子宮内膜PRP療法とは?「内膜が厚くなる」「妊娠率が上がる」は本当?効果と限界を解説

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2026.10.02

カラダ

子宮内膜PRP療法とは?「子宮内膜が厚くなる」「妊娠率が上がる」は本当?

「体外受精や胚移植を続けていても、子宮内膜が思うように厚くならない」

「良好な胚を複数回移植しても、なかなか着床に至らない」

このような症例において近年、注目を集めているのが子宮内膜PRP療法です。

PRPとは、患者さん自身の血液から血小板を濃縮して作る製剤で、血小板に含まれる成長因子を利用して子宮内膜環境の改善を目指す治療です。

結論から言うと子宮内膜PRP療法は、薄い子宮内膜や反復着床不全に対して子宮内膜の厚さの改善や生児獲得率の改善が見られるとする報告が増えている一方で、効果が完全に確立された治療とはまだ言えません

期待できることや治療効果の限界を正しく理解したうえで、ご自身の状況に合わせて検討することが非常に大切です。

この記事では

  • 子宮内膜PRP療法がなぜ注目されているのか
  • 内膜は本当に厚くなるのか
  • どういった効果が期待できるのか

といった疑問に関して詳しく解説したいと思います。

子宮内膜PRP療法とは?


PRPとはPlatelet-Rich Plasma(多血小板血漿)の略称です。患者さん自身の血液を遠心分離し血小板を高濃度に濃縮して集めた製剤のことを指します。

血小板には、PDGF、VEGF、TGF-β、EGF、IGFなどの成長因子が含まれており、組織修復や血管新生、細胞増殖に関与する可能性があると考えられています。


子宮内膜PRP療法はPRPを子宮内腔に直接投与することで、子宮内膜を厚くし、胚が着床しやすい環境を作り出すことを目的としています。

PRPは患者さん本人の血液を使用するため、アレルギー反応や拒絶反応のリスクが低く安全性が高いと考えられています。

 

PRPを知る前に:子宮内膜はどのように育つ?

PRP療法の仕組みをより深く理解するために、まず自然な状態で子宮内膜がどのように成長し、成長因子がどのように働くのか説明したいと思います。

子宮内膜は毎月「月経期 → 増殖期 → 分泌期」というサイクルを繰り返しています。

月経期

月経では、子宮内膜の表面が剥がれ落ちます。

しかし、月経は「内膜が剥がれて終わり」ではありません。

成長因子やサイトカインなどのさまざまな物質が働き、傷ついた子宮内膜の修復を助ける、細胞の増殖や組織の再生を促すなど、次の新しい子宮内膜を作るための土台作りを行ってきます。

増殖期

この時期には卵胞の発育と共にエストロゲンの濃度が上がっていきます。また、さまざまな成長因子や細胞間のシグナルも働き、子宮内膜の再生・増殖を支えます。

 

子宮内膜の細胞が増殖する、新しい血管が形成される、分泌腺が伸長・発達することで、子宮内膜は少しずつ厚くなり、次の着床に向けた環境が整えられていきます

分泌期

排卵後になると増殖した内膜がプロゲステロンによって成熟します。

この時期にも成長因子が共に働いて子宮内膜の成熟を支え、受精卵を受け入れる準備を進めます

 

子宮内膜がさらに厚くなる、らせん動脈が発達、分泌腺が発達し、栄養を含む分泌物を産生することで、子宮内膜は受精卵が着床しやすい環境へと変化していきます。


子宮内膜PRP療法は成長因子を直接補ってあげることで、細胞の増殖や血管の新生を後押し、子宮内膜の環境を改善することを目的としています。

どのような患者さんで研究されている?


子宮内膜PRPは、「薄い子宮内膜」「反復着床不全」のケースで研究されていることが多いです。

① 薄い子宮内膜

薄い子宮内膜の定義は文献により幅がありますが、一般的に「7mm未満」を目安とすることが多いです。薄い子宮内膜は着床率の低下だけでなく、流産、早産、低出生体重児など周産期転帰との関連も示唆されています。

これまでの研究報告では

  • ・薄い子宮内膜を有する症例でPRPを投与した群は対照群に比べ子宮内膜が厚くなり(7.65mm 対 6.52mm)臨床妊娠率も向上が見られました(44.12% 対 20.0%)(Changらの報告)

  • ・過去の周期で薄い子宮内膜を有する症例にPRPを用いたところ、臨床妊娠率34.1%、生児獲得率22.6%と改善され、流産率の低下も報告されました。この研究では子宮内膜の厚さだけでなく内膜環境そのものが改善した可能性を示唆しています。(Suzukiらの報告)

② 反復着床不全(RIF)

