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電話番号:+886 3 316-6288

●台北院：台北市大安区信義路三段149号14階15階

電話番号:+886 2 2706-5288

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今回は、NUWA生殖医療センターの場所や、卵子提供のメリット、日本人のドナーの有無などについておうかがいしました。

次回は、卵子提供を用いた不妊治療で提供卵子数や胚盤胞到達率、妊娠率など、気になる点についておうかがいしていきます。＃２はこちら

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