「卵子提供を受けて良かった」患者さんへの想い
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妊活お役立ち情報
2024.09.06
患者の声
「卵子提供を受けて良かった」患者さんへの想い#6|NUWA生殖医療センター
不妊治療を経験した東尾理子が、妊活に役立つアイテムや取り組みについて、関係者にさまざまな角度から質問を投げかけ深掘りしていく連載です。
今回は台湾最大規模のグループ生殖医療センター「NUWA生殖医療センター(以下、NUWA)」台北院の沈孟勳(シェン・モンシュン)副院長と東尾理子の対談を、全6回でお届けします。
前回は年齢が若くても卵子提供を受けるケース、また台湾での若い世代の妊活への意識について伺いました。
6回目は、不妊症専門医として活動する沈先生の想いについて迫ります。
- >>卵子バンクとは?台湾の卵子提供による不妊治療事情#1はこちら
- >>卵子提供での不妊治療。卵子数や胚盤胞到達率、妊娠率は?#2はこちら
- >>卵子提供での不妊治療。台湾のNUWA生殖医療センターの特徴 #3はこちら
- >>日本から台湾で卵子提供を用いた不妊治療を受けるまでの流れ #4はこちら
- >>年齢が若くても卵子提供を受ける人はいる? #5はこちら
台湾医師が語る日本人患者さんとのエピソード
東尾:卵子提供を用いた不妊治療で、沈先生は実際に日本人の患者さんを担当された経験もあると伺いました。日本人にどのような印象を持っていますか?
沈:私が担当した日本人の患者さんで、すでに出産、妊娠された方、現在治療中の方もいますね。日本人の患者さんとお話をしていて、いつも思うことがあるのですが、皆さまとても謙虚で礼儀正しくそして協力的です。
東尾:差し支えなければ、日本人の患者さんの不妊治療で印象に残っているエピソードなどを教えてください。
沈:そうですね。特に印象に残っているのが、私たちのもとを“卒業”されて、無事に妊娠された方です。
奥さまは、私たちが東京で開催した説明会に参加してくださいました。当時の年齢は44歳くらいで、日本では何度も体外受精治療をされていました。毎回採卵の状況が良くなかったようで、説明会の時にはもう台湾で卵子提供を受けるんだと決心されていたようです。
私たちはすぐに希望に合うドナーを探してマッチングをしました。
奥さまはとても良い方で、しっかりと私たちの指示を守ってくれました。その後、1回の胚移植で無事妊娠し、医師として私も責任を果たすことができました。
東尾:卵子提供を用いて1回の胚移植で妊娠されたんですね。他にもいらっしゃいますか?
沈:もう1人、その方も毎回採卵の状況が悪く、卵子提供での不妊治療に切り替えようか迷っているところでした。もう一度だけ最後に採卵をしてみることにしましたが、あまり状況が良くなく、卵子提供に踏み切りました。新鮮胚移植で試みたのですが、残念ながら妊娠に至らず、落ち込まれた様子でした。
しかしもう一度頑張ってみようと決められた奥さまと薬の使い方について話し合い、妊娠率のチャンスを上げるために2個移植できることを伝えました。最終的に2個移植することに決め、双子の赤ちゃんが誕生しました。
東尾:そうなんですね。渡航2回で移植までというと、日本人の患者さんも妊娠したその先に、沈先生とお会いする機会がなかなかないですが、うれしくてメールなどで連絡したくなりますよね。
沈:この仕事を始めて、数えてみると12~15年くらいになりました。不妊症専門医として、患者さまからの連絡や実際に赤ちゃんを連れて見せに来てくれることがあると、とてもうれしいですし、幸せに感じます。
専門医として卵子提供での不妊治療について思うこと
東尾:日本では卵子提供での不妊治療が認められておらず、まだまだハードルが高いと感じる傾向にあるのですが、沈先生自身は卵子提供についてどう思われていますか?
沈:患者さまを診ていると、よく考えるんです。もし私も卵子提供が必要だったらどんな気持ちだろうかと。台湾人でも日本人でも私たち東洋人にとっては、他人の卵子を使うことを受け入れられるかどうか、その覚悟を決めるのは容易なことではないと思います。
私の身体ではどうしても妊娠できないという状況で他人の卵子を使う、もちろん妊娠するのは私自身だけれども、そこには他人のDNAが入っている、そんな葛藤があると思います。
東尾:そうですね。第三者からの卵子提供での不妊治療を決めることは大変なことだと思います。皆さん時間をかけて決めるものなのでしょうか?
沈:患者さまによっては、これまでの治療に疲れ果てて、時間をかけずに受け入れる方もいます。また私が長らく不妊治療を担当した患者さまで、卵子提供による不妊治療の話をした時、受け入れられないという反応の方もいらっしゃいました。
彼女はその後、ご主人と夫婦ふたりの生活を選ばれました。不妊症専門医として、私は患者さまの治療過程に付き添いたいと思っています。患者さまがもう治療に疲れてしまったというときには、卵子提供のアドバイスをすることもあります。ですが、選択権はご夫婦にお渡します。
東尾:台湾の皆さんは、体外受精の治療をしながら、その延長に卵子提供を受ける治療選択があるという認識でいらっしゃるのでしょうか?患者さんはどのあたりで卵子提供に切り替えるのか、きかっけとなるタイミングがあれば教えてください。
沈:卵子提供による不妊治療については、レシピエント側もそこまでオープンではなく卵子凍結のようにあまり公に話すことはありません。台湾でも卵子提供での治療という選択肢についての知識は、ほとんどが医師から伝えられる情報になります。
医師がどのタイミングで伝えるかについては、卵巣機能がどうしても機能しない時、何度も体外受精治療に失敗した時、患者さまがやり切ったけれどもう無理だと感じた時などです。あとは患者さま自身がまだ頑張りたいと思っていても、私たちが客観的に診て難しいと判断する場合も、選択肢の1つとして卵子提供での不妊治療をお話することがあります。一度帰宅して、ご夫婦でゆっくり相談していただくことになります。
東尾:沈先生が不妊治療で患者さんと向き合う時に心掛けていることはどのようなことでしょうか?
沈:不妊症専門医として私たちは患者さまを助ける責任があります。NUWAのもう1つの特徴は医療的なことだけではなく、心のケアを大切にしている点です。不妊症という特別な治療ということもあり、私自身は患者さまの声をしっかり聴きたい、きちんと気持ちに寄り添った温かみのある医師でいたいと思っています。
妊活中、女性の心は脆くなっています。彼女たちに必要なのは、薬や専門医の助けだけではありません。家庭やご主人、義両親からのたくさんの重圧もあります。ですので、できる限りの心のケアもしたいと考えています。
東尾:最後に、日本で卵子提供による不妊治療を考えている方々にメッセージをお願いします。
沈:現在、不妊治療中の日本の患者さま、私たちができることは、あなたがもうどうしてもしんどいという時に、こういう道もあるんだという選択肢を提供することです。飛行機での来院は容易ではありませんが、できる限り効率よく最高の成功率で叶えられるように私たちは力を尽くしています。
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