知っていますか?ピルの種類や役割

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2024.08.21

不妊治療

東洋医学

知っていますか?ピルの種類や役割

ピルは、一般的には排卵をコントロールし、避妊を目的に用いられます。しかし近年さまざまな種類のピルがあり、月経痛やPMSの軽減、にきびや肌荒れ予防などの用途でも活用されます。ピルの種類や特徴について、薬剤師で国際中医師の住吉忍さんが解説します。

ピルとは。将来の妊娠にマイナスな影響はあるの?

ピルは、女性が自らの意思で行える避妊法として普及した経口避妊薬です。女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が配合されています。服用することで、視床下部に作用して、FSH(卵胞刺激ホルモン)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制し、排卵が起こらなくなります。

避妊だけではなく、ピルは不妊治療中に卵巣を休ませる目的で使われることもあります。この他、月経痛の軽減や月経前の不愉快な症状(PMS)の軽減、最近ではニキビや肌荒れ予防などの効果を目的にピルを服用する方も増えています。

よく「将来の妊娠に向けて、ピルは服用しないほうが良いですか?」と質問を受けることがあるのですが、服用を中止すれば回復するので安心してください。

ピルのタイプや種類とは

ピルには、主に21日間飲んで7日間休薬するタイプと、28日間(うち7日間はホルモンを含まない錠剤)飲み続けるタイプがあります。どちらのタイプでも効果に差はありませんが、毎日飲み続けるタイプのほうが、飲み忘れを防ぐには良いかもしれません。


また、含まれている女性ホルモンの量で低用量ピル、中用量ピル超低用量ピルに分けられます。それぞれの特徴や処方される目的が異なりますので、次に具体的に解説していきたいと思います。

低用量ピルとは。処方目的と治療で使われる薬

低用量ピルとは、主に避妊や月経困難症治療を目的に処方されます。低用量ピルは、1周期の女性ホルモンの配合の仕方で「一相性」と「段階性」に分けられます。

一相性は、すべて同量のホルモンが配合されているものを言い、服用中にホルモンの変動が少ないのが利点です。初めてピルを服用する人やホルモン変化に敏感な人には向いています。段階性は、例えば3段階でホルモン量が変わる「三相性」などがあり、ホルモン変化に合わせて段階的に配合量を変えているものです。より自然に近い月経周期を作ることができます。

具体的に 用いられる薬については、下記の通りです。

▶シンフェーズ(ノルエチステロン)

三相性。28錠タイプです。月経開始後の最初の日曜日から飲み始めます(サンデースタート)。週末に生理が重ならない、飲み始めが常に固定されているので飲み忘れを防げるメリットがあります。

▶アンジュ、トリキュラー(レボノルゲストレル)

三相性。1シートにホルモン配合量が異なる3種類の薬が入っています。自然な生理周期に近づける特徴があり、副作用として不正出血が起こるリスクが他のピルよりも低いと言われています。後発品に「ラベルフィーユ」があります。

▶マーベロン(デソゲストレル)

一相性。男性ホルモンを抑える作用のあるデソゲストレルが配合され、ニキビ改善などの肌荒れにも効果が期待できます。後発品に「ファボワール」があります。

中用量ピルとは。処方目的と治療で使われる薬

中用量ピルは、子宮筋腫子宮内膜症の治療、月経不順や月経移動を目的として処方されることが多いです。低用量ピルよりも、卵胞ホルモンの含有量が多いので、吐き気や頭痛などの副作用が出やすいと言われています。具体的に治療で使われる薬は次の通りです。

▶プラノバール(ノルゲストレル0.5㎎・エチニルエストラジオール0.05㎎)

中用量ピルでノスエチステロンとエチニルエストラジオールを含むホルモン製剤です。主に月経不順、無月経、月経前症候群の治療に使用されます。

▶ソフィアA(クロルマジノン2㎎・エチニルエストラジオール0.05㎎)

クロルマジノンは抗アンドロゲン作用があるため、特定の月経関連の症状以外にも、ニキビや多毛症の改善に役立つことがあります。

超低用量ピルとは。処方目的と治療で使われる薬

超低用量ピルは、基本的に月経困難症や子宮内膜症の治療目的として使われるので、保険適用となります。低用量ピルよりも卵胞ホルモン含有量が少ないので、低用量ピルより副作用が出にくいとされますが、個人差があり一概には言えません。具体的には次のような薬があります。

▶ルナベルULD

一相性。月経困難症の治療目的で保険適用が可能です。21日錠剤のタイプです。後発品に「フリウェルULD」があります。

▶ヤーズ(ドロスピレノン)

一相性。抗アンドロゲン作用があるので、多毛症や皮膚症状に良いです。抗ミネラルコルチコイド作用でむくみにくい特徴もあります。月経困難症治療目的で保険適用が可能です。

▶ヤーズフレックス

ヤーズの特徴を持ちつつ、120日の連続服用が可能なため、大幅に月経の回数を減らすことができます。

ピルの副作用って?飲んではいけないケースとは?

ピルの主な副作用には、吐き気、嘔吐、乳房痛、頭痛、不正出血などがあり、主に卵胞ホルモンが原因であることが多いです。これらのほとんどの副作用は、飲み始めに症状が出て、飲み続けていくうちに治まっていきます。

ピルの重い副作用として血栓症が挙げられますが、低用量ピルではホルモン量をできる限り少なくしているため、発生する可能性は低いと言われています。

ただし、乳がんや子宮がん、血栓症になりやすいなど疾患や身体の状態によってはピルを飲んではいけない、または注意して飲まなければならない場合もあるので、専門医に相談しましょう。

ピル服用中に漢方薬が副作用を軽減することも

吐き気や頭痛、むくみなどピルの副作用を軽減するために、漢方を併用することがあります。漢方は、ピルを服用で起こるホルモンの変動によって生じるアンバランスに慣れるまでの補完的な役割を担います。

よく使用される漢方薬の一部を紹介しましょう。

・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

血行を良くし、冷えやむくみを改善するために使用

・加味逍遙散(かみしょうようさん)

ストレスや精神的な不安を緩和し、ホルモンバランスを整える効果も

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

血行を促進し月経不順や月経痛を改善

漢方薬は、ピル服用中のストレスの軽減や心身の安定、血行を促進して冷えを改善、代謝アップのサポートも期待できます。

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本日お話をおうかがいした方

ウィメンズ漢方

薬剤師/国際中医専門員

住吉 忍

相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。

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