流産後の心のケア|自分をいたわるための方法とは?

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2025.05.14

心理師

流産後の心のケア|自分をいたわるための方法とは?

妊娠初期に起こりやすい流産。悲しい出来事を経験した自分の感情とどのように向き合っていけば良いのでしょうか?公認心理師の今井さいこさんが、流産後の自分をいたわるメンタルケアについてお伝えします。

流産によって自分に起こっている自分の心の変化

今回は、流産を経験した方への心のケアについて、お話して理解を深めていこうと思います。流産について医学的な話ではなく、メンタルケアの観点からお話です。

 

流産は身体だけでなく、心にも大きな影響を及ぼします。流産後に、ご自身の心にどんな変化が起きているのか、改めて客観的に振り返っていただきたいと思います。次のようなことはありませんか?

 

・否認

・混乱

・不安と恐怖

・悲しみと喪失感

・怒り

・自己否定と罪悪感

・無力感

・孤立感

・感情の麻痺

・生理的な反応

 

当てはまるものもあれば、これ以外に何か心の変化を感じているかもしれません。もしかしたら、何も変化を感じていない方もいるかもしれません。今一度、自分の心を客観視してみましょう。

 

流産の悲しみと向き合う5つのプロセス


「悲嘆の5段階プロセス」といわれるものがあります。人が悲しみやショックな出来事があった時に、次の5つのプロセスで心が回復していくとされるものです。

 

1. 否認

「そんなこと起こるわけがない。現実ではないのではないか」と否定する気持ちです。

 

2.怒り

次に「なぜ私だけがこんな目に遭うんだろうか」と怒りの気持ちが沸いてきたりします。

 

3.取引

その後、「もし、あのときこうしていれば、こんなことにならなかったのではないか」など過去を振り返ったりします。

 

4.抑うつ

否認、怒り、取引のプロセスを経て「やっぱりこれは現実なんだ、変わらない事実なんだ」と落ち込んだり、焦ったり、ネガティブな気持ちに支配されてしまいます。

 

5.受容

「いろんなことを思うけれども、この出来事とともにこれからも生きていくんだ」と受け入れていくことにたどり着きます。

 

必ずしもこの順番通りにプロセスが進むものではありません。行ったり来たりを繰り返しながら進んでいきます。また、それぞれのプロセスにかかる時間も、人によって異なります。

流産によるショックの捉え方

ショックの受け入れ
大事なのは、ショックを受けることによりさまざまな反応が起こることは、自然なことだと認識することです。これは当たり前のことで、回復するために必要なことです。

 

「こんなことを思ってはいけない」「いつまでもネガティブであってはいけない」などと思わないでください。感情は、人によって強度や深さも異なります。感情を抑え込んだり、ふたをしたり、なかったことにするのではなく、その感じているものを「あって当然の感情」として受容することが重要です。

 

例えば、「今、否認の気持ちがあるんだ」とか、「怒りのプロセスにあるんだな」などと、自分の感情を受け入れることを大事にしてほしいです。いろんな感情が沸いてくることを前提に、それぞれの段階でできるケアをする必要があります。自分の気持ちは今、どのプロセスにいるのかということを振り返ってみてください。

心と体のケアのためにできること

リラックス


心と体のケアのためにできることは、「生活リズムを整えること」「リラックスできる時間を作ること」「焦らずに回復すること」を許すことです。

 

いろんなことがあるけれど、「いつものように生活できている私である」ことが大事です。もし今の生活リズムが乱れているとしたら、少しずつで良いので、いつもと同じ生活リズムに整えていくことに目を向けていきましょう。

 

常に緊張状態ではなく、リラックスする時間を意識することが重要です。人は、ネガティブな感情を持っていると、なるべく早く手放したくなります。ポジティブのほうが良いと思いがちなのです。しかし受容することを目的とするならば、焦らずにゆっくりでも良いから回復しているんだという実感をもつことを優先していきましょう。

 

流産後のセルフケアの方法


では、具体的にどんなケアをしていけば良いのでしょうか。セルフケアについて、いくつか紹介していきます。ご自身に合ったものを見つけるヒントにしてください。

 

・「かく」作業

言語化が得意の方は紙に言葉を「書」いても良いですし、アートの力を使うなら、色を塗ったり、絵にしたりする「描」くでも良いでしょう。楽器をひくのもおすすめです。自分ができる表現で感情を外に出していきます。

 

