卵子提供での不妊治療。台湾のNUWA生殖医療センターの特徴 #3|NUWA生殖医療センター
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妊活お役立ち情報
2024.07.19
不妊治療
卵子提供での不妊治療。台湾のNUWA生殖医療センターの特徴 #3|NUWA生殖医療センター
不妊治療を経験した東尾理子が、妊活に役立つアイテムや取り組みについて、関係者にさまざまな角度から質問を投げかけ深掘りしていく連載です。
今回は、台湾で初のグループ生殖医療センター「NUWA生殖医療センター(以下、NUWA)」台北院の沈孟勳(シェン・モンシュン)副院長と東尾理子の対談を、全6回でお届けします。
前回は卵子提供を用いた不妊治療の妊娠率や胚盤胞到達率などを伺いました。
3回目は、NUWAの体制やスタッフについてです。
>>卵子バンクとは?台湾の卵子提供による不妊治療事情#1はこちら
>>卵子提供での不妊治療。卵子数や胚盤胞到達率、妊娠率は?#2はこちら
スタッフの数や日本からの患者の受け入れ体制は?
東尾:これまで沈先生とのお話の中で、NUWAは台湾の北部、桃園地区、中部の3つクリニックがある最大クラスのグループ生殖医療センターだとお伺いしました。更に詳しくNUWAの体制についてお聞きしていきたいと思います。現在、スタッフは何人いらっしゃるのでしょうか?
沈先生:現時点では15人の医師、21人の胚培養士、90人の看護師がNUWAにはおります。なかなか強力なチームだと思いますよ。開院以来、私を含め医療スタッフは、既に病院で10年以上の勤務経験があるメンバーが揃っています。台湾では今、グループのクリニックがどんどん増えていますが、患者さまに心地よくプライバシーを確保した空間を提供したいという思いと最高規格のラボを持つことがNUWAの特徴です。
東尾:日本からの患者さんの受け入れ体制について教えてください。
沈先生:日本からですと、台湾まで来るのに飛行機で3〜4時間はかかるので大変だと思います。まして海外での診察となると待ち時間なども気になるかと思いますので、なるべくお待たせしないような工夫をしております。NUWAでは事前にオンラインで予約を取ることができ、ご都合の良い時間にお越しいただけます。ご来院の際は、できる限り滞在時間を短縮できるように専門スタッフが丁寧に対応します。
東尾:卵子提供での不妊治療を受ける場合、日本から台湾には何回ほど行く必要があるのでしょうか?
沈先生:少なくとも初診で1度台湾にお越しいただきます。その後、移植周期は日本にあるバックアップクリニックで検査を受けていただき、私たちの日本語カウンセラーが患者さまの状況を把握し、医師に報告します。 そして再度台湾に来院して移植という流れになります。ですので、2、3回ほど台湾にお越しいただく流れになります。この過程においても日本語カウンセラーが患者さまと連絡を取り合います。海外からの患者さまにはなるべく利便性をご提供できるようにしたいと思っています。
日本にあるバックアップクリニックと連携
東尾:日本にバックアップクリッニックというのがあるのですね。こちらは日本のどこにあって、どのような役割をするのでしょうか?
沈先生:日本のバックアップクリニックは現在、東京と大阪にございます。日本の医師に協力をお願いするのは、エコー検査と採血です。
検査結果は、患者さまご本人から私たちにご報告いただきます。検査結果をご報告いただいた後、台湾の医師がお薬の使い方の指示を出したり、その後のケアについて調整したりするという方法で、今のところやっています。
そして台湾に来て胚移植をし、帰国してからその後の妊娠や出産のケアとなります。検査をお願いするにあたって、バックアップクリニックの日本の医師にも患者さまの移植時期や移植回数、服用している薬の情報をお知らせしています。
妊娠して状況が安定した後、患者さまは産科に移っていただき、引き続き妊婦健診を受けていただきます。
東尾:バックアップクリニックは、東京と大阪だけではなく、今後ほかの地域にも広まっていく予定はありますか?
沈先生:現在、検討中です。日本には、不妊症専門医の先生もかなりいらっしゃると存じ上げています。ただし日本の医師に協力を依頼するのは、少し時間がかかることがあり、ご協力いただくクリニックを探すのは容易ではありません。
ですが、引き続き尽力してまいりたいと思っています。NUWAで正式に治療を始めた後に患者さまには、どこでバックアップが可能なのかをご案内しています。もちろん患者さまご自身で日本にお好きな先生がいてバックアップをお願いしても構いません。
東尾:日本のバックアップクリニックとの連携もあって、渡航が2回ほどで済むということなんですね。ちなみに初診や移植の際には、台湾へは夫婦で行ったほうが良いのでしょうか?
沈先生:初診の際は、ご夫婦で一緒にお越しいただきます。事務的な手続きなどがあるからです。この手続きはご夫婦で一緒に行います。基本的な流れで言いますと、ご夫婦一緒にお越しいただき、事務的な手続きや交渉、マッチングの同意書のサインなどを済ませます。そして精子凍結も行います。次の来院で移植となり、赤ちゃんを連れて帰っていただきます。
医師も胚培養士も経験豊富なベテランが揃う
東尾:先ほどNUWAには15人の医師、21人の胚培養士の方がいると伺い、スタッフの多さに驚きました。他にもスタッフに特徴がありましたら、お聞きしたいと思います。
沈先生:そうですね。他に私たちの大きな特徴と言えるのが、女医が多いことです。男性医師ももちろん素晴らしいのですが、生殖医療においては、やはり女性医師は寄り添ったケアを提供できるんじゃないかと思っています。それから胚培養士で言えば、修士以上の学歴があります。病院で訓練を受けてきたメンバーで、少なくとも5~6年以上の経験がないと私たちのチームに加入することはできません。
東尾:胚培養士は、日本ではまだ国家資格ではないのですが、台湾ではどうなのでしょうか?
