体外受精はいつまで続ける?やめどきの考え方
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妊活お役立ち情報
不妊治療を受けている方、これから体外受精を検討している方から、よくいただく質問があります。
「体外受精は何回くらいで妊娠しますか?」「どこまで続ければいいのでしょうか?」「やめどきがわかりません」
治療を続けていく中で、「続けるか・やめるか」という判断に悩む場面は少なからずあるかもしれません。しかし、この“やめどき”には明確な正解があるわけではありません。
今回は、体外受精の成功率のデータをもとに、やめどきをどのように考えるべきかを考えていきましょう。
なぜやめどきは難しいのか

体外受精のやめどきが難しい最大の理由は、治療の成功率が完全に0になることは、ほとんどない という点かと思います。
何回かうまくいかなかったとしても、「次はうまくいくかもしれない」 という可能性が常にあり、「やってみないとわからない」 としか言えない側面が、体外受精治療にはあります。
また、医師をはじめとする医療者側も、統計学的に妊娠の可能性がゼロでない限り、「治療をやめましょう」と明確に区切りをつけることが難しい場合があります。
実際の臨床現場では、体外受精を何度繰り返しても結果が出なかったものの、治療を中断した後に自然妊娠し出産に至ったといったケースが報告されることもありますから、妊娠の可能性はありませんとも言い切れないわけです。
こういったケースが起こる理由は色々考えられますが、妊娠の可能性は個人差が大きく、まだ十分に解明されていない部分も多い というのも大きな要因です。
だからこそ、
・もう少し続ければ妊娠できるかもしれない
・でも結果が出ないまま続けるのも不安
といった葛藤が余計に生まれやすくなっているのかと思います。
つまり、回数だけで判断するのではなく、医学的状況とご自身の気持ちの両方を踏まえて考える必要があると言え、これが「やめどき」が難しい本質といえるのではないでしょうか。
では、体外受精の成功率がどの程度か見ていきましょう。
成功率の現実と年齢の影響
体外受精の成功率は年齢によって大きく変わります。
日本産科婦人科学会のARTデータをもとにすると、1回の胚移植あたりの出産率はおおよそ以下の通りです。
・30歳前後:約25%
・35歳前後:約20%
・38歳前後:約15%
・40歳前後:約10%
・42歳:約5%
・43歳以上:1〜3%
年齢が上がるにつれて出産率は低下していることがわかります。

※Birth rate:出生率
Miscarriage rate:流産率
Chromosomal abnormality:染色体異常発生率
参照:2023年ARTデータブック(一部改編)
また、体外受精では1回で結果が出ることはむしろ少なく、複数回の治療で結果にたどり着くケースが多い とされています。
一般的には、
・はじめの数回(1〜3回)で妊娠に至るケースが比較的多い
・その後も回数を重ねることで可能性は上がるが、その伸びは徐々にゆるやかになる
・一定回数を超えると、大きな変化は出にくくなるという傾向があり、
回数を重ねればよいわけではない と考えられています。
流産と染色体異常というもう一つの壁
ここで重要なのは、 妊娠率と出産率は異なる という点です。妊娠しても、そのすべてが出産につながるわけではなく、その背景には流産があります。
流産率は年齢とともに上昇し、
・30歳前後:約10〜15%
・35歳前後:約15〜20%
・40歳前後:約30〜40%
・43歳以上:50%以上
とされています。その原因の1つが、胚の染色体異常です。
染色体異常の割合は、
・30歳前後:約30%
・35歳前後:約40%
・38歳前後:約50%
・40歳前後:約60%
・42歳:約70%
・43歳以上:約80%
と年齢とともに増加します。つまり、 妊娠しにくくなるだけでなく、妊娠しても継続しにくくなる ということがわかります。
保険診療とやめどきの関係

