採卵したいのに!卵巣機能の低下の原因は?治療方法は?|認定看護師 小松原千暁

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2023.11.21

不妊治療

採卵したいのに!卵巣機能の低下の原因は?治療方法は?|認定看護師 小松原千暁

 

年齢と共に、卵巣機能が低下するのは仕方が無いにせよ、採卵したい!どうにかしたい!何か良い方法はないの?と思っている方も多いのでは。また、原発性卵巣機能不全で、年齢が若いのに、なかなか卵胞が育たないという方も中にはいるのではないでしょうか。今回は、不妊症看護認定看護師の小松原千暁先生に、POI(原発性卵巣機能不全)とDOR(卵巣機能低下)の違いと治療について説明していただきました。

POI・DORとは

不妊症看護認定看護師の小松原千暁と申します。今回は、POI(原発性卵巣機能不全)とDOR卵巣機能低下)の違いと治療についてお話させていただきます。

  1. 1つ目はPOIとDORについて。
  2. 2つ目はPOIとDORの治療について。
  3. 3つ目はメンタルケア

のポイントについてお話をします。

このPOIとDORと、POFというのもあります。POI=原発性卵巣機能不全になります。そしてPOF=早発卵巣不全。以前は早発卵巣不全をPOFという表現をすることが多かったのですが、最近はPOI=原発性卵巣機能不全と、こちらの呼び方でお伝えすることが多いようになってきています。

 

POI・原発性卵巣機能不全というのは、全女性の人口の約1%に見られ、30歳未満の0.1%、40歳未満の1%

 

無月経の方の5〜10%に当たると言われています。40歳未満で4ヶ月以上の無月経があり高ゴナドトロピン値・低エストロゲン値。ゴナドトロピン値が高いというのは、FSH値が高い状態。低エストロゲンというのは、女性ホルモン エストロゲンが低い状態。これらを満たす状態をPOIやPOFと呼びます。

 

同意語として使用すると、日本産科婦人科学会のガイドラインにも載っております。早期に卵胞が枯渇、卵胞がなくなってしまう、あるいは卵胞減少が病態として存在する一方、加齢による閉経とは異なり、卵巣機能が復活する例もあります。

 

通常の卵巣が2、3センチに対して、卵巣自体が萎縮し、超音波に卵胞が見えない状態です。卵巣自体も萎縮で1センチぐらいになっている状態に見えることがあります。原因については、不明と言われています。

原発性卵巣機能不全(POI)の原因は不明!

POIの75〜90%は原因が不明です。遺伝性、免疫性、感染性、医原性、その他の原因と思われる部分がここに含まれます。

 

例えば ターナー症候群。Xの染色体に特徴的なものがある場合、通常だったらXXのところ、Xが1つしかない。脆弱X症候群= 染色体の異常、遺伝子の異常がある場合。卵巣にもその染色体が影響している。卵巣の中で卵胞が育たない、作られないという場合があります。免疫性といって自己免疫疾患の甲状腺炎、重症筋無力症、SLE、糖尿病など。感染症としては、おたふくかぜ になって卵巣に炎症が起きた場合。このようなことが原因であったり、結核であったり、水痘症、このことが原因で卵巣機能が低下してしまうことがあります。

 

また、医原性の原因として、両側の卵巣を摘出したため卵巣の中で卵胞が育たない場合、ホルモン産生卵巣腫瘍、卵巣の中に腫瘍ができてしまった場合、がんの化学療法をした場合、免疫抑制剤など 強い薬剤を使った場合などがあります。

その他、ガラクトース血症 (軽症) の場合、FSHの受容体異常 などが挙げられていますが、ほとんどの場合が原因不明です。

POIの診断基準は、3つあります。

1つ目は 40歳未満の 続発性無月経。

最初は月経があったけれども、その後月経がなくなってしまったケースです。

原発性の場合は、最初から生理がない人です。

 

次に、第2度無月経。これは卵胞が育たず月経がこないということです。この状態は どういうふうにわかるかというと、ゴナドトロピン高値、血液の中のFSHの値が40以上の高い値になっている。エストロゲンが低値で、女性ホルモンが作られなくなり、エストラジオールが15~30pg/ml以下になると、POIと診断されます。

POIの場合、卵子が発育したら、その卵子の染色体異常率は年齢相応です。POIの場合、閉経しているような状態なのですが、その中でもまれに卵胞が育ってくることがあります。年齢が高いと卵子の染色体異常率が高くなりますが、20〜30代の場合は、高齢の人の場合よりも、染色体異常率は低くなります。

卵巣機能低下(DOR)は更年期の入り口?

