不妊を知ろう。不妊症って何?
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妊活お役立ち情報
不妊症の定義について、妊活初心者の人は知らない人が沢山いると思います。そこで今回は「不妊症」について、元培養士の塚田寛人さんから詳しくお届けします。
2022年4月に、人工授精等の「一般不妊治療」や体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」が保険適用の範囲内となったことがきっかけとなり、治療の情報を扱うサイトが増えたり、不妊治療を受ける従業員に対して補助を行う企業や、サポートする企業が増えるなど、不妊治療に対しての関心が深まっているように思えます。
最近では、元モーニング娘。の辻希美さんが、約4年間の不妊治療の末に第5子を授かったことを報告されていたように、メディアで活躍する芸能人が不妊治療で子どもができた事を報告したり、治療中の悩みや戸惑いを話すYouTuberも増え、「不妊治療」に対する意識は30年程前から考えると、大きく変わっているのかもしれません。
今回は、「不妊」とはなんなのか、何故起きるのかについて掘り下げていきたいと思います。 まず不妊について考える前に、現在体外受精治療のニーズを見ていきましょう。
体外受精で生まれた子の割合
※参考:https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf
不妊治療のうち、体外受精で生まれた子の数は2022年の統計データで見ることができます。77206人が体外受精治療によって出生していることがわかります。
また、2022年の出生数は、厚生労働省の令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況(令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省)からわかります。2022年の出生数は、770,759人と報告されています。つまり、10人に1人の子どもが体外受精治療によって生まれた子になります。
体外受精治療によって生まれている子は年々増えており、
2007年は約2万人。
2013年は約4万人。
2015年は約5万人。
2021年までは7万人を超えていませんでしたが、2022年になり7万人を超え、8万人に近づいています。
不妊症の定義
不妊治療(タイミング法や人工授精も含む)で悩むカップルは約6組に1組のカップルとされています。体外受精で生まれた子の数が全体の10%であることも考えると、保険診療化されたことも納得と言えるのではないでしょうか。
しかし、6組のうち5組のカップルは不妊で悩んでいないという考え方もできます。
実際に医療の外に出て様々な方と話をすると、
「自分は不妊治療をしなかったから実感がなくて…」
「保険診療になったことはわかるけど、不妊とはなんなんでしょうか?」
といった声をよく聞きます。
また、不妊治療を希望する患者さんからの声にも、
「不妊だと思わなかったので、通院を放置していた」
「普通にできると思っていた、自分とは無縁と思っていた」
などがあります。
不妊症とは、健康な男女が約1年避妊をせずに性交しているにもかかわらず、妊娠に至らない状態のことで、風邪のように目に見える症状があるから病院に行く、というようなことではありません。
約1年という定義はありますが、放置していても身に大きな変化が起きるわけではないため、通院する手間を考え放置してしまうケースも少なくありませんし、1年という基準はあくまでも基準であって、それ以降は妊娠しないということでもありません。そのため、クリニックに通って検査をすることなく、サイトなどで調べた妊活方法で子どもを授かるケースも十分考えられます。
つまり、「妊娠したい」「子どもが欲しい」と思うタイミングから、しばらく経たないと不妊症かもしれない、不妊症と診断されるといったことになりますし、不妊症かもしれないと思っても仕事や家庭の事情などで放置してしまうことがあるというのが実情です。
こういった背景から、前もって妊娠の準備を推進する取り組みも進められています。
例えば、厚生労働省や一部のクリニックでは「プレコンセプションケア」の取り組みを進め、「preconception(妊娠前)」の方に将来の妊娠に向けて、身体づくりをする啓発活動が行われているなど、国や地方自治体なども力を入れています。
不妊症って何?
では、なぜ妊娠できないことがあるのでしょうか?
