体質に合った漢方を選ぶ重要性#2妊活と加味逍遙散

ARTICLE

2025.01.27

東洋医学

妊活における「加味逍遙散」の効果と適した体質とは?

妊活中に、漢方薬を活用したいと考える人もいるでしょう。しかし、自分の体質に合っていないと、逆効果になることもあります。そこで、女性特有の症状や不調に良いことで知られる「加味逍遙散(かみしょうようさん)」について、薬剤師で国際中医専門員の住吉忍さんが解説します。

漢方における体質の考え方


漢方は一人ひとりの体質に合わせて処方されるお薬です。体質は人それぞれ異なるため、同じ薬でも効果は異なります。

したがって、一般的に「妊活に良い漢方」と言われているものが、必ずしもご自身の今の体質に合った漢方だとは限りません。自分の体質に合った漢方を選ぶことが重要です。

漢方における体質は、身体を作る基本的な要素「気」「血」「水」と、身体の機能に関わる臓腑「五臓六腑」の状態を勘案し、判断します。

加味逍遙散とは


加味逍遙散とは、五臓の中の「肝」という場所を整える漢方薬です。ここでの肝は、肝臓そのものを指すのではなく、さまざまな役割があります。

大きな役割のひとつに、「気」を巡らせ、ストレスや冷え性、疲れやすさなどの症状を緩和することが挙げられます。 気と言うと、目に見えないものなのでイメージしにくいかもしれませんが、「エネルギー」と読み替えていただけたら良いかと思います。

漢方では、エネルギーが充実している状態なのか、足りない状態なのか、もしくは流れが悪くなって滞っている状態なのかなど見分けて、漢方薬を使っていきます。 加味逍遙散は、どちらかというと気が滞っている「気滞」と呼ばれる状態から出る肝の不調に効果的です。

構成成分は、柴胡、芍薬、甘草、当帰、茯苓、牡丹皮、山梔子、生姜、薄荷。一般的に情緒不安定やイライラしている状態、PMS(月経前症候群)の症状、黄体期の不調などに用いられます。

妊活における加味逍遙散の役割

妊活においては、肝の不調や気滞タイプの場合、加味逍遙散の服用によって次のようなことが期待されています。
・ストレス軽減 精神的ストレスが妊娠の妨げになることもあります
・ホルモンバランスの調整 生理不順や月経前症候群の改善
・血行促進冷え性や低体温の改善をサポート
・自律神経の調整 睡眠の質向上や不安感の軽減
・免疫の調整 NK細胞活性に関わる報告あり

加味逍遙散が体質に合わないと逆効果に


このように女性特有の不調を幅広くカバーする加味逍遙散ですが、重要なことは、すべてのイライラやPMSの症状、黄体期の不調などに効果があるわけではないということです。

加味逍遙散は、肝の不調や気滞タイプの方への処方になります。したがって、体質タイプが異なる方が服用しても、効果は望めないでしょう。

体質に合っていないのに服用を続けると、体調を崩してしまう可能性があります。
例えば、潤いが不足している陰虚タイプの方ならば、よりいっそう乾燥が進んでしまい、エネルギーが不足している気虚タイプの方ならば、不足しているものを頑張って巡らそうとするので倦怠感が現れることもあります。

また、加味逍遙散を服用して効果がなかったからといって「自分は漢方が効かない体質なんだ」と諦めるのはもったいないです。ほかの処方が適していることがあります。

自己判断をせずに、可能であれば、一度専門家による「体質診断」や漢方相談を受けて選ぶようにしましょう。

加味逍遙散が適している体質

加味逍遙散の適応症状イメージ漢方相談の現場では、加味逍遙散が適しているかどうかを判断する場合、次のような症状に着目します。ただし個人によってさまざまな要因が絡むので、この症状があるから適しているとは言えません。あくまで参考としてご覧ください。

〇肝の不調の症状
イライラや怒りっぽさ
喉や胸のつかえ感
頭痛やめまい
目の疲れや乾燥
生理不順や月経痛
顔面紅潮
〇気滞
喉や胸の圧迫感や膨満感
ため息が多い
イライラや不安感
食欲不振
おなかや胸が張る
消化不良やお腹の張り

例えば、頭痛やめまいについては、肝の不調ではなく、血流が悪かったり、水や血が足りなかったりする体質タイプの場合でも起こります

このタイプの頭痛やめまいには、加味逍遙散の効果は期待できないでしょう。別の漢方の処方になります。 目の乾燥についても、その人の症状によっては潤いを補給する処方も一緒に出すこともあります。

また食欲不振の一方で、空腹とは関係なく、滞った気を一気に巡らそうとして食欲が暴走してしまう方もいるため、単に食欲がないということでもありません。

繰り返しになりますが、個人によって、そのときの症状、体質タイプはさまざまで、適した漢方も異なります。

自己判断して自分に適さない漢方を服用し続けるよりも、どんな漢方が今の自分に適しているのかを専門家に相談してみることをおすすめします。

自分の状態に合った漢方を探すために

漢方の専門家でも、それぞれ得意とする分野があります。例えば、更年期障害、消化器系、メンタル面などです。不妊治療であれば、その分野を専門にしている方に相談をするほうが、西洋医学の知識もあり、適切な処方を受けやすいでしょう。

ご自身が妊活に取り組んでいる場合は、今受けている治療内容を考慮して漢方を選ぶことが大切になります。

治療内容や現状のホルモン値、検査で指摘された項目があれば、専門家にその状況なども共有できると、スムーズです。SNSでは、不確かな情報も多いので、振り回されないように、正しい知識をもち、妊活を進めていきましょう。

この記事の動画はこちらから

本日お話をおうかがいした方

ウィメンズ漢方 薬剤師/国際中医専門員

住吉 忍

相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。

RELATED ARTICLEおすすめ関連記事

テーマ:

会員限定記事

会員限定の記事です。
ログインしてからご覧ください。会員登録は無料です。

RANKING⼈気記事

KEYWORDタグ一覧人気のタグ

CATEGORY