DOR=卵巣機能低下、これは過齢が原因となって、35歳頃から徐々に卵巣が正常に働かなくなり、月経周期の乱れ(長くなったり短くなったり)が起き、そして無月経などが起こることです。

ホルモン値としては、高ゴナドトロピン値、低エストロゲン値を満たす状態 。年齢が45歳から55歳ぐらいになると、徐々に卵巣機能は低下していき、閉経するというのが自然の流れです。DORは更年期の入り口に入ったことを示すと考えていいと思います。

 

40歳過ぎたら卵巣機能は低下してきて、卵子の老化は進んでいきます。55歳くらいで閉経になると言われていて、早い方だと50歳くらいで閉経します。40歳から閉経までの間、卵巣機能低下は加齢とともに起こることなので、抗えないところがあるかと思います。

原発性卵巣機能不全と卵巣機能低下の自覚症状はまさに更年期症状

POIとDORの自覚症状ですが、POIは更年期症状と同様の症状です。DORはまさに更年期症状の始まり、というふうに考えていいと思います。症状としては同じような症状になります。全身の症状は、顔が赤くなったり、のぼせたり、発汗、急に熱くなったり…と思ったらめまいがしたり、頭が痛い、動機、急にドキドキしたり、血液の流れが悪くなって 肩こりがあったり、腰痛、冷え、疲れ、などがあります。

 

エストロゲンが減少し、イライラ、情緒不安に

精神症状としては、イライラする、ホルモンバランスが崩れてきて、情緒不安、不眠、意欲の低下、抗うつなど、エストロゲンが減少し、骨密度の低下が起こり、骨折しやすくなることもあります。また、高脂血症が起こり、心臓や血管に動脈硬化などが起こることが考えられます。このような自覚症状があると、どちらも高ゴナドトロピンの低エストロゲンの状態になって、起こるものになりますので、POIは更年期症状と同様の症状、DORは更年期症状の始まりということになります。

原発性卵巣機能不全(POI)と卵巣機能低下(DOR)は年齢が違う

下表に示すとPOIとDORは、卵巣の状態というのは同じ病態です。ただ、年齢が違うということになります。POIの方の治療は、ARTを行うことによって、POIでも、全く育ってこないという人もいれば、数ヶ月に1回育ってくる人、1年に1回育ってくる人と様々です。ARTによって卵胞発育があれば、年齢相応の妊娠率に期待ができますので、いかに育ってくるのをしっかり見逃さず観察して、採卵に持っていけるかどうかが、大切になってくるかと思います。

 

卵巣機能が何かしらのことで復活するという例もわずかにあります。DORの方は年齢に準じて、徐々に卵胞発育ができなくなってくるので、いかに早い段階で、卵胞を取って 卵子を確保していくかが重要になってくると思います。

原発性卵巣機能不全と卵巣機能低下の治療方法、どんなことをするの?何があるの?

高ゴナドトロピン血症とは?

高ゴナドトロピン血症 とはどういうことか。視床下部から、下垂体に命令がいき、FSH、LHホルモンが卵巣に向かって刺激することによって卵胞が育ってきます。卵胞が育ってくると、そこからエストロゲンが出て、うまくエストロゲン出てるよ、となるとフィードバックがいきます。卵成熟して、排卵していいよ、LHホルモンが、サージとしてドッと出るというホルモンの流れがあります。

 

うまく卵巣の中で卵胞が育ってないよ、卵胞が育ってないから命令をたくさん出して、卵巣から下垂体に命令をネガティブフィードバックがいきます。

 

そうすると下垂体から「分かった!たくさん頑張れって言うね、応援するね」と、たくさん命令を出します。命令というのは FSH で、下垂体は FSHやLHを大量に出して卵巣を刺激します。

 

それによって FSHが高い状態になり、うまく卵巣の中で卵胞が育っていないので、エストロゲンは低い状態。頑張れって言うけど育たない。

 

卵胞液の周りには顆粒膜細胞が存在し、顆粒膜細胞にはFSHを受け止める受容体がありますが、命令をたくさん出しすぎることによって、埋まってしまうのです。

 

FSHがどんどん命令をだしても、逆にエストロゲンが出なくなる、ということが起こってきます。

高ゴナドトロピン血症の治療って?

