不妊治療クリニックの選び方、見るべきポイント5選
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妊活お役立ち情報
2023.12.15
不妊治療
不妊治療クリニックの選び方、見るべきポイント5選
今回は、不妊症看護認定看護師の小松原千暁先生に、妊活を考えた時の病院の選び方について解説いただきました。
不妊治療専門の病院選びのポイントは、以下の5つあります。
①生殖医療専門医
②不妊治療専門施設 ART実施施設
③妊娠率
④専門スタッフ
⑤仕事と治療
1.生殖専門医のいる不妊クリニックを選ぶ
私は、「生殖医療専門医」この資格を持っている先生が皆さんの診察をする、というのが一番良いと思っています。
この生殖医療専門医とは、婦人科または医療機関の専門を取得した医師が、さらに生殖医療の臨床経験を一年以上積み、不妊専門クリニックや不妊専門病院で実績があるところで、経験を積んで、そして合格後に認定を受けるという資格になります。
2021年現在で、920名を取得しているそうです。生殖医療専門医というのは、生殖医療に精通しているため、一般治療や同じ方法のみならず、体外受精も含めた幅広い選択肢の中から、その方の治療選択をしてくれるはずです。
そのため、生殖医療専門医を頼るということが、妊娠への近道につながります。
また、特定不妊治療助成制度の申請時に「年間100件実施している施設では、この生殖医療専門医がいなければ、指定機関になれない」という信頼のある資格です。
ちなみにJISARTという日本生殖補助医療標準化機関という機関があり、ここは生殖医療の基準を設けて認定を受けている施設が31施設あり、生殖医療専門医の在籍はもちろん、3年ごとに更新し審査するため、規定がしっかりしている施設になります。
ここにQRコードを付けているので、もしよろしければ読み取っていただければと思います。
2.不妊治療専門病院、ART実施をしている病院を選ぶ
生殖医療専門医の先生たちが働く所は、不妊治療の専門施設や病院、体外受精実施施設ということになります。厚労省の登録施設は、2021年時点で、626施設あります。
一般不妊治療しか行っていない施設であれば、体外受精に進むチャンスを逃している可能性もあるのです。
これは、私の見解ですが、年間の体外受精の実施件数、採卵が年間500件以上、胚移植は700件以上が理想です。
やはりある程度の件数(実績)があれば治療のプロトコール(方法)、いろんな治療の経験値が高く、治療の選択肢を幅広く提案してくれると思います。
厚労省の全国の特定不妊治療助成事業、これが指定医療機関の情報公開しているのが東京都だけでも調べると104施設あります。かなり多くの施設の中から皆さんは、選ぶことになるため、それはそれで選び放題のようでもあり、多いがゆえに迷うということがあると思います。
3.妊娠率が分かっている病院を選ぶ
妊娠率というのは、年代別に分けて掲載しているところが多いのですが、しっかりした施設はホームページで、年齢別、方法別、初回の胚移植の妊娠率といった内容の情報提供をしています。
方法別また初回の胚移植の妊娠率というのは、体外受精を初めて行う際に、どのぐらいの妊娠率があるのかということです。治療は、繰り返し行っていくと少し下がっていくこともあります。そのため、初回でどのぐらいの妊娠率があるのかという点を見極めるのも良いと思います。
ホームページに掲載されていない施設の場合、厚労省の全国の特定不妊治療助成事業として医療機関の情報公開をしています。その中で掲載されている施設もあります。
それがこのスライドのQRコードから読み取っていたければ、全国の施設がありますので、その中から選ぶというのも1つかと思います。地方の場合は東京と違ってかなり数が減ってきますが、選択する1つになります。(現在はクローズしている自治体もあります)
*妊活の歩み方の施設情報からご覧いただけます。
4.不妊症看護認定看護師、生殖医療コーディネター、体外受精コーディネターなどの専門スタッフがいる
専門スタッフ生殖医療専門医であることはもちろんですが、患者様を中心に考えたチーム医療というのが重要になってきます。不妊治療の場合、医師が治療方針を決定し、患者様に説明し、同意をして治療がスタートします。
でも、治療内容によっては、患者にとってとても理解が難しくなります。分からないことを医師聞くのが基本ですが、なかなか聞けないこともあると思います。そんな時はコメディカルにどんどん聞いていただくのが良いです。
チームの中心というのは患者様なので、患者様がわからないことは、納得するまでしっかり聞いて、それからスタートするのが良いのです。特に私もそうですが、不妊症看護認定看護師というのは、全国に約170名以上いますので、不妊症看護認定看護師が所属していることが分かれば、その人にどんどん質問するのが近道だと思います。
もし不妊症看護認定看護師が不在の場合は、生殖医療コーディネター、または生殖医療相談不妊カウンセラー、体外受精コーディネターという資格を持っている人たちがいるので、不妊治療のことももちろん、心理面の配慮という点も勉強している資格になりますので、こういうスタッフがいるかどうか、という点を見るのも1つです。
またその他にも臨床心理士、薬剤師、認定遺伝カウンセラー(遺伝子・染色体などについて詳しい)資格を取得している人もいます。他には、栄養士、鍼灸師などがいるところもあります。
そして、やはり体外受精の一番の要になるのは胚培養士です。実は胚培養士というのは資格が2つあり、日本卵子学会が認定する生殖補助医療胚培養士というのと、エンブリオロジスト学会が認定する臨床エンブリオロジストがあります。
