流産手術後の過ごし方は?不妊治療の再開はいつからできる?

ARTICLE

2025.03.19

不妊治療

流産手術後の過ごし方は?不妊治療の再開はいつからできる?

妊娠初期にリスクが高いとされる流産。流産後は、どのように過ごしたら良いのでしょうか。また不妊治療を再開するタイミングとは?不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんが解説します。

流産手術後の身体と日常生活 

 

 

手術後の1週間は、自分を一番に考えて心身ともにしっかり休んでください。ご主人や家族に協力してもらいましょう。一見して分かりにくいのですが、身体も心も傷ついて疲れています。ご主人も同じように悲しんでいるかもしれませんが、まずはあなたの体調や気持ちを伝え、しっかりと休息しましょう。

  • 流産手術後の出血について

    子宮の内膜が落ち着くまでには、手術後2~3日は少量の出血があります。月経の時より多い出血や1週間以上続く出血、腰痛や熱がある場合は、手術をした病院へ相談しましょう。

 

  • 流産手術後の食事について

    手術前には絶飲食の時間があったため、最初は消化の良いものを食べましょう。また刺激物を避けることをお勧めします。

 

  • 流産手術後の入浴について

    感染予防のため、出血がある場合にはシャワー浴にしましょう。寒い時期は浴室をしっかりと温めてから入りましょう。風邪をひかないよう気をつけてください。

 

  • 流産手術後の睡眠について

    睡眠時間をしっかり取ることで体力も回復しやすいです。早めに就寝しましょう。

 

  • 流産手術後の仕事について

    デスクワークの方は翌日より出勤して構いません。立ち仕事や体を動かす仕事の方は無理せず、体調に合わせて出勤しましょう。

 

  • 流産手術後の運動について

    1週間ほどは激しい運動やジョギングなどは避けてください。スイミングは、感染予防の視点から避けましょう。ゆっくりと散歩することは構いません。気分転換にもなります。

 

  • 流産手術後の外出や遠出について

    翌日から外出、買い物などへ行くことは構いません。ただし長時間歩き続けたり、遠出をしたりすることは1週間ほど控え、体調が回復してからにしましょう。

 

  • 流産手術後の性交渉について

    2週間ほど避けましょう。出血が長引いたり、自身の体調がすぐれなかったりする時は控えてください。

 

流産手術後の月経や検査結果のタイミング

 

次の月経は、通常は約4~6週間後に始まります。ホルモンの急激な変化で早く始まったり、遅くなったりすることがあります。出血の量が多かったり少なかったり、今までの月経と違うこともあります。月経が来ると、胸の張りも治まってくるでしょう。2か月経っても月経がこないときは、受診して医師に相談してください。

 

また、検査結果の確認もあります。病理検査は7~10日後に出ますので、異常がなかったことを確認してください。絨毛染色体検査の結果は4週間後以降に出ます。流産の原因が胎児と母体のどちらであったかが分かります。結果によっては、追加検査や治療が必要な場合もあります。

流産後の不妊治療再開の時期

 

流産後の不妊治療再開の相談時期は、流産した時の赤ちゃんの週数や流産時の状況によって変わります。

 

  • 〇妊娠週数が5週未満

    流産時、hCG陽性反応はあったが、赤ちゃんの袋(胎嚢)が見えなかった状況。流産の手術をしていない場合。早くて、1回目月経または2回目月経後に不妊治療再開。

 

  • 〇妊娠週数が12週未満

    流産時、赤ちゃんの胎嚢は見え、赤ちゃんの心拍が見えた状況。手術をした場合。早くて、2回目月経後に治療再開の相談をし、3回目月経後に不妊治療再開。

 

  • 〇妊娠週数が13週以降

    流産時、赤ちゃんの心拍が見えた状況。手術をした場合。3~6か月間は経過を診て、相談後に不妊治療再開。

 

いずれの場合も、子宮と卵巣の状況が回復していることに加え、気持ちが落ち着いて不妊治療の再開に向くことができていれば、再開になります。ただし13週以降に流産になった場合は、子宮と卵巣の回復に一般的に3か月以上かかります。手術をした医師へ治療再開の時期を相談しましょう。

 

不妊治療再開に向けての身体づくり

 

体調が回復し、夫婦が不妊治療を再開したいという気持ちになったら、再開に向けて少しずつ身体づくりをしていきましょう。

 

流産後の薬の再開は?

