痩せすぎると妊娠しにくくなる?低体重(やせ)と女性不妊の関係を解説

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2026.07.24

カラダ

痩せすぎると妊娠しにくくなる?低体重(やせ)と女性不妊の関係を解説

「妊娠のためには体重管理が大切」と聞くと、まず肥満の影響を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし実際には、痩せすぎも妊娠しにくさにつながることがあります。 特に日本では、若い女性の「やせ」が以前から課題として指摘されています。 見た目には細くて健康そうに見えても、体の中では妊娠に必要なホルモンの働きが乱れ、月経周期や排卵に影響していることがあります。

今回は、やせが女性の妊娠にどのような影響を与えるのか、その理由や不妊治療との関係、改善のポイントまで分かりやすく解説していきます。

日本女性に多い「やせ」

令和5年国民健康・栄養調査では、20〜30代女性のおよそ5人に1人がBMI18.5未満の「低体重(やせ)」であることが報告されています。


背景には、「やせている方が美しい」という価値観や、SNSやインターネット上のダイエット情報、適正体重に対する誤った認識などがあると考えられています。

実際には減量の必要がないにもかかわらず、食事量を極端に減らしたり、偏ったダイエットを続けたりしている方も少なくありません。過度なやせは、貧血や骨粗鬆症だけでなく、生殖機能にも影響する可能性があります。

やせが自然妊娠や体外受精に与える影響

やせが健康に影響することは知られていますが、実は妊娠のしやすさや不妊治療とも深く関係しています。

1,自然妊娠への影響

妊娠や出産には多くのエネルギーが必要です。そのため私たちの体には、「エネルギーが不足しているときには妊娠を控える」という仕組みが備わっています。


やせすぎの状態が続くと、体は妊娠よりも生命維持を優先し、排卵や月経の働きを抑えてしまうことがあります。

その結果、卵胞が育ちにくくなる、排卵が起こりにくくなる、月経が止まるといった状態につながります。

こうした排卵障害は、若い女性にもみられる不妊の原因の一つです。月経不順や無月経が続いている場合は注意が必要です。また重要なのは、月経が毎月来ているから大丈夫とは限らないということです。


月経があるように見えていても、排卵がうまく起こっていない場合や、妊娠しやすさが低下している場合があります。見た目では分からない影響が起きていることもあるため、気になる方は一度確認してみることが大切です。

2,体外受精への影響

「体外受精なら薬で卵子を育てるから、やせていても問題ないのでは?」そう思われる方もいるかもしれません。近年の研究では、やせが体外受精の治療成績に影響する可能性が報告されています。

例えば、採卵周期のキャンセル率が増える、子宮内膜が薄くなる可能性がある、妊娠率が低下する可能性がある、流産率が上昇する可能性があるといった影響が報告されています。


ただし、妊娠率や流産率に差がなかったとする研究もあり、現時点で結論が完全に一致しているわけではありません。それでも、体重や栄養状態は、卵巣や子宮内膜が反応するための大切な土台になります。治療を始める前や治療中に体の状態を整えておくことは、決して無駄ではありません。

なぜやせで妊娠しにくくなるの?

では、なぜやせると妊娠しにくくなるのでしょうか。背景には、ホルモンバランスの乱れや、体脂肪不足による代謝・内分泌環境の変化が関係していると考えられています。

・ホルモンバランスの乱れ
妊娠に必要な女性ホルモンは、視床下部、下垂体、卵巣という経路で調節されています。

これを「HPG軸(視床下部-下垂体-性腺軸:Hypothalamic-Pituitary-Gonadal axis)」と呼びます。過度なダイエットや体重減少によってエネルギー不足の状態が続くと、視床下部からのGnRH分泌が低下し、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)の分泌も低下します。その結果、卵胞が育ちにくくなる、排卵が起こりにくくなるといった問題が起こります。


・レプチンの低下

近年、やせと不妊を結びつける重要な因子として注目されているのが「レプチン」です。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、体脂肪が十分にあるとレプチン濃度は高くなり、体脂肪が減少すると低下します。レプチンが低下すると、脳はエネルギー不足の状態と判断し、HPG軸の働きを抑えてしまいます。その結果、排卵障害や無月経が起こりやすくなることが分かってきています。

