採卵数が予測可能。費用対効果の高い不妊治療を|小塙医院

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2024.04.30

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採卵数が予測可能。費用対効果の高い不妊治療を|小塙医院【後編】

茨城県の小美玉市に構える小塙医院。実は、小塙医院院長の小塙理人先生は、たくさんの論文発表を行っています。しかも、患者様にとっても、医療従事者にとっても役立つアプリや計算式を開発し、それを治療に役立てています。今回は、小塙医院の不妊治療について、詳しくお伺いします。

 

▶️前編はこちら

 

データ分析に基づく不妊治療アプリで、採卵数を予測可能に



編集部:小塙医院で患者様のために取り組まれていることについてお聞かせください

小塙先生:生殖医療は妊娠率や採卵数、受精率、発生率など、数値の部分が多く、データとして取るにあたって、データ分析と親和性があると考えています。そこで、院内のデータと国内外のさまざまなビッグデータ解析を参考にして、エビデンスのある治療が提示できるように、院内でデータを取りながら、毎月、どういった治療法が良かったのか分析し、毎年まとめています。

 

その上で、国内のエビデンスや海外のエビデンスと照らし合わせ、どういった評価にしていくかを検討し、学会発表や論文を出すなどの取組みも行っているのですが、アプリ化しよりわかりやすく患者様に情報開示するためウェブアプリを開発いたしました。

 

例えば採卵数というのは、卵巣の機能を測るAMHの値と年齢に影響するため、それがどのような影響を与えるかということで、式に表すことができました。「回帰式」といって年齢が上がると採卵数が減少してきて、卵巣機能が高い、つまりAMHが高いと、採卵数も上がってくる、というデータがあるので、そこから導き出して、どのような採卵数が患者様によってとれるのかを予測していきます。
採卵数が多いほど、できる胚が多いため、妊娠の確率が上がっていく、ということを導き出した計算式をアプリに落とし込みました。

編集部このアプリを患者様はどのように活用されているのでしょうか

小塙先生もともと最初に2020年の保険適用になる時に、患者様から「採卵の数がどのくらいなんですか?」、というお声がありました。今回、不妊治療の保険適用になる際に、採卵数の個数によって保険点数が決まりました。1個と2~5個と6~9個、10個以上、と個数が上がるほど費用は上がっていく仕組みです。

 

採卵数 保険点数 自己負担金(3割)
1個 2400点 7200円
2〜5個 3600点 10800円
6〜9個 5500点 16500円
10個〜 7200点 21600円


患者様からも「採りすぎも嫌だけど、少なすぎるのも嫌だ」というご希望があり、例えば9個ぐらい欲しいとか、6~9個欲しいとか。実際にはその数を狙うことは難しいことですが、そういった背景があり、この計算機を作ることになりました。

ご自身で採卵数の予測ができるということもあり、アプリの反響が良く、ダウンロード数が多かったため、一時、使えなくなってしまったことがありご迷惑をおかけしました。現在は容量を増やし改善されています。また、成績も少し新しいものを加えた上で、改定したものが2024年新たにリリースされました。

 

アプリを開発したきっかけとは?

小塙先生私が生殖医療を学んできた中で、2017年、2018年という時期に生殖医療が日本でかなり盛んになってきて、自然周期や低刺激という、刺激を加えない治療が流行していました。そちらの方法の方が、採卵数は少なくなりますが、患者様には合併症が少ない、ということで流行っていました。

しかし、海外では卵子の個数をしっかり採って、できるだけ胚をつくって、1回の採卵で一人目、二人目と妊娠をする。凍結という技術があるからこそ、それが可能になる、ということで推進されています。PGT-Aや染色体検査なども含めて胚を作り、胚移植を行うという方法が、当時主流となっていました。

そして去年、保険適用になってから、そういった方法を取るクリニックも増えてきました。採卵数を多くすることで、治療費は上がりますが、個数を多く採り1回の採卵で複数回の移植が叶えば二人目までの妊娠が可能となるからです。そこで、これを機に、採卵数と妊娠率の関係を、自分でもデータで調べてみよう、と思い至ったのが、このアプリの開発のきっかけです。

患者様にとって妊娠率が高く、治療費は抑えた治療を

小塙先生当院では、どのぐらい個数が採れたらその採卵1回当たりで妊娠できるのかというのを重視しています。例えば、5回の採卵で10個採れました、というケースの場合は、5回分の採卵費用がかかり治療費は高くなります。一方、1回の採卵で10個採れれば治療費は安くなります。
そのため、基本的には採卵回数をいかに減らして、かつ、その1回の採卵で妊娠出来るかというところを考えて費用対効果を上げるということを一つの方針としています。