現在、日本では体外受精が保険適用となり、治療回数に上限が設けられました。これにより費用面での負担が軽減され、多くの患者さんにとって治療を継続しやすい環境が整ったことは、大きな前進といえます。
一方で、その影響として、「保険の回数=やめどき」 と捉えてしまうケースが増えているのも実情です。
実際の臨床現場では、「もう少し治療を継続すれば妊娠に至る可能性があるのに…」と感じる場面があることも、医師の間で課題として認識されています。
しかし、保険で定められている回数は、 あくまで制度上の区切りであり、医学的な限界を示しているものではありません 。実際には、保険回数終了後に妊娠に至るケースも報告されています。そのため、保険制度だけを基準にやめどきを判断するのではなく、個々の状況に応じて慎重に考えることが重要です。
治療をあきらきれない気持ち

やめどきを考える場面では、
「ここまで治療を続けてきたのに、やめてしまっていいのだろうか」
「これまでの時間や費用を考えると、簡単にはやめられない」
といった声を患者さんからお聞きすることも少なくありません。おそらく、生殖医療に関わる医師や医療者であれば、一度はこうした言葉に向き合った経験があるのではないかと思います。
治療を続けるかどうかの最終的な判断は、ご本人にしかできません。そのため医療者側も、「どこまで続けるべきか」という問いに明確な答えを示すことが難しい場面があります。
だからこそ、「やめるかどうか」ではなく、「納得できる選択かどうか」 という視点がとても大切かと個人的に考えています。
その先の選択肢

やめどきを考える際には、「どこまで進んでいるか」が重要なヒントになります。
良好な胚が得られている、着床している、妊娠反応が出たことがある場合は、あと一歩で結果につながる可能性があります。一方で、胚が得られない、着床しない状態が続く場合には、治療の見直しや継続の再検討が必要になることもあります。
そして大切なのは、治療を続けない選択をした場合でも、道は一つではない ということです。
例えば、 AID(非配偶者間人工授精) は、無精子症など精子による妊娠が難しい場合に検討される方法です。無精子症には、精子の通り道が詰まっている「閉塞性」と、精子を作る機能に問題がある「非閉塞性」があり、手術や精子採取によって対応できるケースもあります。しかし、それでも精子が得られない場合にAIDが選択されます。
日本産科婦人科学会でも、 「他の方法で妊娠が見込めない場合に限る」 とされており、医学的な適応だけでなく、家族のあり方も含めて考える必要があります。
また、 養子縁組 という選択もあります。日本では児童養護施設などで暮らす子どもが多く存在する一方で、特別養子縁組の件数は限られており、社会的にはまだ十分に広がっているとは言えません。養子縁組は医療とは異なり、家庭環境の確認やマッチングなど、時間をかけて進めていく仕組みです。
さらに、 卵子提供 や 代理出産 など、第三者が関わる生殖医療という選択肢も存在します。これらは妊娠の可能性を広げる方法である一方で、日本産科婦人科学会では慎重な立場が取られており、特に 代理出産は原則として認められていません 。
その背景には、
- ・倫理的な問題
- ・親子の関係
- ・子どもの福祉
といった重要な課題があり、単なる医療の問題だけではなく、社会的倫理的な意義も含めて考えなくてはいけないとされています。
まとめ
体外受精のやめどきに明確な正解はありません。成功率は年齢とともに変化し、流産や染色体異常といった要因も影響するため、単純に回数だけで判断することはできません。
だからこそ、
- ・現在の治療の状況や、過去の結果
- ・パートナーお二人の気持ち
- ・将来の生活や家族のあり方
これらを総合的に考えることが大切です。治療を続けることも、やめることも、どちらも間違いではありません。
そして、 やめるという選択も、新しい選択肢に進むための前向きな一歩 だと個人的に思っています。納得できる形で進むためにも、担当医と相談しながら、自分たちにとって最適な道を見つけていきましょう。
本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物検査業務に従事。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養士として勤務。また、クリニック開業時の培養室立ち上げにも参画。現在は川越レディースクリニックで医療部マネージャーを務めながら、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活に関するオンライン相談を行い、患者様支援に幅広く携わっている。

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