いまさら聞けない、不妊治療の保険適用とは?2024年最新情報

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2024.09.27

不妊治療

いまさら聞けない、不妊治療の保険適用とは?2024年最新情報

2022年4月から不妊治療に保険が適用されるようになり、治療費の負担が軽減される一方で、治療内容や制限事項についての関心も高まっています。2024年の現時点(09月時点)では、従来の自由診療と比べて不便さを感じる声も一部では聞かれます。この記事では、不妊治療の保険適用についての最新情報をわかりやすくお伝えします。

不妊治療の保険適用の基本概要|2024年09月時点


もともと2017年から保険適用だったタイミング法に加え、2022年4月に開始された不妊治療の保険適用では、主に次の治療が対象となっています。治療の費用については、保険適用の3割負担となっています。

  1.  1.人工授精(AIH:Artificial Insemination by Husband)
    人工授精は、男性の精子を採取し、子宮内に注入する治療法です。
    保険適用費用:1回あたり約6,000〜15,000円
  2.  2.体外受精(IVF:In Vitro Fertilization)
    体外受精は、卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻す治療法です。複雑な技術を要するため、費用が高額になります。
    ■保険適用費用:1回あたり約9万〜15万円


    3.顕微授精(ICSI:Intracytoplasmic Sperm Injection)
    顕微授精は、顕微鏡下で精子を卵子に直接注入する高度な技術を用いた体外受精の一種です。体外受精よりもさらに高額となり、保険適用では80万前後かかるケースもありました。
    保険適用費用:1回あたり約12万〜18万円



  3. 4.その他(2.3に伴う内訳の一部費用詳細)

    ・採卵
    *保険適用費用:1個…16,800円、2~5個…20,400円、6~9個…26,100円、10個以上…31,200


    ・精子凍結
    「高度乏精子症」と診断された方のみ保険診療の対象となり、自己負担額は3,000円

・受精卵(胚)の培養
*保険適用費用:1個…13,500円、2~5個…18,000円、6~9個…25,200円、10個以上…31,500円  
※さらに、胚盤胞の作成を目的として管理を行った卵子にさらに、以下の金額が上記に加えて  保険適用費用にて加算される。  
*胚盤胞加算:1個…4500円、2~5個…6,000円、6~9個…7,500円、10個以上…9000円

・胚の凍結保存  
*保険適用費用:1個…15,000円、2~5個…21,000円、6~9個…30,600円、10個以上…39,000円  保管維持費(年に1回)…10,500円


・胚移植  
*保険適用費用:新鮮胚移植の場合…22,500円、凍結・融解胚移植の場合…36,000円 ※さらに、アシステッドハッチングをした場合は3000円加算、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を用いた前処置をした場合は、3000円加算。

2022年までは、上記の治療は自由診療であったため、体外受精や顕微授精では50~80万程の高額な治療費がかかっていましたが、保険適用によって3割負担となり、治療費が大幅に軽減されました。


しかしながら、上記の費用を見てみると、決して安い治療ではないということがわかります。採卵をいくつするのか、胚盤胞までいくつ育てるのかなどによって、個人個人で価格が異なってきます。

また、すべての不妊治療が保険適用となるわけではなく、対象となる治療法や条件には制限があり、自由診療のように、受けたい治療や検査を自由に組み合わせられるわけではありません。どのような制限があるのか、次の項目で具体的に見てみましょう。

不妊治療の保険適用|年齢制限と回数制限


まず、現行の不妊治療の保険適用には、年齢と回数に制限があります。具体的には、以下の条件が設定されています。

  • 年齢制限:体外受精および顕微授精については、女性の年齢が43歳未満であることが条件です。これは、年齢が上がるほど妊娠の成功率が下がるためです。注意しなければいけないのは、治療計画の作成日時点で43歳未満の方を対象にしているという点です。治療周期中に43歳を迎えた場合は、その周期の胚移植で保険診療が終了になります。


  • 回数制限:治療回数については、40歳未満の女性には6回まで、40歳から43歳未満の女性には3回まで保険が適用されます。この制限により、無制限に治療を受けることはできず、早期に治療を開始することが重要となります。

年齢による回数制限は、賛否があるものの、現時点では女性の年齢が上がるについれて、体外受精の成功率が下がることや、43歳を超えると体外受精で出産に至る割合が5%に以下になるなどの理由から、このような制限が設けられています