また、費用対効果分析を採卵周期で使用する薬でも行いました。現在、保険適用で使える薬剤として、レコベルという自己注射の製剤と、ゴナールという自己注射の製剤が2つあるのですが、どちらのほうが費用対効果が高いのかを調べました。

薬価が安いのはゴナールだったのですが、どちらが採卵数が採れて、より胚になるかを計算したところ、レコベルのほうが費用対効果が高い、ということが分かり、論文発表をさせていただきました。これはあくまで当院での検討なので、より多くの施設と協力して症例数を増やした費用対効果研究(2024年4月現在進行中)を実施しています。

常に検討を行いどういった薬剤を選択して、どのくらい個数が採れたら一番安く、早く妊娠できるか、という点を重視しています。

 

編集部このアプリは誰でも使えるものになるんでしょうか

小塙先生誰でも使えるものです。webアプリで別に課金など全くありません。スマートフォンからでもパソコンからでもアクセスが可能です。

▼アプリ▼
https://app.calconic.com/public/calculator/65ccb95965b4b7001e4a67a8?layouts=true

通院回数を最低限に抑えた卵巣刺激プロトコル

編集部仕事と不妊治療の両立もこのアプリを使う事でしやすくなるということでしょうか

小塙先生不妊治療中で仕事をされている女性も多く、通院回数が増えるほど、時間とお金が患者様の負担になっていると思っています。地域柄によるかもしれないのですが、茨城では「費用が高い」と言われることもありますので、患者様にデメリットがないように考えています。

実は、今回リリースした計算機とは別に、医療関係者向けに作った計算機があります。注射の量で、どのくらいの個数が採卵できるのか、どのくらいの刺激日数で、その個数を達成できるかという計算機を作りました。

これは、「The gonadotropins starting dose calculator(ゴナドトロピンスターティングドーズカリキュレーター)」というもので、こちらは論文発表をさせていただいています。このぐらいの注射をこのくらいの期間使えば、このくらいの個数が採れる、ということが、大まかにわかります。

これを利用することで、患者さまのご来院日も、最初と1回と最後採卵だけ、といったプロトコル(治療計画)が出来上がりました。本当に忙しい方にはそういった方法を用いて、採卵の日数を確定させて来院数を減らすという方法を試しています。外すことはありますが、忙しい方には適した方法かなと思っています。

目標採卵数を設定し刺激日数や注射用量を決める「ゴナドトロピン開始用量計算機」
開発詳細▶ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9853467/

 

編集部この計算機を用いた方法は、小塙医院だけで取り組まれているのでしょうか

小塙先生当院はもちろんですが、つくばARTクリニックで他の先生に使っていただいて実証を行っています。実際この計算機を用いて、目標採卵数を達成できた、という論文を今年発表する予定です。

 

編集部つくばARTクリニックとの連携はどのようにされているのでしょうか

小塙先生連携に関しては、金曜日に私がつくばARTクリニックで診察を行っています。そこで、吉田先生と一緒に話し合ったり、カンファレンスをさせていただいたりしています。また、スタッフ向けに定期的に勉強会を行ったり、学会発表以外にもさまざまな方法で情報を共有しています。

また、毎年、業績発表を行い、お互いのクリニックの成績を共有し、何が良かったのか、良くなかったのかを振返り、両院が高見を目指せるように取組みを行っています。

 

例えば小塙医院内で治療成績が下がった際に、何がいけなかったのかということを、自分の施設内で調べることも可能ですが、つくばARTクリニックの吉田先生にお伺いし、小塙医院に取り入れたり、その逆もあったり、何か足りないところがあれば補い、違う点を改善する取り組みを行っています。

 

編集部採卵の誘発の刺激はどのような方針でしょうか

小塙先生当院では基本的には高刺激ですが、アートカリキュレーターを使って、最初に目標採卵数を決めます。患者様にはお子様を何人希望しているのかを伺うのですが、1回の採卵で2人まで欲しい、といった場合は、15個くらい採卵できるように狙います。

 

逆に1人で良いですといった場合は、8個くらいといった、個数を目標設置します。患者様のご希望にあわせて採卵していきます。

 

自費診療しかできなかった時に、採れすぎて、こんなに必要なんですか?といった声や、何回も採卵するのではなく1回で終わらせて欲しい、といったご要望も多くありましたので、患者様の需要に合わせて治療方針を決めていて患者様にご満足いただいています。

 

編集部移植の方針についてお伺いしたいのですが

小塙先生当院は基本的に凍結融解胚移植です。また、新鮮胚移植の割合は1割くらいです。その適用としては、早く妊娠したいとか、あまり時間がないという方が多いです。例えば転居など、早く移植をしたいといったご希望の方に適用しています。


編集部凍結をする胚盤胞のグレードの基準は決まっていますか?

