使用薬剤を知っておこう#4 不妊治療で排卵誘発に使われる主な飲み薬

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2024.04.17

不妊治療

使用薬剤を知っておこう#4 不妊治療で排卵誘発に使われる主な飲み薬

一般不妊治療であるタイミング療法と人工授精の違いについて、それぞれどのような使用薬剤があるのか、漢方薬剤師の住吉忍さんが全6回にわたって解説します。前回は排卵までの流れについてお伝えしました。4回目の今回は排卵誘発に用いられる飲み薬についてです。

排卵誘発の第一選択薬「クロミッド」「セキソビット」

ここまで一般不妊治療の基礎知識や流れ、排卵について説明してきました。今回は、その際に用いられる薬のお話です。排卵を誘発させるために用いられる排卵誘発剤には、どのようなものがあるのかについて、経口剤を解説していきましょう。

そもそも排卵誘発剤は、視床下部、下垂体、卵巣系のどの部位で機能障害が起きていて、その機能を後押しする必要があるかを診断した上で、原因の除去と排卵の誘発を行うものになります。

第1度無月経や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状がある方は、内因性のエストロゲンの分泌は保たれているので、第一選択薬として「クロミッド(クロミフェン)」や「セキソビット(ジクロフェニル)」が用いられます。

クロミッドは卵胞ホルモンの働きを抑えて、下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)を増やすことで排卵を促す作用があります。ただし考慮すべき点としては、繰り返し使うことによって、子宮内膜が薄くなってしまう副作用があることです。セキソビットはクロミッドと似た経口の排卵誘発剤です。クロミッドと比べて排卵誘発の効果は弱いですが、副作用が少ない特徴があります。

これらの排卵誘発剤の作用を簡単に言うと、脳に「まだまだエストロゲンが足りないかな」といった錯覚を起こさせて促進させるものといった説明になります。エストロゲンが足りないと認識した脳は、視床下部からGn-RH(性腺刺激ホルモン)を分泌させます。そこで下垂体が反応し、卵胞の発育を促進させることになります。

不妊治療で使われる排卵誘発剤「レトロゾール」

もう1つ、排卵誘発剤として用いられる飲み薬にレトロゾールがあります。ノバルティスファーマのフェマーラが先発医薬品で、レトロゾールは複数の製薬会社が販売、製造する後発医薬品(ジェネリック医薬品)です。エストロゲンの合成を抑えることを目的とし、もともとは閉経後の乳がん治療に使われてきました。不妊治療では、この「エストロゲンの合成を抑える」作用を応用しています。

月経が始まると、脳は卵巣に卵胞を発育させるためにFSHを分泌します。FSHの分泌により卵巣ではエストロゲンを分泌するのですが、レトロゾールの服用でエストロゲンの合成が抑えられているので、エストロゲンの血中濃度は低下します。すると脳は「まだまだFSHが足りないのかな」と判断し、FSHの分泌を続け、排卵の誘発につながっていくわけです。

クロミッドとレトロゾールの比較

レトロゾールの血中半減期は45時間なので、クロミッドの5日~3週間と比べると短いです。しかし、レトロゾールはエストロゲンを枯渇させずに効く作用があるので、クロミッドのように子宮内膜が薄くなる副作用は出にくいと考えられています。

次回は、排卵誘発剤の注射やLHサージ誘起の薬についてです。
>>不妊治療で排卵誘発に用いる注射剤やLHサージを起こす薬

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