これを改善するためにはどうするのか。そこで、高ゴナドトロピン血症の治療として卵巣が高い濃度のFSHの刺激を受け続けると、頑張れ!頑張れ!頑張れ!頑張れと延々に言われていても顆粒膜細胞にあるFSH受容体の数が減ってしまう。

命令することを受け止めていたいけど、なかなかそれを受け止められなくなってしまう。

FSH受容体を増やして卵胞発育を促し、発育したらARTを目指す、というやり方をしていきます。それを、カウフマン療法と言います。

この治療は高ゴナドトロピン血症の改善治療として、カウフマン療法とGnRH agonist療法が挙げられます。

カウフマン療法とは

カウフマン療法は、エストロゲンとプロゲステロンを補充することで、ネガティブ・フィードバックを使用する方法です。月経3~5日目ごろにFSH値を測定し、15~20mIU/mL以上あればカウフマン療法を行う、基準値より下がれば発育状況を定期的に確認する。※施設によって基準値は違います。また、薬も内服薬や張り薬など様々です。

 

このスライドの表(下)にある、月経の 3~5日目頃の時にFSHを測定します。15から20mIU/mL以上あれば、高ゴナドトロピンの状態になっていたらカウフマン療法をする、ということになります。

 

この時に基準値よりも下がれば、卵胞発育を診ていきましょう。この値が高かった場合は卵胞ホルモンのエストロゲンを20日間、最初の10日間終わったら黄体ホルモンのプロゲステロンを10日間一緒に薬を使います。うまく卵胞が育ってその後、卵胞が育ったところに、黄体ホルモンもしっかり出たというのを頭に記憶させます。記憶させることによって、FSHをそんなに出さなくても大丈夫、となって休まることでFSHの受容体というのが増えていきます。

 

飲み終わって3、4日から1週間でまた生理が来ます。また月経1日目に戻ってFSHを測って、まだ高いとなったら、カウフマン療法をもう1サイクルします。

 

卵巣が疲れているかどうか、生理の始まりのFSHで測定して決めていきます。施設によって基準値は違って、15〜20というところもあれば、10で できるところもありますし、ある程度高くても、超音波で、卵巣の中で、卵胞が見えたらスタートとなることもあります。

 

スライドでは内服薬で表現していますが内服薬だけじゃなくて、貼り薬、塗り薬などがあって 卵巣を休めていきます。

GnRHアゴニスト療法とは

GnRHアゴニスト療法は、直接下垂体抑制をかける方法です。GnRHアナログやGnRHアンタゴニストにて月経3~6か月間止める方法です。しばらく生理を起こすのをやめて抑制をかける。そうすることによってFSHの受容体を増やしていく、というやり方があります。これらが、高ゴナドトロピン血症の治療ということになります。

 

2つめは、 副腎皮質ステロイド方法です。自己免疫疾患が関与していると、考えられる症例に対して行います。ステロイド剤を投与しながら 排卵誘発剤を試みます。

プレドニンを3日目から飲んでいき、排卵誘発剤の内服薬を使って、ある程度卵胞が見えてきたら注射を打って、HCGをして、体外受精になります。こうやってジワジワ、ジワジワ、少しずつ、少しずつ見ていく、というやり方があります。副腎皮質ステロイド療法というのが自己免疫疾患に対しての治療になります。

ART治療とは

3番目は ART=体外受精ですね。基本的には体外受精というのを目指して、頑張って育ってきた卵胞をしっかり、確実に採卵をして育てていくやり方です。

FSHを先ほど言ったように測って、12とかであれば このサイクルで体外受精をトライしましょうと言って経過を診ていきます。

 

