凍結・融解で胚のグレードはなぜ変わる? 4AB→6ABなど変化の理由を解説

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2026.01.26

不妊治療

胚のグレードはなぜ凍結する時と移植する時で変化するのか

前回は、胚盤胞グレードに記載される「最初の数字」について解説しました。

今回は、ご質問で特に多い 「凍結時と移植前で胚のグレードが変わるのはなぜか」 というテーマを取り上げます。

読者からのご質問の事例


過去にいただいたご質問には、以下のようなものがあります。

  • ① 凍結時は 4AB だったのに、移植時には 6AB になっていた
  • ② 採卵後の結果説明では 4BB だったが、移植前には 4CB になっていた
  • ③ 「胚が戻らなかったため追加で融解した」と言われたが、原因は?
  • ④ 「まだ回復してきていない」と説明されたが、回復とは何か?戻らないとダメなの?

結論から言うと、レードの変化はあり得ます。

原因としては、以下の2つが考えられます。

  • ・凍結融解
  • ・アシステッドハッチングの影響

まずは、「凍結融解技術」と「アシステッドハッチング」の2つを簡単に整理していきましょう。

胚の凍結融解とは?

体外受精が始まった頃は「新鮮胚移植」が主流でしたが、現在、日本ではほとんどが 凍結胚移植です。

排卵誘発(ホルモン補充を行い、複数の卵胞を育てること)を行ったあとに採卵する方法を行うと、複数の良好な胚ができた場合に、移植しない胚の保存方法として「胚の凍結融解」が編み出されました。

凍結のメリット

  • ・胚をそのままの状態で半永久的に保存できること。
  • ・適切な時期に融解して胚移植できること。

採卵周期は排卵誘発を行い卵胞発育させ、卵子を得ることを目的としているため、採卵周期の胚移植は、ホルモン環境や子宮環境が着床に適していないこともあります。着床に適したホルモン環境や子宮環境を整え、着床のタイミングに合わせて胚を融解して移植することで妊娠率が高くなるとされています。

※必ず凍結胚移植を行わなくてはいけない、というわけではありません。複数個の卵子を採卵しない場合では新鮮胚移植を用いることもあります。

凍結融解する方法は?

当初は緩慢凍結法というゆっくりと凍結していく方法が主流でしたが、現在は体外受精実施施設のほとんどで、超急速ガラス化凍結法という方法が採用されています。

凍結で最も重要なのは、氷の結晶を発生させないことです。細胞内のほとんどは水が占めていますが、そのまま凍結・融解を行うと細胞内に氷の結晶が発生し、細胞を壊してしまうためです。

このため、凍結する際は、脱水と凍結保護剤による細胞の保護を行います。

融解する際も、一気に融かさないと氷の結晶は発生します。融解後は、凍結保護剤を除去し、脱水されてしぼんだ胚に水分を戻しつつ、アシステッドハッチングを行い2~3時間経ってから移植を行うのが一般的です。

 アシステッドハッチング(AHA)とは?


アシステッドハッチング(AHA)とは透明帯(卵を取り囲む殻)をレーザーなどで薄くする、もしくは穴を開ける操作のことです。

胚は透明帯から孵化(hatching)して着床します。しかし凍結した胚は、透明帯が硬くなる傾向があるため、凍結胚移植時は、ほとんどの場合アシステッドハッチング(AHA)を行います。

AHAを行うタイミングは「融解した後」です。すでに透明帯から細胞が外に出ている胚(グレード5○○、6○○)には行いません。

 なぜグレードが変わるのか?

凍結時と移植前の間には、凍結 ➡ 融解 ➡ アシステッドハッチングといった処理が挟まるため、これらの処理がグレードの変化に少なからず関係しています。

① 凍結時 4AB → 移植時 6AB のケース

これは、先ほどお伝えしたアシステッドハッチングが関係している可能性があります。

融解した直後は 4AB だった胚が、アシステッドハッチングを行い、移植前までにさらに成長し、6まで拡張した良好な胚に成長したと考えられます。

② 凍結時 4BB → 移植時 4CB のように見えるケース

凍結した時点では 4BB と評価されていた胚盤胞が、融解後に改めて確認すると 4CB のように見えることがあります。また、融解から移植までは少し時間が空くため、その間に形態がわずかに変化し、結果として評価が変わることも考えられます。

このように、融解後の状態は凍結時と全く同じとは限らないため、移植前にあらためて評価を行い、最終的な判断がなされます。

③ 凍結融解によるダメージでグレードが落ちた、もしくは細胞が壊れたケース

凍結融解の手技によるもの、または元々の胚盤胞の質が良くなかった場合が考えられます。

  • ●凍結融解手技の影響:超急速ガラス化凍結法は、胚へのダメージが非常に少ない方法(ほぼ100%の生存率)として、ほとんどの施設で用いられている方法です。

    ただ、現実的には胚培養士の凍結融解手技に少なからずばらつきはありますから、胚盤胞内の複数ある細胞のうち、一部に凍結傷害が起きてしまいグレードが下がる可能性は0ではないと思います。

  • 元々の胚の質:元々胚の質が悪く、凍結に耐えられないこともあります。

※時折、培養室の技術のせいか心配されることがありますが、原則的に、十分な訓練を受けた胚培養士が担当しているはずですから、真っ先に疑う必要はないと思います。「胚の質が良くない」ということも考えられますから、断定は難しいかと思います。

そして、凍結融解は、「ダメージが非常に少ない方法」であって、「ダメージが全くない」わけではありません。多少なりとも凍結のダメージはあるとお考えいただく必要はあるかと思います。


細胞が壊れてしまった胚盤胞の様子。融解時、AHA後、移植中止となった胚盤胞の様子が確認されています。細胞1個1個の輪郭が、AHA後→移植中止になるにつれて不明瞭になってきています。

④ 「まだ回復してきてない」と言われたケース

ここで言う「回復」とは、「融解した後に、胚にしっかりと水分が戻った状態」です。言い換えると、凍結前の状態に戻っているか、ということになります。

凍結は胚の水分を抜いてから行いますから、凍結時は全体的にしぼんでいる状態になります。融解後は水分を徐々に戻し、膨らんできます。この時、膨らんでこず、しぼんだ状態のままの胚を「戻らない胚」「再拡張しない胚」と言います。

↑融解後、細胞が完全に壊れていないものの、完全に拡張しきっていない胚。

融解後移植までは2~3時間程度空いていることが多いので、完全に元の状態にならずとも、戻る兆候(少し大きくなってきている等)は出ていますが、戻る兆候もないとすると、「胚の質が悪い」ことも考えられています。この「質」はグレードとは違い、見た目でわかるものではなく、良好なグレードの胚であっても戻ってこないケースがあります。

ただし、融解後1時間ほどで移植することもあります。この場合は戻る兆候が出てないケースもあり、移植した後に、体内で回復してきます。ですから一概に「戻らないから胚の質が悪い、妊娠できない」とは言い切れません。

まとめ:重要なポイント

胚のグレードが変化すると不安な気持ちになるかと思いますが、凍結時と移植時で胚のグレードが変わるのは 「よくあること」 で、必ずしも悪い兆候ではありません。

  • ●胚のグレードはあくまでも「形態的な指標」であり、妊娠の可否を決める絶対条件ではありません。

  • ●完全に細胞が壊れてしまった胚においては、着床の可能性はありませんが、完全に壊れていない場合は、着床する可能性は十分秘めていると思います。施設の指示に従っていただきながら移植を行っていただいて良いと思います。

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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