ブライダルチェック②ブライダルチェックの検査には、どんなものがある?検査項目

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2025.05.16

基礎知識

ブライダルチェック②ブライダルチェックの検査には、どんなものがある?

「ブライダルチェック」について、どのような検査を行うのかご存じですか?実際の検査項目は?どんなものを使って何を検査するの?検査をして何がわかるの?など、ブライダルチェックを検討している方必見の情報を、元胚培養士の塚田寛人さんがお届けします。

前回、ブライダルチェックの目的は大きく3つに分けられるとお話しました。
1. 妊孕性を調べる
2. 妊娠や出産に関わる婦人科系疾患の早期発見
3. 妊娠中の胎児への感染が懸念される、妊娠への悪影響が考えられる感染症の発見
です。 これらを調べるには、いくつかの検査を行う必要がありますので、今回からは実際の検査内容について掘り下げていきましょう。

検査内容と調べられるもの


検査内容はクリニックによっても異なりますが、大きく分けると
① 超音波検査
② 血液の検査(採血)
③ 細胞を検査する方法や、腟からの分泌液を調べる検査
④ 精液検査
⑤ 尿検査
⑥ その他
このようになります。

②や③、④は女性特有の検査方法ですし、⑤は男性特有の検査方法です。
性別にあった検査方法で、体が赤ちゃんを迎える準備が整っている状態かを調べることができます。
では次にそれぞれの検査で何を調べることができるのかを見ていきましょう。

① 超音波検査

超音波検査は、卵巣や子宮の状態を確認し、妊娠に適した体かを調べるために非常に重要な検査です。

・子宮筋腫や子宮内膜症
・子宮内膜の厚さ
・卵胞の成長度合い
などがわかることもあります。

 卵巣は卵子の眠っているところですし、子宮は卵子と精子が合わさり成長した子どものもととなる胚盤胞と呼ばれる細胞がくっつくベッドで、どちらも妊娠に極めて重要な場所です。

② 血液の検査(採血)


採血することでわかる項目は多岐にわたります。
・血液型
・凝固検査
・赤血球や白血球、血小板の検査(末梢血液一般検査)
・貧血、糖や蛋白、肝機能、腎機能など
・ビタミンD
・基礎ホルモン(E2、FSH、LH、PRL)
・甲状腺機能(TSH、fT3,fT4)
・AMH
・性感染症(B型肝炎HBs抗原、C型肝炎HCV抗体、梅毒、HIV)
・風疹抗体
などです。

内科での検査や、一般的な健康診断でわかる項目もありますが、クリニックによってはこれらも含めてプランとして提案されています。
AMHのみを調べてくれるクリニックもあれば、基礎ホルモン(E2、FSH、LH、PRL)と甲状腺機能(TSH、fT3,fT4)、AMH、風疹について調べてくれるクリニックもありますので、そのクリニックの血液検査では何を調べてくれるのかを事前にHPなどで確認しておくと良いでしょう。

③ 細胞を検査する方法や、腟から取り出した分泌液を調べる検査


・子宮頸がんの発見

・子宮体がんの発見

子宮頸がんとは、腟と子宮をつないでいる場所に発生するがんのことです。日本国内では、年間10000人以上の方が感染し、3割の方が亡くなっていると報告されています。がんの中でも、初期症状がなく発見が遅くなることが知られているため、妊娠の希望の有無に関わらず、ブライダルチェックで調べることも良いかもしれません。
また、。腟内分泌液を調べる検査は、クリニックによっては、「おりもの検査」とも言われています。

・カンジタ
・トリコモナス
・淋菌
・クラミジア

などの感染症を調べることができます。
性感染症は自覚症状がない場合でも、性交渉によって相手に感染させてしまうリスクがあります。妊娠を希望する方は、パートナーとの健康を守るためにも、事前の検査を検討することが大切です。

④ 精液検査


・精液量

・精子の数
・精子の運動性
・奇形率など

言わずと知れた、男性専用の検査です。精液中に精子がいるかどうか、これは妊娠において非常に重要な検査と言えます。不妊治療をされている患者さんの中には、精子の数が非常に少ないのにタイミングを何年も続けていた方もいらっしゃいます。
男性の検査の中でも必須と言える検査です。

⑤ 尿検査

男性のブライダルチェックで行われていることが多いです。
・クラミジア
・淋病

排尿時の痛みや膿みを伴う尿道炎を伴うこともあり、場合によっては精巣内にまで菌が入り、精巣炎となることもあり、不妊の原因となることが知られています。 ⑥その他クリニックによっては、上記以外の検査を行っていることもあります。

・卵管通水検査(卵管造影検査)
卵管のつまりを確認する検査です。卵管は精子の通り道でもありますから、そこがつまっていると排卵していても卵子が精子に到達できず妊娠できないこともあります。不妊治療を専門とするクリニックでは、これらの検査をオプションとして行えることがあります。


