知っていますか男性不妊で使われる薬。薬剤師が徹底解説
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妊活お役立ち情報
2024.06.26
不妊治療
知っていますか男性不妊で使われる薬。薬剤師が徹底解説
不妊の原因は女性だけではありません。乏精子症やED(勃起不全)など、男性側の不妊原因もさまざまあります。男性の不妊治療にはどんな薬が使われているのでしょうか。西洋と東洋医学(中医学)の両側面から、薬剤師で国際中医専門員の住吉忍さんが解説します。
男性不妊は、主に精子の製造過程での機能障害
まずカップルで不妊治療を始めるにあたって、男性側も初期の段階でしっかりと検査を行いましょう。検査は、女性が不妊治療を行う医療機関を介したクリニックや泌尿器科でもできます。
男性不妊は、主に精子の製造過程での機能障害と考えられています。男性は、思春期の二次性徴期から年齢に関係なく、精子を新しく作り出すことができます。これは、生まれ持った卵子を使い切る女性と大きく異なる点です。
精巣内にある精細管には、精子のもととなる細胞があり、ここで男性ホルモンなどの影響を受けて約70日間かけて精子が作られます。一度の射精で放出される精子は約3億個といわれていますが、子宮に到達できるのは数個ほどです。
精子の質や量に影響する5つの因子とは?
精子の質や量には、5つの因子が影響すると考えられています。
精子にとって心地よい温度がある
1つめは温度です。精子は、体温よりも低い33度前後が適温といわれています。下着であれば、ブリーフよりもトランクス、体型は肥満より適正のほうが望ましいといわれています。
精子は電磁波に弱い
2つめは電磁波です。Wi-Fiなど通信環境を、完全にシャットダウンするのは難しいですが、膝の上にパソコンをおいて作業することは、できるだけ避けたほうが良いでしょう。
精子に喫煙は大敵
3つめは喫煙です。タバコを吸う習慣は今すぐ見直していただけたらと思います。
精子のために注意すべき医薬品がある
4つめは内服している薬です。AGA治療薬を服用されている場合、性機能障害を起こすことがあると言われています。影響がないという話もありますが、医師から不妊治療中はAGA治療を休むように指示が出ることもあります。
持病があると精子に影響
5つめは持病です。とくに高血圧の方、大人のおたふく風邪や精巣炎も精子の量や質に影響が出ることがあるので、検査をしっかり受けていただくのが大事になります。
男性不妊の原因と治療
男性不妊の原因に、無精子症や乏精子症、精索静脈瘤、ED、射精障害などがあります。EDや射精障害の場合は、不妊治療で人工授精や体外受精もひとつの選択肢になってくるでしょう。
こういった男性不妊について、西洋医学は、一つひとつの症状に対応する治療を行っていきます。一方で東洋医学の漢方では、個々の体質によって対応し、体質改善によって少しでも症状が出なくなることを目標としています。
乏精子症の治療で使われる薬について
ここからは男性不妊の乏精子症EDについて、使用される薬と共に説明していきましょう。
乏精子症とは、精子の数が一般的な数値よりも少ない状態です。この場合に処方される飲み薬にはクロミフェンがあります。販売名はクロミッドで、排卵誘発剤として女性の不妊治療に使われることでも知られています。
脳下垂体系の内分泌異常による造精機能障害が疑われる方に使います。エストロゲンを低下させ、精巣内のテストステロンの上昇によって精子の産生を促すことが目的です。
EDの原因と使用する治療薬について
EDとは、「勃起機能の低下」を意味し、性交時に十分な勃起が得られないか、または維持できない状態を言います。
EDの原因には、さまざまなことが考えられます。まずは加齢です。血管の弾力低下をきたし、硬化が進むために勃起不全が起こりやすいと言われています。また高血圧や糖尿病など生活習慣病による動脈硬化や血管の損傷、神経伝達の過程で生じた何らかの器質的疾患、自律神経の不調につながるストレス、降圧薬や抗うつ剤などの薬剤、性欲や精子の製造などにかかわる男性ホルモンの働きなどが挙げられます。
特にストレスは、忙しさや日常的な疲れのほかに、例えば妊活中における排卵日のプレッシャーも考えられます。その日に頑張らなくてはいけないということが強いストレスになって、その時だけできないという方もいます。
EDの飲み薬、偽物も出回っている?!
EDの飲み薬には、シルデナフィルがあります。販売名はバイアグラで、国内で最も早く認可された薬です。バルデナフィルは販売名レビトラで、バイアグラよりも食事の影響を受けにくいことで知られています。
タダラフィルは販売名シアリスで持続時間が長いのが特徴です。それぞれの方の症状に合わせて処方されますが、高血圧の方、心筋梗塞の既往歴のある方は投与できない場合があります。医師との診察時に既往歴をしっかりと伝えましょう。
EDの飲み薬は偽物が出回っていますので、注意が必要です。体のケアをすることで精子の状態に反映されてくるのは、一般的に70日〜3か月程度はかかるといわれています。
男性不妊に対する漢方薬の3つのアプローチ
最後に、男性不妊への漢方薬のアプローチについて解説します。繰り返しになりますが、漢方では体質改善によって少しでも症状が出なくなることを目指しています。主に次の3つがあります。
1つめは、EDやその他勃起障害など性機能障害の要因に応じた対策です。加齢、ストレス、男性ホルモンなどを改善する漢方薬を使います。
2つめは、精子の運動率の改善、量や濃度の増加、奇形率の改善の対策です。基本的な体質の改善と「補腎」を優先します。中医学では、五臓六腑の「腎」が生殖を司ると考えられているので、腎の働きを補う処方をします。
そして3つめは、ストレスや喫煙、肥満など生活習慣が関係している場合の対策です。生活習慣に関わる不調の改善から取り組んでいきます。
漢方薬が効果的な男性の体質のタイプ
例えば、漢方薬で効果的な男性の体質タイプとして、「陽虚体質」が挙げられます。特徴としては、寒がり、精液の粘度が薄い、精子の運動率や数が少ない、体力の衰えを感じる、抜け毛や白髪が増える、足腰がだるいなどです。近年は男性の冷え性が増えている印象があります。
また「痰湿(湿熱)体質」は、溜め込みやすい体質の方で、老廃物が溜まっている状態をいいます。食べ過ぎやストレスも溜め込んでいる方も多いです。肌荒れが起きやすい、精液の白血球の数が多い、運動率が良くない、陰部のかゆみを感じやすいなど。溜め込んでいる上に、さらに熱を帯びて不調をきたしやすい特徴があります。そのような状態を改善していく処方をしていきます。
このほか、ストレスフルでイライラしてしまう気滞タイプ、のぼせや乾燥が強い陰虚タイプなど体質に応じた漢方薬もあります。上手に活用していきましょう。
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本日お話をおうかがいした方
ウィメンズ漢方
薬剤師/国際中医専門員
住吉 忍
相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。
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