着床不全・不育症・卵子ケア。不妊原因に挑むパイオニア|杉山産婦人科【後編】
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妊活お役立ち情報
2024.04.17
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着床不全・不育症・卵子ケア。不妊原因に挑むパイオニア|杉山産婦人科【後編】
前回のお話の中で、杉山産婦人科の不妊治療は、患者の希望に合わせて行うため「治療方針はあってないようなもの」と仰る杉山産婦人科の院長 杉山力一先生。今回は、難治性着床不全や、不育症、そして卵子のエイジングケア外来など、杉山産婦人科ならではの取組みについて東尾理子がお伺いします。
▶️前編はこちら
日々進化!杉山産婦人科の着床不全・不育症専門外来
東尾:個人的に私が考える杉山産婦人科さんの特色ですが「難治性着床不全」「不育症専門外来」「卵子エイジングケア」「未受精卵の凍結保存」だと思います。これら一つ一つ、 教えていただけますでしょうか?
杉山理事長:難治性着床不全は、体外受精を何度行って上手くいかない、という方にとっては、とても難しく、永遠のテーマだと思うのですね。どこに原因があるかというと、子宮か、受精卵そのもののどちらかになります。
ちょうど、当院に在籍している先生の中に、大学病院でこの着床不全を研究していた先生が何人かいらっしゃいます。その先生方の中でも様々な考えがあるので、こういう検査をやろう、ここは省こう、という形を今まで作ってきているので、日々進歩しています。
また、着床不全と、不育症は、僕たちにとっては同じ概念です。今となっては卵の検査も随分できるようになりましたので、それを行った上での不育症や着床不全ということになります。
東尾:卵の検査を行っているのですね
杉山理事長:はい。着床前診断です。学会の方からも示されているように、2回妊娠に至らなかった、2回流産してしまったという方が限定ではあります。*
*日本産科婦人科学会はPGT-Aの対象は以下のように決められています。①反復する体外受精・胚移植の不成功の既往を有する不妊症の夫婦。②反復する流死産の既往を有する不育症の夫婦。
東尾:なかなか妊娠しないと言う方には「難治性着床不全および不育症専門外来」がおすすめということですね
杉山理事長:はい。今から2,3年前までは子宮内膜炎という概念はなかったんですね。子宮の中の特殊な細胞を見つけてきて、これがあると、着床しにくい、というのが段々わかってきたので、徹底的に抗生物質を使って治していくため時間がかかるんですね。
東尾:子宮内膜炎を治療して、成功した例は?
杉山理事長:沢山あります。そのため、治ったかどうかを調べるための再検査まで行います。治療した方が、着床率も全然違います。
気になる卵子のエイジングケアとは?
東尾:日々、進歩しているということですね。進歩しているというお話で言うと「卵子エイジングケア」というのもありますね
杉山理事長:そうですね。これが患者様の一番の課題なのですが、そんなに簡単に卵子がエイジングケアできるわけはないのですが、ミトコンドリアを若返らせるというのは、サプリを飲んでも、運動をしても鍼をやっても、変わらないんですね。変わる根拠がないんです。
その根拠を見出すために、血液検査を行って数値化し、それに向かって目標を立てるのが「卵子エイジングケア外来」です。
東尾:若返りすると思って一生懸命運動したり走ったりしていました・・・。
杉山理事長:運動自体は悪いことではないんですが、疲れてストレスがかかる可能性もあるので、そういうことを医学的に解明する。
卵子が若返るというのは見た目ではわからないので、結果でしかないのですが、利用されている患者様からは体調が良くなって不眠が治ったとか、凄く前向きに生活できるようになった、というお声をよく耳にします。
東尾:実際「卵子エイジングケア外来」ではどのようなことをするのですか?
杉山理事長:殆どが栄養状態のチェックになります。直接僕が行っているわけではなく、皮膚科医の先生による指導が中心です。「あなたはこういう栄養素が足りていないから、こういうサプリを飲んで、こういう食事は止めてください」といった指導です。厳しいですよ。
1ヶ月くらい節制すれば、血液検査は良くなりますが、毛髪検査も遺伝子レベルでチェックすると、過去1,2年くらいの栄養がばれてしまうんですね。卵子エイジング、というと語弊があるかもしれませんが、体のエイジングケアということです。
グローバルスタンダードである卵子凍結の先駆けを
東尾:杉山産婦人科では卵子凍結についても行っていらっしゃいますよね?
杉山理事長:女性が働く時代になって、気が付いたら30代、40代になる。そこから、体外受精をやってもなかなか上手くいかない。アメリカなどは、(卵子凍結は)企業がお金と休みを出して行うのが普通になってきています。アメリカの大企業は州の法律まであり、卵子凍結を実施するかは患者様本人が選ぶのですが、社員に対して提案しなければいけない、という法律があります。
日本の場合、卵子凍結は、マイナスな意見が多く、そういうことをすると返って結婚しなくなるとか、安全性に関する意見が挙げられます。しかしながら、卵子凍結は世界的にはスタンダードになってきていますので、その先駆けとなればと思っています。
まさかの杉山院長自らメールを全て返信。せっかちならぬ神対応
東尾:患者が転院したいな、と悩む時、セカンドオピニオンや、転院の際にどのような検査結果を持ち込めるのでしょうか?