沈先生:台湾でも胚培養士として働くためには、医師のような国家資格を取る必要はありません。ほとんどの方は生物学や医療系のバックグランドを持つ方、そして胚や培養室の技術に興味のある方です。台湾では、関連した学科を出た人が生殖医療センターで訓練を受け、一定の技術を習得し、操作技術が認められた後、資格を取ることができます。
今NUWAで計画していることは、独自で未来の胚培養士を訓練して育てることです。理念に対するズレや違いが生じることがないよう、私たちは可能な限り、同じ思いを持ってやっていきたいと思っています。
東尾:医師がたくさんいらっしゃるとなると、例えば初診と移植で医師が変わることはあるのでしょうか?海外ということもあって先生が変わると不安に感じる日本人患者さんもいるかもしれません。
沈先生:治療開始に際して、基本的には好きな医師を選べます。そして通常は治療に入る際に担当した医師が最後まで担当して診ます。もちろん患者さまのほうで初診の時の医師ではなく、他の医師に変えることもできなくはありません。
場合によっては担当医師の海外出張や特別な事情などで、代理の先生になるケースもあるかもしれませんが、NUWAの良いところは、医師同士の協力体制がしっかり築けているところです。定期的な会議で、難しい特殊な患者さまのケーススタディなども行っています。
パソコン上のシステムで他の医師がどのような薬を処方しているのかなどの情報も互いに共有できていますので、安心していただけたらと思います。
NUWAの取り組み。鍼灸治療や検査体制、災害対策は?
東尾:NUWAでは不妊治療をサポートする漢方や鍼灸治療なども受けられるのですか?
沈先生:私たちは、開院当時から漢方医学と西洋医学の融合を掲げています。現在漢方クリニックは2棟あり、台北、台中では漢方医の診療も受けることができます。台湾でも日本でも、鍼や漢方薬の概念が不妊症の分野にも浸透し、患者さまの治療を助ける位置づけになっています。患者さまによっては、何度も体外受精や西洋医療による経験された後に少し休みたいと感じた時、身体の状況を整えたいと思った時などは、漢方は特に重要な役割になります。
東尾:検査体制についてですが、先ほど日本のバックアップクリニックで一般的な検査を行うとのことでしたが、着床に関する検査についてはいかがでしょうか?
沈先生:基本的に初診の際に今後の治療方針を決めます。移植の準備に入った後、何をしなければいけないかなどをお話しますが、私たちの目標は1回の移植で妊娠させることです。ですので、通常はエコー検査と子宮鏡検査はお勧めしています。 着床に関する検査について、日本ではEMMAやALICE、ERAといった検査が先進医療として行われていますが、ERAに関しては移植前に必須であるかどうかでいうと、台湾ではそこまで重視されている検査ではありません。どちらかというと参考のためという位置づけです。
東尾:着床に関する検査を参考のための位置づけとする理由は何でしょうか?
沈先生:検査に必要な時間が長いことや費用が高いことがあります。通常私たちは一般的な検査、エコー検査や子宮鏡検査を事前に日本のバックアップクリニックで行うことが、一番の時間短縮になると考えています。台湾での初診の際にちょうど生理ではないタイミングで子宮鏡検査を希望される場合は、NUWAで行うことももちろん可能です。
東尾:必須ではない着床に関する検査でも、お願いしたらできるものなのでしょうか?
沈先生:はい。通常は胚移植して何度も失敗している方が検査をしています。私たちは必要だと判断した検査は必ずしますが、それ以外の検査については医師にご相談ください。というのもERAやEMMAは検査に時間がかかり、更に検査後の結果が出るまでも少し時間を要します。そのために余分な費用も発生しますので、先に重要な検査を済ませておいて、その他の検査に関しては、追々必要になった時に考えるということで良いと思います。
東尾:NUWAでは痛みに配慮した治療があるともお伺いしました。
沈先生:台湾でも日本と同様に一般的には採卵で麻酔を使いませんが、卵子が多い方、緊張しやすい患者さまの場合は、NUWAには専属の麻酔科医師がいますので、全身麻酔を施すこともできます。移植や各種検査についてはほとんどが短時間で終わりますが、どうしても緊張して怖くて無理という場合、少しの痛みでも我慢できない患者さまの場合はご相談ください。体質などで麻酔を使えない場合は、内服薬や漢方による痛みの軽減治療など他の方法を使うこともあります。
東尾:災害時の対策などもありましたらお聞かせください。
沈先生:NUWAの建物には、電力共有が途切れないシステムが採用されています。台北院でいいますと、地下鉄の真上のビルということもあり、耐震性は高いです。警報システムはセントラルシステムで管理していて、災害発生時は培養室やクリニックの責任者に通知が届きますのでご安心ください。凍結胚について心配されるかもしれません。胚は液体窒素のタンクに入っているので、避難時にはそのまま持ち出せます。電力供給が途切れないシステム、しっかりした建物であることもNUWAの特徴です。
東尾:凍結しているものは常に守られていることですね。
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今回は、NUWAの体制やスタッフについてお伺いし、万全の体制で安心して治療に挑めることが解りました。
次回は、台湾で卵子提供を用いた不妊治療を受ける場合、実際に何を準備しどう進めたらよいのかについてお伺いしていきます。
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