不妊治療内容の制限と自由診療との違い


従来の不妊治療は自由診療で行われており、患者一人ひとりの状況に応じた柔軟な治療が可能でした。しかし、保険適用後は、標準化されたプロトコルに基づく治療方法しか選べず、治療内容のカスタマイズが難しくなっています。

使いたい薬が使えなったり、受けたい検査が保険適用外だったり、といったことも生じています。 日本では混合診療(保険適用治療と保険外治療を組み合わせること)が原則禁止されているため、保険が適用されない先進医療を受けたい場合は、全額自己負担となる点も考慮が必要です。

しかし、保険適用と併用してできる検査など、先進医療もあります

不妊治療の保険適用と受けられる先進医療


通常、先進医療は、新しい技術や治療法を含む医療で、特定の治療法に限り保険適用治療と併用が認められています。

不妊治療でいうと、胚培養において、受精卵を観測するタイムラプスや、子宮内フローラの状態を調べ、着床しやすい環境かどうかを調べる検査(EMMA/ALICE、子宮内フローラ検査等)顕微授精においてヒアルロン酸によって成熟した精子を選別し、顕微授精する方法であるPICSIなどが挙げられます。

先進医療は保険適用と組み合わせることは可能ですが、一つ一つの検査などは高額になるため、その点は留意する必要があります。

先進医療内容

自費費用価格

SEET法

約3万5千~5万円前後

タイムラプス

約3万~5万

子宮内膜スクラッチ

約1万円前後

PICSI

約2万~3万円前後

ERA/ERpeak

約10万~15万前後

子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)

5万~10万前後

IMSI

約2万前後

二段階胚移植

約7万5千円~12万前後

子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)

3万5千円~5万前後

不妊症患者に対するタクロリムス投与療法

約1万8千~3万6千円

膜構造を用いた生理学的精子選択術(Zymōt)

約2万5千円前後

着床全胚異数性検査(PGT-A)(1個)

11万円~15万前後


しかしながら、この先進医療を必要とする患者が多いことから、自治体で助成金を出しているところもあります。

地方自治体の不妊治療の助成への取り組みは?


先に述べた先進医療ですが、決して安い検査や治療法ばかりではありません。そのため、自治体によっては、その一部を助成するようなところもあります。

ご自身の必要とする治療の費用的負担の軽減となる場合もあるため、一度調べることをおすすめします。 例えば、東京都では体外受精及び顕微授精を行う際に、保険適用された治療と併用して自費で実施される「先進医療」に係る費用の一部を助成しています。

神奈川県では、県のホームページ「不妊治療の費用等について」に記載されている自治体が、先進医療に対する助成を行っています。
ほかの自治体の助成金を調べる場合はこちら

不妊治療の保険適用に対する患者の声・要望は?


特定非営利活動法人Fineの保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022によれば、保険適用で支払う医療費は43%が「減った」と回答しています。

“「支払う治療費が減った」「これまでは金額が高くて受けられなかった治療が受けられるようになった」”といった声が挙がっているようです。

保険適用になる以前は、助成金がありましたが、助成金は申請してから、お金が得られるまで時間がかかり、費用の一時的な負担が大きかったり、それまでは高くて使用できなかった自己注射の薬が使えるようになったりとメリットを感じている人がいる一方で、不育症にかかわる治療は自費になってしまう制度の内容になっていたり、一度自由診療に切り替えると、保険適用に戻せないなど、弊害もあるようです。


不妊治療を考える方は、まず年齢や治療のタイミングを考慮することはもちろんですが、保険適用の年齢制限や回数制限を理解し、早めに治療を開始することが大切です。

年齢の高い40歳から43歳未満の人は、とくに保険適用の回数に限りがあるほか、卵子の老化という時間的な問題もあるため、その後の治療を見据えた病院選びも大切になってきます。

また、先進医療と組み合わせることで、最適な治療計画を立てることも重要になります。 今は、多くの患者にとっては不妊治療の追い風と言える時期になったとも言えるため、自治体の助成なども駆使しながら、少しでも費用負担を軽減していけるよう、ぬかりなく調べることが大切です。


編集:妊活のあゆみ方

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