【不妊治療】抗酸化サプリ徹底比較|CoQ10・PQQで卵子の質は?目的別の選び方
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妊活お役立ち情報
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不妊治療を進める中で、医師から「卵子の質」や「精子の状態」について話があったり、ご自身で調べる中で「酸化ストレス」という言葉に辿り着いた方も多いのではないでしょうか。
酸化ストレスとは、いわば体の「サビ」。このサビが、卵子や精子といった生殖細胞の質を低下させる大きな要因の一つと考えられています。抗酸化サプリメントは、この酸化ストレスから体を守るためのアプローチの一つです。
抗酸化、と聞くとビタミンCやEが有名ですが、それらは普段の食事やマルチビタミンからも摂取が可能です。そこでこの記事では、より一歩進んで、卵子や精子のエネルギー源である「ミトコンドリア」に働きかけるなど、不妊治療の現場で特に注目される専門的なサプリメントに焦点を当てて解説します。
【本記事の注意点】
この記事は、サプリメントの効果を保証するものではなく、あくまで「どのような研究が行われ、どのような可能性が示唆されているか」という事実を元に情報を提供します。サプリメントの利用は、必ずかかりつけの医師に相談の上、その指導に従ってください。
【成分別】不妊治療で注目される主要サプリメントって?

卵子の質(グレード)があまりよくない、といった方に対し、不妊治療のサポートとして検討されることが多い、主要なサプリメントを紹介します。
1. コエンザイムQ10 (CoQ10)
細胞のエネルギー工場「ミトコンドリア」が働くために必須の補酵素。年齢と共に体内で生産量が減少します。ミトコンドリアの働きを直接サポートすることで、卵子や精子が活動するためのエネルギー産生を助け、質の改善に繋がると期待されています。
特に、年齢を重ねて卵子の質の低下が気になる方や、良好な胚盤胞が得られにくい場合に検討されることが多い成分です。*1
2. PQQ(ピロロキノリンキノン)
ビタミン様作用物質の一つ。CoQ10が既存のミトコンドリアの働きを助けるのに対し、PQQは新しいミトコンドリアが作られるプロセス(新生)をサポートするというユニークな働きが基礎研究で示されています。
このため、CoQ10と併用することで、ミトコンドリアの質と数の両面からアプローチできると期待されています。*2
3. イノシトール
ビタミンB群の仲間です。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方の中には、インスリンの働きが鈍くなることで、本来は正常に保たれるはずの男性ホルモンが過剰に分泌され、排卵がスムーズに行われなくなることがあります。
イノシトールは、このインスリンの働きをサポートすることで、ホルモンバランスを正常な状態に近づけ、規則的な排卵を促す助けになると考えられています。抗酸化作用も併せ持ちますが、主にこの体質的な要因にアプローチする目的で、数多くの研究が行われています。*3
4. L-カルニチン / アセチル-L-カルニチン
アミノ酸の一種で、ミトコンドリアへエネルギー源となる脂肪酸を運ぶ役割を担っています。同時に、エネルギー産生の過程で発生する活性酸素から細胞を守る抗酸化作用も持ちます。
特に、精子の運動エネルギー産生に深く関わるため、男性不妊(精子の運動率や数)の改善を目的とした研究が多く行われています。*4
5. α-リポ酸
強力な抗酸化作用を持ち、CoQ10やビタミンC・Eといった他の抗酸化物質を体内で再利用可能にする(リサイクルする)働きがあるため、「抗酸化物質の母」とも呼ばれます。
総合的な抗酸化力を高めたい場合に検討されますが、生殖分野での大規模な臨床研究はまだ少ないのが現状です。
6. レスベラトロール
赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種。長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化する成分として知られています。
動物実験の段階では、卵子の老化を抑制する可能性が示唆されており、そのアンチエイジング作用が、生殖分野でも応用できないかと注目されていますが、ヒトでの研究はこれからの段階です。
【目的別】抗酸化サプリの選び方のヒント(比較表)

「私の場合はどれを考えればいいの?」という疑問に答えるため、ここまでの情報を一覧表にまとめました。医師と相談する際の参考にしてください。
| サプリメント名 | 主な働き | どんな人がとると良いか |
|---|---|---|
| CoQ10 | ミトコンドリアの質向上 | 年齢を考慮し、卵子や精子のエネルギーを高めたい方 |
| PQQ | ミトコンドリアの数増加 | ミトコンドリアの質と数の両面から、より積極的にケアしたい方 |
| イノシトール | インスリン抵抗性の改善 | PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の体質改善に取り組みたい方 |
| L-カルニチン | エネルギー産生と精子保護 | 精子の運動率や数を改善したいと考える方(主に男性向け) |
| α-リポ酸 | 総合的な抗酸化力の向上 | 他の抗酸化物質の働きもサポートし、総合力を高めたい方 |
| レスベラトロール | 細胞の老化抑制(抗糖化) | 細胞レベルの老化に対し、先進的な研究に基づいたケアをしたい方 |
最も重要!不妊治療中にサプリを利用するための3つのルール

ルール1:【鉄則】必ず医師に相談する
体質や治療状況、現在服用中の薬によって、最適なサプリや量は全く異なります。また、必要ない場合もあります。自己判断での摂取は絶対に避け、必ずかかりつけの医師や専門家のアドバイスを受けましょう。
「このサプリを試してみたいのですが」と、この記事を相談の材料にするくらいの気持ちが理想です。
ルール2:複数のサプリを一度に始めない
体への影響や、万が一合わなかった場合の原因を特定するため、新しいサプリは一つずつ、期間を空けて試すのが基本です。色々なものを一度に飲む「カクテル内服」は避けましょう。
ルール3:【重要】移植周期は摂取を控えることを検討する
この記事で紹介したような専門的なサプリメントは、妊娠中の安全性に関するデータがまだ十分にありません。そのため、多くのクリニックでは、安全を最優先し、採卵周期までで摂取を止め、胚移植の周期では控えるよう指導する場合があります。必ず医師の指示に従ってください。
まとめ
不妊治療における抗酸化サプリは、治療の成功を保証する魔法の薬ではありません。しかし、ご自身の体の状態を理解し、酸化ストレスという視点を持って、医師と相談しながら賢く利用することで、治療をサポートする心強い選択肢の一つとなり得ます。
また、抗酸化サプリを、複数摂ることは卵子や精子にどのような影響を与えるかということが、まだわかっていない部分もありますので、医師に相談の上、摂るようにしてください。
参考文献
- *1 Ben-Meir, A., et al. "Coenzyme Q10 restores oocyte mitochondrial function and fertility during reproductive aging." Aging Cell, 2015.
- *2 Harris, C.B., et al. "The Emerging Promise of Pyrroloquinoline Quinone (PQQ) in Neuroprotection and Bioenergetics." Journal of the American College of Nutrition, 2013. (PQQのミトコンドリア新生に関する作用機序のレビュー)
- *3 Unfer, V., et al. "Myo-inositol effects in women with PCOS: a meta-analysis of randomized controlled trials." Endocrine Connections, 2017.
- *4 Salas-Huetos, A., et al. "The Effect of Nutrients and Dietary Supplements on Sperm Quality Parameters: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials." Advances in Nutrition, 2018.
(編集)妊活の歩み方編集部
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