生殖補助医療とは?体外受精、顕微授精について!!
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妊活お役立ち情報
2024.07.10
不妊治療
生殖補助医療とは?体外受精、顕微授精について!
生殖補助医療とは、体外受精をはじめとする近年進歩した不妊治療法を指します。卵子や精子を体外に取り出して体外で受精させる技術を「assisted reproductive technology」から略して「ART」と呼びます。基本的には、タイミング療法や人工授精法の一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合、段階的に生殖補助医療法の体外受精へステップアップしていきます。
どのような治療なのかについて、不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんが解説します。
生殖補助医療とは。一般不妊治療との違い
生殖補助医療(ART)においては、採卵を行って卵子を獲得することが重要になります。そこで採卵に向けて調節卵巣刺激方法が選択され、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、卵胞(卵子が入っている袋)を複数発育させます。採卵したら、精子と一般体外受精または顕微授精させて、胚培養します。
受精確認の翌日(媒精から2日目)には、細胞分裂が始まります。 胚は分割を繰り返しながら発育し、媒精から3日目の初期胚(分割期胚)、または5日目の胚盤胞になったものを、胚移植します。
一般不妊治療と異なる点は、卵子を取り出し、体の外で受精をさせ、胚を培養して子宮に移植することです。受精と培養が体外で行われます。
卵胞の発育から排卵までの流れ
体外受精で重要になる採卵に向けた調節卵巣刺激方法のお話に入る前に、卵胞がどのように発育、排卵していくのかを解説していきましょう。月経3~5日目に脳の下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)が出て、卵胞が育つよう刺激します。するとAFC(胞状卵胞)が少しずつ大きくなっていきます。
いくつかある卵胞のうち、1つが大きくなって主席卵胞となり、他は閉鎖卵胞になって卵巣内に吸収されます。E2(卵胞ホルモン)が分泌され、子宮内膜が厚くなると、LHサージが起こり、最終的に成熟した1個が排卵するのです。その後、黄体ホルモン分泌が促されます。
調節卵巣刺激方法での採卵までの流れとリスク
調節卵巣刺激方法では、この卵胞の発育から排卵までの流れを、薬を用いて調節していきます。排卵誘発剤でFSHを増やし卵胞が育つように刺激すると同時に、排卵してしまう可能性があるので点鼻薬や注射などを使って排卵を抑えていきます
刺激によって卵胞が18~20㎜に発育した後、hCGの注射をして人為的にLHサージを起こし、卵胞を成熟させ、採卵を行っていく流れです。
卵巣刺激に伴うリスクとしては、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)があります。卵巣が肥大してしまい、お腹や胸部に水がたまり、血管内脱水の状態になり、血栓症などの危険があります。また卵巣がよじれて痛みを感じる卵巣茎捻転になることもあります。
医師はOHSSを避けるために排卵誘発剤を調整していきます。しかし、卵巣の反応が良すぎて、卵胞ができ過ぎてしまうことがあります。その場合は採卵して卵子を取りますが、そのまま胚移植をすると、OHSSの症状が悪化することがあるため、胚移植を延期します。延期の場合は採卵した胚は全て凍結し、次の周期以降に凍結した胚を融解して移植します。
体外受精の採卵はどのように行われる?
採卵は、腟を経由して卵巣に針を刺して行われます。超音波の機械にガイドをつけて、採卵針を用いて卵胞内に入っている卵胞液ごと吸引して卵子を採取するのが一般的です。
一般的に静脈麻酔をかけるので、痛みを感じることはありません。採取する卵子の数が少なければ、局所麻酔や鎮痛剤のみの無麻酔で行うこともあります。通常は、当日には帰宅でき、翌日の生活に支障はありません。
採卵や麻酔に伴うリスクはある?
採卵に伴う問題点として挙げられるのは、腹腔内出血、膀胱内出血、膣壁出血の可能性です。症状が重症の場合は、入院を勧められることがあります。また腹腔内出血が止血しない場合は、極めてまれですが、開腹手術の可能性もゼロではありません。
また麻酔に伴うものとして、薬剤性ショック、血圧低下、呼吸停止、嘔気、嘔吐などが考えられます。消毒した針を刺しますが、骨盤内感染の可能性もありますので、予防的に抗生剤の点滴や内服の必要があります。
無意識に体を動かすなど麻酔時不穏が起きた場合、穿刺困難と判断されて採卵が中止されるケースもあります。
受精には一般体外受精法と顕微授精法がある
採卵で取り出された卵子は培養士に渡され、そこで濃度調整した良好精子と受精します。一般体外受精法(IVF-ET)では、精子と卵子を混ぜ合わせた後に、酸素や二酸化炭素、窒素などの割合を卵管内と同じ状態にして、受精を待ちます。
顕微授精法(卵細胞質内精子注入法、ICSI)は、ガラスピペットに精子を1匹だけ吸引して細胞質内に注入し、受精を待つ方法です。
胚培養と胚の発育について
精子と卵子が受精すると、排卵翌日には受精卵となり、2日目に4分割、3日目に8分割の分割期胚となり、4日目には桑実胚となります。5~6日目に胚盤胞になります。そして胚移植へ進みます。
胚移植はどのように行われる?
胚移植とは、胚を子宮内に戻すことです。施設によって異なりますが、胚1~2個を細くやわらかい子宮内移植カテーテル内に少量の培養液と共に吸引し、超音波で観察しながら子宮内膜へそっと戻します。
数日後、胚は子宮内膜に入り込み細胞が増殖すれば着床が成り立ち、妊娠へと結びつきます。
胚移植後の妊娠判定と陽性後の経過
胚移植後、約2週間のんびりと過ごしていただき、血液検査で陽性となったら、その1週間毎に超音波検査を行い5週に胎嚢確認、6週には胎児心拍を確認します。その後、7~9週にそれぞれ超音波検査をしたら、一般妊婦健診施設へ転院となります。
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本日お話をおうかがいした方
不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター
小松原 千暁
不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?
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