【元胚培養士が解説】不妊治療の先進医療「SEET法」とは?流れや効果・費用をわかりやすく説明します!
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妊活お役立ち情報
シリーズでお届けしている不妊治療の先進医療。今回は、「SHEET法」について、元胚培養士の塚田寛人さんがお届けします。
これまでご紹介してきた先進医療①先進医療②先進医療③では、「顕微授精(ICSI)」など、受精に関わる技術についてお話ししてきました。 受精とは、卵子と精子が出会い、受精卵となって胚盤胞へと成長していく過程を指します。しかし、たとえ良好な胚盤胞が得られたとしても、子宮内膜に着床しなければ妊娠は成立しません。
そこで今回は、着床に関わる先進医療技術「SEET法(子宮内膜刺激術)」について、わかりやすくご紹介します。
子宮内膜刺激術(SEET法)とは?
まずSEET法を理解するために、自然妊娠では卵子と精子がどのように出会い、育ち、着床するかを簡単に見てみましょう。 以下の図は、左右の卵管それぞれで異なるプロセスを表しています。
左側:精子の移動の流れ
右側:卵子と精子が出会ってからの流れ
自然妊娠の流れ
① 性交後、腟内に射精された精子が泳ぎ始め、子宮を通って卵管内へと到達。さらに、卵管采(らんかんさい)方面に向かって移動。
② 卵巣から排卵された卵子は、卵管采によってキャッチされ、卵管内に取り込まれる。
③ 卵子と精子が卵管内で出会い、受精。
④ 受精卵は成長しながら、卵管内を通って子宮へと移動。
⑤ 胚盤胞まで成長したのち、子宮内膜に着床することで妊娠が成立。
この中で、SEET法は「④ 受精卵は成長しながら、卵管内を通って子宮へと移動」に注目した治療法です。

胚(はい)が成長するためには、栄養が必要です。そして人間の体と同じように、栄養を取り入れたら、老廃物も排出する必要があります。
このとき、老廃物とともに、胚から「シグナル(合図のようなもの)」が出ていると考えられており、そのシグナルが子宮内膜に働きかけ、「もうすぐ胚がくるから、受け入れる準備をしてね」と知らせているのではないかと考えられています。
余談にはなりますが、体外受精で利用されている胚の培養液は、この卵管の組成を研究され作られました。そして、現在の培養液には、酸化ストレスを軽減する抗酸化剤、培養液に異常がでたときに色で判断するための薬、抗生剤などが含まれるものもあり、より胚の成長に寄り添った形に進化してきています。
しかし、どれだけ胚の培養技術が進歩しても、胚が子宮に出す“着床のためのシグナル”を再現することまではできていません。そこで注目されたのが、実際に胚を育てていた培養液そのものです。
胚を育てたあとの培養液には、胚が出していたシグナルや、着床を助ける因子が含まれている可能性があります。この培養液を活用すれば、子宮内膜が胚を迎える準備(=着床の窓)を促す効果があるのではないかと期待されました。
そこで開発されたのがSEET法(シート法)です。
通常、排卵後5日目前後に訪れ、この時期に子宮内膜が受精卵の受け入れに最も適した状態になると知られています。また、個人差があり、着床の窓がずれると、良好な胚でも妊娠に至らないと考えられています。
SEET法では、胚を子宮に戻す(移植する)2〜3日前に、胚の培養に使った培養液を子宮の中に注入します。これにより、子宮内膜に「もうすぐ胚が来るよ」というシグナルを届け、より着床しやすい環境を整えることを目指します。
子宮内膜刺激術(SEET法)の流れ

まず知っておいていただきたい大切なポイントがあります。それは、培養液は「生もの」に近いため、常温では保存できないということです。
つまり、採卵した次の周期に移植をする場合には、培養液も凍結保存しておく必要があります。このため、SEET法を先進医療として保険診療と併用する場合は、採卵の時点で「SEET法を希望する」ことが前提となります。
採卵の段階で希望していなかった場合、あとからSEET法を行うことは原則できません。また、胚盤胞にいたっていない初期胚の移植の場合も同様に、SEET法は行えません。
SEET法の実際の手順は以下の通りです。
- 1、受精卵を胚盤胞(受精から5〜6日目の状態)まで育ててから凍結保存します。
同時に、胚の培養に使用した培養液(SEET液)も一緒に凍結保存します。 - 2、次の周期以降の、凍結していた胚盤胞を移植する2日前にSEET液を解凍し、カテーテルを使って子宮内に注入します。
- 3、SEET液を注入した2日後に、凍結していた胚盤胞を融解して子宮に戻します。
あくまでも、排卵した後の2~3日間の間にSEET液を注入する方法ですから、自然周期やホルモン補充周期のどちらにも、SEET法は利用することができます。
SEET法で使われる培養液は、細くて柔らかいチューブ(カテーテル)を使って注入されます。そのため、痛みはほとんど感じない方がほとんどです。
また、注入する液体の量は、1回につきおよそ20~30μL(マイクロリットル)程度。1mLは1000μLなので、ごくわずかな量です。施設によって注入量に若干の違いはありますが、身体への負担は少ない治療といえるでしょう。
子宮内膜刺激術(SEET法)の適応
子宮内膜刺激術(SEET法)を保険診療と併用する場合は、以下の条件を満たす必要があります。
不妊症と認められた方のうち、胚移植を必要とされる方となっており、他の先進医療に比べると、適応条件はとてもシンプルです。
施設によっては、初回の体外受精から提案することもあり、体外受精治療を受ける方全員が対象となります。
ただし注意点として、SEET法では胚移植の2日前に培養液を子宮内に注入しますが、その後、胚を戻すタイミングで子宮内膜の厚みが施設の基準に達していない場合は、その周期の凍結胚移植がキャンセルになってしまうこともあります。
子宮内膜刺激術(SEET法)の効果

子宮内膜刺激術(SEET法)は、妊娠率、着床率の向上が期待されています。
ただ、「効果があった」という報告もあれば、「効果がはっきりしなかった」という報告もあり、現状では賛否両論あると言えます。
また、保険診療の元となった生殖医療ガイドライン(日本生殖医学会編)には、「現段階では国際的なエビデンスはなく、胚移植の際のルーチン治療として選択されることは難しいと思われる」と書かれているように、全ての人に一律におすすめできる治療法とはまだ言えない状態と言えます。
しかし、実際にSEET法を導入している施設も少なくなく、
・何度か移植を繰り返しても妊娠に至らない方
・子宮内膜の状態が安定しにくい方
このような状況の方に対して、医師が症例を丁寧に見極めた上で、選択肢の一つとして提案されるケースもあります。
子宮内膜刺激術(SEET法)の費用
技術にかかる費用は、クリニックによって設定が異なり、中には培養液の凍結と融解それぞれで料金が発生する施設もあります。
合算料金の目安としては、
25,000~33,000円
とされており、施設によってはそれ以上の費用がかかることもあります。受診予定のクリニックのホームページなどで、事前に費用を確認しておくと安心ですね。
●SEET法が受けれるクリニックはこちら(2025年度妊活の歩み方アンケート結果より)
実際の実施の有無や金額についてはクリニックに直接お問い合わせください。
*順不同
【東京都】
杉山産婦人科丸の内(東京)
東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(大森・蒲田)
【茨城県】
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【埼玉県】
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【鹿児島県】
本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務を担当。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養業務に従事。クリニック開業に伴う、培養室立ち上げにも参画。現在は、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活で悩む方へのオンライン相談やのほか、株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)へ協力し、企業に勤める女性へ医療情報を提供するなどのサポートを行っている

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