そこを理解するには自然妊娠のメカニズムを少し知っておく必要があります。
自然妊娠を達成するには、
1, 射精(精子)と排卵(卵子)
2, 受精(卵子と精子の出会い)
3, 受精後の成長
4, 着床
これらの大きく4つのステージをクリアする必要があります。
1,射精(精子)と排卵(卵子)
子どもができるには、男性側の精子と女性側の卵子が必要です。当たり前のことではありますが、それぞれが存在しなければ、子どもの材料がないわけですから、妊娠はしません。
また、精液は出ているが精子が含まれていない、運動していなければ、卵子の中に精子が入ることはできませんから、精子がいるだけでも意味がありません。
卵子に関しても、しっかり精子とあわさる準備ができた卵子であれば、精子とあわさることができますが、そうでなければ精子とあわさることはできませんし、そもそも卵子が排卵されていないこともあり得ます。
2,受精(卵子と精子の出会い)
卵子は、卵巣で十分に育った後放出(排卵)されます。この後、卵管采という部分に卵子が取り込まれ、卵管内を通って、向かってきた精子と出会うのですが、この卵管采に卵子がピックアップされないことがあります。
この場合は排卵されても精子と出会うことはできませんから、妊娠することが難しくなってしまうわけです。
精子は、腟内に射出された後、卵管内を通り卵子と出会う必要がありますから、そこまで到達することができなければ妊娠することが難しくなります。これには、卵管内がつまっているといったことが関係していることもあります。
3,受精後の成長
受精した後、受精卵と名前を変え、子どもの素となるために細胞を増やし成長していき胚となります。卵子や精子が仮に問題がないと考えられたとしても、あわさった後に成長しなければ、妊娠はしないのです。
4, 着床
しっかりと成長したら、子宮内で子宮内膜という部分に着床し妊娠が達成となります。子宮内膜とはいわゆるベッドで、できた胚がその後子どもに成長していくために非常に重要な役割を果たしています。しかし、このベッドの状態が不十分だと、しっかり胚が成長してたとしてもくっつくことができず妊娠できない要因になります。
このベッドの準備には、ホルモンが非常に重要な役割を果たしているため、そこに課題があれば妊娠できない要因として考えられますし、着床するタイミングや子宮内の乳酸菌の割合なども関係していると考える医師もいます。
このように、妊娠を達成するにはいくつものハードルを越えなくてはいけませんし、逆を言えばそのどこか1つに問題があったら自然で妊娠することは難しいと考えられます。しかし、このどれもが、検査や治療をすすめていかなければわからない部分なのです。
「不妊症」とは簡単に言うと、これらのどこかに課題がある「可能性がある」から起こることと言えます。
不妊になる原因
では、どういったことが不妊の原因になるのでしょうか?
男性側
射出ができない
精子に課題がある
精巣に炎症がある
精子が造られていない 等
女性側
卵子に課題がある
排卵できていない
卵管に課題がある
子宮に炎症がある
子宮にポリープがある 等
このように、不妊の原因は様々です。
卵子や精子の染色体に問題があれば、受精することが難しくなりますし、精巣に炎症があれば精子の数が減る可能性がありますし、子宮に炎症やポリープがあれば、胚が着床するベッドとしての役割が果たせない可能性があります。
女性も男性も関係なく仕事をすることが当たり前の現在、仕事のストレスを感じてしまうことや不規則な生活になってしまうことも少なくないと思います。 結果的にホルモンバランスが崩れ、生理が来ない、生理が不定期であるといったことも良くありますし、子宮内膜炎という子宮に炎症が起きるケースもあります。男性では、ストレスが勃起障害につながることもあります。
このように、日常生活が不妊に関係してくることがあるため、私自身も仕事と治療や妊活の両立を目指す方々の心や活動の支援をしています。
そういった方々から話を聞くと、
「仕事との両立が非常に難しい」
「気を付けたくてもうまくいかない」
といったことが多数あるのが実情です。
不妊かもしれない、と思ったらまずは病院に行ってもらうことをおすすめしますが、同時におすすめしているのが、ストレス軽減の取り組みです。
ストレス軽減方法は人によって大きく異なりますが、適度な運動や自分の好きなことをする、あとはこういった悩みを人に話すことも重要なことだと感じています。
同じ悩みをもった人と話す、専門家に相談するツールも今では色々あると思いますので、ご活用いただくのもいいかもしれませんね。
本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務を担当。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養業務に従事。クリニック開業に伴う、培養室立ち上げにも参画。現在は、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活で悩む方へのオンライン相談やのほか、株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)へ協力し、企業に勤める女性へ医療情報を提供するなどのサポートを行っている。
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