妊活中の魚は「水銀リスク」より「栄養メリット」が勝る?不妊カウンセラーが教える正しい選び方

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2026.05.08

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妊活の成功率を左右する「食事」の力。 魚は控えるべき?それとも摂るべき?水銀リスクと妊娠への影響を正しく解説

妊活中、「食事を見直そう」と考える方は多いものです。
中でもよく迷うのが、「魚は食べたほうがいいのか、それとも控えるべきか」という点ではないでしょうか。

「水銀のリスクが怖いから控えている」という声も多く聞かれますが、実は魚を避けることで、妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に有益な栄養を逃している可能性があります。

最新の調査データをもとに、妊活中における魚摂取のリスクとメリットを解説します。

食事と妊娠しやすさの関係


まず前提として、「食事内容」と「妊娠までの期間(TTP)」には一定の関連があることが知られています。

フルーツ摂取と妊娠までの期間

研究では、フルーツの摂取頻度が高い女性は、低い女性に比べて妊娠までの期間(TTP)が短いことが示されています。一方で、週に4回以上ファストフードを食べる習慣がある場合は、授かるまでの期間が長くなる傾向が報告されています。

大豆と生児獲得率

不妊治療(ART)を受けている女性を対象とした研究では、大豆を日常的に摂取している群は、全く摂取しない群に比べて、無事に赤ちゃんを出産できる確率(生児獲得率)が1.85倍高かったという報告があります。つまり「日々の食事は、妊娠のしやすさに影響する可能性がある」 というのが現在の基本的な考え方です。

魚は危険?それとも必要?


では本題の「魚」について見ていきましょう。

魚にはメチル水銀が含まれており、胎盤を通過することが知られています。胎児の血中濃度が母体より高くなるケースも報告されています。

この点だけを見ると、「やはり避けた方がいいのでは」と感じるかもしれません。

しかし、ここで重要なのは“全体のバランス”です。

大規模研究では、「お母さんが魚を多く食べていた子ほど、発達スコアが高い」という結果が出ています。これは、魚に含まれるDHAやEPA(オメガ3系脂肪酸)が、水銀の影響を上回るプラスの効果を脳に与えているためです。リスクを恐れて魚を完全に断つことは、赤ちゃんの神経発達に必要な栄養源を失うことにもなりかねません。

水銀リスクだけで判断して魚を完全に避けることは、本来得られるはずのメリットを失う可能性があるのです。

妊活と「セレン」の関係


魚に多く含まれるミネラル「セレン」も、妊活において注目されています。

不妊症と診断された女性はセレン不足の傾向

秋田県での症例対照研究によると、不妊症の女性は対照群に比べて血中のセレン濃度が「10ポイント」も低いことが判明しました。特に子宮内膜症や原因不明の不妊において、その傾向が顕著です。

PCOSとセレン

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性を対象とした研究では、セレンの摂取によって妊娠率が3%から18%へと向上したという報告があります。

男性の妊活にも必須

セレンは精子の形成やテストステロンの生成にも不可欠であり、カップルで取り組む妊活において欠かせない栄養素です。

「セレン単体で妊娠率が上がる」と断定できる段階ではありません。

あくまで体内環境を整える一要素として理解することが大切です。

水銀とセレンの関係

なぜ魚を摂取することが推奨されるのか。その大きな理由は、セレンが持つ「脱メチル化」という働きにあります。セレンは体内に入ったメチル水銀と結合し、毒性の低い「無機水銀」への分解を促進します。

脱メチル化とは

体内に蓄積しやすく毒性が強い「メチル水銀」を、吸収されにくく、体外へ出しやすい安全な状態(無機水銀)に変えて中和することを指します。

単に水銀の量だけを不安視するのではなく、この中和剤となるセレンがセットで含まれているかという「バランス」が、妊活における安全性の鍵となります。

魚は単に「水銀を含む食品」ではなく、「リスクと防御の両方を持つ食品」とも言えます。

セレンはサプリで良い?


それならサプリをとった方が良いよね、と考えてしまいがちですが、サプリメントの摂取には注意が必要なことも知っておきましょう。

・過剰摂取のリスク
セレンは1日の耐容上限量(300〜400μg)を超えて摂りすぎると、脱毛や爪の脱落などを引き起こす恐れがあります。

・日本の環境特性
日本人は土壌や日常の食事から、すでに十分な量のセレンを摂取できている環境にあります。ヨーロッパや韓国に比べても血中濃度は高く、アメリカと同水準の「充足した状態」にあります。

そのため、リスクのあるサプリメントではなく、「自然なバランスでお魚から摂取すること」が、最も安全な選択です。

妊活中の魚の選び方

水銀リスクを抑えつつ、栄養メリットを得るには「魚の種類」が重要です。



摂取を控えるべき魚(高水銀) 積極的に選びたい魚(低水銀・高セレン・高オメガ3)
マグロ類(本マグロ等) サンマ、アジ、イワシ
メカジキ サバ、サケ
クジラ  


「大きい魚ほど水銀が蓄積しやすい」ため 青魚を中心に選ぶだけでリスクは大きく下げられます

最後に・・・

「水銀が怖いから魚を控える」その気持ちは大切です。

ただ、現在の知見では“適切に選んで食べること”が、妊活においてはより良い選択とされています。

✔ 青魚を中心に取り入れる
✔ 食べすぎない
✔ サプリに頼りすぎない

こうしたバランスを意識することで、体にも、これから迎える赤ちゃんにもやさしい食事になります。


【本記事の根拠となる研究・データ】

  • Vanegas et al., Soy food intake in relation to reproductive outcomes in women undergoing assisted reproductive technology. Fertil Steril 2015
  • Sakamoto et al., Maternal and fetal mercury in blood. Environ Sci Technol 2004
  • Tatsuta et al., Effects of intrauterine methylmercury exposure on neurodevelopment in Japanese children. Tohoku J Exp Med 2017
  • Ralston et al., Selenium health benefit values: updated criteria for mercury risk assessments. Biol Trace Elem Res 2007
  • Jamilian et al., Effects of Selenium Supplementation on Gene Expression in Inflammation and Oxidative Stress in Infertile Women with Polycystic Ovary Syndrome. 2015
  • 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」

編集:妊活の歩み方

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