他にもクリニックによっては調べられる内容がある場合や、クリニックによっては検査していないこともありますので、詳細はクリニックHPなどでお調べいただくか、直接お問い合わせいただくと良いと思います。

このように検査内容によって、何が分かるのかはさまざまです。ここからは、それぞれの項目が妊娠とどう関わっているのかを見ていきましょう。


内容が多岐にわたるため今回は、① 超音波検について取り上げていきたいと思います。

超音波検査の検査方法


「超音波」とあるように、高周波の超音波を放つと反射する性質を用いて、身体の内部の臓器を診断する方法です。反射された音は、機器に画像で投影されますから、この画像を見て医師は臓器の状態をチェックしています。

超音波検査する方法はいくつかあり、腹部にエコーを当てる「経腹エコー」腟内にエコー機器を挿入して行う「経腟エコー」などがありますが、主に、ブライダルチェックでは腟内にエコー機器を挿入する「経腟エコー(経腟超音波検査)」を使用します。 経腟エコーは、腟内に機械(プローブ)を挿入するので、「怖い」と感じる方も少なくないと思います。

実際に機械が挿入されると、お腹への圧迫感や違和感を感じる方もいらっしゃいます。

ですが体験された方からお話を聞くと 「意外とすんなりと終わった」 「ちょっと痛かったこともあるが、ほとんど感じなかった」 といった声もありますし、 クリニックでは検査中になるべく身体に力をいれさせないように、リラックスできるような音楽をかけたりしていますから、あまり緊張せずに臨んでいただいても良いと思います。

また、恥ずかしいと思われる方も少なくありません。その場合は、女性医師が在籍するクリニックを選ぶといいでしょう。

超音波検査でわかること

超音波検査では、卵巣や子宮の状態を確認します。卵巣の大きさや形、子宮の大きさや形、子宮内膜の厚さなどを見ることができ、結果的に不妊の要因が見つかることもあります。

・子宮筋腫や子宮内膜症  
子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍です。

30歳以上の女性の3割前後に、子宮筋腫を認めるといわれています。卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で大きくなります。

大きさや数によっては、早産などのリスクにつながる可能性や、不妊の原因となることもあるため、状況に応じて治療を行う場合もあります。

子宮内膜症は、「不妊」の要因として知られていて、子宮内膜の組織が子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。重い生理痛を症状とする場合もあるため、ブライダルチェックとは関係なく婦人科で診てもらったことがある人もいらっしゃると思います。

通常は月経周期に合わせて剥がれ落ち体外に排出される子宮内膜の組織ですが、子宮内膜ではない場所に出来ることで、排出が困難になり、体内に血液が蓄積してしまいます。結果的に、卵管の内部がつまってしまったり、卵子と精子が合わさったあとに成長した胚(子どものもととなるもの)が着床できなかったりするため、不妊の原因のひとつとして考えられています。

・子宮内膜の厚さ 
子宮内膜は、胚(子どものもととなるもの)が着床するためのベッドで、生理周期 や妊娠によって厚みや状態が変わっていきます。 卵子が精子と受精し成長すると同時に、体内も受け入れ態勢を整えていきますが、ベッド(子宮内膜)をふかふかにしてあげるために厚さがどんどん厚くなっていきます。

一番厚くなる時期を「黄体期」と言いますが、このタイミングでは10mm前後まで内膜が厚くなっていきます。 体外受精においては、子宮内膜の厚さが8mm未満の場合、移植を見送ることもあります。胚が着床するための「ベッド」となる子宮内膜は、ある程度の厚みがあったほうが妊娠しやすく、着床後も胚が剝がれにくい(流産になりにくい)と考えられています。

・卵胞の成長度合い
妊娠にとって、卵胞がきちんと成長しているか、そして排卵が行われているかは非常に重要なポイントです。 卵子は、卵巣の中にある「卵胞」と呼ばれる袋の中で眠っています。この卵胞が徐々に大きくなると、やがて袋が破れて、卵子が卵胞の外に飛び出します。これが「排卵」です。

そのため、卵胞の大きさを確認することは、排卵が近づいているかどうかの判断材料になります。排卵が予想される時期(排卵期)に経膣超音波検査を行うことで、卵胞の成長や排卵の有無を確認することができます。


このように、ブライダルチェックの超音波検査では、子宮や卵巣の状態を確認することで、妊娠できる状態かどうかを判断することができます。 今回は超音波検査のみのご紹介となりましたが、次回はそれ以外の検査についても見ていきたいと思います。

本日お話をおうかがいした方

塚田寛人

大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務を担当。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養業務に従事。クリニック開業に伴う、培養室立ち上げにも参画。現在は、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活で悩む方へのオンライン相談やのほか、株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)へ協力し、企業に勤める女性へ医療情報を提供するなどのサポートを行っている

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