注目!鍼灸院の低出力レーザーの不妊治療に対する効果とは?

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2024.06.19

東洋医学

注目!鍼灸院の低出力レーザーの不妊治療に対する効果とは?

近年、不妊専門の鍼灸院の治療現場で用いられることが多いレーザー。どのような作用が期待できるでしょうか?不妊治療と鍼灸院でのレーザーについて、妊活をサポートしている鍼灸師の徐大兼さんが解説します。

鍼灸とレーザーの併用、どんな目的で使われている?

鍼灸とレーザーを併用する目的は主に3つあります。

1)自律神経調整作用

2) 子宮・卵巣・骨盤内血流改善作用。

3) 免疫寛容促進作用

それでは、それぞれの作用について、詳しくお伝えします。

鍼灸院にあるLLLT(低出力レーザー)に期待できること

レーザーとは、もともとは造語で、光を増幅させて放射する仕組みのことです。放射される光は、自然光と比べると直線的でピンポイントで照射する特徴があります。レーザーは、テレビのリモコンやバーコードリーダーなど日常で目にするものにも使われていますが、医療現場でも特定の波長を持つレーザーを使用して、皮膚や眼、がん治療などにも活用されています。

不妊専門の鍼灸院では、スーパーライザーという低出力レーザー(LLLT)を取り入れているところが多いです。正式名称は「直線偏光近赤外線」です。

従来LLLTは主に関節リウマチやアトピー性皮膚炎、アレルギー鼻炎、変形性関節症などに用いられることが多かったですが、近年、不妊に関しては、自律神経調整作用、局所血流改善作用(子宮・卵巣・骨盤内)、免疫寛容促進作用に期待し、「質の良い卵子」と「着床、妊娠の維持に関する免疫」に着目して使います。

「質の良い卵子」の獲得にLLLT(低出力レーザー)を行う理由

妊娠に向けて大事なことのひとつに、質の良い卵子を獲得できるのか、胚盤胞まで育つのかということが挙げられます。体外受精にせよ、自然妊娠にせよ、全ての受精卵は胚盤胞まで成長してから着床します。

胚盤胞まで育つためには、受精卵となって胚盤胞まで細胞分裂を繰り返していく力が必要です。そのためのエネルギーを産生する役割を担うのがミトコンドリアです。
ミトコンドリアにとっては、栄養が豊富にある卵子が良く、血流が悪いと卵巣に十分な栄養を届けられず、栄養が豊富な良い卵子にはなりません。

胚盤胞のためには血流が大事。だからLLLT(低出力レーザー)が有効

血流が悪くなる原因に、自律神経の乱れが考えられます。自律神経の乱れの要因としては、ストレス、喫煙、食生活の乱れ、睡眠不足などが挙げられます。実際のところ2人目の子の不妊治療中の患者さんに、睡眠不足の方が多くいます。1人目の育児、ワンオペで、継続して眠れる時間が取れないといったことで交感神経が優位になっているケースです。

そういった症状に、自律神経調整や局所血流改善に作用するLLLTは有効と言えるでしょう。

また体外受精で採卵する場合、過去に質の良い卵子が採れていない方に、レーザーと鍼灸について理解のあるクリニックでは鍼灸とレーザーの両方をやってみましょうと提案されることがあるようです。

自律神経調整のためにLLLTは首前側に照射。交感神経を抑制し、副交感神経を優位に

LLLTを照射する場所は、「星状神経節」と呼ばれる首の前側、喉の近くです。

レーザーを照射することで交感神経が抑制されるので、副交感神経が優位になって、ほとんどの人の体がリラックスした状態になります。そこから鍼灸を施したり、お腹の周囲を温めたりして、卵巣への血流増加が期待できます。

 

誤解が多いので補足しますが、交感神経が悪いのかというと、そういうことではありません。

私たちが生きていく上で交感神経は必要なので、ゼロにしてしまうと妨げがあります。

質の良い卵子を作るために大事になるのは交感神経と副交感神経のバランスで、適切なタイミングで切り替えることができることがポイントです。

特に現代人はオーバーワーク気味で、骨休めする時間もないので、交感神経が優位になっている人がとても多いです。LLLTで交感神経を抑制します。すると、脳の血流も改善されて、ホルモンを調節する視床下部下垂体と卵巣との連携が良くなることも期待されます。

その結果、ホルモンバランスが整うことにもつながるでしょう。

 

着床、妊娠の維持に関する免疫の働きとLLLT(低出力レーザー)

免疫機能には、常に体の見張り番として、「自己」と「非自己」を分類し、非自己のものが体に侵入した場合、異物として排除する働きを持っています。ただし妊娠を考えた場合、受精卵も半分が非自己になりますので、免疫が活発に働き過ぎると、受精卵を攻撃して排除してしまう可能性があります。着床や妊娠、妊娠継続には、半分が非自己の受精卵を寛容に受け止められることが重要です。

この働きを免疫寛容と呼びます。

鍼灸院で行うLLLTでは、首にある星状神経節にレーザーを照射して、妊娠に優位に働くように免疫機能を調整します。また妊娠に適した子宮内膜の状態を作ることをサポートするために、左右の卵巣付近、卵巣につながる動脈の分岐点、子宮付近などお腹周囲の照射も行います。骨盤内の血流改善にもつながり、子宮や卵巣の代謝を活発にすることができるでしょう。

不妊は、病名ではありません。『不妊』は妊娠できない状態、つまり未妊状態のことを表します。

女性の体の状態、男性の精子の状態によっては、鍼灸だけでは妊娠が期待できない状況もありますので、鍼灸を検討する前に、必ず医療機関で妊娠できない原因を検査してもらうことが大切です。

未妊状態の方は、鍼灸院でのLLLTを上手に活用していきましょう。

参考文献:
低反応レベルレーザーを用いた神経興奮
・代謝調節Control of neural activity and metabolism by log-reactive level laser irradiationYoji Kataoka et al
・日本レーザー学会年次大会 (シンポジウム) 2008年 直線偏光近赤外線による星状神経節近傍照射が生理機能
・免疫機能に与える影響Immunological and Physiological Effect by Polarized Infrared Light Irradiation Near the Neck Stellate GanglionLizhong SUN, et al.
日温気物医誌第66巻3号2003年5月
低出力レーザー照射療法 (LLLT)Low Reactive Level Laser TherapyIchiro Watanabe et al. リハビリテーション医学2001; 38: 587-595
局所直線偏光近赤外線照射が生理機能に及ぼす影響渡部一郎  Biomedical Thermology 25 (2) 34-39, 2005. 低出力レーザー治療(LLLT)
松山毅彦高齢不妊診療ハンドブック 312-315, 2019 Effectiveness of Acupuncture in Conjunction with Laser Treatment for Fertility IssuesK Nakamura, LASER THERAPY Volume 27 (2018) Issue 3

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本日お話をおうかがいした方

アキュラ鍼灸院

鍼灸師/認定 不妊カウンセラー

徐 大兼

「こころもからだも温める」
開院から20年、鍼灸と独自のアキュラメソッドでこころとからだを整え、お一人おひとりが持つ妊娠するチカラを最大限に引き出す鍼灸治療を目指しています。一人で悩まれている方、一緒にお悩みの解決をしていきましょう!


アキュラ鍼灸院:https://ninkatsu-ayumi.com/facility/629/

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