小塙先生はい。つくばARTクリニックと同様に、ガードナー分類の3BB以上のものを凍結できる、としています。


編集部保険診療と自費診療では、治療に違いはありますか?保険診療ではできない、といったことはありますか?

小塙先生10個以上の卵子が取れても保険点数は変わらず、当院への収益はありません。より多くの卵子や胚が必要である患者様などに、コストに関係なく最も良い治療方針を提示したいので、基本的に保険と自費で採卵や胚移植のパフォーマンスが変わらないようにしています。

また、当院は先進医療施設ではないため、先進医療になっているSEET法や、PICSIなどを希望される場合は自費になってしまうため、そのような場合は先進医療施設である系列院のつくばARTクリニックを紹介することになります。ただ、治療効果に関して明確なエビデンスがないものが多いため、本当に必要とされる患者様のみに推奨しています。

夫婦のコミュニケ-ションとストレス解消が妊娠の近道になることも


編集部これまで小塙先生が出会った患者様の中で、印象深かった患者様はいらっしゃいますか?

小塙先生ステップダウンの話にもつながるのですが、他院や当院でも合計で8回ほど胚移植を行っても妊娠しなかった患者様がいらっしゃいました。そのご夫婦はともに忙しく、コミュニケーションも不足しているような状態でした。

 

そこで1度、ご夫婦お二人にお話しした方が良いなと思い、ご来院いただき、ライフスタイルの改善や、ストレス発散できるような運動をした方が良いのではないか、と、ランニングなどを指導し、一度、ステップダウンをしてはどうか、というご提案をしました。

 

すると、ステップダウンして、タイミング法2回ほどで妊娠、出産された方がいたんですね。当院を含め、いろいろな病院で生殖医療をずっとやってこられた方だったのですが、医師としてエビデンスのある治療として、体外受精を勧め続けてはきましたが、結果、最終的にストレスや夫婦のコミュニケーションが改善し、仲良くなったことで妊娠に至っていたので、医療技術やエビデンスにはかなわない“何か=コミュニケーション”が重要なんだな、と思いました。

そういったことから、ステップダウンという選択肢も1つ考えるようにしています。

 

編集部ストレスケアも重要になりますか?

小塙先生海外のプレコンセプションケア外来のメンタルヘルスでよく言われているのが、コルチゾールというストレスホルモンが高い方は、不妊の割合が多いと言われています。

仕事や生活上のストレスは、運動や趣味など何でも良いのですが、何か発散するものがあると、コルチゾールが下がると言われています。

 

編集部不妊治療を始める患者様にメッセージをお願いします

小塙先生妊活を開始してから半年から1年くらいして妊娠しない場合は、何かしら原因がある可能性があるため、病院を受診し、検査を受けるということがとても重要だと思います。

その原因に対して早期に対処することで、健康な妊娠出産につながると考えています。

 

また、今は妊娠を考えていないけれど、月経が乱れているとか、痛みが強いとか、性交渉の際に痛みがある、そういった方も、不妊のリスク因子を持っている可能性があります。

 

そういった場合は、早期に検査をすることがとても重要なので、プレコンセプション外来を利用していただくことをおすすめします。生活のクオリティも改善していくことができると思います。

 

今回お話をお伺いした先生:

 

小塙先生の座右の銘:学生時代から変わらず「初心忘れるべからず」です。何かを始める時、医師になる時、生殖医療を始める時もそうですが、何を大事にしていたか、というのを忘れないようにしています。そこを忘れてしまうと目標を見失ってしまうと思っています。休みの日は、筋トレやランニング、妻との買い物などでリフレッシュしています。

編集後記

小塙先生の印象は穏やかな優しい先生。柔らかい印象の先生ですがブレない芯があり、かげながら研究を積まれ論文発表も積極的に行っています。地域に根ざした地域医療のなかで、婦人科、生殖医療はもちろん、プレコンセプションケアにも力を入れられているオールマイティなクリニックです。患者の利益を1番に考えた医療を提供してくれるので安心してお任せできると感じた取材でした。(取材担当:森)

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