妊活の基本検査

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2024.05.15

不妊治療

妊活の基本検査

不妊症の基本検査の全体像を知ろう。いつ始める?何をする?

妊活で不妊治療を始めたいと思ったら、まずは専門の施設で不妊症の基本検査をする必要があります。

とはいえ、初めての不妊検査はどのタイミングで何をするのかが分からず、不安に感じることも多いでしょう。どんな検査があって何が分かるのでしょうか?

「不妊症の基本検査のロードマップ」について、不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんが解説します。基本検査の全体像を押さえて、計画的に妊娠への近道を探りましょう。

 

不妊症の基本検査はどのタイミングで受けたらいい?

積極的に妊娠を望むならば、1年経った頃にカップルで不妊症の基本検査を受けましょう。女性は年齢とともに妊娠率が下がっていくので、早めのスタートが大切です。

基本検査の初診は、生理前後でも生理中でも基本的にどのタイミングで受けてもかまいません。1回の通院で終わるものではなく、ホルモンを調べる採血など月経周期に合わせて行う検査もあるので、一般的には初診から1〜2か月かけて3〜4回通院して行われます。

可能であれば、初診時に基礎体温表を持参すると検査の進行がスムーズです。もし基礎体温を測っていないという場合は、今日から始めましょう。

 

>>関連記事:基礎体温から体質を見分けてみよう

 

基本検査の結果で不妊症と診断されると、43歳までは保険適用の不妊治療を受けることができます。(2024年5月現在)

 

不妊症の基本検査。超音波と採血、内診では何が分かる?

基本検査の方法を大きく分けると、主に超音波と採血、内診があります。施設によって実施項目に違いがありますが、主な検査内容や分かることは次の通りです。

 

▶不妊症の超音波検査の概要。目的と分かること

経腟超音波検査では、細い棒状の超音波プローブを腟から入れて卵巣や子宮の状態を確認します。子宮全体の肥大や変形、筋腫やポリープの有無、子宮内腔の形状、子宮内膜の状態、卵巣嚢腫の異常などが分かります。排卵前の卵胞計測も超音波検査で行います。卵胞が排卵に向かい確実に大きくなっているかを確認するためです。

 

 

▶不妊症の採血検査の概要。目的と分かること

月経中、排卵期、黄体期ごとに採血し、妊娠に関する各ホルモンの分泌量を調べることで、子宮や卵巣の機能不全や排卵障害などが分かります。月経中に行う採血では、卵胞刺激ホルモン(FSH)黄体化ホルモン(LH)卵胞ホルモン(E2 )より卵巣機能を調べ、排卵1週間後に行う採血では、黄体ホルモン(P4)より黄体機能を調べます。また胎児の発育に重要な役割をする甲状腺ホルモンの状態も採血で分かります。

 

 

最近では、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定もできます。残っている原子卵胞数を予測し卵巣機能の予備的な確認に用いられる検査です。

 

 

また多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に関係するインスリンの抵抗性、妊娠中にかかると胎児に悪影響を及ぼす風疹の抗体検査をはじめ、B型肝炎やC型肝炎、梅毒、HIV感染なども採血で検査できます。特に風疹は、ワクチンを接種すると2か月は妊娠できないので、早めに調べておくと良いでしょう。

*インスリンの抵抗性、風疹、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV感染は、自費検査時にまとめて検査できます。

 

▶不妊症の内診検査とは?目的と分かること

検査用の細いブラシで子宮内の細胞を採って検査する方法には、子宮がん検診(頸部、体部)、不妊の原因となるクラミジア抗原検査などがあります。

クラミジアは採血で抗体価を調べられます。カップルのどちらかに陽性が出た場合は、腹腔内感染にて癒着を起こす可能性があるため、2人とも内服薬で治療します。再検査で2人とも陰性となるまでは感染を防ぐために避妊する必要があります。

 

その他の基本検査。子宮卵管造影検査とフーナー試験とは

この他、超音波や採血とは方法が異なる検査として、卵管因子の不妊を調べる子宮卵管造影検査、子宮頚管因子を調べるフーナー試験があります。

それぞれの検査内容や目的などを紹介しましょう。

 

▶子宮卵管造影検査

卵管が正常に疎通しているかどうかを検査するもので、月経終了後から排卵日までの間に行います。

検査では子宮口から細い管(バルーンカテーテル)を入れて、子宮の中で膨らませ造影剤を注入。子宮から卵管を通り腹腔内へと造影剤が広がっていく様子を観察し、子宮の形や卵管の太さ、癒着の有無などをX線で撮影していきます。所要時間は5~6分です。

卵管周囲だけではなく、子宮内腔癒着 など子宮内腔の様子も分かります。

 

 

 

 

▶フーナー試験

女性の頚管粘液と男性の精子の適合性を調べる検査のことです。

排卵期に通常の性交を行い、その翌日までにクリニックへ行き子宮の入り口となる子宮頚部から粘液を採取します。頚管粘液の中で泳いでいる精子がどれぐらい存在し、前進する力があるのかを調べることで適合性をみます。

 

 

女性だけではない!男性側の基本検査も必要

不妊症の基本検査というと女性だけと思われやすいのですが、男性側も必要です。WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊に悩むカップルのうち半数近くは男性側にも原因 があるといわれています。

 

男性側の検査には、風疹の抗体検査やクラミジア抗体検査、B型肝炎やC型肝炎、梅毒、HIV感染検査はもちろん、精液検査があります。採取した精液から、精液量、濃度、運動率や運動性、奇形率などを調べるものです。

 

>>関連記事:「男性不妊講座#1 基本を知って精液所見を改善する!|泌尿器科医 岡田弘」こちら

 

ぜひカップルで検査を受けましょう。

不妊症の基本検査の費用はどのくらい?

基本検査の費用は、施設によって異なりますが、月経中のホルモン採血や子宮卵管造影検査は、保険適用の検査です。また初診が保険適用となる施設であれば、初診での超音波検査も保険で受けられます。抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定は、不妊治療の体外受精の直前であれば保険適用になります。

 

自費による検査費用は、施設によって差がありますが、目安としては全部で2〜10万円です。

 

*自費で採卵を行う場合や一般不妊治療(タイミング法や人工授精)を行う場合、あるいは一般の婦人科などで抗ミュラー菅ホルモン(AMH)を調べる場合は保険適用外となりますのでご注意ください。

 

*保険の適用項目がある場合でも、治療の過程や医療機関によっては必ずしも保険診療とならない場合がありますので医療機関に問い合わせの上検査を受けると安心です。

 

*自治体から検査費用の一部については助成金が出ます。 助成金のでる自治体はこちらをご参考に

 

基本検査でもし異常や病気が見つかった場合は、そちらの治療が優先になります。不妊の原因を知って、妊娠に向けてしっかりと体を整えていきましょう。

 

>>「不妊症の基本検査のロードマップ」“完全版”を動画でもっと詳しく!

 

この記事の動画はこちらから

本日お話をおうかがいした方

不妊症看護認定看護師/生殖医療コーディネーター

小松原 千暁

不妊治療の専門クリニックに勤務して20年、妊活をしている方の母的存在になれるように日々頑張っています。 不妊治療は時間もお金もかけて頑張って通院するのですから、一緒に勉強して自分達の歩く道を自分達で決めてみませんか?

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