【元胚培養士が解説】先進医療「子宮内膜スクラッチ法」とは?反復着床不全への効果・費用を解説
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妊活お役立ち情報
目次
シリーズでお届けしている不妊治療の先進医療。今回は、「スクラッチ法」について、元胚培養士の塚田寛人さんがお届けします。
先進医療には、胚の着床に関連する技術がいくつかあります。
先進医療④でご紹介したSEET法もその一つで、子宮内膜を着床しやすい状態に整えることを目的に行われています。
妊娠に至るためには、良好な胚だけでなく、「着床する環境」も非常に重要であることを、これまでの内容からおわかりいただけたのではないでしょうか。
そこで今回は、SEET法と同様に着床の促進を期待されている技術、「子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)」について見ていきましょう。
子宮内膜とは?
子宮内膜スクラッチ法を理解するために、まずは「子宮内膜」とは何かを知っておきましょう。簡単に言えば、子宮内膜とは“胚が着床する場所”です。
子宮内膜は、子宮の内側を覆っている粘膜の部分を指します。そして、月経周期にあわせて、厚くなったり、剥がれ落ちたりする変化を繰り返していて、排卵後、卵子と精子が受精し、受精卵から胚へと成長して子宮にたどり着くと、この子宮内膜に着床することではじめて「妊娠」が成立します。
つまり、卵子と精子がしっかり受精し、胚盤胞まで順調に育ったとしても、子宮内膜に着床できなければ妊娠は成立しません。 このことからも、子宮内膜が妊娠にとって非常に重要な役割を担っていることがわかります。
子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)とは?

その名のとおり、「子宮内膜」を「擦過(こする・引っかく)」=スクラッチ(scratching)する方法です。
人間の体は、傷がつくとその部分を修復しようとする働きがありますが、子宮内膜でも同様に修復反応が起こります。この修復の過程で、サイトカイン(インターロイキンなどの情報伝達物質)が放出されます。
これらの因子は、胚が子宮内膜に着床するときにも自然に分泌されることが知られており、スクラッチによって同様の反応を人工的に促すことで、胚が着床しやすい環境を作り出せるのではと期待されています。
ただ、実際のメカニズムは完全にはわかっておらず、「詳しく明かになっていない」と医療施設で説明されることもあります。
子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)の流れ
子宮内膜スクラッチ法は、通常、胚移植を行う際、前の周期の月経中(黄体期)に行われ、
1,専用の棒状の器具を膣から子宮の中に挿入
2,子宮内膜を軽くこすり、小さな傷をつける
といった流れで行われ、処置自体は10〜15分程度で完了し、比較的短時間で終わります。
「子宮内膜をこする」という処置の性質上、生理痛のような軽い痛みや、チクッと刺すような痛みを感じる方もいらっしゃいますが、処置後はすぐに歩いて帰宅できる程度の負担感であることがほとんどです。
この処置を行った次の周期に胚移植を実施するのが、基本的な流れとなります。
子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)の適応

子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)を保険診療と併用する場合は、以下の条件を満たす必要があります。
不妊症と認められた方のうち、
・胚移植を予定している方
・これまで複数回の胚移植で着床や妊娠に至っていない方(反復着床不全)
となっていて、胚移植を前提としているため、一般不妊治療(タイミング法や人工授精法)は適応されません。また、初めて体外受精治療を行う方は対象にはなりません。
繰り返し胚移植行っても妊娠が成立しない方に対して、着床の可能性を高める選択肢の一つとして提案されることが多い技術です。
子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)の効果

着床率や妊娠率の向上が期待されています。
子宮内膜スクラッチ法は、体外受精治療が保険診療化される以前から医療施設で実施されていた実績があります。
また、世界各国でも研究が進められており、一定の効果を示す報告がある一方で、「明確な効果が認められなかった」という報告もあり、現時点では、「すべての人に確実に効果がある」とは言い切れないのが実情です。
子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ法)の費用

技術にかかる費用は、クリニックによって設定が異なり、
4,400~11,000円
とされており、施設によってはそれ以上の費用がかかることもありますが、他の先進医療項目に比べて費用が比較的かからない点が特徴としてあります。 受診予定のクリニックのホームページなどで、事前に費用を確認しておくと安心ですね。
最後に(サイトカインについて)
着床に関わるサイトカイン(細胞の情報伝達物質)についての研究は、国内外で進められています。
たとえば、東京大学と科学技術振興機構(JST)の研究では、マウスをモデルとして、サイトカインの一種であるLeukemia Inhibitory Factor(LIF)が、胚の子宮内膜への接着(胚接着)や胚の発育(胚生育)に関与していること、さらに、LIFの不足が着床不全の原因となる可能性があることが明らかにされました。
参考:着床不全が起きる仕組みの1つをマウスを用いて解明 ~着床過程の解明が示唆する、着床不全の新たな診断・治療戦略の可能性~
このような研究結果は、着床不全の仕組みの理解を深めるとともに、今後の新たな治療法の開発や、より精密な着床支援のアプローチにつながることが期待されています。
●スクラッチ法が受けれるクリニックはこちら(2025年度妊活の歩み方アンケート結果より)
実際の実施の有無や金額についてはクリニックに直接お問い合わせください。
*順不同
【東京都】
杉山産婦人科丸の内(東京)
東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター(大森・蒲田)
【茨城県】
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本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務を担当。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養業務に従事。クリニック開業に伴う、培養室立ち上げにも参画。現在は、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活で悩む方へのオンライン相談やのほか、株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)へ協力し、企業に勤める女性へ医療情報を提供するなどのサポートを行っている

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