杉山理事長:当院で行う必要がある検査は、全て有効になります。同じ検査は絶対に行いません。やはり体外受精の時は処置をするので、B型肝炎ですとか感染症の検査は多分どの施設もそうだと思いますが有効期限は1年と決めているんですね。
それ以外、精液の所見や卵管造影など、やりたければもう一度行うことはできますが、例えば、3年前に行っていて、ご本人がやらなくても良いと思えば、やらなくても良いです。
東尾:オンライン診療はやっていらっしゃいますか
杉山理事長:世間でいう、zoomで診療するなどは行っていません。ただ、メールで僕が全て答えているのですが、1日100件以上くるかな。7割は通院中の患者様からです。内容は「スプレーをし忘れてしまった」とか「注射を忘れてしまった」とか「明日は行けない」等々・・・ですね。
東尾:えっ?先生がメールで全て返信されているのですか?
杉山理事長:はい。移動中などに対応しています。返信してから1分後に患者様からまた返信がくる時もあって驚くこともあるんですけど。なので、診療と診療の間、患者様が着替えている間に2件くらい返信したりしています。
東尾:優しいですね。杉山先生からきちんとメールがきている、ということですね。驚きです。
杉山理事長:せっかちなんですよ(笑)。未対応のメールが5件とか表示されると、返信しなくては、とイライラしちゃうんです(笑)。沢山医師がいますが、僕のメールアドレスに転送されるようになっています。一方通行で、僕だけが返信しています。
例えば「紹介状出来上がっていますか?」とか「検査結果出来上がっていますか」など、そういった事務的な件は、担当の人に振り分けて対応しています。
患者さん以外の場合は、あまりに細かいことは診察もしていませんし、対応できませんが「こういう検査だけしたいのですが、やってくださいますか。いつ行けますか。いくらかかりますか」といったことは対応しています。ホームページの価格をコピペすることもあります。凄く早いですよ。(笑)
東尾:何か印象深かった患者様とのお話はありますか
杉山理事長:なかなか妊娠に至らず、採卵20回目ですという方が、妊娠された例が何回かありました。特別な事はしていないんですよ。やれることは限られていて。当院は、昔はお産も採卵も世田谷で行っていたので、不妊クリニックでは出産まで立ち会うことはないのですが、そういった難しい患者様のケースが何件かありました。
また、不育症で他の病院で10回くらい流産した方がいて、13回目くらいだった時、早産ではありましたが、赤ちゃんが誕生し、元気に育っています。それは凄く沢山検査をし、他の先生方と勉強をしました。
免疫については、血液で免疫を測って把握します。受精卵って移植するって言うじゃないですか。「移植する」って自分のものを入れるのに、なんで移植なんだろう、と。よく考えれば変じゃないですか。
移植における免疫については「受容」とか「拒否」といった言い方をしますが、当院はこの研究の走りなんですね。今では世界中でその検査が行われるようになりましたが、その当時はそんな検査をやっても関係ないよ、といわれていた時代だったのです。その患者様の例が、この免疫の研究をやり続けたキッカケに結びついています。
東尾:最後に患者様へのメッセージをお願いします
杉山理事長:不妊治療は、病院選びで迷われる方が多いと思いますが、初期の段階では出来るだけ近くで通いやすい病院へ行って下さい。仕事を休むなどをなるべくしなくても良い病院に行って欲しいですね。
体外受精で、反復になってしまった場合は、当院のように専門の病院に行く、といった棲み分けした方が良いかなと思います。
普通の病気でも、大学病院行く前に、近所の病院に行くわけですから。みんな、耳年増になって、まだ不妊かどうかも分からないのに、不妊専門病院に行くと、色んな検査をされて、わけがわからなくなってしまうと思うんですよね。
保険適用になって、自由診療との混合治療が日本はできないので難治性の方にとっては助成金が出なくなるため、マイナスの要素になりますが、凄く難しいケースなのか、イージーなケースなのかの棲み分けをして、病院を選んだ方が良いかなと思います。
東尾:色々な悩みに応えてくれそうだなという印象を受けました。ありがとうございました。
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難治性着床不全や不育症を始め、社会のニーズが高まる社会的卵子凍結など、様々なことに果敢に取り組む杉山産婦人科。日々進化する医療を前に、不妊治療におけるパイオニア的な存在です。他院ではなかなか取り組めないことを、いち早く形にしていくそのパワーは、まさに杉山先生の牽引力あってこそ。杉山先生の“せっかち”は、患者ファーストの賜物なのかもしれません。
編集後記
主観ではございますが、杉山先生は一見迫力のあるオーラがあり近づきにくさを感じておりました。でも、実際にお会いし、お話を伺って、頭の回転の速さ、行動力の速さ、患者様への対応のツボをしっかり捉えていて、あっという間に魅了され、その人柄は裏表のないカリスマ性なのだと感じました。杉山先生の人間性溢れる神対応は、妊活研究会のメンバーからも耳にするようになりその実行力に感銘をうけました。とにかく前に前に前進する杉山先生の前進力に妊娠への近道はここにある!と感じた取材でした。(取材担当:森)
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