着床の鍵は“子宮内フローラ”にあり。体外受精の先進医療「子宮内細菌叢検査①②」とは
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妊活お役立ち情報
目次
体外受精を保険診療で受ける場合でも、治療の効果が得られにくいケースでは、「先進医療技術」を併用することがあります。
これまでのシリーズでは、
をご紹介してきました。
そして今回ご紹介するのは、「子宮内の環境」に着目した技術です。
妊娠の成立にはさまざまな要素が関係しており、どれだけ良好な受精卵が得られても、それを受け入れる子宮側の状態が整っていなければ、妊娠には至りません。
その中で注目されているのが、「子宮内に存在する細菌のバランス」です。
「子宮に細菌?」と驚かれるかもしれませんが、腸や膣と同じように、子宮内にも微生物の生態系(=細菌叢(フローラ))が存在しており、その構成が妊娠のしやすさに影響を与える可能性が指摘されています(Chen et al., 2017 “The microbiota continuum along the female reproductive tract and its relation to uterine-related diseases - PubMed”)。
この子宮内の細菌バランスを調べる検査が、「子宮内細菌叢検査①、②」です。
そもそも体内の細菌って何?ラクトバチルスの役割は?

私たちの体の中には、目に見えない菌が無数に存在しています。「腸内フローラ」「腟内フローラ」など、インターネットやメディアでもよく耳にします。これらの菌は、バランスを保ちながら健康を維持するうえで大切な働きを担っていて、場合によっては病気の要因になっている可能性があることもあります。簡単にまとめてみましょう。
- 腸内フローラ:腸には100兆個以上ともいわれる細菌が生息していて、食物の消化・吸収や免疫機能の調整、ビタミンの産生などに関与していることが知られています。腸内フローラのバランスが崩れると、便通異常や肌荒れ、アレルギー、生活習慣病に関わっていると考えられています。
- 腟内フローラ:腟の中にも「腟内細菌叢」と呼ばれるフローラが存在します。ここで重要なのが、ラクトバチルス属(乳酸菌)です。これらは乳酸を産生することで腟内を弱酸性(pH3.5~4.5)に保ち、外部からの病原菌の侵入や感染を防ぐバリアとして機能しています。腟内にラクトバチルスが豊富であることは、性感染症や炎症リスクを低下させると考えられています。
- 子宮内フローラ:子宮内には菌はいない…と考えられていた時期はありました。しかし近年の研究では、子宮内にも腟と同様に細菌が存在することが報告されています。これが「子宮内フローラ(子宮内細菌叢)」です。腟内と同様にラクトバチルスが優勢であることが良いとされており、子宮内におけるラクトバチルスの割合が高いほど、着床や妊娠の成立に良い影響を与える可能性があると報告されています。
(Scientific Reports (Bui BN, van Hoogenhuijze N, Viveen M, et al. “The endometrial microbiota of women with or without a live birth within 12 months after a first failed IVF/ICSI cycle | Scientific Reports”)。
※腟内と子宮内の相関性について
腟と子宮はつながっているため、腟内環境の乱れが子宮内にも影響を及ぼすことが知られています。実際、腟内でラクトバチルスが少なく雑菌が多い場合、子宮内にも同様の傾向が見られるケースがあります。
一方で、腟は外界に近く変化を受けやすいのに対し、子宮内はよりデリケートで安定した環境が求められます。そのため腟内の結果と子宮内の状態が必ずしも一致するとは限りません。特に体外受精を予定している方では、着床に直接関わる子宮内環境を確認するために「子宮内細菌叢検査」が推奨されます。
子宮内細菌叢検査①と②とは?