妊娠後(周産期)への影響

やせの影響は、妊娠成立後にも続くことが知られています。妊娠前BMIが低い女性では、早産、低出生体重児、SGA児(在胎週数に対して小さく生まれる赤ちゃん)のリスクが高くなることが報告されています。

妊娠前から十分な栄養状態を整えておくことは、妊娠しやすさのためだけでなく、その後の妊娠経過や赤ちゃんの発育にとっても大切です。

生まれてくる子どもへの影響〜DOHaD理論〜

近年注目されているのが、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)という考え方です。

お腹の赤ちゃんは、お母さんが栄養不足の状態にあると、限られた栄養を効率よく使って生き延びられるように体質を適応させます。

しかし、生まれた後に十分な栄養環境で育つと、その“省エネ型”の体質が裏目に出てしまい、将来的に肥満、高血圧、2型糖尿病などの生活習慣病を発症するリスクが高くなる可能性があると報告されています。妊活中の体重管理は、ご自身のためだけでなく、将来授かるお子さんの健康にもつながる可能性があるのです。

男性とやせの関係


体重の問題は、女性だけのものではありません。男性の低体重も精子に影響を与える可能性が指摘されており、精子濃度、総精子数、運動率、正常形態率といった精子の指標の低下との関連が報告されています。

やせや栄養不足は、男性の生殖機能にも影響を及ぼす可能性があります。不妊治療では女性だけでなく、夫婦で健康状態を整えていくことが大切です。

改善するには?

やせすぎによる生殖機能の低下は、適切な栄養摂取と体重管理によって改善が期待できる場合があります。無理に一気に体重を増やそうとするのではなく、少しずつ体を整えていくことが大切です。

①食事内容の見直し(体重の回復)
まずは、必要なエネルギーと栄養素をきちんと摂ることが大切です。過去の研究では、低体重による月経不順がある女性において、体重がわずか1kg増加するだけで約8%の月経周期が改善したという報告もあります。

また、エネルギーを確保するだけでなく、ビタミンやミネラル、鉄、葉酸など、不足しやすい栄養素をバランスよく摂ることも重要です。食事だけで補いきれない場合は、サプリメントを上手に活用するのも一つの方法です。また、自己流で頑張りすぎず、不妊治療専門施設と連携している管理栄養士さんに相談してみるのもよいと思います。


最近は、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がダイエット目的で話題になることがありますが、もともとは糖尿病治療薬であり、美容・痩身目的での適応外使用については安全性や有効性が確認されていません

妊娠中、あるいは妊娠の可能性がある方には使用できない薬もあり、投与中や最終投与後しばらく避妊が必要とされるものもあるため、自己判断で使用せず、必ず医師に相談してください。

②医療機関への相談
数か月にわたって月経が止まっている場合や、極端な月経不順がある場合は、生活習慣の改善だけに頼らず、早めに婦人科や生殖医療専門医を受診してください。

必要に応じて、ホルモン療法などを併用しながら、健康的な周期を取り戻すためのサポートを受けることができます。また、BMI18.5未満が続いている、食事量がかなり少ない、急激な体重減少があったという場合も、一度相談してみると安心です。

まとめ

近年の研究から、やせすぎや栄養不足は、単に体型の問題ではなく、ホルモン分泌や妊娠のしやすさ、不妊治療、妊娠後の経過、さらには生まれてくる子どもの将来の健康にも影響を及ぼす可能性があることが分かってきました。

妊活や不妊治療を進めるうえでは、まず妊娠に向けた土台となる体の状態を整えることが大切です。もし、月経不順や体重減少、食事量の少なさに心当たりがある場合は、無理を続けるのではなく、一度ご自身の体の状態を見直してみてください。

まずは極端に詰め込もうとするのではなく、食事の回数を増やしてみる、たんぱく質や脂質を意識してとる、十分な睡眠を確保する、過度なストレスを避けるといった小さな習慣から始めてみることが大切なのかもしれません。

必要に応じて、不妊治療施設と連携している管理栄養士さんや医師と相談しながら、無理のない方法を一緒に考えていきましょう。

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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