大学または大学院で生物関連の科目を修得していて、臨床検査技師また正看護師の資格を取得後、胚培養士として1年以上の臨床実務経験があります。取得後は5年ごとに更新で、臨床の現場で従事し続けていることが条件として掲げられており、この点は非常に大変なところだと思います。
そして、上級編として、生殖補助医療を管理胚培養士という資格を取得している培養士もいます。このような資格を持っている培養士が施設にいると、やはりその培養環境というのは格段に整っているということになります。
先ほど述べたように、体外受精、ART件数が多いと胚培養士の人数も多く必要になります。胚培養士が胚移植前後の説明を実施したり、相談室などを開設している施設もあります。
胚について詳細を聞きたい時は相談する、このような場があると良いと思います。この胚培養士の腕、経験値などは、大変重要になってきます。
5.仕事と不妊治療が両立できる
そして仕事と治療です。今、現在の皆さんの個々のタイムスケジュールは治療との調整が必要になってきます。仕事と治療、家事など、女性は24時間全て忙しいですね。忙しいタイムスケジュールを組んでいると思いますので、自宅と職場との距離、受診可能な時間帯の検討、夕診がやっているかどうか、自宅との距離といった点を検討していく必要があると思います。
そして、仕事はできるだけ継続していくことを推奨します。とても難しくてパートになったり、退職せざるを得ないということもありますが、できるだけ継続していただいた方が良いと思います。
これは不妊治療は高額なため収入がある方が良い、ということはもちろんですが、仕事があることで、元々の自分のぺースっていうのをそのまま過ごせる、という利点があります。自分のペースで過ごせる時間があるということですね。
不妊治療だけに集中しすぎることで考え過ぎてしまう、という、デメリットを減らしたいと考えています。もしお仕事をされてない方は自分の趣味であったり、何か不妊治療から離れられるような、違うことを考える時間を作るように心がけるといいのかなと思います。
そして仕事と不妊治療の両立については、厚労省の方が職場作りのマニュアルや、サポートハンドブック、不妊治療連絡カードというのを紹介したりもしていますので、こういうものも、一度見ていただければと思います。
そして職場に伝える、伝えないっていうのは、本当に個人のことではあるのですが、もし伝えられるような環境があれば、このようなハンドブックやマニュアルというのも参考にするのも、1つです。国家公務員向けの出生サポート休暇を人事院が定めており、不妊治療のための有給休暇が5日間、体外受精の場合は更にプラス5日間、といったこともするようになっていますそういうことも踏まえて、少しずつこういうことが周知されていくと通院しやすいのかなという風にも思います。
やはり自分に合う自分の治療をしっかり受けられるような病院を選ぶのが良いとは思います。
最後に皆さんから質問の多いセカンドオピニオンについても少しお話をします。目的としては患者様が納得のいく治療法を選択することができるように、現在の診断や治療の心境状況、次の段階の治療選択などについて、通院している医療機関とは違う別の医療機関の医師に第2の意見を求めるということです。
つまりそのためには、ファーストオピニオン、今現在の状況というのを理解しておくことが大切だと思います。妊娠しないからと転院してしまうのは、少し私はもったいないかなという風にも感じます。まずは現在治療している施設で改めての現状を確認し、治療方針について意見を聞くこと、改めて今後どうなんでしょうか、という時間を先生に持ってもらうっていうのが大切になります。
その際に次の提案がなかったり、同じ方法を推奨されて自分が納得できる内容ではなかった場合には、セカンドオピニオンを検討していくのが良いでしょう。そしてセカンドオピニオンを受ける場合には、現在治療している施設に正直に紹介状依頼しなくても良いと思います。
理由としては、セカンドオピニオンの後、現状の施設で治療する方もいると思いますので、通院中のデータがあれば紹介状っていうのは基本的には不要です。自分が持っている情報を全部持っていけば良いです。
そしてセカンドオピニオンの施設が必要と求められた場合には紹介状を依頼するのが良いでしょう。
そしてその際の必要書類ですが、もし紹介状を作成してもらう場合は、自分で準備するものはセカンドオピニオン先から指示があった書類だけになります。
紹介状がなければ今までの検査データ、そして体外受精している方だと実施の記録です。
何の方法で行っているのか、採卵の時何個とれて受精は何個なのか、そして一般体外受精だったのか、顕微授精だったのか、受精数が何個、分割期胚数、胚盤胞数が何個か、ということですね。これが一番大事なデータです。着床前診断をしているのであれば、その結果そしてERAやEMAなどの着床の検査をしている場合、自分の治療歴をあらためてまとめてみて、それを持っていくのが良いでしょう。
ただ凍結した胚、精子、卵子があった場合、移送に関するリスクがあるため、できれば移送することは基本的には推奨しないです。既にあるものは胚移植をして、もし妊娠に至らなかった場合に考える、ということをおすすめします。
動画講座はこちらからご覧いただけます
プロフィール
小松原 千暁
不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター
不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?
◾️東尾理子主催「妊活研究会」
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