子宮内のフローラを評価する検査は、主に以下の2つです。
① EMMA / ALICE検査(子宮内細菌叢検査①)
この検査は、綿棒や専用の採取器具を用いて子宮内膜から腟内擦過物または子宮内腔液を採取し、どんな菌がどのくらいいるのかを分析します。
- EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)
妊娠に関係するとされるラクトバチルスがどのくらい存在するか、子宮内の菌の全体的なバランスを見ます。 - ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)
子宮の中で炎症を起こす可能性のある菌(Gardnerella vaginalisやAtopobium vaginaeなど)を調べます。
この検査は、着床障害や反復着床不全の原因を調べたい方におすすめされることが多く、ERA検査(着床に適した時期を調べる検査)と組み合わせて実施すると1度の周期で検査できるため、ERA/EMMA/ALICE検査の3種で検査することもあります。
② 子宮内フローラ検査(子宮内細菌叢検査②)
もう一つの検査は、子宮内フローラ検査。日本国内の研究データや日本人女性の子宮内環境に基づいて開発されたものです。この検査では、以下のようなことがわかります。
- 子宮内でラクトバチルスが優勢かどうかを判定
- ラクトバチルス以外の菌の存在状況を把握
- 慢性子宮内膜炎のリスク評価
- 必要に応じて、炎症や免疫に関わる遺伝子の発現も分析可能
子宮内細菌叢検査①と②の検査方法とタイミング

どちらの検査も、以下の流れで進められます。
- 医療機関で、専用器具を使って子宮内膜を軽くぬぐい検体を採取
- 検査会社で細菌のDNA解析を実施
- 数週間で検査結果が返却され、医師から説明を受ける
その後、結果によっては治療前に子宮内の環境を整える期間を設けることがあります。
子宮内細菌叢検査①と②の適応
子宮内細菌叢検査①と②を保険診療と併用する場合には、以下の条件を満たす必要があります。
子宮内細菌叢検査①
- 慢性子宮内膜炎が疑われる方
子宮内細菌叢検査②
- 慢性子宮内膜炎が疑われる方
- 難治性細菌性腟症が疑われる方
- 今までの体外受精治療で、反復して着床もしくは妊娠しない方
※子宮内細菌叢検査①と②の違いは?
どちらの検査も、妊娠しない要因の1つである、「子宮内のラクトバチルスの割合」や「炎症の有無」を見つけることを目的としていて、検査結果が出た後の治療方針や治療の進め方には大きな差はありません。
子宮内細菌叢検査①と②の結果が出た後はどうするの?

子宮内細菌叢検査を受けた結果、「ラクトバチルスが少ない」「炎症のリスクが高い」場合には、以下のような方法で治療をすすめていきます。
◯プロバイオティクスの摂取
ラクトバチルス属を含む乳酸菌サプリメントを利用し、子宮内の環境を整えます。
◯ラクトフェリンの摂取
ラクトフェリンとは、ラクトバチルスの生きる環境を整えるもの(ラクトバチルスのごはん)です。ラクトフェリンには抗炎症作用や抗菌作用があり、子宮内の炎症状態の改善や、ラクトバチルスが定着しやすい環境作りに役立つとされます。サプリメントとして一定期間内服した後、再検査もしくは治療の再開をします。
◯抗菌薬の処方
ALICE検査などで炎症性菌(例:Gardnerella、Atopobium など)が見つかった場合、医師が必要と判断すれば抗菌薬を一定期間使用して、子宮内環境のリセットを図ることがあります。その後、プロバイオティクスやラクトフェリンを接種することもあります。
子宮内細菌叢検査①と②の費用
技術にかかる費用は、クリニックによって設定が異なり、
子宮内細菌叢検査①
¥50,000~¥70,000
子宮内細菌叢検査②
¥40,000~¥60,000
とされており、施設によってはそれ以上の費用がかかることもありますが、他の先進医療項目に比べて費用が比較的かからない点が特徴としてあります。
受診予定のクリニックのホームページなどで、事前に費用を確認しておくと安心ですね。
●子宮内細菌叢検査が受けれるクリニックはこちら(2025年度妊活の歩み方アンケート結果より)
実際の実施の有無や金額についてはクリニックに直接お問い合わせください。
*順不同
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本日お話をおうかがいした方
塚田寛人
大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務を担当。その後、医療法人三秀会中央クリニックにて胚培養業務に従事。クリニック開業に伴う、培養室立ち上げにも参画。現在は、高度生殖補助医療(体外受精)や妊活で悩む方へのオンライン相談やのほか、株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)へ協力し、企業に勤める女性へ医療情報を提供するなどのサポートを行っている

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