子宮外妊娠の初期症状|確率・原因から手術、その後の妊娠の可能性まで解説

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2025.09.17

基礎知識

子宮外妊娠の初期症状は?確率・原因と治療後の妊娠について解説

「妊娠検査薬で陽性が出たけれど、下腹部痛や出血があって不安…」「もしかして子宮外妊娠(異所性妊娠)かも?」と心配されていませんか。 子宮外妊娠は、全妊娠の約1〜2%の確率で起こる可能性があり、決して他人事ではありません。


放置すると母体に命の危険が及ぶこともあるため、正しい知識を持ち、早期に適切な対応をすることが非常に重要です。 この記事では、子宮外妊娠とは何か、その症状や原因、治療法、そして治療後の妊娠の可能性について、分かりやすく解説します。

不安な気持ちを抱えている方が、この記事を読むことで正しい知識を得て、次の一歩を踏み出す一助となれば幸いです。

子宮外妊娠(異所性妊娠)とは?


子宮外妊娠とは、受精卵が子宮の内側(子宮内膜)以外の場所に着床してしまう状態を指します。医学的には「異所性妊娠」と呼びます。

正常な妊娠では、卵管で受精した受精卵が子宮に移動し、子宮内膜に着床して成長します。しかし、何らかの理由で受精卵が子宮にたどり着けなかった場合、子宮内膜以外の場所に着床してしまうのです。

着床しやすい場所

子宮外妊娠の95%以上は、卵管で起こる「卵管妊娠」です。その他、稀に卵巣、腹膜(お腹の中)、子宮頸管などに着床することもあります。

子宮内膜以外の場所は、赤ちゃんが育つための十分なスペースや栄養を供給する環境が整っていないため、妊娠を継続することはできません。

子宮外妊娠の確率は?なりやすい人の傾向

子宮外妊娠の確率

子宮外妊娠が起こる確率は、全妊娠のうち約1〜2%といわれています。これは決して低い数字ではなく、妊娠可能な全ての女性に起こりうる状態です。

子宮外妊娠のリスクを高める要因

特定のリスク因子があると、子宮外妊娠の可能性が通常より高まることが知られています。ただし、これらのリスク因子が全くない人でも子宮外妊娠になることはあります。

  • 過去に子宮外妊娠を経験したことがある


  • クラミジア感染症などの性感染症の既往:卵管の炎症や癒着を引き起こし、受精卵の通過を妨げることがあります。


  • 子宮内膜症による卵管采周辺癒着や卵管水腫などの骨盤内癒着の外科的手術歴:卵管の形状や機能に影響を与える可能性があります。


  • 体外受精などの生殖補助医療(ART):不妊治療を必要とする背景に、もともと卵管が狭いなどのリスクを抱えている場合があることや、子宮に戻した受精卵が卵管へ移動してしまうことがあるためです。


  • 喫煙:卵管の動きを悪くする作用があるといわれています。


  • 高齢での妊娠:加齢により、受精卵を子宮へと運ぶ卵管の動きが緩やかになることや、過去の炎症などが影響することがあるためです。

これらのリスクがある方は、妊娠がわかったらできるだけ早く産婦人科を受診することが特に重要です。

子宮外妊娠は自分でわかる?注意すべき初期症状


妊娠初期の症状は個人差が大きく、子宮外妊娠の症状も正常な妊娠の初期症状と似ているため、自分で「子宮外妊娠だ」と判断することは非常に困難です。しかし、注意すべきサインはいくつかあります。

  • ・妊娠検査薬で陽性反応が出る:子宮外妊娠でも、妊娠を維持するhCGホルモンは分泌されるため、市販の妊娠検査薬では陽性反応が出ます。


  • ・生理の遅れ(無月経):生理が予定日より遅れ、出血や腹痛の症状がおこることがあります。


  • ・少量の不正性器出血:生理のような鮮血ではなく、茶色っぽい少量の出血が続くことがあります。


  • ・下腹部痛:チクチク、ズキズキとした痛みや、お腹の張りを感じることがあります。

これらの症状は、正常な妊娠初期や流産でも見られるため、症状だけで判断はできません。産婦人科で超音波(エコー)検査を受け、子宮内に胎嚢(たいのう)が確認できるかどうかが、最も重要な診断になります。

