不妊治療の体験談、ケーススタディ│40代と50代「子供が欲しい」夫婦の場合

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2025.05.26

患者の声

不妊治療のケーススタディ│40代と50代「子供が欲しい」夫婦の場合

最近は、40代であっても体外受精で授かる女性が増えていることから、高齢のカップルも妊娠を希望されるケースが珍しくありません。そこで、今回はケーススタディとして、クリニックに訪れたカップルの例を、不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんにご紹介いただきます。

40代のEさんと52歳のFさんは、「子どもが欲しい」という思いから不妊クリニックを受診しました。 検査の結果、年齢的なリスクや厳しい数値が示され、戸惑いや葛藤が続きます。 ここでは、不妊症看護認定看護師の小松原千明さんが語る検査内容や治療方針を中心に、実際の事例から見える“年齢”と“生活習慣”の影響を整理し、妊活の可能性や課題を考えていきます。

40代と50代夫婦、いざ不妊治療へ


Eさん(44歳・美容室経営)とFさん(52歳・会社員役員)は、結婚して3ヶ月。 家族の将来を考える中で「子どもが欲しい」と強く思い、不妊治療クリニックを受診しました。

忙しい日々を送っていたEさんは一生独身もあり得ると考えていましたが、優しい彼との出会いをきっかけに結婚を決意。 将来について話し合ううちに「2人の子どもが欲しい」という思いが高まり、44歳という年齢から妊娠への不安を抱えつつも、検査や治療に積極的に取り組もうと決めました。

Eさんの検査結果


Eさんの検査では、卵巣機能の低下や卵子数の少なさが顕著でした。 FSHの値(18.8)は高く、AMH(0.56)は卵巣内の卵子が残りわずかであることを示しています。

また、胞状卵胞が右0個・左1個と少なく、発育の見込みも不安定な状態です。 子宮筋腫(4×5cm)は日常生活に支障が出ていないため経過観察となる一方、月経周期が24~36日と乱れ、出血が2日ほどで終わるのは、閉経に近い状態を示唆します。

さらに44歳という年齢により、染色体異常のリスクが上昇し、妊娠が難しくなる可能性が高いこともわかりました。

WHO基準値を大きく下回る結果。喫煙で精子や卵子の質の低下も懸念点に Fさんの検査結果では、射精量(0.6ミリ)、精子濃度、総精子数、運動率、形態率、生存率などがいずれもWHOの基準を大きく下回り、乏精子症・精子無力症・奇形精子症と診断されました。

年齢(52歳)による精子DNAの損傷リスクも高く、受精能力や胚の発育に悪影響を及ぼす可能性があります。 さらに、喫煙(1日40本)や週4~5回の飲酒習慣も精子の量や質を低下させる原因とされ、Fさん本人の身体への負担だけでなく、奥様の受動喫煙による卵子の質の低下も懸念される状況です。

自然妊娠は難しい。医師は顕微授精を推奨することに


検査結果からEさんは卵巣機能が閉経に近く、44歳ゆえ染色体異常リスクが高いなど自然妊娠が難しいと判断されました。

Fさんも乏精子症や精子無力症・奇形精子症があり、同様に厳しい状況です。 そこで医師は早めの生殖補助医療、特に顕微受精(ICSI)を推奨しましたが、自然周期法でも卵胞が十分育たない・採卵できないなどの課題が多く、出産率は3%以下との見通しが示されます。

最終的には「リスクと成功率を踏まえ、治療を続けるか十分話し合ってください」と助言を受けました。

不妊症看護認定看護師からの説明は?


まず不妊症看護認定看護師は、「医師の提案を夫婦がどう受け止め、何がわからなかったのか」を確認します。

そのうえで、検査結果の詳細をわかりやすく解説し、体外受精や顕微受精の具体的な方法やリスク(妊娠率・流産率・染色体異常率)を説明します。

最終的に顕微受精が提案された背景や、必要となる体質改善サプリの情報なども紹介していきます。

妻Eさんの不安。閉経が近く、自然妊娠は厳しい?


Eさんは、FSH値の高さやAMHの低さ、卵胞の少なさから「閉経が近く、自然妊娠は厳しいのか」と強い不安を抱いていました。

医療スタッフは「44歳による卵巣機能低下は戻せないが、今ある卵子を顕微受精する方法が考えられる」と説明し、出産率は3%以下でも、体調管理や食生活を見直せばわずかな望みはあると強調しました。

「なぜこんなに厳しいのか」というEさんの疑問に寄り添い、納得感を持って治療を選べるようサポートする姿勢が示されました。

夫Fさんは乏精子症・精子無力症・奇形精子症。顕微授精以外難しい


Fさんは、自身の精子が乏精子症・精子無力症・奇形精子症と診断され、52歳によるDNA破損リスクも重なり「顕微受精以外は厳しい」と告げられました。

さらに喫煙や頻繁な飲酒が精子の量・質を下げており、禁煙・飲酒制限・食生活改善が急務です。 「仕事のストレスでタバコをやめられない」と悩むFさんに対し、看護師は「赤ちゃんを迎えるため」という明確な目標があれば乗り越えやすいはず、と助言し、妊娠後も健康的な生活を続ける重要性を伝えました。

Eさん・Fさん、共にご夫婦で不妊治療の挑戦を決意


夫婦が子どもを望むのは自然なことであり、ハードルの高さをどう乗り越えるかは2人で話し合うことが重要です。

治療を進めるか諦めるかも夫婦で決断し、その過程こそが今後の人生に大きく影響すると伝えられました。

するとFさんは「今チャレンジしなかったら後悔しそう。禁煙・禁酒を頑張る」と意思を表明し、Eさんも「可能性が低くても挑戦しないのは後悔する。和食中心のメニューや仕事との調整をしてみる」と決意。 看護師は「全力でサポートします」と応じました。

半年と期限を決め、治療スケジュールを決定することに


EさんとFさんは不妊治療を始めることを決断し、医師からは「自然周期で卵胞を育て、必要に応じて排卵誘発剤を使い採卵を目指す」というスケジュールが示されました。

ご主人は「半年間治療に取り組み、妊娠できなければ2人で楽しく暮らそう」と区切りを決め、奥様も「半年後に後悔しないよう、全力で取り組む」と意欲を見せています。 医療スタッフは「ご夫婦で一緒に歩んでいきましょう」と励ましの言葉を送りました。

このように、妊活は決してひとりで抱え込むものではなく、夫婦が二人三脚で支え合いながら進んでいく道のりです。半年という期限をあらかじめ設けることで、心の準備やお互いの想いを確認し合いながら取り組むことができるでしょう。

ときには不安や迷いが生じても、二人で話し合い、医療スタッフのサポートを受けながら進んでいけば、より前向きな一歩を踏み出せるはずです。お互いを思いやりながら、ともに力を合わせて歩む姿勢こそが、家族の未来を育む大切な原動力となるのではないでしょうか。

「みんなの妊活」オープンチャットのご案内


「みんなの妊活」は、LINEのオープンチャットを活用した不妊治療・妊活の相談スペースです。EさんやFさんのように情報が多くてモヤモヤしたとき、自分と似た悩みを持つ人と気軽に話し合える場としておすすめです。

専門家も参加しているので、疑問を解消しやすいのが大きなメリットです。気になることがあれば、ぜひ一度利用してみてください。

この記事の動画はこちらから

本日お話をおうかがいした方

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

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