排卵障害でも妊娠できる?もちろんできます!

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2024.10.30

不妊治療

排卵障害でも妊娠できる?もちろんできます!

不妊症の原因のひとつとされる「排卵障害」。
卵胞が育ち排卵するまでのプロセスに何らかの異常が起こり、月経周期が乱れ、卵子が精子と出会えなくなります。排卵障害で不安を感じている方もいるかもしれませんが、症状を知って適切な治療を進めれば、妊娠は可能です。排卵障害の原因や治療法について、不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんが解説します。

排卵障害って何?

排卵障害とは、卵胞が育って排卵するまでのプロセスに何らかの原因があって、排卵していないことを言います。排卵がないと卵子が精子と出会うことができず、受精卵ができないため不妊症である可能性が高くなります。


月経周期で言えば、正常であれば25~38日でほとんど毎月月経がありますが、排卵障害の場合は不規則になります。


例えば、月経周期が39日以上など長くなり年に9回以下の月経しかない稀発月経、月経が止まってしまう無月経が挙げられます。

卵胞が育って排卵するまでのプロセス

排卵障害の原因を考えるにあたって、卵胞が育って排卵するまでのプロセスについて簡単に説明しましょう。
卵胞の成長や排卵には、脳下垂体や甲状腺、卵巣などから分泌されるさまざまなホルモンが関与しています。


まず脳から「卵巣を刺激するホルモンを出して」と指令が出されると、FSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され、卵巣で卵胞が育てられます。


そして甲状腺ホルモンは順調な発育をサポート。卵胞が育つと卵巣からE2(卵胞ホルモン)が分泌され、「卵胞が育ったよ」と脳にフィードバックします。すると、脳が「次のホルモンを出して」と指令を出し、今度はLH(黄体形成ホルモン)が分泌され、卵胞が成熟し排卵を促すのです。

排卵障害の6つの原因とは

排卵障害は、卵胞が育ち排卵するまでのプロセスに関与する脳や甲状腺、卵巣に何らかの原因があると考えます。

主な原因としては、次の6つが挙げられます。

 

  • 中枢性排卵障害
  • PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
  • 高プロラクチン血症
  • 甲状腺機能異常
  • 卵巣機能低下
  • 黄体化非破裂卵胞(LUF)

 

それぞれの原因や治療法について、具体的に解説していきましょう。

排卵障害の原因①中枢性排卵障害とは

中枢性排卵障害とは、脳の視床下部の働きにブレーキがかかり、卵胞を育てるホルモン(FSH)と排卵を促すホルモン(LH)の分泌が低下し、排卵しにくくなることです。

このブレーキには、強いストレス、無理なダイエット、過度な運動、痩せすぎ(BMIが17以下)などが考えられます。

中枢性排卵障害の治療


改善するためには、無理のない範囲でストレスを軽減する工夫が大切です。

誰かに相談したり、気持ちを共有したり、趣味を見つけたり、リラックスできる時間を作るのが有効でしょう。

また痩せすぎの場合は、BMIを18.5~24.9(理想は22)に上げられるように栄養バランスの良い食事とウォーキングなど適度な運動を心掛けてください。

ぐっすり眠れるような生活習慣を作ることで、自然妊娠を目指します。

 

それでも改善されない場合は、医師と相談しながら薬物治療を進めることもあります。

排卵を促すクロミッド、セキソビット、フェマーラなどの飲み薬を用いて、経過を見ながら治療します。

これでも難しい場合は、ゴナールエフ、レコベル、HMG製剤などの注射薬での治療が検討される場合があります。

排卵障害の原因②PCOSとは

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、生殖年齢女性のうち5~8%がこの卵巣のタイプといわれています。

卵巣を促すホルモン(LH)が過剰に分泌され、男性ホルモンが増えすぎることで多数の卵胞ができてしまい、十分に成熟できずに排卵しにくくなります。


インスリン抵抗性が高い場合も、同じことが起こるといわれています。そのため月経周期が長くなる月経異常であったり、エコーで卵巣を見ると小さな卵胞が片側に10個以上あったりします。


血液検査ではAMHが4~5 ng/ml以上の数値を示すことがあったり、アンドロゲンが高値、またはLH/FSHが1以上あったりすることも。肥満を伴うケースが多いです。

PCOSの治療

肥満を伴っている場合は、食事や適度な運動から、BMIの値を理想(22)に近づけて自然排卵を目指します。肥満が改善したのにホルモン分泌のバランスが崩れていている場合には、薬物治療を行います。


インスリンの抵抗性が高い場合は、改善するメトロフォルミンの内服で治療します。それでも改善されない場合は、排卵誘発の飲み薬や注射薬が選択されるのが一般的です。

排卵障害の原因③高プロラクチン血症と④甲状腺機能異常

甲状腺
高プロラクチン血症は、ホルモン(FSHとLH)が出にくくなり、卵胞発育や排卵がしにくくなります。

また甲状腺機能異常は、甲状腺ホルモンの過少や過剰によって卵胞発育や排卵しにくくなります。

高プロラクチン血症、甲状腺機能異常の治療

ともに、内服治療で改善を目指します。

高プロラクチン血症の場合は、プロラクチンの過剰分泌を整える薬、甲状腺機能異常の場合は、甲状腺ホルモンを正常な分泌に整える薬が用いられます。

それでもうまく排卵できない場合は、排卵誘発の薬物治療に切り替えます。

排卵障害の原因⑤卵巣機能低下⑥黄体化非破裂卵胞と治療

卵巣機能低下は、卵巣機能が衰え、ホルモンを分泌しにくいので卵胞が育ちにくく排卵できなくなります。

卵巣内の卵子も残りわずかになっています。年齢が高くなると起こりますが、40歳未満の女性でも1%は同様の症状が起こり、早発卵巣不全と呼ばれます。

目安としてAMHが0.1以下、FSHが25以上です。

また黄体化非破裂卵胞(LUF)は、卵胞が破裂せずに黄体化するため、排卵が起こりません。

卵巣機能低下、黄体化非破裂卵胞の治療

どちらも改善するためには、栄養バランスの良い食事やウォーキングなど適度な運動が推奨されています。
さらに内服薬や注射薬といった排卵誘発剤による薬物療法を組み合わせて治療していきます。

排卵タイミングを逃さないよう慎重に観察をしながら、治療を進めていく必要があります。

体を整え、排卵と妊娠を目指そう


このように排卵障害には原因があります。改善するためには食事や運動、リラックスなど心身ともに整えることが重要です。

必要に応じて適切な薬物治療を行い、うまく排卵していくことを目指していけば、排卵障害であっても妊娠は可能です。

タイミング法や人工授精、体外受精などの選択肢も含めて、医師と相談しながら、ご自身に合った治療を見つけていきましょう。

この記事の動画はこちらから

本日お話をおうかがいした方

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

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