薬を飲んでいただいて卵胞が大きくなったら、排卵誘発剤を追加で打って途中でLHホルモンを抑える注射をして、ある程度大きくなってきたら切り替えのHCG製剤をして採卵、胚移植をするのか、一旦凍結をするのかは、その時の状況とかクリニックの方針によって違ったりします。

 

スライドは、見えてきたことを想定して作っています。薬を使っても、卵胞が見えてこない場合、お薬とか全く使わないでとにかく経過を診ようと言ってこの辺でFSHを測ってから10日目、13日目ぐらいに見て、うまく育ってなかったら、また10日後診ようね、1週間後診ようねと言って、お薬を使わずに経過を診ていって、何とか育ってきた!となったら注射をする、というやり方もあります。

そんなに強くお薬を使わないというのが、一般的なスタンダードな方法になります。どういうようなやり方であっても、とにかく卵胞が育ってきたら、それを見逃さず採卵するということが大事かと思います。

卵巣PRPとは

4つめ卵巣PRPは、再生医療の一種で、患者様ご自身の血液から抽出した多血小板血漿PRPを用いる治療法です。この治療は、早発卵巣不全によって、卵胞発育が起きにくい方、年齢による卵巣機能低下によって、卵胞発育が起きにくい方、卵子及び胚の質が悪く、発育しないまたは着床しない方を対象にしています。

 

血小板から分泌される様々な成長因子(細胞の増殖、成長を促進する物質)を濃縮した多血小板血漿が細胞の増殖を促進する効果や炎症を抑える効果を持つことを利用します。それによって、卵巣機能を改善し、発育卵胞数の増加させる、卵子および胚質改善向上効果が期待できます。

 

採血をしてPRPを取り出し、抽出し卵巣に注射するというやり方があります。

IVA:卵胞活性化療法とは

5つめに卵胞活性化療法が挙げられます。体外に取り出した卵子にある操作を加え、卵巣内にある原子卵胞を体外で成長を開始させ、自身の体内に戻す方法です。卵子を作り出す方法ではなく、卵胞が残っていない方には有効ではありません。卵胞が少しでも残っていると思われる方に行います。卵子の質を改善することもできません。

 

スライドの図は聖マリアンナ医科大学の発表で概要を示したものになります。腹腔手術をして、卵巣の中から卵巣組織を取り出します。卵巣組織の中に、卵子のもとにあるものがあるか確認しつつ、細胞を培養していきます。活性化因子の薬を使い、成長してから、2回目の腹腔鏡で自家移植します。自分の卵巣に戻す。採って活性化させた卵巣を戻す。

 

卵巣を刺激することによって卵を育てて採卵する、胚移植するということです。

 

聖マリアンナ医科大学、ローズレディスクリニック、富山大学などで実験して実施して論文発表などもありますが、研究段階と言われています。2016年から行われています。卵巣の中の細胞を取って、腹腔鏡手術が2回=取るときと戻す時。卵子の質を改善するものではなく、数が残っている、数をちょっと引き出させる成長させる意味合いの方が強いような治療です。

卵巣機能不全、メンタルケアのポイント

長期間の治療になるかも

卵胞発育が数ヶ月〜1年に1度の場合もあり、その卵胞発育を逃さないためには、定期的にFSH測定や超音波検査が必要です。しかし、通院して採血や超音波検査をするが、思うような結果が伴わず、カウフマン療法を繰り返すことになることもあります。

治療が長期間に及ぶ可能性があることを念頭に、不妊治療を開始してください。

元気の源を見つけよう

治療を始めるときには、自分が楽しいと思えること、リラックスできることをしっかり見つけてください。ひとつひとつ達成できるようなことにチャレンジすると、もし治療が上手くいかないときにも元気の源になってくれるかもしれません。

相談相手を見つけましょう

相談相手を見つけて治療に行き詰まったら誰かと話をしましょう。ご主人だったり、友人や看護師、妊活研究会の仲間。心の中にあるモヤモヤを誰かに伝えてみると少し気持ちが楽になるかもしれません。

お二人が自分達らしい選択ができて、その選択の先に素晴らしい人生があることを願っています。今日はPOIとDORについてのお話しでした。

動画講座はこちらからご覧いただけます

プロフィール

小松原 千暁
不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター 
不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?
◾️東尾理子主催「妊活研究会」

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