知っていますか?タイミング療法、人工授精で使用する薬剤~黄体ホルモン編

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2024.05.29

不妊治療

知っていますか?タイミング療法、人工授精で使用する薬剤~黄体ホルモン編~

知っていますか?タイミング療法人工授精で使用する薬剤~黄体ホルモン編~

一般不妊治療であるタイミング療法と人工授精で処方される薬。排卵を誘起したり抑えたり、不妊の原因になっているホルモン値を調整したり、不足ホルモンを補ったりなど、治療段階によってさまざまな薬剤が使用されます。作用や副作用など自分で知っておくと安心ですよね。

黄体ホルモン剤について、薬剤師で国際中医専門員の住吉忍さんが解説します。

不妊治療の使用薬は治療段階でさまざま

不妊治療では、基本検査で特に異常がなければ、年齢にもよりますが、タイミング療法からスタートするケースが多くなります。医師が排卵日を予測して夫婦生活をもっていただくのに最適なタイミングを提案する方法です。人工授精法は、女性側の排卵の時期に合わせて洗浄濃縮したパートナーの精子を子宮内に注入する方法です。

どちらも自然妊娠に近い方法で受精から妊娠までの過程は同じですが、精子が入る場所に違いがあります。タイミング療法が膣から子宮に到達するのに対して、人工授精法は直接子宮内に注入します。

タイミング療法や人工授精法については、こちらでも解説していますのでご覧ください。

 

>>使用薬剤を知っておこう#1 タイミング療法、人工授精の基礎知識を解説こちら

 

不妊治療で使用する薬には、排卵を誘発したり、誘起させたりする他、性交渉や人工授精の実施後に黄体ホルモンを補充することで子宮内膜の着床環境を整えるものもあります。

 

今回は、この黄体ホルモン剤について解説していきます。処方される時期の目安としては、月経14日目以降です。

黄体ホルモンは受精卵の着床や妊娠維持に大切

黄体ホルモンプロゲステロン)は、排卵後に卵胞から変化した黄体から分泌。子宮内膜を充実させ、受精卵が着床しやすい環境にして、着床後も分泌を続け妊娠を維持するために重要な役割を担います。この期間は体温が上昇する高温期(黄体期)と呼ばれます。

 

黄体補充療法で使用される黄体ホルモン剤

この黄体ホルモンの分泌が十分ではない場合、黄体補充療法として用いられるのが黄体ホルモン剤です。飲み薬、注射剤、座薬剤があります。それぞれを紹介しましょう。

黄体ホルモンは受精卵の着床や妊娠維持に大切

黄体ホルモン剤の飲み薬でよく使われる製剤には、次の3つがあります。

・ルトラール(クロルマジノン)

・デュファストン(ジドロゲステロン)

・プロベラ、ヒスロン(メドロキシプロゲステロン)

いずれも合成黄体ホルモン剤です。高温期を安定させる作用があります。製剤によっては子宮内膜保護作用の強弱が異なるなどの特徴があります。副作用として、吐き気や嘔吐、不正出血、乳房痛、頭痛など。特に飲み始めてすぐの時期に副作用が出る人が多い傾向です。

 

黄体ホルモン剤の注射剤

黄体ホルモンの注射剤は筋肉注射になるため、多少の痛みを伴います。飲み薬よりも即効性が期待されるものが多いです。次の2つがあります。

プロゲステロン製剤(プロゲデポーなど)

hcg

hcgはゴナドトロピン製剤で、黄体ホルモンそのものではなく、黄体を刺激して黄体機能を活性化させることで黄体の形成を促すものです。

 

黄体ホルモン剤の膣座薬

薬剤を膣内から運んでいくので、子宮内膜への影響がより直接的で副作用が少ない特徴があります。薬代は高額です。

プロゲステロン製剤(ウトロゲスタン、ルティナス、ルテウムなど)

さまざまな名前の薬がありますが、成分は同じです。薬によって1日の摂取量が異なるので不思議に思うかもしれませんが、学会報告では、指示された摂取量を守って使っていれば、妊娠率や妊娠継続率はどれを用いても変わらないと言われています。

高温期を安定させる卵胞・黄体ホルモン剤

番外編となりますが、卵巣を休ませる薬についても紹介します。

卵胞・黄体ホルモン剤という飲み薬です。卵胞ホルモンと黄体ホルモンの混合製剤で、両方の作用で高温期を安定させます。

・プラノバール(ノルゲストレル・エチニルエストラジオール)

高温期に排卵がうまくいかず、卵巣を休ませて1回リセットして黄体期をしっかり作りたい時などに使用します。服用するタイミングによって効果が変わる薬なので指示を守って服用しましょう。

以上、黄体ホルモン剤には飲み薬や注射、膣座薬があること、また高温期を安定させるためには卵胞・黄体ホルモン剤が用いられることについて解説しました。

黄体ホルモン剤の商品名と関係する効能や効果

ここからは、薬の商品名(一般名)、関係する効能効果についてまとめていきます。黄体ホルモンの補充以外に、周期調整や早発排卵の抑制で用いられることもありますので、参考にしてください。

 

〇黄体ホルモン剤

・ルトラール(クロルマジノン):黄体補充、周期調整

・デュファストン(ジドロゲステロン):黄体補充、周期調整、早発排卵防止

・プロベラ、ヒスロン(メドロキシプロゲステロン):黄体補充、早発排卵防止

・ウトロゲスタン膣用カプセル、ルティナス膣錠、ルテウム膣用坐剤(プロゲステロン):黄体補充

・プロゲデポー筋注(プロゲステロン):黄体補充

〇ゴナドトロピン製剤

hcg(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン):黄体補充、排卵誘発

〇卵胞黄体ホルモン剤

プラノバール(ノルゲストレル・エチニルエストラジオール):周期調整

 

周期療法における漢方薬の使い方について

最後に漢方の周期療法に関して解説します。

漢方医学の周期療法とは、ホルモン周期を全体的に整えていくために、自然な形で手を加え、基礎体温などを調整していく方法です。排卵後に黄体ホルモンがしっかり働くようにサポートしていきます。

例えば、排卵後の高温期に体温が下がってしまう場合、何かが不足している、巡っていないという捉え方をします。

高温期の安定につながるように排卵前の低温期に卵胞をしっかり育てるようにサポートしたり、低体温には熱を含むエネルギーがある処方をしたります。

また高温期に体温が上がったり下がったりして安定しない場合、漢方医学では気(エネルギー)の巡りが悪いと考え、巡りを良くする処方をします。

情緒不安定や頭痛、不眠といったPMS(月経前症候群)も、気の巡りが一因です。

高温期は不調を感じやすい時期なので、PMS対策を含めて漢方を活用していただくのも、着床の時期を安心して乗り切る手段になると思います。漢方の専門家にご相談ください。

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本日お話をおうかがいした方

ウィメンズ漢方

薬剤師/国際中医専門員

住吉 忍

相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。

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