胚のグレード評価と移植基準~みなとみらい夢クリニックのケース~
ARTICLE
妊活お役立ち情報
目次
体外受精の治療で目にする「4AA」などの胚のグレード。これらは世界的な評価基準ですが、近年では技術の進歩に伴い、「施設独自のより精密な評価」を取り入れるクリニックが増えています。
本記事では、不妊治療業界でも多くの治療成功と研究報告の実績を持つ不妊治療医療機関グループ内の1施設でもある、みなとみらい夢クリニック、その培養室長である家田祥子さんに胚評価の考え方やその意味についてお話を伺いました。
今回の記事では、
- ・施設における胚評価の考え方
- ・施設独自の総合的な見方
について、できるだけわかりやすくお伝えします。
進化する胚評価。世界基準と独自の基準の違い

胚の凍結や移植の説明でよく目にする「8cell V1」や「4AA」「5AB」という表記。
「8cell V1」は培養初期の胚の状態を表すVeek分類、「4AA」「5AB」は胚盤胞の状態を表すガードナー評価と呼ばれ、世界的に使用されている胚の評価基準です。
Veeck分類はLucinda Veeck博士によって提唱され、ガードナー評価はDavid K. Gardner博士によって定められ、どちらも大体2000年頃から体外受精治療を行う施設において、長年使用されてきました。
しかし、体外受精技術が発展するにつれて、解析できるデータの数が増え、胚の染色体を調べることが可能になり、更に画像解析技術も使用できるようになったことで、上記以外の胚評価方法が少しずつ増えてきました。特にガードナー評価においては、胚盤胞での移植が一般的になった背景も関係して、施設独自の評価を用いる施設が徐々に増えつつあります。
こういった施設は、来院される患者さんが多くデータが蓄積しやすい、もしくは研究部といった培養室以外の部署を併設している体外受精実施施設のことが多いように感じます。
そして言い換えると、この評価は「その施設ならではの実績」とも言い換えられますから、ネットなどで調べても検索にひっかかることは少ないこともあり、 理解するのに時間がかかることがあります。
みなとみらい夢クリニックのご紹介

みなとみらい夢クリニックは、患者様一人ひとりの背景やお気持ち、不安や迷いに寄り添いながら、納得できる治療選択を支えることを大切にしている不妊治療専門クリニックです。
自然周期・低刺激周期を主体とした身体への負担に配慮した治療を基本に、一般不妊治療から高度生殖医療まで幅広く対応し、プレコンセプションケアも含めたトータルサポートを提供しています。
2025年の治療実績は、年間採卵件数1888件、移植周期1351件でした。採卵における誘発方法の割合は、レトロゾールが40%、クロミッドが25%、DFが30%、その他という内訳です。移植あたりの妊娠率は、年齢を考慮しない場合、胚盤胞移植で45.5%、分割胚移植で14%となっています。なお、分割胚移植を選択される患者様は、年齢層が比較的高い傾向にあります。
そもそも、ガードナー分類とは?

まず前提として知っておいていただきたいのは、ガードナー分類は「観察した時点の形態(見た目)」を評価した指標だということです。
【関連記事:グレードの見方を完全解説!4AAや5ABなど数字の意味は?」】
体外受精では、移植する前や凍結する前に、
- ・発育するスピード
- ・細胞が綺麗に配置されているかどうか、その細胞の数は十分かどうか
- ・全体の細胞のバランス
などを観察し、一定の基準に沿って評価します。
いわば「写真を1枚撮って評価した状態」と考えると、イメージしやすいかもしれません。
① みなとみらい夢クリニック~初期胚(Day2〜3)の評価~

初期胚の評価はVeeck分類ではなく施設独自のG1〜G4で評価されています。
採卵から2日目および3日目の朝の観察をもとに評価することが一般的です。他施設ではG1~G5まで評価があるところもあります。
G1の方が形態的に良好とされていて、G4までが移植可能でG5は移植できない胚と評価することもあります。みなとみらい夢クリニックでは、G1とG2が良好と評価し、移植や凍結可能な胚としています。
みなみらい夢クリニックの評価は、以下の4つの観点から行い、良くないところを減点していく「減点方式」を採用しています。
- ・発育速度:時期に見合った細胞分裂(細胞数)である。
- ・フラグメント:細胞分裂時の破片の有無や量。
- ・不同:細胞(割球)の大きさにばらつきがない(細胞の大きさが均一)。
- ・不整:細胞(割球)の形や配置に著しい不整がない(細胞がいびつな形をしていないか)。
これらを総合的に判断し、グレードに反映させています。
たとえば、培養3日目だと、8~9cellが一般的ですが、6cellだった場合、1つ減点するのでG2の評価とします。また、その際、細胞1個1個の割球の大きさが均一であれば問題ないのですが、割球が不均一であればもう1つ減点されてG3となります。
② みなとみらい夢クリニック~胚盤胞(Day5〜6)の評価~

