卵管の詰まりは不妊の原因。卵管鏡下卵管形成術で自然妊娠も目指せる

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2024.07.24

不妊治療

卵管の詰まりは不妊の原因。卵管鏡下卵管形成術で自然妊娠も目指せる

不妊の原因のひとつに、卵管が詰まっていたり、狭くなったりしている卵管通過障害が挙げられます。卵管が詰まっていると自然妊娠はできませんが、FT(卵管鏡下卵管形成術)で卵管を開通させれば、自然妊娠を目指せます。FTとはどんな治療なのでしょうか。不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんが解説します。

妊娠成立のプロセスで卵管は大切

妊娠成立のプロセスから説明しましょう。まず膣の中に精子が入り、泳いで子宮から卵管内を通っていきます。精子が、卵巣から排卵された卵子と出会い受精すると、今度は卵管内を通って分割をしながら子宮へ戻っていきます。受精胚が着床し、成長していけば妊娠成立です。

つまり卵管は、精子が泳ぎ、卵子と出会い、受精し胚となって分割しながら子宮に戻っていくために重要な役割を果たしています。卵管が狭くなったり、詰まったりしていると、そもそも精子と卵子が出会うことができません。不妊治療において、子宮や卵管の状態を調べることはとても大切です。

子宮卵管造影検査で子宮の内側や卵管を確認

子宮と卵管の通り具合などを調べる検査に、子宮卵管造影検査(HSG)があります。子宮の中に細い管を入れ、先端に付いている小さな風船を膨らませて逆流しないように造影剤を注入してレントゲン撮影する検査です。

造影剤が少しずつ子宮の内側に広がっていくと、そこから卵管を通って卵管采のほうへ到達していきます。検査では、子宮の内側の形、卵管の太さや走行、卵管采の状態や周囲の癒着などを調べます。

卵管通過障害と診断された場合はどうする?

子宮卵管造影検査の結果、特に問題がなければ自己タイミング、タイミング療法や人工授精法が提案されます。一方で卵管の両方または片側に、詰まり(閉塞)や狭くなっている(狭窄)など卵管通過障害と診断された場合は、体外受精法や顕微授精法といった生殖補助医療を受ける選択もありますが、FTも選択肢としてあることを知っておいていただきたいと思います。

FTを受けて卵管が開通すれば、自己タイミング、タイミング療法人工授精法などで妊娠を目指すことができるのです。

FT(卵管鏡下卵管形成術)はどんな手術?

FTとは、どのような手術なのかを簡単に説明します。手術といってもメスを使うものではなく、カテーテルと呼ばれる管を子宮の中に入れていきます。

管を子宮の中に入れたら、先端に付いたカメラを出し、卵管の入り口を見つけます。卵管の入り口が見つかったら、バルーンと呼ばれる風船のようなものを卵管の中へ入れていきます。風船を膨らませて少しずつ進ませて、卵管内の閉塞しているところや、狭くなっているところを広げ、正常な太さに開通させます。

卵管の奥まで行ったら、最後にバルーンの先からカメラを出して卵管の内部を観察しながら、少しずつ子宮の中に戻していきます。

卵管自体が正常であれば、詰まっていたり狭くなったりした部分があっても、全体的に薄いピンク色で、ひだが白っぽく写って見えます。しかし異常がある卵管は、癒着をはがして広げていった部分がくもの巣のように見えたり、炎症が起きている場合はキラキラと光って見えたり、また平坦でひだが見えなかったり、硬くなっていたりする場合があります。そのような卵管の場合は、妊娠率がやや低い状態になります。

手術の時間や術後の痛みは?入院は?

FTの手術自体は10分程度です。静脈麻酔で眠っている間に実施するので痛みを感じません。ただし卵管を広げた余韻として術後に痛みを感じる場合もあります。必要であれば鎮痛剤を使用しますが、通常は30分程度で治まります。入院せずに休憩してから帰宅できる日帰り手術となります。

卵管通過障害は大きく分けて2種類ある。それぞれの妊娠率

卵管通過障害には、両方の卵管が閉塞、狭窄している「両側罹患」、片方は正常だけれど片方が閉塞、狭窄している「片側罹患」があります。卵管通過障害別の妊娠率については、IVF大阪クリニックのデータによると、全体の妊娠率は24.9%、両側罹患が23.6%、片側罹患が30.7%です。もう少し細かく見ていくと、両方閉塞が13.3%、閉塞狭窄が22.4%、両側狭窄が28.4%、片側閉塞が26.9%、片側狭窄が33.0%になっています。

FT(卵管鏡下卵管形成術)実施後の妊娠率は?

続いて、FT実施後の妊娠成立者の月別割合をみていきましょう。FTの同じ周期が8.8%、FT後1か月が19.1%、FT後2か月が16.0%、3か月が13.5%となっています。

またFT実施後の期間と妊娠率では、妊娠成立した人の80%以上がFT実施後6か月以内に妊娠しているデータがあります。

FT後は半年を目安に一般不妊治療を積極的に

そのため、FT後は半年を目安に一般不妊治療を積極的に受けていただくと良いでしょう。そこで妊娠に至らなかった場合、もう一度、子宮卵管造影検査をして、卵管が詰まっていないか、狭くなっていないかなどを再評価します。

検査で卵管が狭い、詰まっているとわかった場合、体外受精に進むのか、もう一度FTを受けて一般不妊治療を進めるのかなどは、医師と相談をして決めていきましょう。

FTの費用。保険適用はある?

FTの費用は、健康保険適用になっています。片側卵管は約15万円、両側卵管は約30万円です。高額医療費制度の適用にもなります。

高額医療費制度とは、社会保険または国民保険の加入者で同じ医療機関での1か月の自己負担額が一定金額を超えた場合に受けられる制度です。所得額によって負担額などが変わりますので、加入の保険組合に問い合わせをしてみてください。

FTは民間の保険適用にもなりますので、ご自身の加入している保険会社にも確認してみましょう。

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本日お話をおうかがいした方

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

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