【最も危険】子宮外妊娠の放置が引き起こすこと


子宮外妊娠を放置してしまうと、着床した部分で胎嚢が大きくなるにつれて、卵管などの着床部位が破裂してしまう危険性があります。

卵管などが破裂すると、お腹の中で突然、大量出血(腹腔内出血)を起こします。これにより、以下のような非常に危険な症状が現れます。

  • ・突然の激しい下腹部痛
  • ・出血性ショック症状
  • ・めまい、立ちくらみ
  • ・吐き気、嘔吐
  • ・冷や汗
  • ・頻脈(脈が速くなる)
  • ・血圧の低下
  • ・意識が遠のく、失神

このような状態になると、母体の命に関わるため、緊急手術が必要です。少しでも「おかしい」と感じたら、絶対に放置せず、すぐに医療機関を受診するか、夜間や休日であれば救急要請をしてください。

子宮外妊娠と診断されたらどうしたら良い?


産婦人科で子宮外妊娠と診断された、あるいはその疑いが強いと判断された場合は、医師の指示に速やかに従ってください。基本的には入院となり、治療方針を決定していきます。

不安でいっぱいになるかと思いますが、まずはご自身の体の安全を第一に考えることが大切です。医師や看護師が、心身の状態に寄り添いながらサポートしてくれますので、わからないことや不安なことは何でも質問しましょう。

子宮外妊娠の治療法

子宮外妊娠では妊娠を継続することができないため、母体の安全を守るための治療が行われます。治療法は、診断された時期や全身の状態、今後の妊娠希望の有無などによって総合的に判断されます。

待機療法

ごく初期で、hCGホルモンの値が低く、自然に組織が吸収されて流産に至る可能性があると判断された場合に選択されることがあります。ただし、慎重な経過観察が必要です。

薬物療法(メトトレキサート療法)

抗がん剤の一種であるメトトレキサートという薬を注射し、胎嚢の成長を止めて組織を体に吸収させる治療法です。手術に比べると体の負担が少ない、と言われていますが、口内炎や吐き気、倦怠感などの症状が出る場合があります。また、hCGホルモンの値が低いなど、適用には厳しい条件があります。

手術療法

最も一般的に行われる治療法です。近年では、体の負担が少ない腹腔鏡下手術が主流です。お腹に数カ所、小さな穴を開けてカメラや器具を挿入し、手術を行います。


  • 卵管温存手術:卵管を切開して、中の胎嚢組織だけを取り除き、卵管を温存する方法。今後の妊娠機能をできるだけ残したい場合に選択されますが、再発のリスクや、組織が取り切れずに再手術・追加治療が必要になる可能性もあります。


  • 卵管切除術:胎嚢が着床している側の卵管を全て切除する方法。卵管の損傷が激しい場合や、出血が多い場合、再発のリスクを減らしたい場合に選択されます。

すでに卵管が破裂して大量出血しているような緊急時には、開腹手術が行われることもあります。

子宮外妊娠を経験したら、もう妊娠できない?


子宮外妊娠を経験された方が最も心配されることの一つが、「次の妊娠ができるのか」ということだと思います。 結論から言うと、子宮外妊娠を経験した後も、多くの方が妊娠・出産されています。

たとえ片方の卵管を切除した場合でも、もう片方の卵管が正常に機能していれば、そこから排卵・受精し、妊娠することは十分に可能です。また、もし両方の卵管が無くなってしまっても、治療法によって将来の妊娠率に多少の影響が出る可能性はありますが、妊娠の道が閉ざされるわけでは決してありません。

ただし、一度子宮外妊娠を経験すると、次回の妊娠で再び子宮外妊娠になるリスクは、経験したことがない人に比べて少し高くなる(約10%)といわれています。そのため、次に妊娠した際は、できるだけ早い段階で産婦人科を受診し、正常な妊娠であるかを確認してもらうことが非常に重要です。

重要なポイント

  • 子宮外妊娠は、全妊娠の約1〜2%に起こる可能性があり、誰にでも起こりうる。
  • 「不正出血」「下腹部痛」が主なサインだが、初期症状だけで自己判断はできない。
  • 妊娠検査薬で陽性が出ても、必ず産婦人科で子宮内に胎嚢があるかを確認することが重要。
  • 放置すると卵管破裂などによる大量出血で命に関わる危険がある。
  • 治療後も、再び妊娠することは十分に可能。次の妊娠では早めの受診を心がける。


子宮外妊娠はつらい経験ですが、ご自身の体を守るために、そして未来の可能性のためにも、正しい知識を持って早期に対応することが何よりも大切です。不安な症状があれば、ためらわずに産婦人科に相談してください。

本日お話をおうかがいした方

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

【監修】小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

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