妊娠に向けて内服していたけれど、妊娠を機に中止していた薬を再開します。高プロラクチン血症の治療薬、インスリン抵抗性の治療薬などは、医師へ確認して再開してください。

流産後のサプリメントの再開は?

妊娠によって中止していたサプリメントがあれば、妊娠に向けて体調を整えるために再開しましょう。

流産後の運動は?

1~2週間経過したら、体調に合わせてストレッチやウォーキング。軽いジョギングなど血流を良くする運動を開始していきましょう。

流産後の心の回復

流産は、親になったご夫婦にとっては大切な「いのち」が失われた体験でもあります。子どもとの死別は衝撃が大きすぎる体験ともいえます。また早期流産の場合は、周囲に伝えていない方が多く、公認されない可能性のある悲嘆でもあります。

 

不妊治療を経て妊娠という体験の後に訪れた赤ちゃんの死は、ジェットコースターのような感情の波があって当然です。トラウマ的な死別体験になる場合もあります。最初は夫婦ふたりで同じ気持ちで悲しんでいたのに、気づけば何となく距離ができてしまい、辛さを理解してもらえず、夫婦間に溝ができてしまうこともあるかもしれません。

 

「流産や死産等を経験した女性に対する心理社会的支援に関する調査研究(令和2年度)」によると、辛い気持ちは時間の経過によって緩やかに減少はしていきますが、なくなるわけではありません。また時間が解決してくれるものではなく、心が回復するにはそれぞれの方にあった時間が必要です。

 

 

流産の悲嘆反応の特徴

 

流産の悲嘆から来る反応は、感情、認知、行動、身体において次の4つの特徴が挙げられます。

 

  • 〇感情的反応

    感情の制御不能、悲しみの継続、落胆、自責、不安、孤独感、怒り

  • 〇認知的反応

    お腹に赤ちゃんがいるような感覚、現実味が乏しい、フラッシュバック、記憶力や理解力の低下

  • 〇行動的反応

    涙が止まらない、過活動、探索行動、泣き叫び、引きこもり

  • 〇身体的反応

    痛み、体力喪失、睡眠障害、食欲不振

 

この他、感情の不安定さや反応の強さなど、気持ちの揺れ幅が大きくなったり、1日のなかで何度も気分の浮き沈みがあったりします。妊娠中の経過をたどる作業をしたり、過活動~停滞~低迷の上昇下降を乱気流のように繰り返したりすることもあります。これらの反応は、自然なことです。

 

流産を経験したおふたりへ

 

もし今、流産を経験したご夫婦がこの記事をご覧になっているとしたら、どうか、悲しさや辛さなどの感情を我慢しないでください。決して自分を責めないでください。

 

奥様へ

悲しさ、寂しさ、辛さなど溢れる感情があれば我慢しないでください。そして決して自分のことを責めないでください。悲しみや怒りは自然なことでその感情を出すことで少しずつ心は癒されていきます。辛い時はご主人にそばにいてもらいましょう。ハグしてもらい一緒に悲しみを分かち合うことで悲しみが少しずつ癒えていくでしょう。

 

ご主人へ

流産によって、ご主人が悲しく泣きたい気持ちが溢れたとしてもそれは自然なことです。奥様へその気持ちを伝え、手を握りハグをして悲しみを分かち合うと、奥様も一人ではないと感じ安らげると思います。自分の感情を大切にしながら、奥様の心と身体をいたわり、十分な休息を取らせてあげてください。

 

・・・流産後のこれから

流産後は、身体だけではなく心も疲れています。医療機関で不妊治療再開の許可が出たとしても、いつ再開するかはご夫婦で決めていただいて良いのです。

 

ご夫婦が穏やかに過ごせて一緒に「もう一度、妊活や治療を頑張ってみよう」と思えた時が再開の時です。無理をせず、ふたりのペースで立ち止まりながら進んでみましょう。

 

この記事の動画はこちらから

本日お話をおうかがいした方

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

RELATED ARTICLEおすすめ関連記事

テーマ:

RANKING⼈気記事

KEYWORDキーワード検索

ALL TAGSタグ一覧人気のタグ

CATEGORY

会員限定記事

会員限定の記事です。
ログインしてからご覧ください。会員登録は無料です。