肥満は妊娠しにくくなる?女性不妊との関係を解説

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2026.07.03

カラダ

肥満は妊娠しにくくなる?女性不妊との関係を解説

「少し体重が増えたくらいなら、妊活にはそこまで影響しないはず」

そう感じている方も多いかもしれません。

近年、肥満は糖尿病や高血圧などの生活習慣病だけではなく、実は「不妊症」の原因の一つとしても注目されています。

今回は、肥満が女性の妊娠にどのような影響を与えるのか、その理由や対策について分かりやすく解説していきます。

日本の肥満の現状


まず、日本の現状を見てみましょう。

厚生労働省の調査では、日本人女性の約20%が肥満(BMI25以上)と報告されています。

欧米諸国と比較すると割合は低いものの、日本でも肥満に悩む女性は決して少なくありません。

肥満というと「食べ過ぎ」のイメージを持たれがちですが、それだけではありません。

  • ・デスクワーク中心の生活
  • ・運動不足
  • ・睡眠不足
  • ・ストレス
  • ・食生活の乱れ

実際には、生活習慣や社会環境、ホルモンバランスなど、さまざまな要因が複雑に関係しています。

さらに日本人女性では、BMIが高くなくても内臓脂肪が多い「隠れ肥満」が少なくないことも特徴です。

見た目はやせ型でも体脂肪率が高いケースは珍しくなく、外見だけでは分からない脂肪の蓄積が妊娠や将来の健康へ影響している場合もあります。

肥満が自然妊娠や体外受精に与える影響

肥満が生活習慣病と深く関係していることは、多くの方がご存じだと思います。しかし実は、肥満は「不妊」とも密接に関係していることが分かっています。

ここからは、肥満が妊活や不妊治療にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

1.自然妊娠への影響

女性のBMIが高くなるほど、自然妊娠に至るまでの期間が長くなる傾向があることが知られています。

その原因として、

  • ・月経不順
  • ・排卵障害

が挙げられます。

肥満女性では月経不順や排卵障害の頻度が高いことが知られており、妊娠の機会そのものが減少してしまいます。

また重要なのは、生理が毎月来ているから大丈夫とは限らないということです。

月経周期が規則的に見えていても、妊娠率が低下することが報告されており、見た目では分からない影響が起きている可能性があります。

2.体外受精への影響

「体外で受精させる体外受精なのに、肥満が影響するの?」そう思われる方もいるかもしれません。

しかし近年の研究では、体外受精の成績にも肥満が影響することが分かってきました。

例えば、

  • ・排卵誘発剤の効きが悪くなる
  • ・採卵できる成熟卵子数が減少する
  • ・胚盤胞到達率が低下する
  • ・流産率が上昇する

といった影響が報告されています。

肥満は卵巣だけでなく、卵子、胚、子宮内膜など、妊娠成立までの複数の段階に影響を与える可能性があります。

なぜ肥満で妊娠しにくくなるの?

では、なぜ肥満になると妊娠しにくくなるのでしょうか。

背景には、代謝異常やホルモン異常が関係していることが分かっています。

ホルモンバランスの乱れ

正常な卵子の発育と排卵には、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)といった、脳から分泌されるホルモンが欠かせません。

実は脂肪組織は、単に脂肪をためておくだけの場所ではなく、ホルモンのバランスにも関わっています。

脂肪が増えると、体内のエストロゲン(女性ホルモン)が通常より多く作られるようになります。すると脳は「女性ホルモンは十分にある」と勘違いし、卵巣へ送る指令を弱めてしまうことがあります。

その結果、FSHやLHの分泌が低下し、

  • 卵胞が育ちにくくなる
  • 排卵が起こりにくくなる

といった問題が起こります。

インスリン抵抗性

インスリンは血糖値を下げるホルモンです。

しかし肥満になると、このインスリンの効きが悪くなることがあります。これをインスリン抵抗性と呼びます。

インスリン抵抗性が起こると、高インスリン状態が続き、

  • ホルモンバランスの乱れ
  • 排卵障害
  • 慢性的な炎症

を引き起こすことが知られています。

また、このインスリン抵抗性は後述するPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の発症や悪化にも深く関与していると考えられています。

慢性的な炎症反応

脂肪細胞が増えると、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が慢性的に放出されます。

その結果、卵巣環境や卵胞液環境、子宮内膜環境に悪影響を与え、卵子の質や着床環境を低下させる原因になると考えられています。

肥満が影響を与える不妊疾患

肥満は高血圧や糖尿病などの生活習慣病だけではなく、不妊に関連する疾患とも深く関係しています。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

女性不妊の代表的な原因の一つが、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)です。

症状としては、月経不順、無月経、排卵障害、ニキビなどがあります。

PCOS患者さんの約40〜80%で肥満やインスリン抵抗性が認められると報告されており、肥満はPCOSを悪化させる重要な要因の一つと考えられています。

2型糖尿病

肥満は2型糖尿病とも密接に関係しています。

糖尿病が進行すると、排卵障害やインスリン抵抗性の悪化、慢性炎症、子宮内膜環境の悪化などが起こりやすくなります。さらに、糖尿病とPCOSが互いに悪影響を及ぼし合う悪循環に陥る可能性も考えられています。

エピジェネティックな変化(次世代への影響)


近年注目されているのが、エピジェネティクスです。

これはDNAの設計図そのものを変えるのではなく、遺伝子の働き方を変化させる現象です。

母親の妊娠前の肥満や高血糖の影響が子どもに引き継がれ、

  • 肥満
  • 糖尿病
  • インスリン抵抗性

などを発症しやすくなる可能性が報告されています。妊活における体重管理は、妊娠率だけではなく、生まれてくる子どもの将来の健康という視点からも重要になっています。

改善するには?


肥満による不妊は、体重管理によって改善できる可能性があります。

①食事と運動(ダイエット)

研究では、肥満女性が減量することで、

  • ・排卵の改善
  • ・月経周期の改善
  • ・妊娠率の向上

が認められています。

特にPCOSでは、減量によって自然排卵が再開するケースも少なくありません。

PCOS患者さんを対象とした研究では、体重が10%減少すると妊娠率が大きく改善したという報告もあります。

②薬物療法

生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合や、PCOSやインスリン抵抗性を伴う場合には、薬物療法が検討されることがあります。

代表的なものとして、

  • メトホルミン
  • GLP-1受容体作動薬

があります。

これらは体重減少やインスリン抵抗性の改善を通じて、排卵や月経周期の改善につながる可能性が期待されています。ただし、不妊治療における使用については慎重な判断が必要であり、すべての方に推奨される治療ではありません。

まずは食事や運動を中心とした生活習慣の改善が基本となります。

まとめ

近年の研究では、肥満は単なる体型の問題ではなく、ホルモンや代謝、卵子など、妊娠に関わるさまざまな部分へ影響を与えることが分かってきました。

年齢要因は変えることはできません。しかし、体重や生活習慣は改善できる可能性がある要素です。

適切な体重管理は、妊娠しやすい身体づくり、将来の自分自身の健康、将来授かる子どもの健康につながる可能性がありますから、

まずは極端なダイエットではなく、

  • ・食事内容を見直す
  • ・歩く距離を増やす
  • ・睡眠を整える

といった小さな習慣から始めてみることが大切なのかもしれません。

次回は、「やせすぎ(低体重)が妊娠に与える影響」について解説していきたいと思います。

引用

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  7. Voros C, et al. A Systematic Review on GLP-1 Receptor Agonists in Reproductive Health. Int J Mol Sci. 2026;27(2):759.

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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