・深呼吸などでリラックス

深呼吸は、今すぐ簡単にできるリラックス方法です。深呼吸からつながって、ヨガだったりストレッチだったり、散歩を始めてみるのも良いでしょう。深呼吸でなくても、本を読む、ひなたぼっこをする、ぼーっとするなどリラックスできる方法を見つけてください。

 

・自分に優しい言葉をかける(セルフコンパッション)

もし親友が自分と同じ状況や感情で目の前に現れたら、あなたはどう声をかけますか?その言葉をそのまま自分にかけてください。「悲しい感情があるけれど、大丈夫だよ」など、自分で自分に言葉をかけます。

 

・いつもの生活リズムで過ごす

「いつも通りに過ごせている私である」ということで、自己肯定感にもつながります。

 

・疲れたら休む

何かを頑張ってやりすぎている、疲れたと感じたら、リラックスしながら休みましょう。

 

・手紙を書く

通常のセルフケアではあまり言いませんが、流産や死産、子宮外妊娠などを経験している方にお伝えしていることです。短期間であっても、確実に自分の中にいたその命に対して、感情を消すのではなく、手紙に気持ちをしたためてみることをおすすめしています。絶対にやりましょうというものではありませんが、小さな命に向けて手紙を書いてみるのもセルフケアのひとつになります。

 

流産後、夫婦で取り組むメンタルケア


次に夫婦、カップルでできるメンタルケアについて紹介します。

 

まず、お互いの感情を共有する、受容する時間をつくっていただけたらと思います。相手に自分と同じように感じてもらうというのではなく、お互いの気持ちを共有して受容していきます。相手がどんな感情をもっていたとしても、否定するものではありません。最後まで肯定的に聞いてください。

 

また、一緒にリラクゼーションすることも良いでしょう。マッサージし合うとか、手をつないで座ったり、話をしたりするだけでもメンタルケアになります。流産は、生物学的には女性が経験するものですが、その命はふたりで授かったもので、ふたりの間に起きたことです。この出来事においても、お互いの存在を確認し合い、ふたりで乗り越えていきましょう。

 

この経験を経て変化したこともあれば、しなかったこともあるはずです。それをふたりで話してみるのもケアにつながります。思った感情を外に出し、お互いに受け止め合うことが重要です。

 

セルフケア、メンタルケアの効果を確認しよう


セルフケアや夫婦でのメンタルケアを実際にやってみて、その結果どうだったかということも確認してみてください。

・感情の安定感が増す

・ポジティブな思考が増える

・身体的な不調が改善される

・日常生活がスムーズに送れる

・自己肯定感が高まる

・他者との関係性の中で孤立感が薄れる

・未来に向けた希望や計画が持てる

 

話せる人に話を聞いてもらう


「この人に話を聞いてもらいたい」と思う人に話をしてみるのも方法のひとつです。例えば家族、親友、最近ではペットにお話しする人もいます。安心安全な場所で話を聞いてもらいましょう。

 

ときに話を聞いてくれた相手は、いろいろとアドバイスをしてくれることもあります。そのことが、あなたにとって負担になる場合は「ただ、話を聞いてほしいだけなんだ」とか「励ましがほしいんだ」ということをストレートに伝えてください。相手に、なぜあなたがこの話をしたいと思ったのかを含めて伝えておくのも良いでしょう。

 

セルフケアや夫婦、また近い人に話を聞いてもらうだけでは、ケアが進んでいない気がするようならば、ぜひ専門家を頼ってください。例えば、医療であれば産婦人科、精神科、心療内科のクリニックもありますが、心理カウンセラーや流産経験者のサポートグループもあります。抱え込まずに相談しましょう。

 

セルフケアと専門家のサポート選択基準


今のあなたのメンタルの状態は、セルフケアで良いのか、それとも専門家のサポートを受けるのが良いのか迷うこともあるかもしれません。選択の基準を参考にしてください。

セルフケア

・感情がコントロールできている
・日常生活に支障がない
・気持ちの回復が感じられる
・パートナーや友人と感情が共有できる

ご自身でセルフケアが難しい場合は、専門家の手を借りましょう。

 

この記事の動画はこちらから

本日お話をおうかがいした方

LIB Laboratory 代表

今井さいこ

1979年6月14日生まれ 公認心理師睡眠指導者 自らの手で人生の選択をしていく女性のメンタルサポートをしています。 心理学×睡眠マネジメントの知識とスキルを使って、お悩みの解決を一緒にしていきます。 ◆オンラインカウンセリングラボ LIB Laboratory代表 https://www.liblaboratory.com/ <保有資格> 公認心理師(国家資格) 日本心理学会認定心理士 ベスリクリニック認定睡眠指導者 サンカラ認定

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