早発卵巣不全(POI)とは?~診断基準と治療法~

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2024.11.27

不妊治療

基礎知識

早発卵巣不全(POI)とは?~診断基準と治療法~

40歳未満で卵巣機能が低下し、無月経になる早発卵巣不全(Premature Ovarian Insufficiency:POI)。卵巣内に残っている卵子が極めて少なくなっているため排卵が停止し、妊娠が難しくなる状態を指します。では、どのような治療法があり、どのような薬が使用されるのでしょうか。薬剤師で国際中医専門員の住吉忍さんが詳しく解説します。

早発卵巣不全(POI)の概要と種類について


早発卵巣不全(POI)は、40歳未満の女性に発生する疾患で、卵巣機能が低下し、卵巣機能が低下し、無月経または不規則な月経が続く状態を指します。特に30歳未満の女性では0.1%、40歳未満の女性では1%に見られる稀な疾患で、POIは続発性無月経の原因の約10%を占めます。


POIには2つのタイプが存在します:
 1. 早発閉経タイプ:卵巣機能が完全に停止し、永久に月経が止まるタイプ
 2. 不定期排卵タイプ:卵巣内に少数の卵胞が残り、稀に排卵が起こるタイプ

早発卵巣不全の診断基準とは?


POIの診断は、ホルモン検査により行われます。一般的な診断基準は以下の通りです:
 ● 40歳未満で、無月経が3~6か月以上続いている
 ● FSH(卵胞刺激ホルモン)が高値(40mIU/mL以上)
 ● エストロゲン(エストラジオール)が低値(15~30pg/mL以下)

FSHは、卵胞の発育と成熟を促すホルモンです。通常、卵巣の反応性が良好であれば、少量のFSHで卵胞が成熟します。しかし、卵巣機能が低下すると、脳下垂体がより多くのFSHを分泌しようとし、その結果、FSHの数値が高くなります。したがって、FSHの数値が高い場合、卵巣機能が低下していることが示唆されます。

また、卵巣で生産される抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、残っている卵子の数を推測する指標となり、低値の場合、卵巣予備能が低下している可能性があり、早発卵巣不全(POI)の診断に役立ちます。

早発卵巣不全の治療法、どんなものがある?


妊娠を希望する場合

POI患者が妊娠を希望する場合、エストロゲン療法が行われ、エストロゲン欠乏状態を改善させ、ホルモン値を確認しながら、体外受精調節卵巣刺激法といった生殖補助医療が取り入れられます。免疫異常が関与している場合は、副腎皮質ステロイドを併用することもあります。

妊娠を希望しない場合

妊娠を希望しない場合でも、無月経を放置し、エストロゲン欠乏が続くと、骨密度の低下や動脈硬化、心血管疾患のリスクが高まります。

このため、ホルモン補充療法(HRT)が推奨され、特に「カウフマン療法」が行われます。この治療法は、エストロゲンとプロゲステロンを周期的に補充し、平均閉経年齢の50歳前後まで続けることが一般的です。

新しい治療法:PRP卵巣注入療法とは?


PRP卵巣注入療法
は、最近注目されている治療法で、患者自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を卵巣に注入する方法です。


PRPには成長因子が含まれ、組織の修復や再生を促します。この治療は早発閉経の方や、高齢で妊娠を希望している方、体外受精の反応が悪い方に対して適用されますが、効果には個人差があります。研究段階の治療法ではありますが、今後の選択肢として期待されています。

早発卵巣不全に対する中医学によるアプローチ


中医学においては、早発卵巣不全に対する治療は、体全体のバランスを整えることに重きを置きます。以下の4つの側面からアプローチします。

1. 卵巣機能への働き
 中医学では、「腎」は生殖機能を司るとされています。
 これは西洋医学での「腎臓」とは異なり、生殖や成長、発育、老化に関わる幅広い概念です。
 補腎薬を用いて、腎の機能を補強し、卵巣への血流を促し、働きを活性化すると考えられています。
 これにより、卵巣本来の機能を回復することが期待されます。

2. ホルモンバランスの調整

 「肝」は気の流れを調整し、ホルモンバランスにも影響を与えると考えられています。
 肝機能を整えることで、ホルモンバランスが回復し、正常な月経周期が取り戻せる可能性があります。

3. 月経周期の回復

 血行不良が月経不順を引き起こすことがあるため、血流の改善も重要です。
 子宮や卵巣への血流を促進する養生法を取り入れ、月経周期の回復を図ります。

4. 免疫機能の強化
 
 免疫機能のバランスが乱れると、卵巣機能にも影響が出ます。
 漢方薬には、免疫機能を調整し、自然治癒力を高める作用が期待されるものがあります。
 ただし、免疫機能は高すぎても低すぎても問題となるため、バランスの取れた調整が必要です。

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本日お話をおうかがいした方

ウィメンズ漢方薬剤師 / 国際中医専門員 

住吉 忍

相談薬局で生まれ育ち、薬剤師となる。自身も不妊治療を経験し、妊活、女性のヘルスケアを専門に対応するため、ウィメンズ漢方(https://ninkatsu-ayumi.com/facility/1330/)創業。複数の不妊治療専門クリニックの漢方外来を担当し、西洋医学の不妊治療に適した漢方処方の提案を得意としています。

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