まず一般的なガードナー評価についてお話しましょう。
採卵から5〜6日で胚は「胚盤胞」へと成長します。 胚盤胞は、
- ・ICM(内部細胞塊):将来赤ちゃんになる部分
- ・TE(栄養外胚葉):将来胎盤になる部分
という2つの細胞集団から構成されます。
ガードナー評価では胚全体の成長段階を 1〜6 の数字、ICM・TEをそれぞれ A・B・Cで表します。「4・A・A」「5・A・B」という感じですね。そして、この最初の数字は“単純な優劣”ではありません。
数字が示しているのは、
▶胚盤胞がどこまで成長しているか(ステージ)です。
- 1〜2:胚盤胞になり始めた段階
- 3:胚盤胞として形が整ってきた段階
- 4:拡張し、孵化の準備をしている段階
- 5:透明帯から細胞が出始める(脱出し始める)
- 6:透明帯から細胞が完全に脱出した
重要なのは、「最終的に体内で着床するのは6の状態」つまり透明帯から完全に細胞が出た状態ということです。移植の際、アシステッドハッチング(AHA)処理を行うのは、なるべく6に近い状態まで近づかせてあげようと考えているからです。
そして、上記の一般的なガードナー分類に加えて、独自の総合評価を行っている施設もあります。みなとみらい夢クリニックもその1つです。
ガードナー評価に2つの胚評価基準を加えた下記の3つの評価で胚に対しての妊娠率をA~Eの5段階で表しています。
- ①ガードナー評価
- ②採卵時の年齢
- ③媒精~凍結までにかかった体外培養の時間
Aが一番良く、A>B>C>D>Eという評価になります。
胚盤胞総合評価グレード:評価項目
①ガードナー評価(形態評価)
一般的に使用されているこの評価は、不妊治療において非常に重要な評価基準ですから、まずこちらをベースに考えます。
- 胚の構造が安定しているか
- ICMやTEの数はきちんと足りているか
- 発育のバランスが取れているか
といった観点は、“胚の状態を知るための情報”として重要です。
② 採卵時の年齢
「胚盤胞になったとしても、年齢によって妊娠率は低下する」「染色体異常胚は、通常胚に比べて妊娠率が低い、流産率が高くなる可能性がある」「染色体の正常性の大きな要因には、採卵時の年齢が関わっている」などが考えられます。
特に、染色体の正常性には採卵時の年齢が関わっているという部分が非常に重要で、同じ見た目の胚であっても、採卵時年齢が異なれば、妊娠率や流産率には差が生じることが知られています 。もちろん染色体異常は年齢とともに上がりますが、加齢(エイジング)により卵子自体の質も低下するため、それに伴い妊娠率が下がるという考えもあります。そのためみなとみらい夢クリニックでは、「移植時の年齢」ではなく「採卵した時点での年齢」を重要な評価項目として反映しています 。
③ 媒精〜凍結までに要した体外受精の時間
受精してから胚盤胞になり、凍結に至るまでの発育スピードも重要な指標と考えられています。
- 過不足なく、自然なペースで成長しているか
- 極端に早すぎたり、遅すぎたりしていないか
といった点は、胚の持つ生命力や発育の安定性を考える上で参考になります。
妊娠に繋がる胚盤胞総合評価グレード(A〜E)
上記3項目を総合的に判断し、胚盤胞を以下の5段階で評価します。
- A評価:妊娠につながる可能性が最も高いと判断される胚
- B評価:Aに次いで良好な条件がそろっている胚
- C評価:条件は平均的だが、十分に妊娠対象となる胚
- D評価:移植の可能性であり妊娠に繋がる胚
- E評価:妊娠の可能性が低いが可能性はある胚
具体的な評価のつけかたを見ていきましょう。
★採卵時年齢35歳 採卵個数5個 3個が胚盤胞で凍結できたケース
- A評価:1個(140-142-0-17-2 4AB)
- B評価:1個(140-142-0-20-3 4BC)
- C評価:1個(111-142-0-18-3 4BC)
AとBは同じ発生スピードだが、A評価はガードナー評価がABと良好なのでA評価となる。B評価とC評価は凍結した時間が142時間と同じではあるが、胚盤胞になった時間から凍結するまでにかかった時間が30時間を超えているので、評価が下がりCとなる。
★採卵時年齢41歳 採卵3個 2個が胚盤胞で凍結できたケース
- B評価:1個(142-143-0-18-2 4BA)
- B評価:1個(116-117-0-19-3 4CC)
発育スピード遅くてもガードナー評価が良好であればB評価となる。逆をいえば、発育スピードが良好でもガードナー評価が良くないと評価が下がる。
まとめ:グレードは「判断材料のひとつ」。主役はあなたの体
胚評価は、治療方針を考える上で大切な情報です。しかしそれは、あくまで数ある判断材料のひとつに過ぎません。
特に移植では、
- ・胚の力
- ・子宮の状態
- ・タイミング
- ・医師・胚培養士の経験と判断
が重なり合って、妊娠という結果につながります。
数字やアルファベットだけで一喜一憂せず、 「なぜこの胚を選んだのか」をぜひ医師や培養士に聞いてみてください。
その対話こそが、納得のいく治療と、心の安心につながっていきます。
本日お話をおうかがいした方
みなとみらい夢クリニック
培養室長
家田祥子さん
みなとみらい夢クリニックの培養室長を務める胚培養士。2001年に大学院修了後、加藤レディスクリニックを経て現職に就任。自然周期による不妊治療の現場において、卵子・精子・受精卵の管理をはじめ、凍結技術の研究開発にも携わるなど、高度な専門性を有する。現在は、一般社団法人 日本臨床エンブリオロジスト学会 理事長も務め、胚培養士の育成や生殖医療分野の発展にも尽力している。

テーマ:
RANKING⼈気記事
KEYWORDキーワード検索
ALL TAGSタグ一覧人気のタグ
CATEGORY
会員限定記事
会員限定の記事です。
ログインしてからご覧ください。会員登録は無料です。