反復着床不全は一般的に「良好胚を複数回移植してもなかなか妊娠しない状態」を指します。

着床不全は胚の要因もありますが、子宮内膜の受容能(受け入れ態勢)、炎症、免疫、血流の低下などが複合的に絡み合っていると考えられています。

これまでの研究報告では

  • ・3回以上の移植不成功の症例でhCG陽性率、臨床妊娠率、生児獲得率はいずれもPRP群で良好でした。投与箇所で分けると生児獲得率が子宮内膜下投与39.4%、子宮内腔内投与41.3%、PRP投与なし22.1%と、PRP投与が転帰改善に関与する可能性が示唆されています。(Noushinらの報告)

  • ・薄い子宮内膜群と反復着床不全群を対象とした報告では、PRP投与後に子宮内膜の厚さの改善がみられ、臨床妊娠率が41.0%まで上昇したとされています。特に反復着床不全症例では、過去の着床不成功回数が治療後の転帰に影響する可能性も指摘されています。

ここまで聞くとPRPの子宮内投与は非常に有望な方法だと感じるかもしれません。しかし、PRPは有望だがまだ確立した治療ではないという考えが主流です。

まだまだPRPは大規模試験が不足しており、安全性、費用対効果、方法の標準化が今後の課題とされています。

子宮内膜PRP療法で期待できること・できないこと

子宮内膜PRP療法をご検討される際は、治療のメリットと限界の両方を正しく理解しておくことが大切です。

期待できること(メリット)

  • ・子宮内膜が厚くなる
  • ・子宮内の環境が整う
  • ・無事に出産に至る可能性が高まる

期待しすぎない方がよいこと(治療の限界)

  • ・必ず効果が出るとは限らない
  • ・受精卵側の問題は解決できない
  • ・PRPだけで全てが解決できる万能な治療ではない

治療前の大切な確認ポイント

妊娠(着床)は、受精卵の質、子宮が受け入れる準備、お母さんの健康状態など、さまざまな条件が重なって成り立ちます。そのため、PRP療法を行う前に着床を妨げる可能性のある他の原因がないかを確認することが大切です。

例えば、

  • ・慢性子宮内膜炎
  • ・子宮内の癒着
  • ・子宮筋腫や子宮内膜ポリープ
  • ・卵管水腫

などがある場合には、PRP療法を行う前に必要な検査や治療を検討したほうがよい場合があります。PRPはあくまで「子宮内膜側の受け入れ態勢」を整えるための補助療法であり、胚の質の改善、母体の改善をするものでありません。

PRPを行う必要があるかは医師と相談して決めていく必要があります。実際、PRP療法を導入している施設としていない施設があるのも事実です。


まとめ

子宮内膜PRP療法は、薄い子宮内膜や反復着床不全に悩む患者さんにとって、次の一手として検討されることのある治療の一つです。

現在の研究では、子宮内膜の厚さや臨床妊娠率、生児獲得率の改善を示す報告が複数あります。

ただし、現時点では症例選択、PRPの作製方法、投与方法、評価指標が統一されておらず、研究の質にもばらつきがあります。そのため、効果を過度に期待しすぎず、適応や限界も含めて主治医と十分に相談したうえで検討することが大切です。

大切なのは、「必ず妊娠できる魔法の治療」と過度に期待しすぎることでも、「まだ新しいから無意味だ」と切り捨てることでもありません。まずは薄い子宮内膜や着床不全の原因を確認し、そのうえで自分の治療経過にPRP療法が合っているのかを主治医と相談することが重要です。

参考文献

  • Chang Y, et al. Autologous platelet-rich plasma improves pregnancy outcomes in women with recurrent implantation failure and thin endometrium. Medicine (Baltimore). 2019.
  • Suzuki S, et al. Autologous Platelet-Rich Plasma Improves Pregnancy Outcomes of Patients with Thin Endometrium Regardless Endometrial Thickening: Multicenter Retrospective Study with Elimination of Embryonic Confounders (Fertility & Reproduction). 2023.
  • Noushin M, et al. A comparative evaluation of subendometrial and intrauterine platelet-rich plasma treatment for women with recurrent implantation failure. (F&S Sci) 2021.
  • Fujii S, et al. The number of previous implantation failures is a critical determinant of intrauterine autologous platelet-rich plasma infusion success in women with recurrent implantation failure. (Reprod Med Biol) 2024.
  • Wang Y, et al. New advances in the treatment of thin endometrium. Front Endocrinol (Lausanne). 2024.
  • Peng F, et al. Impact of platelet-rich plasma intrauterine perfusion on endometrial receptivity and pregnancy outcomes in patients with recurrent implantation failure and thin endometrium. (Am J Transl Res) 2025.
  • Hu X, et al. Cyclical endometrial repair and regeneration: Molecular mechanisms, diseases, and therapeutic interventions. (MedComm (2020)) 2023.

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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