甲状腺ホルモン低下は卵胞発育に影響も。どんな薬を使うの?
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妊活お役立ち情報
2024.11.20
基礎知識
東洋医学
甲状腺ホルモン低下は卵胞発育に影響も。どんな薬を使うの?
全身の臓器に作用し、代謝を司るという大切な働きを持つホルモン「甲状腺ホルモン」
この働きが低下すると、実は卵胞発育にも影響をすることをご存じでしょうか。
また、その甲状腺ホルモン低下の症状は、女性が日々感じる意外なものが多く、妊活や不妊治療をしている方はいち早く知っておいて損はありません。
今回は「甲状腺疾患」や、治療で使われる薬剤について、薬剤師で国際中医師の住吉忍さんが解説します。
甲状腺ってなに?甲状腺ホルモンが少ないと卵胞発育への影響も。
まず、甲状腺疾患について説明します。甲状腺は、全身の臓器に作用して代謝を司るという大切な働きを持つホルモンです。
そして甲状腺ホルモンが少ないと、卵胞が成長しづらい、とも言われています。
甲状腺は首の前面に位置していて、甲状腺ホルモンを生成分泌します。
このホルモンは体の代謝だけではなく、成長、発達、エネルギー消費など多くの体の機能に影響します。
また、甲状腺ホルモンは脳下垂体から分泌されていて、甲状腺ホルモンの生成を調整する、というような働きも持っています。
なお、甲状腺機能の最も信頼性の高い指標は、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)という値です。TSHが高ければ甲状腺機能が低く、TSHが低ければ甲状腺機能が高い、という評価となります。
甲状腺機能が低下するとどうなる?どんな症状がある?
甲状腺機能が低下する「 甲状腺機能低下症」についてご紹介します。甲状腺ホルモン値が低い、つまりTSHが高いという状態ですね。
これは排卵障害の割合がちょっと高くなってしまうことがあります。 また甲状腺抗体があるかないかに関わらず、TSHが高いと受精率の低下や流産率が上がる、というような報告もあります。
甲状腺ホルモンの数値が正常の範囲内で高いという場合には、潜在性の甲状腺機能低下症と言われる症状になります。国内調査では健康な方の4%から20%がこういった状態になるといわれており、 特に女性が多く、 また年齢が上がるにつれて増加していく、といわれています。
甲状腺機能低下によって、疲労感、むくみ、記憶力低下まで?!
甲状腺機能低下による症状としては、無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作が緩くなる、記憶力低下、あとは便秘などが象徴として挙げられます。
続いて挙げられるのが、甲状腺機能亢進症です。これはバセドウ病とも言われます。
TSH受容体に対する抗体が体内で作られ、TSH受容体が刺激し続けられるというような状態になります。その結果、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることで起こります。
この状態になると、排卵障害が起こりやすくなりますし、流産、早産、あと妊娠高血圧というような状態が生じやすくなります。
症状としては動悸、また体重の減少、指の震え、暑がり、汗かき、血圧が上がることなどが挙げられます。
甲状腺機能低下症に対する治療薬はどんなものがある?
甲状腺機能低下症の治療で使われるお薬としては「チラージン」が非常によく使われます。
これは甲状腺ホルモンであるT4の製剤になります。内服量に関しては50~150㎍(マイクログラム)くらいが目安で、もうちょっと少なく12.5㎍とか25㎍といった量で飲まれる方もいらっしゃいます。
服用は通常、すごく少量から開始します。そして少しづつ増やしていくことで、どれぐらいの量が適切な量なのか検査し、ちょうど良いところでストップする、というようなやり方を取られることが多いです。
甲状腺機能亢進症の場合は、「メルカゾール」 「チラウジール」「プラウジール」というようお薬が使われます。抗甲状腺薬と呼ばれるお薬です。
(甲状腺機能の状態によっては、手術が必要な場合もあります)
甲状腺機能低下症に対する漢方薬って?
甲状腺機能低下症の治療は、基本的には「甲状腺ホルモンの量を調整する」ことが一番大切な取り組みです。これはホルモン剤の投与で解決することもありますが、実はお薬を飲んでもなかなか症状が改善しないということもあります。
こういった場合には、甲状腺機能が低下したことに伴って発生する不調へのアプローチとして、漢方薬を使うこともあるのです。よく使われるのは次のような漢方薬です。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)
- 人参栄養湯(にんじんえいようとう)
ただし、これらの漢方は「甲状腺機能が低下している」から処方されるというよりは、あくまでも「甲状腺機能が低下している結果として出てくる不調に対するケア」として処方されます。
たとえば補中益気湯であれば、「凄く疲れやすい」「 体力・免疫力が落ちてしまっている」というときに使います。
八味地黄丸であれば下半身の不調、たとえば「むくみやすい」「下半身の冷えがすごい」 ことなどへのケアとして使われます。
また、人参栄養湯は「気血を補う」「体力を向上させる」ためであってり、「疲れやすい」「寒気がする」ようなときの改善に適しています。
ホルモンの安定を図るために処方されることもありますが、こういった場合は「症状の原因は何なのか」まで見極めて使っていく必要があることも知っておきましょう。
つづいて甲状腺機能亢進症に使用される漢方薬についても、代表的なものを紹介します。
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 温胆湯(うんたんとう)
竜胆瀉肝湯は「肝火」を抑える(鎮静させる)効果があり、その結果として「イライラ感」「不安」「心悸亢進」などの症状が抑えられます。
また柴胡加竜骨牡蛎湯は、基本的に肝鬱気滞というような「肝の不調」といった症状に使われます。漢方薬において「肝」は自律神経系を司るというような考えがあり、それに従って自律神経のバランスを整えるような手法ともいえます。
温胆湯は分かりやすくいうと「体の老廃物」を外に出すような働を持っています。気の状態を改善したりとか、痰湿を取り除いたりする効果が期待されます。(痰湿とはむくみが更に発展したようなものです)これにより、「不安感」「イライラ感」などの不調も取り除いてくれるものです。
また、これらもホルモンの安定を図るための手法として使うこともあります。
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本日お話をおうかがいした方
ウィメンズ漢方
薬剤師/国際中医専門員
住吉 忍
相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。
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